Akashi Taira Band
Akashi Taira Band
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
はじめに
岸田首相はCOVID-19の感染症法上の分類を5類に変更すること、これを5月8日から実施することを表明しました。そしてマスク着用についても個人の判断に委ねるとの考えを示しました。本来マスク着用は感染症法の分類にはない措置ですが、首相もメディアも、あたかも5類変更に伴う法的な措置のように伝えるのは不適切です。国民をダマすようなものでしょう。
5月19日からG7広島サミットが始まりますが、5月8日からの5類移行も脱マスクもこれに向けた政治判断と思わざるを得ません。加藤厚労大臣は「医療機関や地方公共団体での準備を考慮して」と発言しましたが、それなら6月からとか7月からとかもっと遅くてもよいはずです。そもそも現在パンデミック中であり、過去最悪の犠牲者数を記録している最中での5類変更は、愚行以外の何ものでもないでしょう。
マスク着用は感染制御のための有効な手段の一つです。とはいえ、あくまでの防御手段の一つであって、これさえやっておけば大丈夫というものではもちろんありません。その理解に欠けると「マスクをしても感染世界一、マスクに意味はない」という間抜けな詭弁が出てくるのです。
感染防御においては、手段を多層的に用いることが重要というのが、微生物・ウイルス制御、感染症制御学の昔からの基本的考えです。この考え方はハードル理論、バランス理論として知られており、リスク回避対策のためのスイスチーズモデル(Swiss cheese model) [1] と同様なものです。
1. ハードル理論、バランス理論とは
微生物やウイルスには食中毒や感染症の原因となるものがあります。これらを予防する(感染を防ぐ)ものとしてあるのがハードル理論です。図1にその概略を示します。この図は私が大学の微生物学の講義で使っていたスライドの絵です。
図1のモデル1は、食品中の微生物増殖を防ぐための抑制要因をハードルとして並べたものです。抑制要因として、加熱、低温、水分活性(Aw)、pHなどがあり、そのハードルの数が多いほど、微生物がそれらを越えて増殖する確率が低くなるということを表しています。
モデル2は、実際の加熱できない食品での例で、低温保蔵や水分活性では少しずつハードルを越えてしまうけれども保存料という要因で完全に防止できるということを示しています。
モデル3は、汚染レベルが低い食品の例で、その菌数が元々少なければ、抑制要因も少ない段階で防止できるということを表しています。
図1. 食品中の微生物制御のハードル理論.
一方、バランス理論は、微生物やウイルス制御の要素が多いほど感染リスクを回避できる確率が高くなる(安全性を高められる)というもので、基本的にハードル理論と同じ考え方です(図2)。これも私が講義で使っていた絵です。SARS-CoV-2で言えば、マスク着用、換気、手洗い、消毒、人混みの回避、行動制限、検査、濃厚接触者の隔離などの防御要素があります。
もちろん、一つ一つの防御効果には違いがありますが、重要なのはそれらが多層的に加わることでリスク回避の確率が格段に増すということです。一つの要素同士を比べて、こっちが優れているのでこっちはしなくてよいということにはならないのです。
図2. 微生物・ウイルス制御のバランス理論.
これらに似たものがスイスチーズモデルです [1]。マンチェスター大学のジェームズ・リーズン(James Reason)が提唱したリスク管理のモデルで、スイスチーズをスライスした時の穴を失敗や欠陥に見立て、穴の大きさや位置が異なる複数のスライスを重ねることで、結果としてその穴を塞ぐことができるという考え方です。すなわち、リスク回避の要素を多層的に加えることで安全性を確保しようとする考え方です。
スイスチーズモデルは、医療現場の安全はもとより、エンジニアリングやITセキュリティなど様々な分野における多層防御に応用されており、言わばリスク管理の基礎と言ってもよい考え方になっています。
2. リスク管理の基礎を欠いた政権や専門家
上述したハードル理論もバランス理論もスイスチーズモデルも、リスク回避要素を重ねることで全体のリスクを低減するということで共通しています。これが人の命、健康被害、大きな経済的損失、国の危機などに関わる場合には、たとえ不確定要素が多くても安全基準の幅を大きくとってリスク回避を確実なものにするというのが基本になります。
ところがこのリスク管理の基本的概念を欠いているのではないかと思われるのが、岸田政権や専門家です。いま日本はG7諸国の中では最悪の流行状況であり、この第8波で過去最多の死者数を記録しています(図3)。大部分が高齢者や基礎疾患を有する患者と言われていますが、実は60代以下の現役世代の死者数(全体の死亡の8%程度)も過去最多になっています。この事実は政府はもとよりメディアも全く伝えませんが、いま5類に移行するという、とても感染対策を緩和する状況にはないのです。
ちなみに日本以外のG7諸国の流行状況は、高齢化率と死亡率から考えれば、日本の第7波のピーク時と同程度と推測されます(図3)。日本のような明確な流行のピークはなく、ダラダラと流行が続いている状態です。日本のメディアはよく欧米は日常を取り戻していると伝えますが、COVID感染という点からはとてもそのようには言えません。人々はそれを知らないか、知っていても無視して生きているだけです。
感染症法による分類は、言わばハードル理論、スイスチーズモデルにおける大きなリスク回避要素であり、セーフティーネットになっている部分です。5類へ移行することは、主要なリスク回避要素がなくなり、セーフティーネットが外されるということです。脱マスクとなれば、この要素も無くなります。したがって、5類に移行すれば、より感染しやすい、よりCOVIDに罹患しやすい、よりlong COVIDを増やす社会になるということであり、それに対して政府や行政は法的に責任がなくなるということになります。政府には全くリスクマネージメントの概念がないと言えましょう。
専門家の中には、たとえば、アルコール消毒は無意味だから、あるいは効果が少ないからやめるべきとか、マスク着用の方が効果が高いと言っている人がいます。これも、上記のリスク管理の概念に欠けた言い方です。たとえば、専門家が「屋内マスク不要」で「感染爆発の恐れ」があるとするのは正論ですが、アルコール消毒よりもマスクの方が効果が高いとして、一つの対策に重みをつけるのは不適切です [2]。
SARS-CoV-2の主要な感染様式は空気感染(エアロゾル感染)であり、接触感染は稀です。だからと言ってアルコール消毒は不要とするのはリスク管理の面からは正しくありません。パンデミック下では医療ひっ迫を回避するためにあらゆる感染症を抑える必要があり、その面で接触感染で起こる感染症をアルコール消毒で予防することは重要なのです。さらに、固体表面をアルコール消毒することは汚染物のエアロゾル化を防ぐ(不活化する)という意義もあります。
おわりに
5類移行で感染制御のセーフティネットをなくす、さらに室内マスク不要とする制御要素を減らすことは、多層的手段が重要なリスク管理の面からは全く基本を欠いた愚行です。この感染制御のイロハを踏まえて報道しているメディアも皆無です。5類移行で政府や行政の責任も免除されるということも報道しません。
「マスクをしても感染世界一」という日本の現状は、感染制御のバランス・ハードル理論を踏まえない政府の当然の帰結なのです。いま2類相当のCOVID-19ですが、行動制限やその他の措置は一切されていません。実質運用上は5類扱いです。全くの放置状態ですから、マスクという一つの要素があっても、ウイルスは簡単にハードルを越えてやってくるわけです。
一方で、2類相当の分類で行動制限、濃厚接触者の隔離などの項目を残しておくこと、それに対する政府の措置責任を残しておくことは、いざというときの対処にとても重要なのです。5類にしてしまったら、たとえいま以上の流行が起こったり、強毒化したウイルスが流行ったときにも政府は何もしませんし、その責任も問えません。結局、5類移行で負荷がかかるのは医療従事者であり、損をするのは国民です。
引用文献
[1] Reason, J.: Human error: models and management
BMJ 320, 768 (2000). https://doi.org/10.1136/bmj.320.7237.768
[2] TBS東北放送:「屋内マスク不要」で“感染爆発の恐れ”東北大の専門家が警鐘「ウイルスの性質が変わらない限りは、制御不能に陥る可能性」2023.01.26. https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tbc/296357?display=1
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
はじめに
岸田首相は、1月20日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の分類について、現在の2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類へ引き下げることを表明しました。この春の実現について専門家による検討を要請しましたが、おそらく専門からどのような答申がなされようとも5類への引き下げを強行するでしょう。
この5月には広島でG7サミットが開かれます。5類への引き下げは、それに向けた下ならしという政治的意向があるのは明らかです。でなければ、いま第8波流行で過去最悪の被害を出している段階で、手綱を緩めるような5類変更措置に科学的合理性はありません。これまでのCOVID-19全死者数約6万5千人のうち、実に73%に当たる約4万8千人が岸田首相の在任中に亡くなっているのです。そして、第8波での死者数は現時点で約1万9千人と過去最多更新しています。この一ヶ月で実に8千人以上が亡くなっています。
政府分科会の尾見茂会長は、5類への見直しを「議論するべき時期」と語りましたが [1]、科学的にはその時期とは到底思えません。今から半年前にも盛んに2類→5類変更が議論されましたが(→打つ手なしから出てきた5類相当への話、「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること)その時にも「リアリティとして5類に動いている」と言っていました。
1. 5類になったらで語られていることー問題の矮小化と誤謬
テレビなどのメディアは、岸田首相の表明を受けて、いまの2類相当から5類に変更された場合のCOVID-19に対する措置の違いに焦点を当てて言及しています。ここで、以前のブログ記事(→打つ手なしから出てきた5類相当への話)で掲げた感染症の分類表を再度挙げます(表1)。
表1. 感染症の分類と措置
テレビでは、5類への変更のメリットとして、もっぱら濃厚接触者の社会活動の維持、一般病院への診療拡大をあげて報道しています。指定医療機関で診ている今の体制を一般病院に広げれば、医療ひっ迫を防ぐことができるとさえ言っています。
結論から言えば、一般病院に診療拡大で医療ひっ迫防止というのは全くの幻想であり、誤りです。理由は三つあります。
第一に、今発熱外来とオンライン診療で診ている体制(全医療機関の約50%)を一般病院全部に広げたとしても、2倍にしか広がりません。ほとんどが自宅療養を強いられている感染者の数は、5類になったとしても診療で収容できるキャパをはるかに上回ります。医療ひっ迫は偏に感染拡大が原因なのです。
第二に、コロナ診療の補助金があり、診療報酬が高めに設定された現時点においても、発熱外来が4割以下という現状は、一般病院の多くが実際に発熱外来仕様がとれない、感染者を病院に入れたくないなどの理由によるものです。5類になったらこれらの補助金、診療報酬はなくなりますので、一般病院による診療窓口が広がるという状況は考えにくいです。逆に経営上の理由から、受診拒否をする病院が増えるのではないでしょうか。
第三に、一般病院で広く受診できるようになっても、発熱外来対応をしない限り、院内感染のリスクが強まるということが挙げられます。医療従事者はもとより、持病やその他の病気があって来院する患者に容易に感染・伝播し、感染拡大し、むやみに犠牲者を増やすということが予測されます。院内感染が続発し、地域医療としての役目が果たせなくなる可能性があります。
以上のように、5類変更によって、感染症法の主旨である感染症まん延防止と適切な医療提供(後述)という大事なことが全く果たせなくなる可能性があるのです。日本には米国のCDCのような感染症制御と防止に関する司令組織がありませんので、感染症法がセーフティネットとして機能すべきなのですが、5類変更はそれに背く行為です。逆に法律の悪用とも言えます。
忽那賢志氏(大阪大学)は5類への変更のメリットとして、「濃厚接触者の社会活動継続」、「行政や保健所の負担軽減」、「新型コロナ診療への支出減」を挙げているように [2]、国民には一見メリットがあるような印象を与えます。しかし、これはセーフティネットという意味からは、国民にとってデメリットにもなるのです。表1のような措置を規定しているおかげで、政府にはそれを施す責任を生じます。しかし、5類になると、政府にはこれらの責任が一切なくなりますので、仮にウイルスが強毒化しようが、何人死のうが、政府は何もする必要がない、責任がないということが法律で保証されるのです。
