Dr. Tairaのブログ

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CDCの研究:COVID-19生存者の20%以上が長期症状を経験

米国疾病管理予防センター(CDC)は、最近、long Covid に関する大規模な研究の結果を発表しました [1]。Long Covid は、SARS-CoV-2の初感染後、急性症状の回復後に、数ヶ月またはそれ以上続く可能性のある一連の症状を表す用語です。ここでは仮に長期コロナ症とよぶことにします。

今回のCDCの報告によれば、COVID-19生存者のなかで、65歳未満の5人に1人が、65歳以上の4人に1人が何らかの長期コロナ症を発症しているとしています(下図)。

この報告のアブストラクトを翻訳して以下に示します。

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●このトピックについて、すでに知られていることは何か?

SARS-CoV-2への曝露および感染者が増加するにつれ、急性COVID-19後に持続的な症状や臓器機能障害を経験し、COVID後の発症患者の報告が増加している。

●この報告での新知見は?

COVID-19生存者は、肺塞栓症または呼吸器系疾患の発症リスクが2倍になる。18-64歳のCOVID-19生存者の5人に1人65歳以上の生存者の4人に1人が、以前のCOVID-19罹患に起因すると考えられる疾患を、少なくとも1つ発症している。

●公衆衛生対策への影響は?

コロナ長期症状の発生率と影響を減らすために、COVID-19の防疫戦略の実施と、COVID-19生存者におけるCOVID後の状態についての日常的な評価が非常に重要であり、特に65歳以上の成人について必須である。

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このCDCによる報告は、ニューヨーク・タイムズ、フォーブス誌などの米メディアに取り上げられ、わかりやすく紹介されています。このブログ記事では、ニューヨーク・タイムズの記事を紹介したThe Indian Expressの記事 [2] を翻訳して紹介したいと思います。タイトルは、”More than 1 in 5 adult Covid survivors in US may develop long Covid, CDC study suggests"「CDCの研究によれば、米国の成人Covid生存者の5人に1人以上がlong Covidを発症する可能性がある」

以下翻訳文です。

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米国疾病対策予防センターの大規模な新規研究によると、米国における65歳未満の成人Covid生存者の5人に1人が、長期コロナ症(long Covid)と考えられる健康状態を少なくとも1回は経験していることがわかった。65歳以上の患者の場合は、その数はさらに多く、4人に1人である。

この研究論文の著者であるCDCのCOVID-19緊急対応チームのメンバーは、連邦保健機関がコロナ長期症状の問題をいかに深刻にとらえているかを示すために、「COVID-19生存者のCovid後の状態について日常的に評価する」ことを推奨している。

長期コロナ症状は、最初のコロナウイルス感染後、数ヶ月またはそれ以上続く一連の症状を表す用語である。研究者らは、心臓、肺、腎臓を含む多くの異なる臓器にCovid後の健康問題があることを確認している。また、血液循環、筋骨格系、内分泌系にも問題があり、消化器系、神経系、精神系の症状も確認されている。

65歳以上、65歳未満のどちらの年齢層でも、Covid患者は非感染者に比べて、肺塞栓症を含む呼吸器症状や肺の問題を発症するリスクが2倍であることがわかった。65歳以上のCovid後の患者は、腎不全、神経疾患、およびほとんどの精神疾患を発症するリスクが、若いグループよりも高かった。

VAセントルイス医療システムの研究開発主任で、セントルイスワシントン大学の臨床疫学者であるジヤド・アルアリ(Ziyad Al-Aly)博士は、この研究には参加していないものの、「この研究結果を見て、臓器機能障害の広さと問題の大きさを改めて認識し、気が重くなった」と述べた。

このCDCの研究では、約200万人の電子カルテを評価し、コロナウイルスに感染した人とそうでない人を比較している。Covid感染後に最も多く見られた症状は、年齢に関係なく、呼吸器系の問題と筋骨格系の痛みであった。

アル・アリは、この研究結果について、「潜在的には、何百万人もの人々が新たに糖尿病、心臓病、腎臓病、神経学的問題を抱えるようになる可能性がある。これらは生涯続く病態であり、確かに管理は可能だが、治るというものでもない」と述べている。

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翻訳は以上です。

筆者あとがき

長期コロナ状については少しは理解していたつもりですが、発生率が20%以上というCDCの報告は、あらためて衝撃的です。CDCは、コロナ長期症状の発生とその影響を抑制するために、あらためて防疫戦略の立て直しが必要であることを述べています。つまり、急性の健康被害はもとより、コロナ長期症状を抑えるためには、感染しないことが重要だということです。

翻って日本の状況はどうでしょうか。長期コロナ症の人がどのくらいいるのか、科学論文も公的な報告もありません。COVID-19については、もはや収束気味のような雰囲気すら感じられますが、もちろん全く終わっていません。いまなお、1日あたり数万人の新規陽性者と数十人の死亡者が出ています。日本は、防疫戦略については誠にお粗末の一言であり、ましてや長期コロナ症抑制を目指した方針・戦略については皆無でしょう。オミクロン流行で最悪の被害を出した日本ですが、長期コロナ症でも被害拡大しないことを望みたいものです。

引用文献・記事

[1] Bull-Otterson, L. et al.: Post–COVID Conditions Among Adult COVID-19 Survivors Aged 18–64 and ≥65 Years — United States, March 2020–November 2021. MMWR 71, 713–717 (2022). https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7121e1.htm

[2] Belluck, P.: More than 1 in 5 adult Covid survivors in US may develop long Covid, CDC study suggests. The Indian Express May 25, 2022. https://indianexpress.com/article/lifestyle/health/more-than-1-in-5-adult-covid-survivors-in-us-may-develop-long-covid-cdc-study-suggests-7935844/

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

マスクをやめる、もちろん検査もしない?

日本では、ここにきて、にわかに脱マスク論が盛んになってきました。脱マスクに「メリハリをつけて」という言葉も添えられています。海外のように、マスク着用を義務化、時間が経ったら義務化を解除、というならメリハリのあるわかりやすい話ですが、日本は推奨はされてはいても、元々義務化されてはいませんので、メリハリも何もないでしょう。みなさん、自主的に着用しているわけです。

専門家の説明も、対人距離が十分にとれる場合や会話が少なければマスクをしなくともよいという、いずれも定性的な曖昧な表現です。もっと定量的で具体的な説明にしてほしいところです。

なぜ、このタイミングで脱マスクなのか、はっきり言ってよく分かりません。ワクチン接種が進んだとは言え、感染状況をみても、オミクロン流行で過去最多の感染者数と死者数を記録し、今なお3万人前後の新規陽性者数と数十人の死亡者を毎日出しています。この感染者の統計情報もはっきり言って信頼性がありません。行政検査は減り続け、PCR検査の診療点数の引き下げの影響を受けて民間検査も減り、元々感度の悪い迅速抗原検査はオミクロンに対してはさらに感度が低下し、その上で検査陽性率は今なお30%前後と高いからです。

今日テレビでは、東北大学大学院教授小坂健氏が、現在の感染状況やオミクロンが重症化しないことなどを鑑みて脱マスクに踏み切ったということを述べていましたが、上記のように、被害は過去の波と比べても顕著な状況であり、今ひとつ説得力がありません。私は以下のようにツイートしました。

メディアも「ワクチン接種」や「重症化リスク」などを挙げながら、脱マスク論を展開しています。たとえば、産經新聞 [1] は以下のように伝えています。

ワクチン接種が進み、コロナ感染による重症化リスクは低くなっている。それでも、日本人が屋外ですらマスクを着け続けるのは「みんながそうしているから」という同調圧力があるからだ。

ここでは同調圧力という言葉も出てきていますが、マスク着用の「同調圧力」はあるとしても、国民はまず自主的に着用しているところが大きいのではないでしょうか。逆に学校におけるマスク着用については、「脱マスクをしなければ」という同調圧力さえ感じられます。

このような日本における脱マスク論を聞いていると、マスク一辺倒の話になっていて、感染対策全体のバランスが置き去りにされていることに気づきます。特に検査というツールがすっぽり抜けていることがわかります。日本は当初からPCR検査抑制論が幅を利かしてきた経緯がありますが、もちろん「検査もしない」が、最後の砦である「マスクもしない」という状況になりつつあります。

脱マスクでは欧米が先行しているイメージがありますが、米国ではマスク着用を復活させることも出てきたり、当局(米国疾病管理予防センター、CDC)が検査をはじめとするしっかりとした感染対策の指針を出しているところは注視すべきでしょう。学校における検査の指針もその一つです [2]下図)。

日本では、このような学校に対する指針はありません。それこそ、脱マスク一辺倒の話になっていて、検査など望郷の彼方という感じです。

ここで、CDCの"School Testing for COVID-19"にある概要を翻訳して、以下に示します。

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幼稚園から高校までを通じて、学校を休むことなく、生徒と教職員がCOVID-19から健康で安全に過ごせるように安全対策をとることが非常に重要である。重要な対策の1つは、学校での定期的なCOVID-19検査である。

