Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

Dr. Tairaのブログの閉鎖と新しいページへの移行について

5年前から書き続けてきた「Dr. Tairaのブログ」ですが、この度諸事情により、新しいページへの移行とともに閉鎖することにしました。新しいブログは「Dr. TAIRA のブログII」としてほとんどそのまま記事を受け継いだ形で公開しています。これまで見ていただいた読者の皆様方にはご迷惑をおかけしますが、以下のURLで引き続きご愛読の程よろしくお願いいたします。

https://drtaira.hatenablog.com/

なおこれまでのブログサイトは移行完了次第閉鎖の予定です。

メディアも政府も口にしないコロナに毎週人々が感染する

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2023/08/12/091317

 

下水データが示す第9波流行の動向

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2023/08/11/152854

 

少年たちを手なづけるためのアイドル帝国と性的虐待

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2023/08/09/133437

 

エリスとよばれるCOVID-19ウイルスEG.5.1がまん延

カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)

いま日本ではCOVID-19の第9波流行が拡大しています。その拡大の原因となっているのがEG.5.1変異体(通称エリス)です。このウイルスはいま、東アジア、ヨーロッパ、米国でも流行り始めていて、新しい流行の波として捉えられています。

今回、米国で発行されている経済誌ForbesにEG.5.1に関する記事が載っていました(下図)。「エリスと名付けられたEG.5.1の新流行、急拡大も? WHOがウイルスを監視下に」というタイトルの記事です。米国でこのウイルスによる再流行がどのように捉えられているのか、推し測るのに格好の記事だと思いますので、ここで翻訳して紹介します。

以下、筆者による翻訳文です。

          

EG.5.1の "EG"は 「たとえば 」という意味ではない。しかし、今拡散しているCOVID-19コロナウイルスのEG.5.1亜型は、ウイルスの脅威が続いている事実を無視しようとする人々がどれだけいようと、このウイルスが変異し続けることを示すまた新たな例である。

世界保健機関(WHO)は、2023年7月19日、EG.5#をまた新たなSARS-CoV-2の変異体として監視下変異型(VUM)リストに追加した。この場合、"#"はソーシャルメディアハッシュタグを意味するものではない。この特定のWHO VUMの#は、現在、EG.5で始まるウイルス亜型の「包括的な記し」としての役割を果たしている。しかし、今なお、あなたをCOVID-19や long COVID(長期コロナ症)してしまう可能性があるため、あなたはEG.5#の傘の下には立ちたくないはずだ。

さて、あたかも脚注のような名前やスター・ウォーズのドロイド、あるいはイーロン・マスクの子供のような名前を覚えるのは、けっこう難しいものだ。そこでこの1年、ソーシャルメディア上では、オミクロンの変異体や亜型を「アークトゥルス」や「クラーケン」といった独自の非公式な名前でよんできた。

これらの名前の中には、変異型にぴったり当てはまるものもあるようだ。カナダのオンタリオ州にあるゲルフ大学の統合生物学教授であるライアン・グレゴリー博士は、ツイッター(あるいはX、X-stasy、XXXなど、最近のツイッターの呼び名が何であれ)でEG.5.1亜型を「エリス」という名前で表現している:

ここに見られるように、グレゴリーはEG.5から派生したEG.5.1の系統について言及している。EG.5#の系統は全体として、以前の変異型のある種の"love child"セットだと思えばいいだろう。これはXBB.1.9.2とS:F456Lの両方の遺伝的特徴を持っている。

繰り返すが、エリスは決して正式な名前ではない。グレゴリーはウィキペディアのリンクで、エリスを 「太陽系で最も質量があり、2番目に大きい矮小惑星 」と説明している。最も巨大な矮星という表現は、「私の最も小さな筋肉を見て」と言っているように聞こえる。ウィキペディアの項目には、この準惑星は、2006年9月、グレコローマ神話に登場する争いと不和の女神エリスにちなんで命名されたとも書かれている。そう、SARS-CoV-2の亜型に「争いと不和」にちなんだ名前をつけるのは、COVID-19と過去3年間に起こったパンデミックが政治的に大きく取り上げられたことを考えると、面白いほど適切なように思える。

グレゴリーのツイートスレッド(Xのスレッド)は、「我々が知る限り、EG.5.1  [XBB.1.9.2.5.1] について特に特別なことは何もない」と述べている:

それは一見、EG.5.1変異体の感情を傷つけ(もしウイルスに感情があるとするならば)、そして、他の人に 「全てのウイルスが特別なもの 」と言わせるかもしれない。しかし、おそらくグレゴリーが言いたかったのは、EG.5.1がこれまでのCOVID-19とは異なるような、より多くの、あるいはより深刻な症状を引き起こしているようには見えないということなのだろう。