現在、COVID-19は2類相当の扱いはされておらず、対策が緩和されるなどの法律の弾力的な運用が行なわれています。しかし、2類相当にしておけば、政府の対策・措置責任は維持されたままであり、国民は政府への責任をいつでも問うことができるのです。しかし5類ではそれはできません。
忽那氏は、最後には、いみじくも5類への引き下げは公的なセーフティーネットが外されて自己責任の社会になることであるとほのめかしています(以下)。
これまでは感染症法によって維持されていたセーフティーネットがなくなっても新型コロナによる犠牲者が増えないようにするためには、これまで以上に個人個人の感染対策が求められると言っても良いかもしれません。
2. 感染症法
メディアは、2類→5類変更について、措置そのものに対するメリット、デメリットの観点からのみ報道するばかりで、肝心の感染拡大防止の点でどのようになるかについては言及しません。さらに法律上の変更の話なのに、この法律の目的や理念に触れた場面には一切目にしたことがありません。ここでこの法律の目的と理念を見てみましょう。
感染症法は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の通称で、法律名が長いのでこの名称で呼ばれています。この法律の目的と理念は、前文、第一条、第二条に集約されています。
前文は以下のとおりです。
一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
この文を読むと、日本では過去感染症患者への偏見や差別があった反省を踏まえて制定されたものだということがわかります。患者の人権の尊重と適切な医療提供ということがこの法律の骨子です。COVID-19患者に当てはめれば、これを差別せず、適切な医療を提供するということです。
第一条には目的が書いてあります。
第一条 この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。
ここに明確に、感染症の予防、まん延防止、公衆衛生の向上ということが書いてあります。つまり防疫上の対策を施し、COVID-19の感染拡大抑制を行なうということであり、そのためのマスク着用などを含めて公衆衛生の向上を図るということです。
続く第二条には理念が示されています。
第二条 感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は、これらを目的とする施策に関する国際的動向を踏まえつつ、保健医療を取り巻く環境の変化、国際交流の進展等に即応し、新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう、感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し、これらの者の人権を尊重しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。
ここでも感染症の発生の予防及びそのまん延の防止というフレーズが並びます。同時に、国際的動向、環境の変化、国際交流の進展という言葉が並びますが、これはパンデミックとその対策を強く意識したものです。
ここで繰り返しますが、感染症法の主旨は以下のように要約されます。
1) 患者の人権尊重
2) 良質で適切な医療提供、
3) 感染拡大、まん延防止
4) 公衆衛生の向上
5) そのための為政者、行政の適切な対応・措置
おわりに
「5類への変更」は、メリット、デメリットに矮小化されて話が進んでいますが、本質は政治や社会が法律を蔑ろにし(自己都合に法律を変え)、自己責任の社会にするということに他なりません。そして、「どうせ死んでいるのは高齢者や持病持ち」という考え方は、法律の主旨から見えば、人権を無視し、究極的には優生思想的方向を許容するというものです。死亡の大半は高齢者というフレーズを繰り返し報道するメディアは、これを後押しするものでしょう。
COVID-19を致死率や重症化率でのみ語ることも法律の主旨を無視したものであり、そのことが感染拡大と死者数の増加を助長し、高齢者のみならず若年層の犠牲や、さらにはlong Covidの感染者を増やし、社会への悪影響を拡大しているということに気づかなければいけません。
引用記事
[1] 朝日新聞DIGITAL: 5類への見直し「議論するべき時期」 尾身氏、首相3人の印象も語る. Yahoo Japan ニュース 2023.01.21. https://news.yahoo.co.jp/articles/8629f689922a4b11bffc33aaa44d196fbf001174
[2] 忽那賢志: 新型コロナが5類に移行 メリットとデメリットは? Yahoo Japan ニュース 2023.01.23. https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20230121-00333694
引用したブログ記事
2022年7月31日 「コロナが5類引き下げになったら」で想像できること
2022年7月15日 打つ手なしから出てきた5類相当への話
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
日本で最初のCOVID-19感染者が確認されたのは2020年1月15日です。それからまる3年が経ちました。そして2年前の2月13日に最初の死亡者が出ています。当時のブログを振り返ってみると、国内で千人の感染者が確認されたと記していますが(→国内感染者1,000人を突破)、今から考えればこの数字自体かわいいものです。3年も経って、1日当たりの犠牲者数が最多になろうとは誰が予想したでしょうか。第8波全体としても過去最悪の被害状況になろうとしています。
図1に示すように、ここへきてなぜコロナ死者数が最多になるのか、それは偏に感染者の爆発的拡大によるものです。いまのCOVID-19の致死率は、第1波の約4%から1/40に下がっています。それにもかかわらず死者数が最多になるということは、致死率の低下をはるかに上回るだけの感染者の爆発的増加があるということになるでしょう。
そして、オミクロン変異体になってから感染力が格段に高まり、母数としての感染者数が著しく増えているのに、いまだに「COVID-19=肺炎」、「重症者=人工呼吸器、ECMO装着者」というイメージに拘泥していることが逆に対策と措置を誤り、むやみに死者数を増やしているとも言えるでしょう。つまり、入院基準が血中酸素飽和度で判定するようなデルタ波以前のままであって、重篤化しているのに入院を遅らせている現状があります。
したがって、高齢者と持病持ちがCOVID-19の死亡リスクが高い脆弱者であるにもかかわらず、自宅療養の過程で、あるいは医療にたどりつけないまま亡くなっているケースが非常に多いと思われます。やっと救急搬送されたとしてもすでに手遅れであっという間に衰弱して亡くなっていることもあるでしょう。だとすれば、これはある意味人災です。
図1. 人口比COVID-19死者数/日の推移(Our World in Dataより転載).
死者数増加に原因については「高齢者の死亡が増えているから」とか「合併症死が多いから」とか「“隠れ感染者”が多いから」とかいう声がテレビやウェブ記事を通じて聞こえてきますが [1]、全く本質的な答えになっていません。高齢者や基礎疾患を抱えている患者が死亡リスクが高いのは、第1波からずうっと同じです。常に死亡者の大半を高齢者と合併症の患者が占めているのです。
問題は、なぜ医療提供のキャパシティ以上に感染者が爆増しているのかということです。図1からわかるように波が訪れる度に死者数が増える傾向にあり、特にオミクロン変異体による第6波以降、死亡増加が顕著になっています。これは世界でも珍しいパターンと言えます。
日本とG7諸国の死者数の推移を比べてみればわかりますが、欧米ではパンデミック初期において対応が遅れ、医療崩壊を招き、多数の死者が出してしまいました(図2)。日本の第3波、第4波くらいまでの期間における高いピークがそれを現しています。しかし、オミクロン波になってからは、死者数が激減していることがわかります。日本とは対照的です。
欧米で過去と比べて死者数が激減したのは、ワクチン接種、自然感染率の増加に伴う免疫強化もあるかもしれませんが、医療アクセスに余裕があることが大きいと思われます。各国の知り合いの専門家に訊いた範囲で判断すれば、少なくとも高齢者が入院できずに、あるいは救急搬送が遅れて死亡するという事例は日本よりは少ないように思われます。それでも、いま人口比死者数で日本のレベルと同程度になったというところは注意が必要です。
図2. 日本および他のG7諸国の人口比COVID-19死者数/日の推移(7日間移動平均、Our World in Dataより転載).
G7諸国の流行状況をわかりやすくするために、昨年3月以降の死亡率の推移を拡大して図3に示します。各国は人口比で似たような死亡率であり、感染者数も人口比で同レベルであることが類推されます。しかし、現在、その中でも日本が(高齢化率が高いことを考慮しても)一つ飛び抜けた感じです。日本とアジア諸国と比べてみれば、その差はもっと顕著になり、中国を除けば日本の1人負けの状態になります(→第8波流行でまた最悪被害を更新か)。
図3. 日本および他のG7諸国の人口比COVID-19死者数/日の推移(2022年3月からの7日間移動平均、Our World in Dataより転載).
その中国でも直近1ヶ月の死者数が約6万人と報道されました [2]。真偽の程は別にしてこの数字で考えれば、同時期の人口比死亡率は日本の約半分です。実態はこれよりはるかに多いと思われますが、日本のテレビやその他メディアは、中国の感染拡大ばかりを強調して報道している場合ではないのです。
つまり、各国と比べてみれば、日本で感染者の母数が爆発的に増え、その分医療がひっ迫し、それに応じて死者数が増えている状況は、やはり政府の対応に問題があるのでしょう。日本で感染者数や死者数が増え、過去最悪の犠牲者数になっていることはやっとメディアでも取り上げましたが、アジアで1人負けになっていることは一切報道しません。
一方で、相変わらずのコロナ5類引き下げ論やここへきての屋内マスク不要論まで出てきています。どうやら、これらは日本での最悪の被害の印象を薄めるための政府主導のプロパガンダという感じがしてきました。もとより外遊を爛々気分で終えた岸田首相は、最悪の被害や感染対策には全く興味がないのでしょう。
引用記事
[1] テレ朝ニュース: コロナ死者急増 原因は…医師「合併症多い」 「全数把握」簡略化 “隠れ感染者”も? https://news.yahoo.co.jp/articles/0bcbaae926764f9b9ee9eaf6ebfb2668b69f9656
[2] Reuters: 中国、6万人のコロナ関連死を公表 批判のなか従来から大幅増. Yahoo Japanニュース 2023.01.16. https://news.yahoo.co.jp/articles/80ffa1039a0b4e6f3990914fe4dbbaf083577b3a
引用したブログ記事
2022年12月17日 第8波流行でまた最悪被害を更新か
2020年3月4日 国内感染者1,000人を突破
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
2023年を迎えました。新春早々には明るい未来について語りたいものですが、やはり気になるのはパンデミックです。1年前には「2022年を迎えてーパンデミック考」を記しましたが、ここでまたパンデミックについて簡単に考えみたいと思います。昨年の11月には「パンデミックの行方」について書いています。
思えば、1年前の全国の新規COVID-19陽性者は500人台であり、デルタ波以降の急速な減衰により、世の中には「コロナ終わった感」が蔓延していた時期でもあったように思います。しかし、その少し前からSARS-CoV-2の組換え体であるオミクロン変異体がヒタヒタと忍び寄っており、事実年を明けてから爆発的な感染拡大(第6波)となったことは記憶に新しいところです。
昨年夏にはBA.5変異体による第7波が襲来し、第6波を上回る被害(死者数最多更新)を出しました。そして現在の第8波ですが、またもや死者数最多更新がなされようとしています(→第8波流行でまた最悪被害を更新か)。事実、日毎の死者数では過去最多の400人超えとなりました。これから500人、1000人台となっていく恐さがあります。
マスコミはほとんど触れませんが、日本は、新しい流行波が襲来する度にCOVID死者数を最多更新している世界でも希有な国です(図1)。そして現在の死者数、人口比死亡率は世界でもトップクラスです(G7諸国のなかでは最悪)。
図1. 日本のCOVID死者数の推移(世界平均との比較、Our World in Dataより転載).