ワクチン接種、物理的な距離、および適切なマスクの着用と併用することで、学校での定期的なCOVID-19検査は以下のことを可能にする。

 ●COVID-19の地域的な広がりを抑え、学校を開いて生徒を教室にとどめ、生徒と教職員を保護するのに役立つこと

●学校がCOVID-19の症例を早期に発見し、発生を未然に防ぐための早期の警告

●COVID-19検査を受けることができない家族に、検査を受ける機会の提供

●対面学習やその他の活動を継続することで、生徒、保護者、学校スタッフの信頼を増すこと

CDCは、地区内の学校でCOVID-19検査プログラムを実施し、保護者や職員のプログラムへの参加を支援・奨励するよう要請する。

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以上が翻訳文です。

米国では対面授業を可能とするために、定期的な検査を行なってきました。日本ではこのようなことはありません。かと言って、学校における空気感染対策としての換気装置、空気清浄機の設置の取り組みも程遠いです。そして今度をマスクを外そうという運動です。その言い訳として顔が見えず、コミュニケーションがとりづらく、子どもの発達に悪影響を及ぼすなどの根拠のない意見も出てきています。マスクを外すための代替の感染対策を何も考えることなく、ただマスクを外そうというキャンペーンは理解に苦しみます。

以上、日本における昨今の脱マスク論議について、個人的所感を述べました。マスクを外す代わりとして、定期検査や全校空気清浄機の設置に言及した専門家はこれまで皆無です。パンデミックは、もちろんまだ終わっていませんし、コロナ長期症状(long COVID)はもとより、最近では原因不明の小児肝炎やサル痘もあります。脱マスク論も含めて、国や専門家にはより慎重な感染対策の議論を望みたいものです。

引用文献・記事

[1] 五十嵐一:脱マスクはなぜ必要?子供へのリスク直視を 大阪大特任教授・大竹文雄氏. 産經新聞ニュース. 2022.05.19. https://www.sankei.com/article/20220519-P77GN7P5O5PSDG54ENOZIJJFTQ/

[2] CDC-Centers for Disease Control and Prevention: School Testing for COVID-19. Updated Mar. 24, 2022. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/schools-childcare/school-testing.html

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

小児急性肝炎にSARS-CoV-2のスーパー抗原が関わる?

2022.05.16更新

先のブログで記事で、私は、いま世界的に注目されている原因不明の小児急性肝炎について新型コロナ感染(長期症状)との関係を考えるべきではないかという見解を示しました(→世界的な謎の小児肝炎はコロナ関連症状か)。以下のように、ツイッターでもその見解を示しました。

そうしたら、つい最近、「小児急性肝炎についてSARS-CoV-2スーパー抗原を検討すべき」という内容の論説(書簡)がランセット系雑誌の一つに掲載されているのを見つけました [1](下図)。スーパー抗原とは、抗原のなかでも免疫反応に過剰な刺激を与えて、免疫の主役となるT細胞を異常に増殖させ、多大な炎症をもたらすものを言います。スーパー抗原としては、ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシン)が有名ですが、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質にもこのモチーフがあることが明らかにされています [2, 3]

当該ランセット論説 [1] は短い書簡なので、ここで翻訳して紹介したいと思います。以下、筆者による翻訳文です。適宜引用されている文献も示します。

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最近、英国、欧州、米国、イスラエル、日本において、重篤急性肝炎を発症した小児患者の報告がなされている。ほとんどの患者は消化器症状を呈し、その後黄疸に進行し、場合によっては急性肝不全に至る。これまでのところ、一般的な環境暴露は見つかっておらず、感染性媒体が最も有力な原因であろう。

これらの患者では肝炎ウイルスA、B、C、D、Eは見つかっていないが、英国で重症急性肝炎の検査を受けた小児の72%からアデノウイルスが検出され、英国でその亜型診断された18例のうち、すべてがアデノウイルス41Fと同定された。これは珍しいサブタイプではなく、主に幼児や免疫不全の患者が罹患する。しかし、私たちの知る限り、アデノウイルス41Fが重症急性肝炎を引き起こすことは、これまで報告されていない。

SARS-CoV-2は、英国で報告された症例の18%で確認されており、データがあるイングランドでの97例のうち11例(11%)が入院時にSARS-CoV-2陽性であり、さらに3例が入院前8週間以内に陽性となった。血清学的検査を継続することで、過去にSARS-CoV-2に感染した、あるいは現在感染している重症急性肝炎の小児がより多く見つかると思われる。イスラエルの患者12人のうち11人は、最近数ヶ月の間にCOVID-19に感染していたと報告されている [4]。また、報告された肝炎の症例のほとんどは、COVID-19ワクチンの接種対象にはならない幼い患者だった。

SARS-CoV-2に感染すると、ウイルスのリザーバーが形成される可能性がある [5]。このウイルスが消化管内に持続して存在すると、腸管上皮を通過してウイルスタンパク質が繰り返し放出され、免疫活性化を引き起こす可能性がある。このような免疫活性化の繰り返しは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の中にある、ブドウ球菌エンテロトキシンBに類似したスーパー抗原モチーフによって媒介されている可能性があり [2]、それは広範囲かつ非特異的にT細胞の活性化を誘発すると考えられる。このスーパー抗原を介した免疫細胞の活性化は、小児の多系統炎症症候群の原因メカニズムとして提唱されている [5, 6]

急性肝炎は多臓器不全症候群の小児において報告されているが、他のウイルスの共感染については調べられていない。最近報告された小児の重症急性肝炎の症例についての私たちの仮説は、過去にSARS-CoV-2に感染し、ウイルスリザーバーを保有する小児の腸管親和性によるアデノウイルス感染の結果ではないかということだ。

マウスでは、アデノウイルス感染により、その後のブドウ球菌エンテロトキシンBを介した毒性ショックが感作され、肝不全に至り死亡している [7]。この結果は、アデノウイルスによって誘発された1型免疫の偏りで説明された。すなわち、ブドウ球菌エンテロトキシンBに反応して、過剰なIFN-γ産生とIFN-γを介した肝細胞のアポトーシスを引き起こした結果による。

現在の状況に置き換えて考えれば、急性肝炎の小児について、ふん便中のSARS-CoV-2の残存、T細胞受容体の偏り、IFN-γのアップレギュレーションを調べることが求められる。それらは、アデノウイルス41Fに感作された宿主におけるSARS-CoV-2のスーパー抗原機構の証拠となり得るためだ。

もし、スーパー抗原による免疫活性化の証拠が見つかったら、重症急性肝炎の小児において免疫調節療法を検討すべきである。

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以上が翻訳文です。

筆者あとがき

いまだ原因不明とされる世界的な小児急性肝炎ですが、SARS-CoV-2感染とそのウイルスリザーバーの影響を示唆する見解が増えています。もし、それが証明されるようなことになると、これまで以上にSARS-CoV-2は厄介なウイルスという認識になるでしょう。Long COVID(コロナ長期症状)のリスクもあり、現段階での風土病的な風潮も払拭すべきだと思います(→Long COVIDのリスクを否定するのはやめよう)。

20022.05.16更新

このブログ記事を書いた後に、米国の研究チームが、COVID-19に感染した小児の肝臓障害について、メドアーカイブプレプリント [8] として報告しているのを目にしました。アラニンアミノトランフェラーゼ(ALT)やアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)などをマーカーとして調べたものです。

私たちの健康診断の血液検査でもお目にかかる ALT(GPT)や AST(GOT)の酵素活性は、肝臓障害のマーカーとして使われています。健康な場合、血液中には少量しか含まれませんが、肝細胞が変性・壊死すると、AST、ALTが循環血液中に流れ出して高い活性が検出されます。

研究チームは、COVID-19に罹った小児は、他の呼吸器感染症に感染した小児と比較して、ALT または AST の上昇(ハザード比またはHR:2.52、95%信頼区間またはCI:2.03-3.12)および総ビリルビン(HR:3.35、95% CI:2.16-5.18 )で表されるリスクが大幅に上昇した、と報告しました。これらの結果は、小児患者におけるCOVID-19の急性および長期の肝障害を示唆するものです。

研究チームは、本研究で報告したCOVID-19関連後肝障害が、現在増加している原因不明の小児肝炎症例と関連している可能性を示唆しながらも、これを明らかにするためにはさらなる研究が必要であると述べています。

引用文献

[1] Brodin, P. and Arditi, M.: Severe acute hepatitis in children: investigate SARS-CoV-2 superantigens. Lancet Gastroenterol. Hepatol. published May 13, 2022. https://doi.org/10.1016/S2468-1253(22)00166-2

[2] Cheng, M. H. et al.: Superantigenic character of an insert unique to SARS-CoV-2 spike supported by skewed TCR repertoire in patients with hyperinflammation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 117, 25254-25262 (2020). https://doi.org/10.1073/pnas.2010722117

[3] Brown, M. and Bhardwaj, N.: Super(antigen) target for SARS-CoV-2. Nat. Rev. Immunol. 21, 72 (2021). https://doi.org/10.1038/s41577-021-00502-5

[4] Efrati, I.: Israel examining 12 cases of kids' hepatitis after WHO warning. HAARETZ April 21, 2022. https://www.haaretz.com/israel-news/israel-examining-12-cases-of-kids-hepatitis-after-who-warning-1.10752779

[5] Brodin P.: SARS-CoV-2 infections in children: understanding diverse outcomes. Immunity 55, 201-209 (2022). https://doi.org/10.1016/j.immuni.2022.01.014

[6] Porritt, R. A. et al.: HLA class I-associated expansion of TRBV11-2 T cells in multisystem inflammatory syndrome in children. J. Clin. Invest. 131, e146614 (2021). https://doi.org/10.1172/JCI146614

