Dr. Tairaのブログ

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CDCの研究:COVID-19生存者の20%以上が長期症状を経験

米国疾病管理予防センター(CDC)は、最近、long Covid に関する大規模な研究の結果を発表しました [1]。Long Covid は、SARS-CoV-2の初感染後、急性症状の回復後に、数ヶ月またはそれ以上続く可能性のある一連の症状を表す用語です。ここでは仮にコロナ長期症状とよぶことにします。

今回のCDCの報告によれば、COVID-19生存者のなかで、65歳未満の5人に1人が、65歳以上の4人に1人が何らかのコロナ長期症状を発症しているとしています(下図)。

この報告のアブストラクトを翻訳して以下に示します。

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●このトピックについて、すでに知られていることは何か?

SARS-CoV-2への曝露および感染者が増加するにつれ、急性COVID-19後に持続的な症状や臓器機能障害を経験し、COVID後の発症患者の報告が増加している。

●この報告での新知見は?

COVID-19生存者は、肺塞栓症または呼吸器系疾患の発症リスクが2倍になる。18-64歳のCOVID-19生存者の5人に1人65歳以上の生存者の4人に1人が、以前のCOVID-19罹患に起因すると考えられる疾患を、少なくとも1つ発症している。

●公衆衛生対策への影響は?

コロナ長期症状の発生率と影響を減らすために、COVID-19の防疫戦略の実施と、COVID-19生存者におけるCOVID後の状態についての日常的な評価が非常に重要であり、特に65歳以上の成人について必須である。

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このCDCによる報告は、ニューヨーク・タイムズ、フォーブス誌などの米メディアに取り上げられ、わかりやすく紹介されています。このブログ記事では、ニューヨーク・タイムズの記事を紹介したThe Indian Expressの記事 [2] を翻訳して紹介したいと思います。タイトルは、”More than 1 in 5 adult Covid survivors in US may develop long Covid, CDC study suggests"「CDCの研究によれば、米国の成人Covid生存者の5人に1人以上がlong Covidを発症する可能性がある」

以下翻訳文です。

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米国疾病対策予防センターの大規模な新規研究によると、米国における65歳未満の成人Covid生存者の5人に1人が、コロナ長期症状(long Covid)と考えられる健康状態を少なくとも1回は経験していることがわかった。65歳以上の患者の場合は、その数はさらに多く、4人に1人である。

この研究論文の著者であるCDCのCOVID-19緊急対応チームのメンバーは、連邦保健機関がコロナ長期症状の問題をいかに深刻にとらえているかを示すために、「COVID-19生存者のCovid後の状態について日常的に評価する」ことを推奨している。

コロナ長期症状(long Covid)は、最初のコロナウイルス感染後、数ヶ月またはそれ以上続く一連の症状を表す用語である。研究者らは、心臓、肺、腎臓を含む多くの異なる臓器にCovid後の健康問題があることを確認している。また、血液循環、筋骨格系、内分泌系にも問題があり、消化器系、神経系、精神系の症状も確認されている。

65歳以上、65歳未満のどちらの年齢層でも、Covid患者は非感染者に比べて、肺塞栓症を含む呼吸器症状や肺の問題を発症するリスクが2倍であることがわかった。65歳以上のCovid後の患者は、腎不全、神経疾患、およびほとんどの精神疾患を発症するリスクが、若いグループよりも高かった。

VAセントルイス医療システムの研究開発主任で、セントルイスワシントン大学の臨床疫学者であるジヤド・アルアリ(Ziyad Al-Aly)博士は、この研究には参加していないものの、「この研究結果を見て、臓器機能障害の広さと問題の大きさを改めて認識し、気が重くなった」と述べた。

このCDCの研究では、約200万人の電子カルテを評価し、コロナウイルスに感染した人とそうでない人を比較している。Covid感染後に最も多く見られた症状は、年齢に関係なく、呼吸器系の問題と筋骨格系の痛みであった。

アル・アリは、この研究結果について、「潜在的には、何百万人もの人々が新たに糖尿病、心臓病、腎臓病、神経学的問題を抱えるようになる可能性がある。これらは生涯続く病態であり、確かに管理は可能だが、治るというものでもない」と述べている。

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翻訳は以上です。

筆者あとがき

コロナ長期症状については少しは理解していたつもりですが、発生率が20%以上というCDCの報告は、あらためて衝撃的です。CDCは、コロナ長期症状の発生とその影響を抑制するために、あらためて防疫戦略の立て直しが必要であることを述べています。つまり、急性の健康被害はもとより、コロナ長期症状を抑えるためには、感染しないことが重要だということです。

翻って日本の状況はどうでしょうか。コロナ長期症状の人がどのくらいいるのか、科学論文も公的な報告もありません。COVID-19については、もはや収束気味のような雰囲気すら感じられますが、もちろん全く終わっていません。いまなお、1日あたり数万人の新規陽性者と数十人の死亡者が出ています。日本は、防疫戦略については誠にお粗末の一言であり、ましてやコロナ長期症状抑制を目指した方針・戦略については皆無でしょう。オミクロン流行で最悪の被害を出した日本ですが、コロナ長期症状でも被害拡大しないことを望みたいものです。

引用文献・記事

[1] Bull-Otterson, L. et al.: Post–COVID Conditions Among Adult COVID-19 Survivors Aged 18–64 and ≥65 Years — United States, March 2020–November 2021. MMWR 71, 713–717 (2022). https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7121e1.htm

[2] Belluck, P.: More than 1 in 5 adult Covid survivors in US may develop long Covid, CDC study suggests. The Indian Express May 25, 2022. https://indianexpress.com/article/lifestyle/health/more-than-1-in-5-adult-covid-survivors-in-us-may-develop-long-covid-cdc-study-suggests-7935844/

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)