このように、なぜ日本ではCOVID死者数が増えているのでしょうか。死者数増加の要因について、厚生労働省アドバイザリーボードの脇田隆字座長は「説明は難しい」としたうえで、「感染者が増えることによって、医療への負荷が高まってきている」と話しています [1]。つまり、説明は簡単で、医療提供のキャパシティ以上に感染者数が増え過ぎてしまい、検査・治療の対応が遅れ、救急搬送困難事例も増え、いたずらに死亡事例を増やしているということなのです。
日本は高齢化率で世界トップクラスであり、致死リスクの高い高齢者の感染には特に気をつけなければならない国です。にもかかわらず、一切の規制がなくし、感染を野放し状態にしたことで容易に高齢者や基礎疾患を有する人への伝播が起こり、死者数を増加させている状況があります。高齢者だけではありません。いま30–60代の現役世代の死亡数もパンデミック期間で最多となっています。これもメディアは伝えません。
この背景には、ワクチンが普及することで病気が抑えられるという見通しの甘さ、およびオミクロンについて「症状は軽い」、「重症化率、致死率は低くなった」という、病気の質に偏った認知的錯覚があります(→コロナ被害の認知的錯覚による誤解)。実害は致死率と感染力の掛け算によって決まります。病気の致死率は低下しても、ウイルスは変異によってワクチン免疫逃避を繰り返し、その感染力は波を経るごとに著しく高くなり、結果として死亡の絶対数が増えているのです。
繰り返しますが、要するに、病気の重症化率・致死率の低下に拘泥し、mRNAワクチンに過大に期待するあまり、免疫逃避と感染力増強というウイルスの性質が忘れ去られ、医療提供キャパ以上に感染者数を増やして、救急搬送困難、治療困難となり、死者数を増やすということが波が来る度に繰り返されているわけです。この意味で、「感染抑制だけを目的にする時代は過ぎた」、「自主的な努力を」という政府分科会の尾見茂会長の発言は無責任極まりないと言えるでしょう。
mRNAワクチンの効果に関しては、接種者と未接種者との間でCOVID死亡の差がないことは、アドバイザリーボードの資料でも見ることができます(→オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?)。いま亡くなっている高齢者のほとんどはブースター接種者と思われます。憶測の域を出ませんが、ブースター接種を繰り返すことで、特に持病持ちの高齢者に悪影響が出ている可能性もあります。
これからパンデミックはどのように進むのでしょうか。おそらく新しいパンデミックの時代(第二段階のパンデミック)に突入していくと個人的には予測します。それは中国の「zeroコロナ策」の放棄からくる爆発的感染と、欧米各国の「withコロナ戦略」による流行蔓延から新しいウイルス変異体の循環が加速すると思われるからです。私は、先月、以下のツイートでこの懸念を示しました。
これから中国は大変になる。看板に傷など言ってられない。姿がよく見えない第二のパンデミックの始まり。https://t.co/l2LZzMRLyu
— Akira HIRAISHI (@orientis312) 2022年12月12日
ただ中国の健康と経済への被害拡大は不可避。これをエピセンターとして世界に波及する。mRNAワクチンによって回避できるというのは幻想で、中国政府が選択するわけもない。あくまでも感染対策よりも体制を守ることを優先した習近平政権の帰結。
— Akira HIRAISHI (@orientis312) 2022年12月13日
各国は早速中国からのウイルス流入について検疫強化の方針を示しました [2]。中国からは逐次ウイルスの遺伝子配列が提供されていますが、今のところBF.7型やBA.5.2型など、世界の他の場所で見つかった変異体とほぼ同じであり、懸念される新しい亜系統が出現したという情報はまだないようです [2]。しかし、それは時間の問題かもしれず、限られた情報共有の中で、知らぬ間に危険な変異体が国境を越えて流入してくるかもしれません。
同様な懸念は米国にもあります。米国ではいまBA.5に替わって広がっていたBQ.1、BQ1.1が、さらに感染力と免疫逃避能が高まったXBB.1.5に取って代わられようとしています [3](図2)。死亡数から見る限り、米国はいまCOVID流行が慢性状態にあり、中国同様、新しい変異体の出現と循環の巣窟になっている状態です。
図2. 米国の流行におけるオミクロン亜系統の割合の推移(文献 [3] より転載).
ちなみにBQ.1、BQ1.1は、日本の第7波流行を起こしたBA.5の亜系統です(図3)。一方、XBB、XBB.1、XBB.1.5は、第6波の亜流行を起こしたBA.2の亜系統です。
図3. オミクロン変異体亜型の無根系統樹(文献 [4] より転載).
これらのオミクロン亜型の出現によって、mRNAワクチン戦略も怪しくなってきました。このワクチンの利点の一つとして、いつ新しい変異体が現れてもその都度設計変更できるということが実しやかに言われてきましたが、もはやウイルスの進化に即応することは困難になりつつあります。
現在のB4、B5を標的とするブースター用ワクチンは、モデルナ社とファイザー社のパートナーシップによって設計されたものですが、その適用前にBQ.1およびBQ.1.1変異体が出現し、拡散しました。そしていま、XBB.1.5が頭角を現し始めています。ワクチンの商業性を考えると、これらの変異体の出現の度に設計変更することはほぼ不可能でしょう。
最近出版されたセル誌論文 [4] によれば、オミクロンのBQ亜型とXBB亜型は、現行のCOVID-19ワクチンにとって深刻な脅威であり、認可されたすべての抗体を不活性化させ、抗体回避の特徴から集団内で優占している可能性があるとされています。
日本や各国が進めてきた、ワクチン一本足打法に身を委ねて非医薬的介入を放棄したwithコロナ戦略ですが、どうやらmRNAワクチン戦略そのものが頓挫してしまった印象です。このウイルスはもはや制御不能で、社会に深く入り込み健康を蝕んでいく存在になりつつあります。
それにしても、日本政府、政府分科会、そしてメディアは、COVID-19を季節性インフルエンザ並みと見なし、ことごとく感染症法上の分類を5類に引き下げようとする風潮を作り出してきました。一方で、今回の中国からの入国者、帰国者の検疫強化 [5] は、この流れとは全く矛盾する動きです。5類引き下げの主張が、科学的データに基づくものではなく、政治的判断であったことを物語るものでしょう。つまり、エネルギーを要する感染症対策は放棄して経済優先していけばその方がはるかに楽であるし、それで日常が戻るという希望的観測、幻想に基づく判断です。
多くの日本国民は、これらの創られたコロナ収束感のなかで、あたかも日常が戻っているような錯覚に陥っているのでないかと思われます。年始の渋谷スクランブル交差点の騒ぎや初詣のにぎわいを見るにつけ、そう思わざるを得ません。現実には、各国の検疫強化に見られるように、これから始まろうとしている第二段階のパンデミックへの警戒感が高まっていると言えます。
引用文献・記事
[1] テレ朝news: コロナ死者420人 2日連続“最多更新”…死者数増加の要因「説明難しい」 Yahoo Japanニュース. 2022.12.30. https://news.yahoo.co.jp/articles/c3f25b9b58757d577c2bed55b5ecd35eb1cb685a
[2] Muller, M.: Covid-mutation risk drives rush to test travelers from China. Bloomberg 2022.12.31. https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-12-30/covid-mutation-risk-is-key-driver-behind-curbs-on-china-travel?leadSource=uverify%20wall
[3] Centers for Disease Control and Preventioh: COVID Data Tracker. https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions
[4] Wang, Q. et al.: Alarming antibody evasion properties of rising SARS-CoV-2 BQ and XBB subvariants. Cell. Published Dec. 13, 2022. https://doi.org/10.1016/j.cell.2022.12.018
[5] 読売新聞: 中国本土からの入国者への検疫強化、成田空港で始まる…結果が出るまで1~3時間. 2022.12.30. https://www.yomiuri.co.jp/national/20221230-OYT1T50133/
引用したブログ記事
2022年12月17日 第8波流行でまた最悪被害を更新か
2022年11月26日 パンデミックの行方
2022年9月4日 コロナ被害の認知的錯覚による誤解
2022年5月6日 オミクロンの重症化率、致死率は従来の変異体と変わらない?
2022年1月2日 2022年を迎えてーパンデミック考
カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)
日本はCOVID-19流行で世界各国とは異なる傾向を示しています。それは、第5波以降、流行ピークが来るたびに、過去最悪の感染者数と死者数を更新していることです。オミクロン変異体になってから、ワクチン接種の効果もあってかCOVID-19の致死率や重症化率(これは定義そのものが病態に合致していない)が低下しているにも関わらず、死者数が第5、6、7波と最多更新されているわけです。そして第8波でまた最悪を迎えようとしています。
私はもう何度となく、本ブログやツイッター上でこの最悪状況を指摘していますが、再々度、日本の犠牲者数の推移を見てみましょう。
図1は主にアジアの国々(主として東アジア諸国)と比べた死者数の推移(7日間移動平均)を示します。図2は同じ期間の死亡率(100万人当たりの死者数)です。日本は人口が多いので死者数も多く、日当り2百人台でアジアトップを走り続けていますが(図1)、人口比死亡率で見たとしてもいまアジア最悪です(図2)。図から分かるようにアジアで1人負けしているのです。
図1. 日本およびアジア諸国におけるCOVID-19死者数の推移(Our World in Dataより転載).
図2. 日本およびアジア諸国におけるCOVID-19死亡率(人口100万人当たりの死者数)の推移(Our World in Dataより転載).
では世界全体と比べた場合はどうでしょうか。例としてG7諸国と比べたのが図3、4です。世界で最も経時的死者数が多いのは米国で変わりませんが、日本はワースト2位(G7の中でも世界全体でも)につけています(図3)。一方、死亡率で見た場合にはトップに躍り出ます(図4)。世界と比べた場合には、高齢化率が高いフィンランド、ギリシャ、ポルトガルと肩を並べる状況ですが、いずれにせよ世界最悪の部類に入ることは間違いありません。
図1. 日本および他のG7諸国におけるCOVID-19死者数の推移(Our World in Dataより転載).
図2. 日本および他のG7諸国におけるCOVID-19死亡率(人口100万人当たりの死者数)の推移(Our World in Dataより転載).