[7] Yarovinsky, T. O. et al.: Increased sensitivity to staphylococcal enterotoxin B following adenoviral infection. Infect. Immun. 73, 3375-3384 (2005). https://doi.org/10.1128/IAI.73.6.3375-3384.2005

[8] Kendall, E. K.: Elevated liver enzymes and bilirubin following SARS-CoV-2 infection in children under 10. medExiv Posted May 14, 2022. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.05.10.22274866v1

引用したブログ記事

2022年5月14日 Long COVIDのリスクを否定するのはやめよう

2022年5月5日 世界的な謎の小児肝炎はコロナ関連症状か

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

Long COVIDのリスクを否定するのはやめよう

現地時間の昨日(5月13日)、米ワシンントン・ポスト紙に、「Long COVIDのリスクを無視するのはやめるべきだ」というオピニオン記事が掲載されました(下図) [1]。筆者はペンシルバニア大学のエゼキエル・J・エマニュエル(Ezekiel J. Emanuel)教授です。彼は腫瘍学者で医療倫理学者であり、バイデン-ハリス政権移行時のCOVID-19諮問委員会の委員を務めた人物です。

日本では、いま、海外のコロナに関する数々の規制解除を紹介しながら、脱マスクの論調が盛んになっていますが、一方で、米国でも上記のような意見があるということで、このブログで全文翻訳して紹介したいと思います。

以下、筆者による翻訳文です。

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「COVID-19のパンデミックは終わった」。マイアミで開催されるF1のために詰めかけ、バスケットボールのスタジアムはチケット完売し、レストランをマスクなしで満席にするとき、ほとんどの米国人はそう信じているように見える。

この世間一般の通念は重大な誤りである。私はこれからもN95マスクを着用し、飛行機や電車での移動を制限し、屋内のレストランでの食事は避けるつもりでいる。教えるときはHEPAフィルターをかけ、学生にもN95マスクの着用を義務付けるつもりだ。

なぜか?その大きな理由は long COVID長期コロナ症)だ。

多くの米国人は、私のことを馬鹿か愚か者だと思うだろう。彼らは、米国人の約60%がすでにオミクロンや他のコロナウイルス変異体に感染していることを示唆する最近のデータを指摘するだろう。つまり、COVID は風土病なのだ、と彼らは主張するはずだ。避けられないことは受け入れるしかないということだ。

この考え方は、こうであってほしいという願望がデータを無視した姿である。COVID-19が単なる風邪や軽いインフルエンザでないことは、豊富な証拠が示している。深刻な感染症なのだ。実際、オミクロンは初期の変異体よりも軽症であるという考え方は間違っていた。それは、致命的なものだった。

しかも、心配な合併症を伴う。もちろん、現在ではワクチンや治療薬など、急性疾患や死亡を防ぐための効果的な介入方法がある。しかし、最初の感染後に起こる合併症については、まだ十分に分かっていない。

長期コロナ症は、2020年5月に最初に記述されたものの、この症状のコンセンサスとなる定義すらない。しかし、ブレイン・フォグ、最小限の労力で起こる疲労、極端な息切れ、不眠、めまいなど、多くの壊滅的な症状が数カ月間続くことが明らかになっている。

長期コロナ症のリスクが低いのであれば、マスク着用などの予防策をやめるべきということには同意する。しかし、正確な頻度はわからないが(国立衛生研究所や生物医学研究者の怠慢)、決して稀な症状ではないことは明らかだ。推定値は感染の0.5%から30%まであり、よく引き合いに出されるリスクは10%である。さらに、初感染時の重症度とコロナ長期症状の発症確率には相関関係がないと思われる。症状が軽くても苦しんでいる人はたくさんいる。

ワクチンは長期コロナ症のリスクを減らすのに役立つように思えるが、そのリスクが珍しいものになることはない。ここでもデータに大きなばらつきがある。退役軍人省の研究では、ワクチン接種によってリスクが13%低下すると推定され、英国の2つの研究では、リスクが40〜50%低下すると推定されている。最も優れた研究では、24万人以上の米国人患者を対象としたもので、ワクチンによって長期コロナ症のリスクをおよそ17%から3%に減らすことを示唆している。これは珍しいことではない。

さらに悪いことに、この病気に対する治療法がない。NIHは、抗ウイルスの長期使用、免疫調整剤、抗コレステロール剤や抗うつ剤のような闇雲な治療法を試みているが、これらを評価するための強固な臨床試験を迅速に実施するプラットフォームをまだ確立していないのである。

そして、「より長い」long COVID もあるかもしれない。感染から数ヶ月あるいは数年後に心臓発作を起こしたり、糖尿病を発症したりするリスクがあることが分かってきたところだ。COVIDに罹った妊婦は、入院、集中治療室への入院、早産のリスクが高まった。また、勃起不全は新たに報告されたリスクだ。COVID 罹患が脳に及ぼす長期的な影響については十分に確立されていない。しかし、うつ病灰白質の喪失が記録されており、それらがどの程度深刻で一般的なものになるかはわかっていない。

私は心配性ではない。喜んでリスクは取るし、家族に言わせれば、取り過ぎかもしれない。私は電動バイクに乗っているが、このバイクで死ぬ確率は10万分の1だ。交通事故の死亡確率は、通常の年で1万6,000分の1である。

しかし、33分の1という確率(あるいは長期コロナ症で3%の確率)で、ブレイン・フォグや衰弱性の疲労、息切れなどの深刻なコロナ後の症状が出るというのは、簡単な予防策をやめる引き換えにしては高すぎる。

先週、食品医薬品局(FDA)がジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの使用を制限したのは、約1900万回接種のうち60人が血液凝固症候群を発症し、9人が死亡したためだということを考えようではないか。これは、30万分の1の確率で血液凝固症候群が起こり、200万分の1の確率で死亡することになる。同様に、大きな警戒心を抱かせる原因となったファイザーワクチンとモデナワクチンによる若年成人男性の心筋炎のリスクは、それぞれ約15,000分の1、4,000分の1である。長期コロナ症のリスクは、これらのどの結果よりもはるかに大きいのだ。

また、重度の慢性症状を抱える何百万人もの米国人が、働くことができず、医療面でのケアやサポートを必要としていることも思い起こすべきだ。この結果、医療保険障害者手帳の支払いで、私たち全員が負担することになる。COVID が過去のものであるかのように振舞うことは、将来への深刻な負担を生むことになるのだ。

皆と同じように、私もこのパンデミックの悪夢が終わることを望んでいる。しかし、このまま精神的に衰弱していくのも怖い。それを避けるために、マスクの着用やHEPAフィルターの稼働などの防護策を続けることは、さほど無理なことではないだろう。

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以上が翻訳全文です。

日本のメディアは、あたかもCOVID-19が風土病化したような感じで、脱マスクなどの緩和策の方向を盛んに伝えていますが、海外でもこのような記事があることも伝えてほしいと思います。

引用記事

[1] Emanuel, E. J.: Opinion Stop dismissing the risk of long covid. Washington Post. May 13, 2022.  https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/05/12/stop-dismissing-long-covid-pandemic-symptoms/

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

腸内でなかなか消えないコロナウイルスの"ゴースト"

先月、本ブログで、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の消化器感染とlong COVID長期コロナ症)との関係を示唆する論文が出版されたこと、それをBloombergが取り上げたことを紹介しました(→SARS-CoV-2の消化器感染とLong COVID)。最近、この論文の内容を含めたコロナ長期症状に関する論説記事がネイチャー誌に掲載されましたので(下図)[1]、ここで紹介したいと思います。

記事の冒頭で、「科学者たちは、COVID長期症状が、最初の感染から数ヵ月後に体内で発見されるウイルス断片と関連しているかどうかを研究している」とあります。COVID-19が慢性疾患感染症である可能性を強く示唆する記事です。

以下、全文を翻訳して記します。

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コロナウイルスが大流行した最初の数ヶ月の混乱の中で、腫瘍学・遺伝学者のアミ・バット(Ami Bhatt)は、SARS-CoV-2感染者の嘔吐と下痢が広く報告されていることに興味を持った。「当時、これは呼吸器系のウイルスだと考えられていました」と彼女は言う。バットたちは、このウイルスと胃腸症状との関連に興味を持ち、COVID-19感染者のふん便の採取を始めた。

バットの研究室から何千マイルも離れたカリフォルニアのスタンフォード・メディシンでは、消化器内科のティモン・アドルフ(Timon Adolph)が感染者の腸の症状についての報告に困惑していた。アドルフとオーストリアインスブルック医科大学の同僚たちは、消化管組織生検の標本を集め始めた。

科学者たちによるこの先見の明は、パンデミックから2年が経過して実を結んできた。両研究チームは、最近、SARS-CoV-2の一部が初感染後数ヵ月にわたって腸内に留まる可能性を示唆する結果を論文発表した [2, 3]。この発見は、ウイルスの持続的な断片(バットはコロナウイルスの「ゴースト」と呼んでいる)が、long COVIDと呼ばれる謎の症状の原因となりうるという仮説を裏付ける証拠が増えてきたことを意味する。

しかし、バットは科学者たちに広い視野を持つよう促すとともに、研究者たちがまだイルス断片の持続性と long COVID との関連性を突き止めてはいないことを警告している。「さらなる研究が必要であり、それは簡単なことではありません」と彼女は話す。

COVID長期症状は、多くの場合、急性感染後12週間を超えて持続する症状と定義されている。この疾患には200以上の症状があり、その重症度は軽度なものから衰弱させるものまで多岐にわたる。その原因については様々な説があり、有害な免疫反応、微小な血栓、体内のウイルスの残留などが挙げられている。多くの研究者は、これらの要因が混ざり合って、世界的な疾病の重荷になっていると考えている。

コロナウイルスが体内で持続する可能性を示す初期のヒントは、ニューヨーク市マウントサイナイ病院アイカーン医科大学の消化器内科医サウラブ・メハンドル(Saurabh Mehandru)とその同僚が、2021年に発表した研究であった。それまでに、腸を覆う細胞が、ウイルスが細胞内に侵入するために使うタンパク質を呈示していることが明らかになった。これによって、SARS-CoV-2は腸に感染することができるのである。

メハンドルのチームは、約4ヵ月前にCOVID-19と診断された人々から胃腸組織を採取し、ウイルスの核酸とタンパク質を見つけた。また、免疫系で重要な役割を果たすメモリーB細胞も調べた。その結果、これらのB細胞が産生する抗体は進化を続けており、初感染から6カ月経過した時点でも、この細胞がSARS-CoV-2が作る分子に反応し続けていることが示唆された。

この研究に触発されたバットらは、軽度または中等度のSARS-CoV-2初感染から7ヵ月後、呼吸器症状が終了した後も、数人の人々が便中にウイルスRNAを排出し続けていることを見いだした。

・ウイルスは腸を狙う

アドルフによると、2021年の論文に刺激されて、研究チームはコロナウイルスの徴候がないか生検サンプルを調べたという。その結果、軽度のCOVID-19を発症した研究参加者46人のうち32人が、急性感染から7カ月後に腸内にウイルス分子の証拠を示していることがわかった。その32人のうち約3分の2は、コロナ長期症状を示していた。

しかし、この研究の参加者は全員、自己免疫疾患の一つである炎症性腸疾患を持っており、当該データがこれらの人々の中に活動中のウイルスが存在すること、あるいはウイルスの物質がコロナ長期症状を引き起こしていることを立証するものではない、とアドルフは注意を促している。

一方、腸の外に持続的ウイルスの貯蔵庫があることを示唆する研究も増えている。別の研究チームは、COVID-19と診断された44人の剖検から採取した組織を調査し、心臓、目、脳を含む多くの部位にウイルスRNAの証拠を得た。ウイルスRNAとタンパク質は、感染から230日後まで検出された。この研究をまとめた論文は、まだ査読が済んでいない。

・ウイルスの隠れ家

そのサンプル源であるほぼ全員が重度のCOVID-19を発症していたが、軽度のCOVID-19の後にコロナ長期症状を呈した2人を対象とした別の調査では、虫垂と乳房にウイルスRNAが検出された。シンガポールの科学技術研究庁分子細胞生物学研究所の病理学者ジョー・ヨング(Joe Yeong)は、この論文の共著者だが、これはまだ査読を受けていない。ウイルスは、体のさまざまな組織に存在するマクロファージという免疫細胞に浸潤して潜伏するのではないかと推測している。

これらの研究はすべて、長期間のウイルス貯留がコロナ長期症状に寄与している可能性を裏付けるものであるが、関連性を決定的に示すにはさらなる研究が必要であるとメハンドルは話す。研究者たちは、コロナウイルスが免疫不全でない人々で進化していることを証明する必要があり、その進化とコロナ長期症状とを関連付ける必要がある。「今のところ、逸話的な証拠はありますが、未知の部分がたくさんあります」とメハンドルは語る。

バットは、ウイルス貯留説を検証するためのサンプルが入手できるようになることを期待している。たとえば、米国国立衛生研究所は、long COVIDの原因に取り組むことを目的とした"RECOVER"という大規模な研究を実施しており、一部の参加者の下腸から生検を採取する予定だ。

しかし、Shengは、もっと多くのサンプルを得るために10億ドルの研究を待つ必要はないと話す。コロナ長期症状の人々による組織から連絡があり、感染後に癌診断など様々な理由で生検を受けたメンバーのサンプルを送るというのだ。「本当にランダムなんです、組織はどこからでも手に入るんです。しかし、彼らは待ちたくはないのです」。

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翻訳文は以上です。

筆者あとがき

このネイチャー記事 [1] でも紹介されているバットらの論文は電子ジャーナルMedに掲載されたものです [2]。その内容はBloombergなどのメディアによっても既に紹介されています(→SARS-CoV-2の消化器感染とLong COVID)。

消化器やその他の臓器にSARS-CoV-2(その一部)が長期間残留することが、コロナ長期症状(長期コロナ症)の原因になるというもっともらしい仮説として浮上しているわけですが、少なくともCOVID-19患者(の一部)が、長期間ウイルス断片を保持することは明らかでしょう。

ウイルスの長期残留が長期コロナ症の原因だということになれば、以前からも言われていますが、COVID-19は単なる急性呼吸器感染症ではなく、慢性疾患を起こす全身性、神経性感染症であるというのが本質ということになるでしょう。ましてや、COVID-19がインフルエンザや風邪などと同じとみなすのは荒唐無稽ということになります。

これは果たして「生のウイルス」が残存するということでしょうか。私はこれらの知見に触れて、SARS-CoV-2のRNAレトロポジション現象によってDNAに統合されるという先の研究成果(→新型コロナウイルスのRNAがヒトのDNAに組み込まれる)が思い浮かびました。まさかとは思いますが、宿主DNAに組み込まれたSARS-CoV-2の情報が長期間発現して、悪影響を及ぼしているということではないと信じたいですが。

最後に、ネイチャー記事の最後に出てくるShengという人物が誰かはわかりませんでした。

引用文献

[1] Ledford, H: Coronavirus ‘ghosts’ found lingering in the gut. Nature 11 may 2022. https://doi.org/10.1038/d41586-022-01280-3

[2] Natarajan, A. et al.: Gastrointestinal symptoms and fecal shedding of SARS-CoV-2 RNA suggest prolonged gastrointestinal infection. Med Published April 12, 2022. https://doi.org/10.1016/j.medj.2022.04.001

[3] Zollner A et al.: Post-acute COVID-19 is characterized by gut viral antigen persistence in inflammatory boweldiseases, Gastroenterology Published online (2022). https://doi.org/10.1053/j.gastro.2022.04.03

引用したブログ記事

2022年4月18日 SARS-CoV-2の消化器感染とLong COVID

2021年5月15日 新型コロナウイルスのRNAがヒトのDNAに組み込まれる

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?

オミクロン変異体はこれまでのSARS-CoV-2変異体と同様に重症化度が高い、とする研究成果を、5月6日付けのロイター記事が紹介しました [1]。この研究は、米国マサチューセッツ総合病院ミネルバ大学ハーバード大学医学部の共同研究グループによるもので、今月2日、プレプリント(査読前の短報)として報告されています [2]。本研究は、ワクチン接種、人口統計、併存疾患で調整・補正すると、オミクロンは以前の流行の波と同程度の致死率であることが判明したとしてします。

このブログでは、このロイターの記事(下図)に沿って、この研究を紹介したいと思います。結論から言うと、ワクチン接種や治療薬の進展のおかげで、オミクロンが従来の変異体に比べて軽症に見えているだけだということです。

オミクロン変異体(B.1.1.529系統)は、他の SARS-CoV-2 変異体よりも感染力は強いけれども重症度は低いと、以前から報告されてきました。研究グループは、この仮説を検証するために、米国マサチューセッツ州の 13 病院を含む大規模医療システムの電子カルテと州レベルのワクチン接種データをリンクさせました。そして、13万人以上のCOVID-19患者を対象に、SARS-CoV-2の流行の波に応じた入院と死亡のリスクを比較する統計分析(加重ケースコントロール研究)を実施しました。

入院率および死亡率を調整しないでそのままみると、オミクロンよりも以前の波でそれらは高いように見えました。しかし、医療利用は一定とした上で、様々な人口統計、シャルソン併存疾患指数スコア、ワクチン接種状況などの複合因子を加味して調整・補正すると、入院および死亡のリスクは、全パンデミック期間でほぼ同じであることが分かりました。

研究グループは、この分析結果に基づいて、オミクロン変異型の本質的な重症度は、これまでの変異型と同様である可能性を示しているとしています。これは、感染力は強いが重症度は低いという、これまでの研究での仮定とは相容れないものです。

この研究は、ワクチンの影響を考慮した上でオミクロンの重症度を推定したものですが、専門家は予防接種とブースターショットの重要性を強化するものであると述べています。つまり、ワクチン接種のおかげで、オミクロンの急増時の入院や死亡は、過去の変異型と比較して低く抑えられたというわけです。

イェール大学医学部およびイェール大学アウトカム研究・評価センターのArjun Venkatesh医師は、COVID患者13万人の記録に基づくこの新しい研究はユニークで「かなり強力」だと述べています。先行研究では、死亡や入院の数だけを見てきましたが、この研究では、患者のワクチン接種の状況や医学的な危険因子を考慮し、類似のグループを比較していることをVenkatesh氏は指摘しています。