図1–4から分かることは、いま日本はCOVID-19流行で世界最悪とも言える犠牲者を出し続けているということです。それにもかかわらず、政府も専門家は一切これを口にせず、マスコミも報道しません。
今日のテレビ番組「ニュースな会」でも、米中のコロナ事情や日本の2類→5類の論議、ワクチン接種などについて伝えていたものの、死者数については一切言及しませんでした。私はこれについて以下のようにツイートしました。
#キャスターな会 久住医師:ウイルスが弱毒化し重症化する人はほとんどいない。
— Akira HIRAISHI (@orientis312) 2022年12月17日
病気の質を含めて番組は中国、米国のコロナ対策、2類、5類、ワクチンの話に終始していて肝心なことが抜けている。
日本がいま世界トップクラスの死者数を出し続けていてアジア1人負けという現実。 pic.twitter.com/rMe26R0phn
日本では、もっぱら致死率や重症化率などの病気の質に関することでCOVID-19が論じられる(コロナを軽く見る)ことが多く、いかに被害や犠牲者数を最小化するかという視点に欠けています。被害を最小化するのに最も重要なことは、感染者の絶対数を増やさないことです。今のオミクロン変異体は、初期の頃のSARS-CoV-2に比べれば6倍以上も感染力があり、容易に感染拡大する要素をもっています。それにもかかわらず、感染防止が軽んじられ、そのためにむやみに感染者数を増やし、医療をひっ迫させ、死者数を増やしているのです。これが第6波から繰り返されています。
このような中、厚生労働省にCOVID-19対策を助言するアドバイザリーボード(脇田隆字座長)は、COVID-19と季節性インフルエンザは明らかに違う特徴をもった感染症で、感染症法上の2類→5類変更の条件を満たさないとの見解を示しました。これを伝えたウェブ記事 [1] の一部を以下に引用します。致死率と重症化率でCOVID-19対策を考える日本の傾向を批判しています。久々にこの専門家組織の真面な見解を聞いた気がします。
新型コロナウイルスは従来株が次々と変異し、感染拡大の「第7波」を起こしたオミクロン株は従来株と比べて重症度や致死率が下がった。このため「インフルエンザと同じようなものだ」との見方も出ていた。見解はこれに対し「(2つの感染症は)疫学、病態など多くの点で大きな違いが存在し、新型コロナのリスクをデータや最新の知見に基づいて評価する必要がある」とクギを刺した。
その上で「世界保健機関(WHO)は感染症のパンデミックの評価には感染力、疾患としての重症度のほか、医療や社会へのインパクトを分析することを求めているが、国内では致死率と重症化率だけで比較される場合が多く、リスク評価として不十分」と指摘。伝搬性について「当初からインフルエンザより高かったが、変異株の出現とともにさらに増大しており、インフルエンザとは大きく異なる感染症に変化している」と強調した。
日本の感染対策において、ウイルスの感染力とともに抜け落ちているのが、long COVID(長期コロナ症)のリスクです。これについても私はウェブ記事を引用しながら以下のようにツイートしました。
日本の感染症対策、感染症法改正の議論から、ウイルスの感染力とともに長期コロナ症(long COVID)がすっぽり抜け落ちている。 https://t.co/I7BU1ez6zT
— Akira HIRAISHI (@orientis312) 2022年12月17日
残念ながら、政府や政府分科会はパンデミック対策について「成り行き任せ」で進めています。全数把握もトレーシングも止めた現在、サイレントキャリアーを含めて感染者が爆発的に増え、医療をひっ迫させ、検査・診療が遅れ、それが大量の死亡に反映されてくること、死者数最多更新をすることは確実です。
尾見茂会長に至っては「感染抑制だけを目的にする時代は過ぎた」「自主的な努力を」とまで言い切りました [2]。つまり感染野放しで行くので、勝手に自分で対処しろというわけです。この言葉に象徴されるように、第8波の最悪被害更新はもう決まったようなものでしょう。実に情けなく、恥知らずで無責任の政府と分科会だと思います。国民の健康被害と死を何と思っているのでしょうか。
引用記事
[1] Science Portal: 新型コロナはインフルと違う感染症、と専門家チーム 2類から5類への見直し議論に影響も. Yahoo Japanニュース 2022.12.16. https://news.yahoo.co.jp/articles/919e9e3df74248b4464c3c047b0f3b5c6c2bd3e3
[2] TBS NEWS DIG: コロナ分科会専門家 年末年始に行動制限は求めず 尾身会長「感染抑制だけを目的にする時代は過ぎた」「自主的な努力を」. 2022.12.09. https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/226503
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
英国の日刊タブロイド紙ザ・サン(The Sun)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の起源について、史上最大の隠蔽工作が行なわれたとするオンライン記事を配信しました [1](下図)。これは、中国の武漢ウイルス研究所で働いていた米国の科学者アンドリュー・ハフ(Andrew Huff)博士のインタビューに基づいて書かれた記事であり、SARS-CoV-2は当該研究所から漏出した遺伝的改変体であって、米政府はこれを隠蔽してきたと主張しています。
ハフ博士はエコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance, EHA)の元副代表です。EHAは、45年以上にわたる画期的な科学技術を基盤に、野生生物を病気の発生から守り公衆衛生を維持することを目的としたNPO研究団体ですが、ウイルスの機能獲得実験を中国と共同で行なっていたことでも知られています。
1年ちょっと前、米国下院外交委員会の共和党トップであるマコール議員と同党スタッフは、SARS-CoV-2は武漢ウイルス研究所から流出した疑いがあるとする報告書を提出しました [2]。この報告書は、武漢研究所に研究資金を提供していたEHAの代表者であるピーター・ダザック(Peter Daszak)博士について、議会で証言させることを求めました。ダザック博士は、世界保健機構(WHO)が行なったウイルスの起源に関する中国調査の中心人物であり、研究所漏出説を否定するランセット誌記事 [3] に著者として名を連ねています。
今回のサン記事は、EHAの元副代表であり、武漢研究所で研究を行っていたハフ博士の証言に基づいているため、いくらか脚色されていることを差し引いても、証言には信憑性が高いと思われます。ここでこの記事を翻訳して紹介したいと思います。
以下翻訳文です。
題目:史上最大の隠蔽工作」私は武漢の研究所で働いていた-警告しようと試みてきたし、COVIDは研究所からの漏えいだと知っている('BIGGEST COVER-UP IN HISTORY' I worked with the Wuhan lab – I tried to warn them & I KNOW Covid was a lab leak)
武漢の研究所と緊密に研究を行っていた1人の科学者は、COVIDは遺伝子操作され、施設から漏れたものだと主張してきた。エコヘルス・アライアンス(EHA)の元副社長アンドリュー・ハフ博士は、史上最大の隠蔽工作の現場を目撃していたと語り、それは「9・11以来、米国インテリジェンスの最大の失敗」であると主張している。
武漢ウイルス研究所は、コロナウイルスを専門とする高度なセキュリティーをもつ研究所であるが、ある疑惑で台風の目になっている。それはウイルスが研究所から漏出したのではないかという疑惑だ。
中国当局と研究所の双方はいかなる疑惑に対しても激しく否定している。しかし、科学者、研究者、政府が疑惑への答えを追い求め、証拠を提出する中で、研究所漏出の証拠はこの2年間で積み重ねられてきた。数十人の専門家が指摘してきたことは、研究者の感染、不適切な廃棄物処理、あるいは現場のセキュリティ違反の可能性によって、武漢研究所からウイルスが漏出したかもしれないということだ。
報道によれば、世界保健機関(WHO)の責任者(テドロス事務局長)でさえ、ウイルスが「破滅的な事故」によって研究所から漏れたと信じているという。
内部告発者であるハフ博士は、彼の新著「武漢の真実(The Truth About Wuhan)」の中で、今回のパンデミックは、中国における危険なコロナウイルスの遺伝子操作研究に米国政府が資金提供したために起こったと主張している。
疫学者(ハフ博士)によれば、中国での機能獲得実験は粗末なバイオセキュリティ下で行われ、米国から資金援助を受けていた武漢ウイルス研究所からのウイルス漏出につながったと言う。
「EHAと武漢研究所は、適切なバイオセーフティ、バイオセキュリティ、リスク管理を達成するための適切な制御手段を持たず、最終的に研究所からの漏洩を招いた」と、彼は自著で述べている。
EHAは、米国国立衛生研究所(NIH)からの資金提供を受けて、10年以上にわたってコウモリのさまざまなコロナウイルスを研究し、武漢の研究所と密接な協力関係を築いてきた。ハフ博士は、2014年から2016年までEHAで勤務し、2015年から副代表を務めたが、米国政府の科学者としても研究プログラムの機密保持に関わっていた。
ミシガン州出身の陸軍退役軍人でもある彼は、EHAが武漢の研究所に「他の生物種を攻撃するコウモリコロナウイルスを改変するための既存の最善の方法」を長年にわたって教えていたと述べた。
「中国は初日からこれが遺伝子操作によるものであることを知っていました」と彼は話した。そして、「危険なバイオテクノロジーを中国に移転したのは、米国政府の責任です」と述べた。
サン・オンラインに対して、ハフ博士は「私は見たものに恐怖を感じました。私たちが行なっていることは、生物兵器の技術を彼らに渡しているに過ぎなかったのです 」と付け加えた。
この著者の中で、新興感染症の専門家は「貪欲な科学者が世界中で何百万人もの人々を殺した」と主張し、さらにアメリカ政府がそれを隠蔽したとまで言っている。
元諜報機関長官や外交官はすでに、ウイルスが武漢の研究所から流出したのは「世紀の隠蔽工作」であったと主張している。
ハフ博士は次のように述べている。「中国がSARS-CoV-2の発生について嘘をつき、あたかもこの病気が自然に発生したかのように見せるために異常なほどに尽力したことは、誰も驚くべきことではないでしょう」。「この中で衝撃的なのは、米国政府がいかに私たち全員に嘘をついたかということです」。
2009年、武漢の研究所はEHAと共同で、新興パンデミックの脅威に焦点を当てたPREDICTと呼ばれるUSAIDプログラムを開始した。PREDICTは、コロナウイルスを含む、パンデミックの可能性を持つ人獣共通感染症のウイルスを検出・発見するために設計された。
石正麗(Shi Zhengli)は、「バットウーマン」として有名になった武漢のウイルス学者であるが、このプログラムがパンデミックに対する早期警告システムを作り出すことを期待していた。
2014年、ハフ博士はこのプログラムに関わる資金提供の提案書のチェックを依頼された。ところが、その提案書はCOVIDの原因となるSARS-CoV-2を作り出す機能獲得実験のためのものだった。機能獲得実験では、ウイルスをより人間に感染しやすいように改良するものだが、その目的は研究者が科学的理論を検証し、新しい技術を開発し、感染症の治療法を見つけることである。
しかし、この危険な研究は、安全性とセキュリティの懸念があるため、多くの国で禁止されている。米国では、もともと2014年に禁止されていたが、2017年にNIHによって再導入された。
ハフ博士は、EHAが米国政府機関であるUSAIDの支援を受けて、武漢研究所と密接に機能獲得研究を行っていることを認識した。そしてすぐに、このウイルスが自然界では決して発生しないこと、さらに研究室でより強力な病原体として開発されてきたことに気づいた。
ハフ博士は、武漢で米国の資金援助を受けた機能獲得研究が行なわれ、ウイルスが遺伝子操作されたが、バイオセーフティが不十分であったために実験室から漏れたと考えている。「EHAはSARS-CoV-2を開発し、私が組織に在籍している間に、SARS-CoV-2という薬剤の開発を担当していました」と、彼は語った。しかし、中国が故意にウイルスを放出した証拠はないと指摘している。
ハフ博士は、米国が資金を提供したプロジェクトは、将来のパンデミックを防ぐというよりも、むしろ機能拡張や情報収集として「コロナウイルスをグローバルに探索する」ためのものであったと考えている。「当時、私はこのプロジェクトが科学的な研究開発というより、情報収集のように感じた」と彼は自著の中で述べている。