プレプリントの著者らは、自宅での迅速検査を行った患者を除外したため、より最近のCOVID波におけるワクチン接種患者数および総感染者数が過小評価された可能性など、本報告に潜在する限界を挙げています。一方、Venkatesh氏は、この研究では、モノクローナル抗体や抗ウイルス剤など、「入院を減らすことが知られている」治療を患者が受けたかどうかは考慮されていないと指摘しています。もし、これらの治療法がなかったら、オミクロンはさらに悪化していた可能性があるということです。

世界中の国々は、明らかに致死的な変異体が急増した時でさえ、国民のかなりの割合がCOVIDワクチンを接種したがらないことを経験しています。オミクロン変異体が2021年後半に初めて確認されたとき、公衆衛生当局は、感染者の大多数ではるかに軽い症状になることを述べました。そのことが、ワクチンをためらう人たちに、注射の必要性が低いことを促したのかもしれません。

しかし、Venkatesh氏は、このプレプリントは、ワクチンがオミクロンの最悪の影響から人々を免れるのに役立ったという証拠を付け加えているとしています。「ワクチンやブースターが重要でないと考えるのは間違いだ」と彼は述べています。

以上がロイター記事の内容ですが、この記事を読んで感じることは、ワクチンのおかげでオミクロンは軽症になっており、ワクチンは重要だという結論になっていることです。確かに、ワクチンやブースターのおかげで、全体的にオミクロン感染患者の症状が軽くなったことはあるのでしょうが、個人的にはワクチンの有効性を過大評価しているような気がします。

ここで、先月終わりに開催されたわが国の新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード会合の資料 [3] から、新規陽性者、重症者、および死亡者における年代別ワクチン接種状況を示します(図1)。

図1. 新規陽性者、重症者、および死亡者における年代別ワクチン接種状況(文献 [3] より転載).

オミクロン変異体による状況は2022年からですが、この図を見ると、65歳未満では、ワクチン未接種、完全接種、およびブースター接種で、重症化率や死亡にあまり差異がないように思われます。オミクロンによる死亡の大部分は65歳以上ですが、この年代においても、重症化防止、死亡抑制に対するワクチン接種の劇的な効果というには程遠く、感染者の中でワクチン未接種者の重症化・死亡割合が若干増えている程度にしか見えません。

確かに、デルタ変異体の流行においては重症化・死亡抑制にワクチンの効果はあったでしょう。しかし、オミクロン流行においては、ワクチンの効果はかなり低く、実際にはワクチン接種によって死亡を早めた例もあるのではないか、そして、ワクチンの正の効果と相殺されているのではないかという感じもします。

引用文献・記事

[1] Strasser, Z. et al.: SARS-CoV-2 Omicron variant is as deadly as previous waves afteradjusting for vaccinations, demographics, and comorbidities. Res Square Posted May 2, 2022. https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-1601788/v1

[2] Ghosh, S. and Lapid, N.: Omicron as severe as other COVID variants -large U.S. study. Reuters May 6, 2022. https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/omicron-severe-previous-covid-variants-large-study-finds-2022-05-05/

[3] 第82回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(鈴木先生提出資料) 2022.04.27. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000934786.pdf

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

世界的な謎の小児肝炎はコロナ関連症状か

私は、先月下旬、原因不明の小児肝炎が欧米諸国で症例報告されているという記事をYahooニュースで目にしました。それを見て直ぐにコロナ関連の症例ではないかと思い、次のようにツイートしました。残念ながら、ここで引用したYahooニュースはすでに削除されているようです。

私がコロナ関連の症例ではないかと思ったのは、急性肝炎が、小児における多臓器炎症症候群(MIS-C)の顕著な症状の一つであり、COVID-19の長期症状としてすでに報告されていたからです [1, 2]。この症候群は、COVID-19の急性期ではなく,感染後遅れて現れており、患者の大半はSARS-CoV-2PCR検査で陰性である一方、本ウイルスの抗体は陽性であることが報告されています [1]。

また、SARS-CoV-2に感染した小児(PCR検査陽性)において、入院時に酵素的な肝機能の異常が認められたことから、回復後もSARS-CoV-2の肝臓への長期的影響について綿密にフォローアップを行うことが推奨されています [3]。このような症例から,MIS-Cにおける肝病変は、免疫媒介反応に付随して起こるのではないかという見解が示されています。

もう一つ、この謎の小児肝炎がコロナ関連と疑ったのは、まだ症例が少ないですが、世界的に広がりをみせていることです。メディア報道 [4, 5, 6, 7] によれば、当初、欧米を中心に症例が多く見られるような感じでしたが、今では日本を含めたアジアや南米でも報告されています。COVID-19パンデミックと関連しなければ、これだけ短期間にこのようなことが起こるでしょうか。

これまで、小児肝炎患者からはA~E型の肝炎を引き起こすウイルスは確認されていないようです。一方、肝炎を発症した5割以上の子どもからアデノウイルス(特に41型)が検出され、一部SARS-CoV-2も検出されたと報告されています [5]。これらの状況証拠からアデノウイルスの関与を疑う見解も示されています。しかし、このウイルスは風邪などに関連し、胃腸炎の原因にもなりますが、単独で健康な子どもで肝炎の原因となることは普通ありません。

世界中で同時多発的に小児肝炎が起こっていることは、仮に他のウイルスが関係しているとしても、やはり第一にコロナ感染との関連を疑うべきでしょう。たとえば、SARS-CoV-2に感染し、そのウイルスが長期間残存、抗原提示することによる免疫システムへの影響、それとアデノウイルスの共感染の影響が考えられます。

今のところ全く謎の小児肝炎ですが、原因についてはこれからの解明に待つしかありません。英国の専門家が、「子どもたちがロックダウンやマスクなどの影響でウイルスに触れられなかったことで免疫力が低下し、重症化している可能性がある」と述べていることは [8]、少なくても荒唐無稽としか言いようがないです。

引用文献・記事

[1] Cantor A et al.: Acute hepatitis is a prominent presentation of the multisystem inflammatory syndrome in children: a single-center report. Hepatology 72, 1522–1527 (2020).  https://doi.org/10.1002/hep.31526

[2] Cheung, E. W. et al.: Multisystem inflammatory syndrome related to COVID-19 in previously healthy children and adolescents in New York city. JAMA. 2020; 324, 294–296 (2020). https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2767207

[3] Giacomo, B. et al: SARS-CoV-2 infection may present as acute hepatitis in children. Ped. Infect. Dis. J. 40, e214–e215 (2021). https://journals.lww.com/pidj/fulltext/2021/05000/sars_cov_2_infection_may_present_as_acute.38.aspx#JCL-P-11

[4] Rigby, J.: Almost 200 cases of unexplained acute hepatitis reported in children -ECDC. Reuters April 26, 2022. https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/around-190-cases-acute-hepatitis-children-reported-ecdc-2022-04-26/

[5] 後藤一也: 欧米で増える子どもの肝炎、関連が疑われているアデノウイルスとは. 朝日新聞 2022.04.26. https://digital.asahi.com/articles/ASQ4V45GCQ4VUTFL00P.html?oai=ASQ575RGVQ57UTFL004&ref=yahoo

[6] AFP BB News: 謎の小児肝炎、ウイルス性か 米CDC. 2022.04.30. https://www.afpbb.com/articles/-/3402860?cx_part=search

[7] AFP BB News: 謎の急性肝炎、インドネシアで子ども3人死亡. 2022.05.04. https://www.afpbb.com/articles/-/3403202?utm_source=yahoo&utm_medium=news&cx_from=yahoo&cx_position=r1&cx_rss=afp&cx_id=3403605

[8] テレ朝 News: 原因不明の子どもの急性肝炎 ロックダウンなどによる免疫力低下が影響か. 2022.04.27. https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000252895.html

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

重症者が増えなければよいという方針で死亡者増

今年の大型連休(GW)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策についてまん延防止措置などの行動制限の規制が全くない状況です。これに関して、昨日の民放の番組「池上彰のニュース解説」で、昨年の同時期に比べてはるかに感染者数が多いのに、なぜ行動制限がないのかということを同氏が説明していました。要するに、第6波流行をもたらしたオミクロン変異体は従来のデルタ型などと比べて軽症者が多く、重症者数が少ない分、医療崩壊することがないので、行動制限する必要がないという説明でした。

とはいえ、図1に示すように、第6波以降これまで最多の感染者数と死者数を記録しており、最大の被害になっていることは周知の事実です。感染者数が爆発的に増えれば、その分死者数が増えることも当初から想像できたことであり、事実そうなりました(→「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態)。

図1. 日本におけるCOVID-19の死者数の推移(7日間の移動平均値、Our World in Dataより).

私は上記のテレビ番組を観ながら、その感想を以下のようにツイートしました。

死者数は2月をピークに急速に減りつつありますが、BA.2変異体による現流行になってからも、依然としてデルタの第5波に近いレベルを保っています。テレビは、日々の陽性者数や重症者数を重点的に伝えても、死者数についてはサラッとした感じで流すか、全く報じないこともあります。

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾見茂会長の弁にも代表されるように、政府や専門家はことあるごとに重症者数が大事と言ってきましたが、これは上述のように、病床のひっ迫や医療崩壊を防ぐための考え方であったと言えます。つまり、人々を感染から守る、罹った人を守るということではなく、「医療システムを守る」ということなのです。都合がよいことに、オミクロンによるCOVID-19は重症化しにくい傾向があり、その結果、患者を入院させるのではなく、自宅療養や施設療養を優先する方針がとられました。

もちろん、オミクロン感染者数が爆発的に増加し、自動的にその都度の病院収容がままならない状態になったことも影響しています。軽症なのになぜ医療がひっ迫したかというのもこの理由です(→オミクロンは軽症なのになぜ病院をひっ迫させるのか?)。

ところが、オミクロン患者では重篤化に至らないまま、いきなり亡くなる事例が増えました。軽症だという理由で、自宅療養や施設療養が優先された結果、ある日突然悪化して亡くなったり、慌てて病院に収容されたもののそのまま亡くなるというケースが多くなったのです。この傾向は現在まで続いています。これがオミクロン流行でパンデミック以来の最多の死者数を記録している理由の一つです。

敢えて誤解を恐れず言えば、感染患者が次々と亡くなっていけば、病院は全くひっ迫せず、医療崩壊も起きません。「重症者が増えなければよい」という重症者数抑制自体が目的化してしまった上に、「オミクロンはほとんどが軽症」という認識が加わって、自宅・施設療養が優先され、かえって死亡事例を増やしているのです。

つまり、リスクコミュニケーションにおける「重症者数が大事」、「オミクロンは重症化率が低い」という情報流布は、犠牲者の実態が見逃されやすいということだけでなく、流行状況が軽視されることで感染患者を爆発的に増やし、かえって医療を圧迫させ、医療崩壊に至るということでも問題なのです。

そしてここがまさに詐欺的と思えるのが、重症者の定義がオミクロンが流行る前の状態のままで「重症者数が大事」と尾見氏をはじめとする感染症コミュニティが言い続けていることです。すなわち、従来は肺炎を起こせば中等症人工呼吸器やECMOを装着すれば重症という定義でしたが、いまのオミクロンCovidは全身性の疾患であることがわかっており、肺炎や人工呼吸器をすっ飛ばしていきなり重篤化し、亡くなるというケースが増えているのです。さらに、人工呼吸器やECMO装着を望まない高齢者もいて、亡くなるということも頭に入れておかなければなりません。

日本がオミクロン流行で最多の死者数を出したのとは対照的に、欧米先進諸国は流行の波を重ねるごとに死者数を減らしています。特にワクチン接種が進んだ以降は、それが顕著です。図2は、フランス、ドイツ、イタリアの死者数の推移を示していますが、オミクロンの流行では最も死者数が減っていることがわかります。

図2. 日本と比較した欧州3国(フランス、ドイツ、イタリア)の日別死者数の推移(7日間の移動平均値、Our World in Dataより).

図3には英国での死者数の推移を示します。上記欧州3国とはちょっとパターンが違いますが、やはりデルタ流行以降急激に死者数を減らしています。英国では規制が全面的に解除されているため、最近ではやや死者数が上昇気味です。

図3. 図2. 日本と比較した英国の日別死者数の推移(7日間の移動平均値、Our World in Dataより).

図4は米国とカナダの死者数の推移を示しています。欧州と比べて流行の波を経るごとの死者数低下は顕著ではありませんが、オミクロンで際立って死亡が増えているということはありません。

図4. 日本と比較した北米2国の日別死者数の推移(7日間の移動平均値、Our World in Dataより).

すなわち、流行を重ねるごとにウイルスと病態について学び、ワクチン接種を含めた感染症対策が改善され、最悪の被害を少なくするという方向に一応向かっている欧米諸国に対し、日本は逆に最悪の被害を増やしているのです。日本は、もともと検査を含めた防疫・感染対策がお粗末なことや医療アクセスが狭い上に、「重症者が増えなければよい」、「オミクロンは軽症で自宅・施設療養でよい」という安易な方針が、そうさせてしまったということでしょう。

栃木県では、基礎疾患のない10歳未満の女子がCOVID-19で亡くなったことが報道されました [1]。県は「死亡した女の子は当初は軽症で基礎疾患がなかったため、自宅療養という判断は妥当だったと考えている。基礎疾患のない子どもでも死亡することがあることを知っていただき、引き続き感染対策をお願いしたい」と述べたそうですが、何をか言わんやです。これでは亡くなった女の子が浮かばれません。

国や専門家の「重症者数が大事」、「オミクロンは軽症」という言葉の裏にある真の意味を、私たちは注意深く読み取る必要があります。これらは詐欺的フレーズと考えた方がよいのです。そして、これらの言葉に安易に広報的に伝えるメディアにも注意しなければなりません。これらのフレーズが強調される限り、次の流行波(第7波)で感染者を爆発的に増やし、医療を圧迫させ、さらに医療崩壊に至り、これまで以上に犠牲者を増やすことが繰り返されるでしょう。

引用記事

[1] NHK NEWS WEB: 新型コロナ 基礎疾患ない10歳未満の女児死亡 栃木県. 2022.05.01. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220501/k10013608211000.html 

引用したブログ記事

2022年2月1日 オミクロンは軽症なのになぜ病院をひっ迫させるのか?

2022年1月27日 「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

迅速抗原検査はオミクロン検出の感度が低い

はじめに

SARS-CoV-2の検査は、現在、プローブ・リアルタイムPCR(RT-PCRが標準法として使われています。一方、発症者を迅速に診断したり、感染をスクリーニングするための迅速(簡易)抗原検査(rapid antigen test, RAT)も多用されており、一部の国では国家検査戦略の重要な柱として実施されています。

しかし、RATはPCR検査に比べてかなり分析感度が低く、たとえば、PCR検査でのCt値>25の低ウイルス排出感染者では、陽性と判定できない場合があることも指摘されています。さらに、RATは一般にウイルスのクレオカプシドタンパク質を標的としていますが、ここに変異が入ると、検出感度がさらに低下することが懸念されています。例として、オミクロン変異体(B.1.1.529)ではそれまでの変異体に比べて検出感度が落ちることを報じたプレプリントを、先のブログ記事で紹介しました(→ステルスオミクロン)。

今年2月には、ドイツの研究チームが、RATのオミクロン検出感度について検討した結果を報告しました [1]。結論として、RATのオミクロン検出の感度が悪いこと、in vitroで拡大培養したウイルスストックでRATの性能評価することは当てにならないことを述べています。このブログ記事で、本研究を紹介したいと思います。

1. 研究の背景

論文に書かれたイントロダクションに沿って、研究の背景を述べます。

SARS-CoV-2検出のためのRATは、迅速かつ安価で、検査室に依存しないポイント・オブ・ケア診断(診療現場での検査診断)を提供することで重宝されています。これらの中には、一般人でも使用できるものが承認されており、公衆衛生上の介入のためのツールとして頻繁に使用されています。SARS-CoV-2のPCR検査の物理的環境がやや限られていることを考慮すると、RATからの検査結果だけで、COVID-19の確定診断、あるいは症状のない人の検疫や隔離を判定するための「非感染」「非感染」状態の証明として提案を行っている保健当局もあります。

一方、異なる検査組織による独立した評価とコクラン(Cochrane))メタ分析 [2] によると、RATの性能が非常に不安定であることが示されています。それゆえ、臨床診断や感染者のスクリーニング検出に対するRATの有用性については、現在も論争が続いています。

SARS-CoV-2のRATで標的となるのは、一般にヌクレオカプシドタンパク質です。RATの大半は、「懸念すべき変異体(VOC)」の出現前に開発されていますが、VOCはヌクレオカプシドタンパク質に異なる変異箇所を持つため、VOC特異的なRAT評価を行うことが必要です。

オミクロン変異体では、スパイクタンパク質に30以上の非同義変異があるほか、BA.1亜系統のヌクレオカプシドタンパク質には、オリジナルのWuhan-hu-1ウイルスの配列と比較して、P13L、DEL31/33、R203K、G204Rという4つの変異が、さらにBA.2ではS413Rの変異があります。これらの変異のうち3つ(P13L、DEL31/33、S413R)は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ型(B.1.617.2)にはないオミクロンに特有のものであり、RATの性能予測を困難なものにしています。

注目すべきことは、オミクロンのRATの臨床的および分析的性能に関する既往の報告に、一部矛盾があることです。すなわち、組織培養で得られるデルタまたはオミクロン分離株の比較研究では、10種類のRATの分析感度にVOC特有の違いはなく、オミクロンに対するこれらのRATの有効性を結論付けている [3] 一方で、培養VOCを用いた分析比較検証は、臨床検体評価に取って代わることはできないとも述べられています [4]

そこで今回、ドイツの研究チームは、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドを検出する9種類のRATについて,臨床呼吸器材料と培養ウイルス(デルタ株およびオミクロン株)の両方を用いた分析性能を比較することにしました [1]

2. 結果の概要

2-1. 検体およびRATキットの特異性

今回の研究で使用されたRATキットは以下の9種類です。これらの中には日本の富士フィルム製のキットも含まれています。

Test 1: FUJIFILM COVID-19 Ag Test(富士フィルム

Test 2: Novel Coronavirus 2019-nCoV Antigen Test (Beijing Hotgen Biotech)

Test 3: NanoRepro SARS-CoV-2 Antigen Schnelltest (Viromed) (NanoRepro AG)

Test 4: CLINITEST Rapid COVID-19 Antigen Test (Healgen Scientific LLC)