この科学者(ハフ博士)は、PREDICTプログラムは本来収集すべきデータを収集していなかったとし、「巨大な諜報活動」のように見えたとサン・オンラインに語っている。彼は、米国がこのプロジェクトを利用して、武漢ウイルス研究所を含む外国の研究所の生物兵器能力を見極めようとしていたと主張している。
●警鐘を鳴らす
2015年と2016年に行われたトップとの会議で、ハフ博士は、契約研究所のバイオセーフティとバイオセキュリティのリスクについて警鐘を鳴らしたという。「EHAが契約し管理する外国の研究所で何が起こっているのか、EHAが十分な可視性を持っていない、あるいは直接の知識を持っていないことを懸念していました」 と彼は述べた。
ハフ博士によると、米国政府当局は2018年1月に武漢の研究所について再び警告を発した。これは、致死的なコロナウイルスの研究を安全に管理するために必要な専門家が大幅に不足していることを含めての警告だった。「EHAは中国が失敗するように仕組んだと合理的に主張することができます」 と彼は述べた。
そして、2019年末にCOVIDが出現すると、中国、そして国務省、USAID、国防総省の米国政府の協力者の一部は、完全に隠蔽モードに入りました」と彼は話す。「2019年8月か10月に、米国政府がCOVID発生について警告されたと信じるに足る理由があります」。
彼は、2016年、「科学的な仕事とEHA全体に倫理的な懸念が多くあるため」としてEHAを辞めた。しかし、2019年末に突然、国防高等研究計画局(DARPA)の役職を提示された。しかも、その仕事には最高機密保持承認とポリグラフが必要だと言われたのだ。
今から思えば、これはCOVIDの起源について口止めするために働きかけられたと、ハフ博士は考えている。「私が思うには、政府内の人たちが私を危険人物として潜在的に認識したということだ。SARS-CoV-2の疾病出現現象が米国政府による国内外でのSARS-CoV-2の遺伝子改変のスポンサーの結果であることを肌で感じていたから」 と彼は自著で述べている。
「もし、私がその職を引き受けていたら、DARPAは制限された情報を私に開示し、その結果、私がこれまで、そして今ここでしているように、この情報の一切を公に論じることができなくなったのではないかと思います」。さらに、「パンデミックが始まり、SARS-CoV-2が人工物であることを断固として主張してから約1ヶ月後、私を採用する潜在的な動機とそのしつこさが何であったかに突然気がつきました」と彼は続けた。
「情報機関は、私が上級職でEHAを辞めた唯一の人間であり、政府の管理外で働いているという事実が、彼らの計画にとって脅威であることに気づいたのです」。ハフ博士は、政府関係者が彼にその役割を申し出たのは、彼が「一生沈黙を守ることを誓う」ためだったと考えている。
米国政府による大規模な隠蔽工作の疑惑を解明し始めると、当局は彼に対する大規模な嫌がらせを開始したと彼は言った。彼は、軍用ドローンがしばしば彼の家に現れ、スーパーマーケットでストーカーされ、未知の車両に尾行されたと述べた。
ハフ博士はその後、Renz Law LLCとともに、ニューヨーク州でEHAを相手取って訴訟を起こしている。
米国立衛生研究所は以前、「EHAが武漢で研究していたコウモリのウイルスが、COVIDの原因となる可能性はない」と議会への書簡で述べている。
アンドリュー・ハフ博士著「武漢の真実:私はいかにして歴史上最大の嘘を暴いたか」は12月6日に発売される。ハフ博士は、壊滅的なパンデミックは米国政府の資金提供の結果であると主張している。
翻訳は以上です。
筆者あとがき
これまで何度となく疑惑が取り沙汰されてきた、SARS-CoV-2は「人為的改変体」、「武漢ウイルス研究所漏出」の両説ですが(→新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える)、今回はEHAの元副代表であり、武漢研究所で実際に研究を行っていたハフ博士の言述とあって、信憑性が一気に高まってきました。中国も米国も絶対に認めることはないと思いますが、これから疑惑は益々深みを帯びていくでしょう。早速、ハフ博士の本を購読したいと思います。
それにしても、米中の共同実験における資金提供にはアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)博士が絡んでいるはずですが、さっさと引退して [4] トンズラするつもりでしょうか。
引用文献・記事
[1] Imogen Braddick, I.: 'BIGGEST COVER-UP IN HISTORY' I worked with the Wuhan lab – I tried to warn them & I KNOW Covid was a lab leak. The Sun Dec. 3, 2022. https://www.thesun.co.uk/news/20543847/wuhan-lab-warning-covid-lab-leak/
[2] 大島孝:「新型コロナ、武漢から流出」米共和党議員が報告書. 朝日新聞デジタル 2021.08.03. https://digital.asahi.com/articles/ASP832QM5P82UHBI02P.html?_requesturl=articles%2FASP832QM5P82UHBI02P.html&pn=5
[3] Calisher, C. et al: Statement in support of the scientists, public health professionals, and medical professionals of China combatting COVID-19. Lancet 395, E42-E43 (2020). https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30418-9
[4] BBC News Japan: ファウチ博士、12月に政府職を退任へ アメリカ感染症対策の「顔」. 2022.08.23. https://www.bbc.com/japanese/62642092
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
はじめに
COVID-19における罹患後症状(post CoVID-19 conditions)の一つとして、男性の生殖機能低下が懸念されています。SARS-CoV-2は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を通じて宿主細胞内に侵入しますが、ACE2は肺のみならず全身の臓器・組織にも見られるものでもあり、特に精原細胞、ライディッヒ細胞、セルトリ細胞に多く発現しています。そこから、精巣はCOVID-19の標的のひとつになり、男性の生殖に関する健康が損なわれる可能性が懸念されているわけです。
事実、ウイルスに対する炎症反応の結果として生殖腺機能が障害されることや精巣組織で発現する免疫反応が精子形成に悪影響を及ぼすことが示唆されています [1, 2, 3, 4]。COVID-19で死亡した男性患者群の部検では、一部に睾丸炎が認められています。このケースでは、精細管には精子細胞がほとんど存在せず、組織では炎症反応が亢進しており、セルトリ細胞の腫脹とライディッヒ細胞の減少が顕著な所見として示されました [5]。
COVID-19罹患患者の回復後において精子数が減少するという海外の報告については、1年以上前に、大阪大学医学部教授忽那賢志氏による解説記事もあります [6]。他方で、精子数、運動率、精子形態などの精子パラメーターに対する感染の影響については散発的な研究段階であり、その理解についてはより多くの研究が必要です。
今回、トルコの研究チームは、COVID-19を回復した男性群と感染歴のない男性群の比較的まとまった検体数について、4つの精子パラメーター(精液量、精子濃度、形態、総運動率)への影響を調べ、COVID-19感染者において精子濃度が低下することを報告しました [7](下図)。このブログ記事で紹介します。
1. 精子が減ることを示したトルコの研究
この調査研究 [7] は、トルコSBU保健省アダナ市研修研究病院で行なわれました。研究への参画に同意した20〜50歳男性(平均で31〜32歳)の患者群(COVID-19回復者)と対照群(非感染者)のすべてから精液試料が採取され、分析されました。研究チームは両群から100人ずつの被検者を選び、精子像を世界保健機構(WHO)の基準に従って分析しました。
その結果、非感染者群の精子濃度はCOVID-19陽性群のそれよりも有意に高いことがわかりました。具体的には、精子濃度値のメディアン値が非感染者で38.0、COVID-19患者で18.0(p<0.001)となりました。* そして、COVID-19患者群においては、100人中4人が無精子症であることが確認されました。
*筆者注:このメディアン値の単位は論文を読んでも不明
一方、精液量、精子の運動性と形態については、両群間に統計的に有意な差は検出されませんでした。これらの結果より、COVID-19が男性の生殖機能に悪影響を及ぼす可能性が示唆されました。従前の研究に比べてサンプル数が多いことから、精子濃度の群間差は有意であり、より確定的な結果になったと考えられます。長期的な精子濃度の変化や男性不妊にどのような影響を与えるかをより理解するために、今後、大規模なサンプルサイズについてのより長期的かつ包括的な研究が必要と思われます。
今回の研究では、COVID-19陽性者の中には無精子症も観察された一方、陰性対照群では、無精子症は一人も観察されませんでした。しかし、無精子症を認めた被験者の過去の精子に関する履歴が不明であるため、COVID-19の影響について明確なコメントをすることはできないと著者らは述べています。
2. 先行研究との比較
SARS-CoV-2が精子形成や男性生殖器系に悪影響を及ぼすとする先行研究はいくつかあり、今回の多人数の検体の研究も合わせて考えると、COVID-19男性患者において精子濃度が低くなることについては明白な事実のようです。しかし、それがCOVID-19による直接的影響なのか、それとも発熱症状がもたらすものなのかについては、まだよくわかっていないようです。発熱がもたらす精子パラメーターへの影響についてはインフルエンザにおいても知られています。
ある研究では、COVID-19の発熱自体で精子形成が阻害される可能性を指摘しています [8]。別の研究では、発熱を呈したCOVID-19患者の精子数は発熱のないCOVID-19患者よりも有意に低かったとしています [9]。さらに、ある報告では、COVID-19患者の精液にはウイルスは検出されず、精子濃度、運動率、形態にも有意差は認められないとしながら、COVID-19が精子パラメータを変化させる理由は、発熱や炎症反応の一時的な障害によるものと見なしています [10]。
もう一つの関心事は、COVID-19罹患後の発熱で精子数が低下したとしてもそれが一過性のものか、可逆的なものかということです。いくつかの先行研究では、COVID-19罹患の精液サンプルでは精子濃度が低いとしていますが、時間の経過とともに精子濃度が改善することを示しています。
たとえば、Mannurら [11] の研究では、正常精子数の男性がCOVID-19に罹患し、COVID-19陰性と判定された後の検査で精子欠乏症を認めたとしながら、罹患後135日目の分析では精子数、運動性は改善したことを報告しています。しかし、形態は奇形精子症の特徴を維持していたとしています。Guoら [10] は、COVID-19 から約 56 日後に回復した患者では、総精子数、精子濃度、運動性の進んだ精子の割合が対照群の患者より低いことが確認しましたが、約1ヶ月後に再検査をしたところ、精子濃度と運動率が上昇していることを認めています。
これらの結果から、COVID-19は精子の数と質に悪影響を及ぼす可能性がありますが、少なくとも精子濃度については可逆的であることが言えるようです。COVID-19による発熱が精液のパラメーターを変化させ、これらのパラメーターが元の状態に戻るには3ヶ月かかるとする報告があります [12]。
おわりに
今回のトルコの研究の意義は、まとまった数の男性患者を比較することで、COVID-19罹患が精子数の低下をもたらす(部分的には無精子症になる)ことを、ほぼ確実にしたことです。ただこの悪影響は、どうやら発熱による可能性が高く、数ヶ月すれば回復するということも示唆されています。とはいえ、精子の質(たとえば形態、DNAレベルでの損傷)へ及ぼす影響については、まだ分からないことが多く、この理解にはより大規模な検体についての研究が必要でしょう。