Test 5: Lyher Novel Coronavirus (COVID-19) Antigen Test Kit (Hangzhou Laihe Biotech)

Test 6: COVID-19 Ag BSS self-test (Biosynex Swiss SA)

Test 7: rapid SARS-CoV-2 Antigen Test Card (Xiamen Boson Biotech)

Test 8: rapid SARS-CoV-2 Antigen Test Card (MP Biomedicals Germany GmbH)

Test 9: Medicovid-AG SARS-CoV-2 Antigen Rapid Test Card-nasal (Xiamen Boson Biotech)

上記のRATを適用した臨床検体は鼻咽頭スワブであり、あらかじめRT-qPCRと次世代シーケンシングによるデルタおよびオミクロン型の同定とウイルス濃度検定を行ないました。全てのRATの特異性を評価するために、PCR陰性の鼻咽頭スワブを検体として試験しました。その結果、9つのRATの特異性は、すべて100%(CI 96.3-100%)でした。

2-2. キットの種類ごとの感度

上記の臨床検体を対象として、9つのRATの分析感度を直接比較検討しました。デルタ変異体を含む検体を調べた場合、RAT感度は34.92~58.46%であり、その範囲は、PCR陽性の63検体中、22検体(最低値、テスト1)および38検体(最高値、テスト5, 8)に相当しました(表1)。オミクロン変異体を含む検体においては、全体の感度は22.22〜57.43%であり、PCR陽性101検体中、それぞれ22検体と58検体が正しくスコアリングされました(表2)。

表1. 9種類の迅速抗原検査キット(Test 1〜9)のデルタ変異体を含む臨床検体の検出感度(文献 [1] より転載)

表2. 9種類の迅速抗原検査キット(Test 1〜9)のオミクロン変異体を含む臨床検体の検出感度(文献 [1] より転載)

最近報告されたロジスティック回帰モデル [16] に基づいて、検出限界の50%(ピンクの縦縞の点線)と95%(黄色の縦縞の点線)を決定しました(図1)。

図1. 9種類の迅速抗原検査キット(Test 1〜9)のデルタ変異体およびオミクロン変異体に対する50%検出限界および95%検出限界を示すロジスティック回帰モデル(文献 [1] より転載)

図1に示すように、テスト1(富士フィルム製)では、デルタを含む検体のLoD50(50%検出限界)とLoD95(95%検出限界)のRNAコピー数は、それぞれ1.19×10*6(=10の6乗)と7.03×10*7でした。一方、オミクロンを含む検体では、LoD50 値は 1.11×10*7、LoD95 値は 7.12×10*9 となりました。他のRATキットでは、テスト1よりも感度がやや高くなるものの、デルタ試料に比べてオミクロン試料の方が高いRNAコピー数が必要という同様の傾向になりました。唯一、テスト9では、デルタ試料ではLoD50が1.82×10*5、LoD95が3.02×10*6、オミクロン試料では1.94×10*5、3.41×10*6となり、同程度の良好な分析結果となりました。

全体を要約すると、LoD50においては、デルタでは1.32×10*5~2.05×10*6 RNAコピーとなり、オミクロンでは1.77×10*6~7.03×10*7 となりました。すなわち、RATで陽性となるには,デルタ型に比べてオミクロン型では10倍(LoD50)または101倍(LoD95)の高いウイルス量が必要ということになります。

RT-PCRのCt値<25のウイルス量が高い検体においては、オミクロン検体の陽性率は31.4〜77.8%でしたが、中程度のCt値(25〜30)の検体では、0〜8.3%に減少しました。すなわち、Ct値>25のPCR(オミクロン)陽性検体では、RATは実質機能しないということです。

2-2. 細胞培養で増やしたウイルスストックにおけるRAT感度

先行研究では、in vitroで増やした異なるウイルス株は、RAT感度が同等であることが示されています [3]。そこで、細胞培養によるデルタ株とオミクロン株のストックについて、並行的感度評価を行いました。デルタ株(GISAID 3233464)は、ヌクレオカプシドタンパク質にD63G、R203M、D377Yの変異を持ち、さらに一般に報告されているG215C変異を持ちます。オミクロン株(GISAID 7808190、BA.1亜系)は、P13L、del31/33、R203KおよびG204R変異を保有しています。

結果として、テスト1、5、8および9は、デルタおよびオミクロンのウイルス株を2.5×10^6 RNAコピーまで検出できましたが、他の5キットは感度が低く、陽性と判定するために最大で8倍以上のウイルス RNAが必要でした。興味深いことに、細胞培養で増やしたオミクロンはデルタに比べて、特にテスト2、4、6、7でわずかに検出率が高い傾向がみられました。

要約すると、この解析では、「in vitroで増やしたオミクロンとデルタのウイルスストックはRATによって同等の感度で検出される」という、先行研究の結果を追認するものでした。しかし,これは上記の臨床検体の評価とは明らかに異なり,ウイルス量が同程度のCOVID-19患者においては、実際、オミクロン感染の検出感度が低下していることが示されました。

3. 考察と意義

今回のドイツの研究 [1] の限界は,呼吸器スワブを採取した個人のワクチン接種状況、過去の感染症、症状またはCOVID-19の病期に関する情報がないこと、加えて研究の検査条件とポイントオブケア環境と異なることです。それらを踏まえた上で、この研究成果には二つの意義があります。一つは、もともと PCRに比べてRATの性能は劣るのですが、その感度は市販キットの種類によって大きく異なり、かつオミクロンにおいてはさらに感度が悪くなっていることを示したことです。もう一つは、組織培養で増やしたウイルス株のストックを検体とした場合と臨床検体を用いた場合とでは、感度の結果が異なることを示したことです。

臨床検体とウイルス株培養ストックとの間で、およびデルタとオミクロンとの間でRATの性能が異なる理由は、今のところ不明である、と著者らは述べています。その上で、以下のような4つの可能性を推測しています。すなわち、(1) 宿主の免疫反応によって引き起こされるウイルス誘発性細胞死または細胞溶解の程度が、呼吸器粘膜に見られるVOC特異的なヌクレオカプシドタンパク質のレベルに寄与している可能性、(2)COVID-19のウイルスRNAあたりのヌクレオカプシド比率がオミクロンよりもデルタで高い、(3) 組織培養ウイルスストックでは、より生理的な環境と比較して、ウイルスRNAに対するヌクレオカプシドタンパクの比率におけるVOC固有の差異が平準化される可能性、(4)COVID-19患者の特異的抗体反応が、ワクチン接種や過去の感染履歴で、RATのVOC特異的陽性率に異なる影響を与える可能性、という推測です。

一般に、高ウイルス量のオミクロン感染者は、市販RATキットによって確実に検出されると広く伝えられています。しかし、このような一般的な主張に根拠を与えるような公的機関の評価は、全てのRATキットについてなされていないし、通常のヒト−ヒト間の相互作用条件下で「本当に」感染性のある個人またはスーパースプレッダー候補のグループを確実に特定するということも、科学文献によって立証されてはいないと著者らは述べています。そして、感染力を増したVOCが出現する以前に、Ct値≧27の明らかなスーパースプレッダーが出現した例 [5] や、Ct値≧35の検体からウイルス培養した例 [6, 7] を挙げています。

実験的研究により、新しい宿主への感染には千個程度のウイルス粒子で十分であると推定されていますが、RATによる陽性スコアに必要なウイルス量は千倍以上にも及ぶとされています。予備的な報告によると、オミクロン感染者は、以前のVOC感染者よりもさらに少ないウイルスしか排出しない(少ないウイルス量で感染成立する)可能性があります。著者らは、大半のRATキットの分析感度の低さを考慮すると、オミクロンの臨床診断性能をさらに悪化させる可能性があると述べています。

モデリング研究によれば、感染者を識別するためのRATの感度の低さは、複数回の繰り返し検査によって補われる可能性があるとされています。これは、RATの「再校正された絶対感度」が約80%であるという主張に基づいていますが [8]、独立した実験室ベースまたはフィールド研究の大多数によって支持されていません。SARS-CoV-2迅速抗原検査の性能について、国際機関およびPaul-Ehrlich-Instituteが示した最低要件は、80%以上の総合感度および97%以上の特異度です。このことから、著者らは、これらの基準を満たさないRATは、直ちに市場から撤去されるべきである、と主張しています。

結論として、培養ウイルスストックを用いた in vitro 試験で、RATの臨床的性能の予測価値を求めることは疑問だということが述べられており、RATによるオミクロン感染の検出率低下に対する認識を高めると同時に、最低限の性能を満たす適切なRATのリストを速やかに公開する必要があるとしています。

おわりに

迅速抗原検査(RAT)がPCR検査に比べてかなり分析感度が悪いことは、当初から知られている事実です。問題は、市販のRATキットが数々のVOC変異体が出現する前に設計・開発されていることで、標的とするヌクレオカプシドタンパクに変異を有するVOCに対してはさらに検出感度が悪くなり、実用性に適うかという懸念でした(→ステルスオミクロン)。

今回の論文は、まさにこの懸念が現実のものとなっていることを示したということでしょう。オミクロン変異体については、RATは、Ct値>25となるようなウイルス濃度の検体については実質機能せず、それよりも濃度が高い検体についても、半分以上は見逃す可能性があるのです。現在、オミクロンBA.1/BA.2に対して、69/70欠失、L452R, F486V変異を有するRA.4、RA.5変異体も出現していますが [9]、基本的にRAT検出感度は同様に低いと考えられます。

これらの研究結果は、オミクロン変異体の感染初期においては、たとえ発症時においても、RATでは検出しにくいことを予想させるものです。実際、かなりの高濃度ウイルス排出量にならないと今のRATは機能しないでしょう。

日本でのSARS-CoV-2検査体勢は、海外と比べるときわめてお粗末ですが、RATの検査割合もかなり高く、東京都で言えば、現在全体の検査数の約3割を占めています。上述のように、RATは高ウイルス量のオミクロン感染発症者を検出しているだけの可能性があり、発症時までの見逃しは大きいのではないかと推測します。実際、RATは発症当日では陰性になりやすいと言われています。

RATはウイルス排出量が多い場合には検出できるので、社会活動で感染させないという使用目的には適うのではないかと個人的に考えてきました。実際、多数の人に会う仕事に向かう場合は、その度にRATで陰性を確かめてから出かけてきましたが、オミクロン流行になってからは、考えを改めるようになりました。

なお、日本の空港検疫では、PCRではなく抗原定量検査が用いられていますが、同様にヌクレオカプシドタンパクを標的としています。RATで起きている現象が当てはまるとするなら、オミクロン流行になってから、検疫での検出感度が悪くなっていることも考えられます。

引用文献

[1] Osterman, A. et al.: Impaired detection of omicron by SARS-CoV-2 rapid antigen tests. Med. Microbiol. Immunol. Published Feb. 20, 2022. https://doi.org/10.1007/s00430-022-00730-z

[2] Dinnes, J. et al.: Rapid, point-of-care antigen and molecular-based tests for diagnosis of SARS-CoV-2 infection. Cochrane Database Syst. Rev. 3, CD013705 (2021). https://doi.org/10.1002/14651858.CD013705.pub2

[3] Deerain, J. et al.: Assessment of the analytical sensitivity of ten lateral flow devices against the SARS-CoV-2 omicron variant. J. Clin. Microbiol. Feb. 16, 2022. https://doi.org/10.1128/jcm.02479-21

[4] Bekliz, M. et al: Analytical sensitivity of seven SARS-CoV-2 antigen-detecting rapid tests for Omicron variant. medRxiv. Posted January 17, 2022. https://doi.org/10.1101/2021.12.18.21268018

[5] Lin, J. et al.: A super-spreader of COVID-19 in Ningbo city in China. J. Infect. Public Health 13, 935–937 (2020). https://doi.org/10.1016/j.jiph.2020.05.023

[6] Liu, L.-T. et al.: Isolation and identification of a rare spike gene double-deletion SARS-CoV-2 variant from the patient with high cycle threshold value. Front Med. Jan. 6, 2022. https://doi.org/10.3389/fmed.2021.822633

[7] Singanayagam, A. et al.: Duration of infectiousness and correlation with RT-PCR cycle threshold values in cases of COVID-19, England, January to May 2020. Euro Surveill. 25, 32 (2020). https://doi.org/10.2807/1560-7917.Es.2020.25.32.2001483

[8] Petersen, I. et al.: Recalibrating SARS-CoV-2 antigen rapid lateral flow test relative sensitivity from validation studies to absolute sensitivity for indicating individuals shedding transmissible virus. Clin. Epidemiol. 13, 935–940 (2021). https://doi.org/10.2147/clep.S311977

[9] 国立感染症研究所: 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の変異株について (第16報). 2022.04.29. https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/11119-covid19-16.html

引用したブログ記事

2022年1月24日 ステルスオミクロン

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

治っていないコロナの病気を後遺症とよぶべきでない

2022.04.22: 18:24更新

今朝、日本経済新聞のウェブ版に目を通していたら、オミクロン変異体によるCOVID-19後遺症が若年層ほど重く 仕事と治療の両立の課題があることが記事になっていました [1]。そして、ツイッター上に、コロナ後遺症専門外来のあるヒラハタクリニック平畑医師の引用ツイートがありました。

当該記事 [1] によれば、を今年1~3月に訪れたオミクロン患者258人のうち、年代別では30代の29%と最多であり、次いで20代と40代がいずれも24%だったということです。主な症状としては強い倦怠感、息切れ、ブレイン・フォグなどであり、仕事を週半分以上休まなければならないほど重い人も30代で多かったということです。

私は、この問題の重要性もさることながら、日本の医者やメディアやいまだに後遺症とよんでいることに違和感をもっています。なぜなら、COVID後遺症の最初の論文報告があり、病気として再認識しようという動きがあり、long COVIDという名称が提唱されてからもう2年も経つからです(→"Long COVID"という病気)。この名称が提唱された理由の一つとして、後遺症と言葉でこの病気をよぶことは避けよう(つまり後遺症ではない)という意図があります。私はこれに関連して、以下のように引用ツイートしました。

世界保健機関(WHO)は、COVID-19の後遺症について "post COVID-19 condition"として「少なくとも2カ月以上持続し、ほかの疾患による症状として説明できないもの」と定義しています [2]。そして、long COVIDという名称も紹介しています。ちなみに現在確定した邦訳がないので、私は「長期コロナ症」とよんでいます。

Long COVIDの詳細なメカニズムは分かっておらず、確立した治療法もありません。しかし、最近の論文は、COVID-19患者が最初の症状から回復した後(検査陰性後)も長期間体内にSARS-CoV-2 [3, 4] やそのヌクオチドカプシドタンパク質 [5] を保持する例を報告しています。そして、これが long COVID の症状と関連があるのではという仮説も提唱されています(→SARS-CoV-2の消化器感染とLong COVID)。つまり、COVID-19は慢性疾患を起こす全身性感染症の可能性があるわけであり、long COVIDはその続きの神経症状を主とする病気であるわけです。

現在、COVID-19の治療費は感染症法に基づき国が負担していますが、long COVIDの治療は自己負担です。新聞記事 [1] は、「他の患者に症状をうつす可能性がなく、他の病気の後遺症と扱いの区別が難しい」との厚生労働省担当者のコメントを紹介していますが、勘ぐれば、あえて後遺症として区別することで国の関わりの負担を軽減する意図があるのではとさえ思えてきます。うつす可能性がなくなればCOVIDでなくなるという、言わば視野狭窄的な見解から厚労省も脱却すべきでしょう。

今日の週刊誌は、岸田政権がどうやら新型コロナ感染症の法律上の扱いをいまの2類相当から5類にする方針のようだということを伝えています [6]。国によるCOVID-19流行の制御・管理を外し、long COVIDも含めて、すべての受診、治療、ワクチンを自己責任・自己負担とすることで、経済活動をよりしやすくし、一方で国の責任を軽くするつもりかもしれません。

Long COVIDの人は、いま世界で1億人いると言われており、withコロナ戦略の下で進行する感染者増大に伴う労働者不足と生産性低下が大きな社会問題になりつつあります(→未来を変え続けるCOVID-19とwithコロナ戦略)。ここで、まだ終息が見えないパンデミックへの対策やlong COVIDの問題への対応を誤ると、国民の健康や国の労働生産性を大きく損なうことになる危険性もありますが、わが国にその認識はあるでしょうか。

2022.04.22更新

上記のように、政府は、新型コロナの法令上の扱いを現在の2類相当から5類に引き下げる意向のようだと書きました。しかし、22日の参議院本会議で、岸田総理は、野党側のこの質問(提案)に対して、「5類」に引き下げることについて、「現時点での変更は現実的ではない」との考えを示しました [7]

引用文献・記事

[1] 高橋耕平、亀田知明: オミクロン後遺症、若年層重く 仕事と治療両立課題. 日本経済新聞 2022.04.20. 23:03 (2022.04.21 5:43更新). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE041R70U2A400C2000000/?unlock=1

[2] WHO: Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition. December 16, 2021. https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/coronavirus-disease-(covid-19)-post-covid-19-condition

[3] Zuo T et al: Depicting SARS-CoV-2 faecal viral activity in association with gut microbiota composition in patients with COVID-19. Gut 70, 276–284 (2021). http://dx.doi.org/10.1136/gutjnl-2020-322294

[4] Natarajan, A. et al.: Gastrointestinal symptoms and fecal shedding of SARS-CoV-2 RNA suggest prolonged gastrointestinal infection. Med Published April 12, 2022. https://doi.org/10.1016/j.medj.2022.04.001

[5] Cheung, C. C. L. et al: Residual SARS-CoV-2 viral antigens detected in GI and hepatic tissues from five recovered patients with COVID-19. Gut 71, 226–229 (2022). http://dx.doi.org/10.1136/gutjnl-2021-324280

[6] 女性自身: コロナ5類引き下げで医療費が自己負担になる可能性. 2020.04.21. https://news.yahoo.co.jp/articles/9653b110c81ccd8f556ad3f3bc5730586adc5526?page=2

[7] TBS NEWS DIG: 岸田総理、新型コロナ「5類への変更は現実的ではない」 変異可能性や知事権限の制限理由に. Yahoo Japan ニュース 2022.04.22. https://news.yahoo.co.jp/articles/5259277a7842b8cbfc17f6345cfa7756dc1d2d12

引用したブログ記事

2022年4月18日 SARS-CoV-2の消化器感染とLong COVID

2020年10月12日 "Long COVID"という病気

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)