今のところ、SARS-CoV-2の感染そのものが精子パラメーターに影響がある可能性は小さいですが、懸念事項があるとすればmRNAワクチンの影響です。それはこのmRNA生物製剤が、ACE2受容体と結合するスパイクタンパク質をコードし、大量のスパイクタンパクの体内生産を指示しているからです。しかし、ファイザー/ビオンテックmRNAワクチン(BNT162b2)は、接種後6~14ヶ月という比較的長い期間において、いかなる精子パラメータにも影響を及ぼさないことが報告されています [13]。
話は少しズレますが、COVID-19やmRNAワクチンとの関係で言えば、男性の生殖細胞のレトロエレメント(逆転写酵素をもち、RNAをDNAに統合させる機能要素)の存在がより気になるところです。生殖細胞のエピゲノムやレトロエレメント [14] に及ぼすCOVID-19の影響、スパイクタンパク質mRNAのDNA統合などの可能性(→なぜmRNAワクチンのレトロポジションの可能性が無視されるのか)について精査していくべきでしょう。
それしても、コロナ感染で回復しても数ヶ月間は精子濃度が減少する(場合によって無精子になる)ということは、一時期であっても男性不妊の可能性が高くなるということを意味します。加えて、精子の質への影響についてはよくわかっておらず、遺伝的影響についてもまったく情報がありません。これは少子化が進む日本においては特に懸念すべき問題であり、長期コロナ症(long Covid)の面も考えると、若年層においては「コロナは風邪程度」とか言ってられない状況です。
引用文献
[1] Achua, J. K. et al. Histopathology and ultrastructural findings of fatal COVID-19 infections on testis. World J Mens Health. 39, 65- 74 (2021). https://doi.org/10.5534/wjmh.200170
[2] Temiz, M. Z. et al. Investigation of SARS-CoV-2 in semen samples. Andrologia. 53, 13912 (2021). https://doi.org/10.1111/and.13912
[3] Rajak, P. et al. Understanding the cross-talk between mediators of infertility and COVID-19. Reprod. Biol. 21, 100559 (2021). https://doi.org/10.1016/j.repbio.2021.100559
[4] Collins, A. B. et al.: Impact of COVID-19 on male fertility. Urology 164, 33-39 2022. https://doi.org/10.1016/j.urology.2021.12.025
[5] The impact of SARS-CoV-2 and COVID-19 on male reproduction and men's health. Fertil. Steril. 115, 813- 823 (2021). https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2020.12.033
, .:[6] 忽那賢志: 新型コロナは一過性の男性不妊の原因になるのか. 回復後に精子が減少するという海外の報告. Yahoo Japan ニュース. 2021.05.23. https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210523-00239323
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引用したブログ記事
2022年10月31日 なぜmRNAワクチンのレトロポジションの可能性が無視されるのか
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
2022.11.29更新
はじめに
前のブログ記事でも述べましたが、SARS-CoV-2のオミクロン変異体BA.5は感染力がきわて強く、基本再生産数(R0)は18.6と推定されています。これはオリジナルの武漢型に比べて約6倍、季節性インフルエンザに比べると実に14倍になります。このオミクロン変異体による空気(エアロゾル)感染のリスクが非常に高くなっていると考えられ、マスクなしでの、いわゆる「すれ違い感染 "fleeting infection"」[1] にも気をつけなければならないということでしょう。
1. 脱マスクキャンペーン
ところが政府は、COVID-19流行時において「あらたな行動制限はしない」という方針とともに、脱マスクキャンペーンを展開しています。厚生労働省は「屋外では原則マスクは不要」のフレーズをSNS発信を続けています(以下そのツイート)。
マスクの着用については、屋外では原則不要です。例外的に、近くで会話をする場合などでは着用が推奨されます。屋内でも、人との距離が確保でき、会話をほとんどしない場合は、着用不要です。基本的な感染対策はメリハリをつけて、マスクは場面に応じた適切な着脱に努めていただくようお願いします。 pic.twitter.com/rlTccusx7l
— 厚生労働省 (@MHLWitter) 2022年10月17日
第8波流行が始まって少しトーンダウンしたかと思いきや、昨日もこのツイートがTL上に流れてきました。
私は、この情報はリスクコミュニケーションとして、きわめて不完全であることを何回もツイッター上で指摘してきました。どこがマズいかと言えば、感染対策としてマスクに触れるなら、いつ、どのように着用するかを優先すべきであって、このように先頭にマスクを外そうのフレーズを示すことは誤ったメッセージになる可能性があるということです(マスクを外すことが優先事項ととられる)。また命と健康に関わるメッセージに、「原則」という言葉は使ってはいけません。いくらでもそれが拡大解釈、偏向解釈ができるからです。
そしてマスクを外せるのは周りに人がいないとき、感染者がいないときであって、屋外で外そうと一義的に言うことは、感染の機会を与えてしまう可能性があります。これを指摘したのが以下のツイートです。
マスクは周りに人がいない外せるのであって、一義的に屋外でマスクを外そうでは意味をなさないし危険。今の変異体の基本再生産数は原型に比べて6倍、季節性インフルに比べれば14倍程度だ。屋外でのスレ違い感染や人混みでの感染のリスクは多少なりともあり、そのリスク低下にマスク着用は合理的。
— AKIRA HIRAISHI (@orientis312) 2022年11月25日
屋外でマスク不要というキャンペーンが危ないのは、実際に屋外で感染した事例がいくつか報告されていること、それにいま非常に感染力を増したオミクロン変異体が世界中で循環しているという理由からです。しかるに、厚生労働省のパンフレットは、屋外で人同士がすれ違う時や運動をしている時などにはマスクは必要ないとしていますが [2](図1)、この指示はマズいと考えます。多くの自治体の感染防止マニュアルでも、厚労省と同様の指示になっています。
図1. 屋外でマスク着用が推奨される場面およびマスクが不要な場面(厚労省パンフレット [2] より).
実際に、屋外でマスクを外していて、緊密な接触なしで起こったクラスター事例を中国の研究者が最近報告していますので、ここで紹介します。
2. 屋外感染の事例
中国CDCは、重慶市の公園内におけるCOVID-19の屋外感染を報告しました [3]。患者ゼロ(Patient Zero)と呼ばれる男性1人が起点になって、多数の公園訪問者や作業員に二次感染させたという報告です。ここで、この報告の内容を簡単に紹介します。
これは監視国家である、いかにも中国ならではという方法で、クラスター発生が確認された事例です。患者ゼロは検査陽性となる前に倦怠感を発症していました。しかし、それにもかかわらず、発症の翌日(今年の8月15日)市内の公園に向かい、マスクなしでジョギング運動を行ないました。運動時間は35分間です。そして体調をさらに悪くし、当日PCR検査を受け、陽性判定を受けました。
当局は監視カメラの映像を利用して、ジョギングしていた患者ゼロの1メートル以内を通過した256人を接触者として特定しました。そしてこのうちの13人(5%)が、PCR陽性となりました。さらに、公園を訪れていた20,496人および清掃作業員が検査され、このうちの20人に感染していることがわかりました。つまり、患者ゼロは合計33人に集団感染の起点になった可能性が浮かび上がりました。これらの感染者発生の時間的経過を示したのが図2です。
図2. 重慶市公園内のジョギング男性(患者ゼロ)を起点とした接触者のPCR検査陽性事例の推移(文献 [1] より転載).
図1をよく見ると、一次的な広がり(8月19日まで)の後に二次的な広がりがあることを示唆しています。
一つの疑問は、これらの33人が本当に患者ゼロからの二次感染、三次感染によるものか、つまり、患者ゼロからのウイルスが伝播したものかということです。そこでCDCは、それぞれの感染者+公園以外の濃厚接触者6人についてウイルスのゲノム配列を解析しました。その結果、配列決定できた34例のうち、29例は患者ゼロと配列が完全に一致し、5例は変異を1つ持っていることがわかりました。検出されたウイルスはオミクロンBA.2.76でした。
今回の調査結果は、この患者ゼロがオミクロン BA.2.76に感染し、公園内をジョギングしている間に、33人の訪問者と二人の公園清掃員に感染させたことを示しています。重要なこととして、中国では屋外でもマスク着用が義務化されていますが、これらすべての人々はマスクをしていませんでした。全体としては、39人中38人(33人+公園以外の接触者6人)の感染者がマスクをしていませんでした。
一般的に屋外での感染リスクは室内よりも低下します。しかしながら屋外での感染を報告したいくつかの論文がすでにあります。今回のケースは患者ゼロが公園をジョギングしている間に、直接的な接触なしに感染を起こしたことを示しています。
屋外での感染の要因としては、ウイルスの感染力、暴露時間、暴露の頻度、人混みの程度、日光、気温、湿度、それにマスク着用等が考えられます。感染力で言えば、インドの事例で、BA.2.76とBA.2.75は他の系統よりも速く増殖することが知られています。
モデル研究では、ランナーは呼気の排出と吸い込み量の上昇でCOVIDに感染しやすく、感染させやすくなることがわかっています。患者ゼロは、ジョギングする一日前に倦怠感がありましたから、当日のジョギング時の荒い、深い呼吸で伝播性が上がっていました。患者ゼロは35分間ジョギングをしていましたが、この間、高濃度のウイルスが排出されたことは明らかです。33人の公園訪問者は朝のエクササイズ中であり、感染リスクが高くなっていたと思われます。さらに、運動時の激しくかく乱される空気の流れでより伝播の機会が高まったと思われます。
おわりに
政府や厚生労働省は、オミクロンで重症化率が低くなった、季節性インフルエンザに近づきつつあると言いながら、いまの2類相当の扱いから5類相当への引き下げを検討し始めました。もちろんこれは政府系専門家のアドバイスを受けてのことと思われます。一方で、感染力から見れば、SARS-CoV-2は季節性インフルエンザウイルスどころか、どんどんそれから遠ざかりつつあります。非常に感染しやすくなっているのです。
オミクロン変異体で感染力が高まっていること、そのために感染者数が爆増し、その分被害や高齢者等の脆弱者の犠牲者数が多くなり、第6波、第7波で過去最悪の犠牲者数を更新続けたことは記憶に新しいところです。脆弱者を保護し、犠牲を最小化することが感染対策の基本(ウィズコロナであっても基本)であるのに、最近の脱マスクキャンペーンと5類引き下げの検討は、これらの目標とオミクロン変異体の感染力を無視するような動きでしょう。
その意味で、中国での屋外でのスレ違い感染の事例は、安易な屋外脱マスクへの警鐘となっています。屋外でも、特に息が荒くなるような場所、呼吸が荒くなっている人とのマスクなしでの近接、すれ違いは気をつけた方がよいでしょう [4]。つまり、屋外でも状況に応じてマスクをした方がよいということになります。いまのオミクロン変異体は、以前のコロナと比べれは、感染力において格段に威力を増していることを再認識すべきです。
それにしても、今回の報告は中国だからこそできたことでしょう。日本ではこのような調査研究は、物理的にも、ヤル気の問題としても不可能です。調べもしないで、屋外感染はないことにしてしまっている日本の状況です。
2022.11.29更新
図1とそれに関する説明文を追加しました。文献を追加しました。
引用文献
[1] Graham, B.: New restrictions in Sydney after ‘fleeting’ infection in Bondi. News.com.au June, 18, 2021. https://www.news.com.au/world/coronavirus/australia/leading-epidemiologist-warns-that-sydney-is-in-trouble-as-cases-grow/news-story/056df3396661b74770d2b547e945766e#.01ia3
[2] 厚生労働省: 屋外・室内でのマスク着用について. https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf
[3] Qi, L. et al: An outbreak of SARS-CoV-2 subvariant BA.2.76 in an outdoor park–Chongquing Municipalty, China, August 2022. China CDC Weekly 4, 1039–1042 (2022) https://covid.dropcite.com/articles/0bda88cc-8aaf-4de6-94f2-4bd23ee5c036
[4] 西村秀一:「ほとんどの人が毎日使う」屋外でもマスクを着けたほうがいい"意外な場所" 「急いでいる人」は重症化リスク大. 2021.07.12. President Online https://president.jp/articles/-/47677?page=1
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)
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はじめにーコロナ収束の風潮
世界保健機構WHOの事務局長テドロス氏は、今年9月14日の記者会見で「パンデミックの終わりは見えている(The end is in sight)」と発言しました。同時に、パンデミックを終わらせることはできるが、すべての国、メーカー、コミュニティ、個人がステップアップし、この機会をつかむ場合にのみ可能だとも述べました [1]。
同時に、COVID-19の技術責任者であるマリア・ヴァン・ケルコフ博士は、ウイルスは依然として世界中で「激しく循環」しており、報告されている患者数は過小評価されていると強調しました。ウイルスが循環すればするほど、変異の機会が増えると警告しながら、一方では現在ではワクチンや抗ウイルス剤など有効な手段があるため、こうした将来の波が「大流行や死」につながることはないとも述べています [1]。
上記のテドロス発言の数日後、米バイデン大統領はCBSの番組で「パンデミックは終わった」と発言しました。しかし、直ぐにメディアから「違う、終わっていない」と批判されました(→パンデミックは終わっていないー米国メディアの論調)。松野官房長官は、バイデン大統領の発言に関連して日本はどうするつもりかと記者に問われ、パンデミック終了宣言をするつもりはないと回答しました。
日本のテレビは、海外の状況を紹介しながら、「誰もマスクをしていない」、「日常生活を取り戻している」という論調でコロナ収束気味の報道をしています。「コロナは季節性インフルエンザ並み」、「2類見直しで5類へ」というフレーズも相変わらずで、医療専門家さえ、この論調の先陣を切っている次第です。先日のテレビも、カタールのワールドカップでワクチン接種証明、陰性証明、入国時検査、隔離措置などが一切不要であることを報じていました。
一方で、日本では第8波流行が始まりました。海外でも同様で、ワールドカップの盛り上がりに消され気味ですが、実は流行は続いています(後述)。厚生労働省は第7波が減衰傾向になる頃から「屋外ではマスクは"原則"必要ない」という脱マスクキャンペーンをSNS上で始めました。しかし、第8波流行が始まると、今度は「マスクをしよう」という節操のなさです。
パンデミックが長引くことを望む人はもちろん誰もいないでしょう(例外があるなら、ひょっとして製薬メーカーと利権にぶら下がる人はあるかも?)。しかし、昨今の国内外の動きを見ていると、為政者の国民受け狙いと経済活動推進いう政治的意図や企業の商業主義の影響で、恣意的にコロナ収束への早道がつくられようとしている印象も否めません。規制解除は国民にとってもハッピーであり、この相互メリットで収束への流れが加速化している感もあります。
「コロナは終わった」「コロナは風邪、季節性インフルエンザ並み」というフレーズは心地よいですが、その願望や思っているだけではパンデミックは終わりませんし、何もしなければ実害は発生し続けます。パンデミック終了を宣言できるのはWHOのみです。その判断とタイミングの条件はCOVID-19が定常状態に入り(つまりエンデミックになり)、医療、社会・経済活動に影響を及ぼさなくなったときです。
1. パンデミックとエンデミック
パンデミックがこの先どうなるか、いつ収束するかということを考えるために、パンデミックとは何か、エンデミックとはどのように違うかをもう一度考えてみましょう。
パンデミックとは、感染症がグローバルに広がり(国境をまたいで拡散し)、同時多発的に被害が発生する状況をいいます。重要な点は、社会が病気の定常状態からかく乱状態に移行し、健康被害の発生はもとより、世界規模で医療提供体制や社会・経済活動に多大な悪影響を及ぼすということです。よく誤解されていますが、病気の重症度や致死率は一義的に重要ではなく、被害の範囲と規模がより重要になります。
わかりやすくするために、エンデミック(風土病)と比べてみましょう。エンデミックは以前の記事「エンデミック(風土病)の誤解」でも紹介しています。エンデミックはその発生が集団に対して定常状態ある場合(感染率が一定)の病気を言います。つまり弧発的、局地的(国内的)、あるいは季節的に「普通に」発生し、見かけ上増えもせず減りもせずという状態です。拡散性がなく、発生が予測範囲にあるので、医療提供体制がかく乱されることはなく、社会・経済活動にもほとんど影響がありません。
ただし、エンデミックの重症度や致死率が低いかと言えば必ずしもそうではありません。エンデミックの一つであるマラリアは世界で年間2億人以上が罹り、200万人が亡くなっています [2]。つまり致死率は1%近くになり、被害の規模も大きいです。結核で言えば、日本に限ると毎年約18,000人が発症し、約1,900人が亡くなっており [3]、致死率がきわめて高いです。しかも空気(エアロゾル)感染します。このために2類感染症に指定されています。
いまのオミクロン型COVID-19は、現在世界で1日約40万人が感染し、1日1500人が死亡してします。これと比べても、上記の二つのエンデミック感染症は致死率が高く、被害も大きいわけですが、社会がかく乱されることはありません。したがって、パンデミックとエンデミックを重症度や致死率などの、病気の質だけで(場合によっては被害の規模でも)比較することはあまり意味がありません。
エンデミックは発生の弧発性、局地性、季節性、非拡散性に加えて、発症による診断が明確です。もう一つの重要な要素として、治療・予防法が確立されているか、治療薬があるかということがあります。マラリアには特効薬があり、結核にはBCGという長期的に有効なワクチンがあります。いわゆる風邪には特効薬はありませんが、弧発性、非拡散性のためにパンデミックになることはありません。
一方のCOVID-19はきわめて拡散性が高い病気であり、グローバルに、短期間に大量の患者が発生します。これをもたらしている要因の一つのが、原因ウイルスであるSARS-CoV-2の高い感染力です。今のオミクロン変異体BA.5の基本再生産数(R0)は18.6 [4]で、オリジナル型(R0=3.3)の約6倍、結核菌(R0=〜4)[5] の約5倍、季節性インフルエンザウイルス(R0=1.3〜1.4 [異なる方法での算定値の平均] )[6] の14倍になります。そして、もう一つの要因が無症候性感染の発生であり、多くの無症状感染者が無自覚のまま広げ、集団発生(クラスター)の連鎖を生むという特徴があります。
つまり、高い感染力と無症候性感染がパンデミックを起こす大きな要因になっているわけです。そして、今なおパンデミック宣言が解除されない理由には、COVID-19は、若年層においてはインフルや風邪程度の症状でも高齢者など脆弱層については致死的になる病気であり、一度に大量の患者を生じて医療ひっ迫させ、社会を混乱に陥れるという点が考慮されていることは言うまでもありません。
逆に言えば、COVID-19が風邪程度のエンデミックであるならば、医療はひっ迫せず、1日何百人も死亡することはなく、パンデミックにもならないのです。個人や年齢に応じた病態の多様性とウイルスの感染力を考えれば、COVID-19は決して風邪ではなく、しかもSARS-CoV-2自体は変異を経るごとにどんどん感染力を増し、風邪ウイルスに近づくどころか逆の方向に進化し続けています。
COVID-19の治療法では、パキロビッド、ゾコーバのような抗ウイルス剤が出てきましたが、まだ一般的ではなく、特効薬というものでもなく、ワクチンに至っては長期的効力が無いという結果になっています。
2. COVID-19の認知的錯覚
繰り返しますが、COVID-19の病気の質(重症度や致死率など)だけに囚われていても、パンデミックの実態は見えてきませんし、収束への道も描けません。重要なのは、被害や犠牲が最小化され、医療ひっ迫(医療崩壊)がなくなり、社会が混乱しなくなるということです。
それにもかかわらず、専門家やメディアによるコロナ被害の「認知的錯覚」や「相対的窮乏の誤謬」が相変わらず繰り返され、特に全数把握がされなくなってから国民には今流行がどうなっているか、この先どうなるのか見えにくくなっています。認知的錯覚については先のブログ記事「コロナ被害の認知的錯覚による誤解」でも紹介していますが、ここで再度述べてみたいと思います。
地震、津波、台風など、災害での被害を表す場合には実数で示されます。何人被災したか、何人死亡したかという実際の数字で被害の大きさを表すわけです。人口何人あたり何人死んだかという死亡率で表すことはありません。それは被害の程度を言う場合や被害対策の立案にとって無意味だからです。
ところが、COVID-19の場合はしばしば病気の重症度や致死率という病気の質が強調されることによって、あたかも被害の程度が軽いかのような印象を与えてしまいます。これが認知的錯覚です。
致死率はウイルスの病毒性がどの程度であるか、脆弱層は誰かを見るのに重要な指標であり、とるべき感染対策へ影響します。また死亡率がどのように変化したかで対策の有効性を見ることができます。致死率が低下したとしても感染力が上がったり、対策が緩くなったり、間違ったりすれば、全体の被害としては変化がなかったり、むしろ大きくなったりします。
たとえば、第1波における致死率は4.2%ですが(→日本の新型コロナの死亡率は低い?)、波を経るごとにそれは下がり、第6波では0.20%、第7波では0.12%まで下がっています。実に、第7波では初期の3%にまで致死率は下がっているのです。では、実際に犠牲者数は第7波で減ったのかというとそんなことはありません。過去最悪の犠牲者数を出したことは記憶に新しいところです(図1中)。
被害の指標の一つとして死亡者数そのものを見るべきなのに、感染者数(図1上)と比べたために、その母数の大きさによって小さな相対比が導き出され、被害の印象が薄められるわけです。メディアや専門家は実によくこの認知的錯覚を起こし、日本のパンデミックが軽くなりつつあるような印象を一般人に伝えています(意図的ならばそれは詭弁になります)。
同じことは重症者数でも言えます。重症者数は暫定的な健康被害の一つではありますが、回復する場合も多いので、実害の指標にはなりえず、重症者用(ICU)のベッドがどの程度埋まっているかという医療ひっ迫の指標にしかなりません。ところが重症者数も、専門家やメディアによって、特にオミクロン以降へ減り続けていることが強調され、流行被害が大したことがない、パンデミックが収束に向かっているという印象を与えかねない状況になっています。この「重症者が重要」の先頭を切ってきたのが政府分科会の尾見茂会長です。
図1(中、下)に見られるように死者数(実害)と重症者数は関係がありません。これは人工呼吸器、ECMO装着の如何で重症者の定義がなされているためであり、直接肺炎を起こさず重篤化して死亡するオミクロンの実態に合わないことで起こっている現象です。
図1. COVID-19パンデミック期間における1日ごとの感染者数(新規陽性者数)(上)、死者数(中)、重症者数(下)の推移(NHK特設サイト「新型コロナウイルス」より転載).
COVID-19とインフルエンザの似ているところ、違うところ、両者の識別について認識することは患者の診断上は重要ですが、若年層の致死率などを比べて、COVID-19を軽めに評価する相対的窮乏の誤謬も相変わらず起こっています。ちなみに、世界を見渡してみても、その脅威において、COVID-19が季節性インフルエンザや風邪並みと言っている保健・公衆衛生当局はどこもありません。米CDCは、COVID-19と季節性インフルエンザの違いや前者の致死率がより高いことも明確に述べています。
COVID-19の重症化率や致死率が低くなったなら、その分被害・犠牲者数は最小化できなければ意味はありません。日本はまったく逆で、被害を最大化し、医療崩壊させたわけです。そこを無視しながら、今の流行を指して「重症化率は低い」、「致死率は低い」、「季節性インフルエンザ並み」という認知的錯覚、あるいは詭弁が専門家の間で見られることは、誠に嘆かわしいことです。専門家が行なうべきことは、重症化率や致死率が低い病気なのになぜ最悪の被害が出るのか、医療崩壊するのかに対しての改善への具体的提言です。
3. パンデミックの現状
図1(上、中)のように、日本は流行の波が来るごとに被害を拡大しています。これは欧米諸国と比べるときわめて対照的です。図2上に示すように、欧米(G7諸国)では、流行波を減るごとに死者数は激減しています。これは医療崩壊を起こした初期の波から、感染対策の徹底(マスク着用義務化など)とワクチン接種が進んだ結果と考えられます。
しかし、欧米ではワクチン接種とともにwithコロナ戦略に転じ、マスク着用義務化解除など全面規制緩和したおかげで、死者数の推移は下げ止まりになっていて、現在のオミクロン変異体の流行で比べれば、やっと欧米が日本と肩を並べる程度になっています(図2下)。この一ヶ月で見れば、依然として欧米の方が日本より死亡率が高いです。
図2. COVID-19パンデミック期間におけるG7諸国の人口比死亡率(上)の推移およびオミクロンBA.5流行以降の死亡率の推移(下、英国のデータは統計不備のために図示していない)(Our World in Dataより転載)。
COVID-19は高齢者層で致死率が高い病気です。したがって、高齢化率 [7] において日本(29%:世界1位)より圧倒的に低い欧米諸国(イタリア24%:同2位、ドイツ22%:同6位、フランス21%:同14位、英国19%:同30位、カナダ19%:同31位、米国17%:同39位)において、日本より死亡率が高いということは、図2で見えている以上に欧米での流行の程度ヒドいことがうかがえます。世界ではもはや全数把握がされていませんので、流行状況が掴みにくいですが、死者数から類推すればそうなります。
日本の被害が波を経るごとに大きくなっているのは(図1、図2上)、ウイルスの変異に伴って感染力が著しく高まっているのに、基本的に感染対策に変更がなく(ほとんど無策)、むしろ全面緩和されている結果だと考えられます。第7波から行動制限なしが始まり、旅行支援も行なわれています。高齢化率の高さも考えれば、いずれ日本が経時的死亡率においてG7諸国のなかでトップに躍り出ることは間違いないでしょう。
マスクについては、第4波くらいまでは効果的に機能していたものの、感染力が格段に高まったオミクロンでは容易に突破されるケース(不適切な着用、ウレタンや布マスクでの感染)が増え、低下した重症化率やワクチン接種という要素があったとしても、それを圧倒的に上回る感染者の絶対数増加で死者数が増えていると推察されます。
加えて、初期の肺炎に基づく重症化率に拘泥したために、軽症・中等症からいきなり重篤化するケースへの対応が遅れ、いたずらに死亡例を増やしているのではないかと思われます。
4. ウイルスの性質とパンデミックの行方
パンデミックがこの先どうなるか、それを占うのに重要な要素が4つあると個人的に考えています。一つ目はウイルスの変異、二つ目はワクチンの接種、三つ目は自然感染率、そして4つ目がウイルスの起源です。
COVID-19で厄介なのは原因ウイルスであるSARS-CoV-2がどんどん変異していくということです。主な変異の要因は宿主のRNA編集(APOBECシチジンデアミナーゼによるC→U変異)であり、いずれ C の枯渇が起こり、一定方向に収斂していく可能性があります(→新型コロナウイルスはどのように、どこまで変異するのか)。
しかし、感染力が非常に高くなっているために、進化の過程での病毒性の変化の閾値(致死率が高くともなお伝播が続けられる閾値)が高くなっており(強毒化への変化にまだ余裕がある)、どのように進化していくかは当面の間は予測困難です。事実、上述したように、「新型コロナは風邪ウイルスになる」という俗説とは裏腹に、感染力から見れば、どんどん風邪から遠ざる傾向にあり、制御困難になっています。
二つ目のワクチンの接種は、重症化や死亡リスクの低下には貢献したものの、パンデミックを非常に予測困難なものにしました。これまでの概念であれば、ワクチンによって集団免疫が達成され、感染症は収まっていくと予想できました。ところが、今回使われた主要ワクチンの実体は化学修飾mRNA製剤であり、免疫を抑制しながら抗原(ワクチン)となる特定のタンパク質(スパイクタンパク質)を合成し、中和抗体を誘発するというものです。
人類初のmRNAワクチンを導入しましたが、液性免疫は効果が持続しないことがわかりました。集団免疫を達成するどころか、スパイクコードmRNAはウイルスの免疫逃避の変異の促す結果となり、これも制御困難なものにしてしまった可能性があります。現実は、ボッシュ仮説(ボッシェ仮説とそれへの批判を考える)のとおりになってしまったと言うべきかもしれません。生物の免疫に関わる組織的なプロセスを考えずに、分子生物学上の局所最適化でのみ導入したため、予期できなかったあるいは未知の反応が関わることになり、接種を繰り返すことでリスク/ベネフィット比さえわからない状態になっていることは、最近の数々の論文の報告でもわかります。
三つ目の自然感染率は、自然感染が多くなれば従来の常識であれば一定期間集団免疫が形成され、その間に病気が収束していくはずという重要な要素です。欧米での感染者と死者数の減少傾向はそれを現しているかのようにも見えますが、獲得した液性免疫は持続性がなく、感染を繰り返すことが報告されています。
日本人も含めて感染者の多くはオミクロンに感染していて、その自然感染免疫の持続によって、いまは感染の伝播を遅く、低くしているようにも見えます。しかし、世界的に全数把握が機能していないので実際の流行波の程度はよくわかりません。死者数の推移から類推するしかないわけですが、通常遅れて出てくる死者数のカーブが、ほぼ新規感染者数と平行して立ち上がっている現状は、感染者数が過小評価されていることを示唆します。
自然感染の獲得免疫の同調性があれば、パンデミックの収束にはたらくことは想像できます。自然感染とワクチンによってハイブリッド免疫で抵抗性が強化されるという報告もあります [8, 9]。一方で、自然感染の繰り返しは死亡リスクや後遺症(long Covid、長期症状)のリスクを高めるという報告 [10] がありますし、適切に間隔をあけないブースター接種は、免疫システムに悪影響を及ぼすという欧州医薬品丁の警告も伝えられています [11]。
結局は、人類の過半数が自然感染しないと、しかもそれがより同調的に起こらないとパンデミックは収まらないかもしれない感もあります。1918年から始まったインフルエンザ(スペイン風邪)のパンデミックは3年以内で終息しましたが、今のCOVID-19はそれより長くなっています。グローバル化が進めば、たとえ近代的な検査技術やワクチン、治療薬があってもパンデミックを抑えることは難しいということでしょう。逆に遺伝子ワクチンの導入がそれを難しくしてしまったかもしれません。
最後のウイルスの起源に関しては、ある意味最も重要かもしれません。SARS-CoV-2は、コウモリやセンザンコウのウイルスに似ているものの、天然の宿主(中間宿主)がわかっておらず、従来のコロナウイルスにはないきわめて特徴的なゲノムと表現型をもっています。そこから、人為起源(人為的改変体がラボから漏出した可能性)が疑われているほどです(→新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える)。
特徴とは他のベータコロナウイルスのスパイクタンパク質には見られない、CGG-CGG(アルギニンーアルギニン)という配列とそれから成る多塩基性アミノ酸解裂部位(フーリン切断部位)をS1/S2境界にもつことです。しかもこの部位は核局在化シグナルモチーフを共有しており、スパイクタンパク質とそれをコードするmRNAが結合して核内に移行することが報告されています(→スパイクタンパク質とスパイクmRNAの核内移行)。こういうウイルスにとって誠に都合のよい配列と機能が進化の過程で生まれるものでしょうか?
もし、SARS-CoV-2が米中の機能獲得実験の過程で生まれたキメラウイルスだとすれば(半永久的に証明されることはありませんが)、自然淘汰を受けないで誕生したウイルスになり、根絶が不可能なことはもとより、近い将来にCOVID-19がエンデミック化することさえ難しいと思えてきます。宿主のRNA編集、一部のRNAポリメラーゼの複製ミス、組換え、それにmRNAワクチンや治療薬の選択圧が加わったキメラウイルスの進化の行きつく先は誰にもわからないでしょう。
おわりに
各国の保険担当部局の一致した認識は、COVID-19はいまだに脅威だけれども、ワクチンと治療薬、それに自然感染率の増加を盾に重症化、死亡のリスクは低下した、という上記のWHOのそれと同様だろうと思います。
重要なのは、オミクロン変異体に変わってから見かけ上の重症化率や病原性は低下しているわけですが、感染力は格段に上がっているので、その掛け算で全体の被害としてはこれからも続いていくことが予測されることです。世界各国の為政者はワクチンの導入と同時に、流行を制御することを諦め、それを放置するwithコロナ戦略に舵を切っています。為政者の政治的意図に同調して、「コロナは終わった、風邪並み」と思い込む国民のマインドはもはや止められず、感染対策強化への後戻りはできないでしょう。一度堰を切った水はただただ下に流れていくまでです。
しかし、このウイルスを制御できない現状においては、パンデミック収束の行方は混沌としています。ワクチン導入とwithコロナ戦略でもはやウイルスは人類社会の奥深く入り込んでしまい、エンデミックにはまだ遠い、感染が繰り返される状況がつくられてしまいました。人類は、終わりの見えないCOVID-19の自然感染と遺伝子ワクチンの接種で、次第に集団的な健康が蝕まれていくのではないかと懸念します。
そして、まさかとは思いますが、もしこれがメガファーマによって最初から仕組まれていた?あるいは何らかのハプニングでそれが予期せず早まったとするなら恐ろしいことです。
引用文献・記事
[1] WHO: The end of the COVID-19 pandemic is in sight: WHO. Sept. 14, 2022. https://news.un.org/en/story/2022/09/1126621
{2] 国立感染症研究所: マラリアとは. 2013.03.07改訂. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/519-malaria.html
[3] 政府広報オンライン: 日本では毎年約18,000人が新たに発症! 古くて新しい感染症、「結核」にご注意を! 2017.11.09. https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201509/3.html
[4] Esterman, A.: Australia is heading for its third Omicron wave. Here’s what to expect from BA.4 and BA.5. The Conversation July 4, 2022. https://theconversation.com/australia-is-heading-for-its-third-omicron-wave-heres-what-to-expect-from-ba-4-and-ba-5-185598
[5] 東京都福祉保健局: 医療機関における結核対策の手引. 2021年3月. https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/kekkaku/kekkakukankoubutu.files/iryoukikantebiki2021.pdf
[6] Nikbakht, R. et al.: Comparison of methods to estimate basic reproduction number (R0) of influenza, using Canada 2009 and 2017-18 A (H1N1) data. J. Res. Med. Sci. 24, 67 (2019). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6670001/
[7] GLOBAL NOTE: 世界の高齢化率(高齢者人口比率) 国別ランキング・推移. 2022.07.29. https://www.globalnote.jp/post-3770.html
[8] Crotty, S.: Hybrid immunity. Science 372, 1392–1393. https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj2258
[9] Hui, D. S.: Hybrid immunity and strategies for COVID-19 vaccination. Lancet Infect. Dis. Sept. 21, 2022. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00640-5
[10] Bowe, B. et al.: Acute and postacute sequelae associated with SARS-CoV-2 reinfection. Nat. Med. 28, 2398–2405 (2022). https://doi.org/10.1038/s41591-022-02051-3
[11] Anghel, I.: Frequent boosters spur warning on immune response. Bloomberg 2022.01.12. https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-11/repeat-booster-shots-risk-overloading-immune-system-ema-says
引用したブログ記事
2022年11月18日 スパイクタンパク質とスパイクmRNAの核内移行
2022年9月21日 パンデミックは終わっていないー米国メディアの論調
2022年9月4日 コロナ被害の認知的錯覚による誤解
2022年8月28日 新型コロナウイルスはどのように、どこまで変異するのか
2022年1月31日 エンデミック(風土病)の誤解
2021年8月14日 ボッシェ仮説とそれへの批判を考える
2021年8月5日 新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える
カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)