感染が拡大していることを考えれば、これまでの変異体よりも感染力が強いと思われる。EG.5.1は事実上、SARS-CoV-2の最も優勢な変異型の王座に座る「エリス」となった。

英国健康安全保障庁の推定によれば、7月20日現在、EG.5.1亜型は全COVID-19感染者の推定14.55%を占め、英国では1週間当たり20.51%の割合で増加している。米国では、疾病対策予防センター(CDC)のCOVID-19データトラッカーによると、EG.5亜型は、7月22日までの2週間では全症例の推定11.9%であったのが、8月5日までの2週間では17.3%に増加している。XBB.1.16を抜き、現在米国で最も流行している変異型である。

同時に、全米のCOVID-19の各種指標は上昇傾向にある。CDCのCOVID-19データトラッカーによると、7月22日までの1週間でCOVID-19による入院が12.1%増加した。また、全米の下水サンプル中のウイルスの存在も増加している。

もちろん、COVID-19については、いまや私たちの国は盲目的に飛んでいるようなものである。それまでの3年間、本当に、本当に悪いメガネをかけていたのとは対照的だ。報告されているCOVID-19感染者の数はあまり意味がなくなってきている。なぜなら、多くの人々が自宅で、PCR検査ほど精度の高くない抗原検査を行っているか、あるいはまったく検査を行っていないからである。自宅で陽性と判定された人のほとんどは、おそらく自分が感染していることを身近な人以外には伝えていないだろう。陽性反応が出たときに、当局や他の人にまで知らせることを期待するのは、Tinder*で人に 「はい、ドラマが好きです 」と正直に話すことを期待するようなものだ。

*筆者注:世界最大のソーシャル系マッチングアプリ

新しい変異体が出現して広まるたびにそうであるように、最大の疑問は、いわゆるエリス変異型がどのような影響を及ぼすのか、政治指導者はそれにどのように対応するのか、そして自分自身はそれに対して何をすべきなのか、ということである。

二つ目の疑問に対する答えは、単純に「強制的にせざるを得ない限り、何もしない」というものだろう。最初の疑問に対する答えは、おそらくこの晩夏におけるCOVID-19の上昇、あるいは急上昇であろう。あなたの周りでCOVID-19症例が増えることが予想される。

入院や死亡のリスクは、例年に比べて大幅に減少している。しかし、まだインフルエンザのレベルまで下がってはいない。さらに、SARS-CoV-2はインフルエンザウイルスにはないもの、すなわち、長期コロナ症のリスクをもたらす。

最後の3番目の疑問に対する答えは、適切なCOVID-19の予防措置を取り続けることである。あなたの周りの人々は、あなたが隠しカメラで彼らを監視し続けていない限り、適切な予防措置をとらないと仮定すべきだ。すでに言われているように、COVID-19の大流行は、人々が「注意深い 」という言葉に対しておよそ2,718通りの定義を持っていることを示している。最新の予防接種を受ける。こまめな手洗いを徹底する。ドアノブやカウンターの上、寝室に置いてあるジェイソン・モモアの胸像など、触れる機会の多い表面は清潔にし、消毒する。

公共の場では、できるだけ風通しの良い場所にいるように努める。これはズボンのジッパーを開けておくという意味ではない。むしろ、空気がどの程度循環しているか、場所によってどの程度空気が新鮮かを意識することを意味する。風通しの悪い屋内や、ウイルスを保有している可能性のある人と接触する可能性のある場所では、N95レスピレーターのような良質でフィット感のあるマスクの着用を考えよう。

だから、エリスが出現して広がったからといって、パニックを起こしたり、「争いと不和」とつぶやいたりすることはないのだ。前にも指摘したように、ディスコにいるか、ストライプと花柄のチェック柄を着ていない限り、パニックを起こすことは決して役に立たない。しかし、EG.5.1は、ウイルスが変異を続けており、依然として懸念があることを示す一例である。どのような変異体が出現し、どのような動きをしているのかを常に把握しておくことは、誰にとっても良いことなのである。

筆者あとがき

このフォーブス記事の筆者であるブルース・リー(Bruce Y. Lee)氏は、フォーブス誌のシニア寄稿者であり、ジャーナリストであり、ニューヨーク市立大学の教授(公共福祉・健康政策)でもあります。時には独特のアメリカンジョークや皮肉を交えた彼の論説は、今の米国がCOVID-19とどのように向き合い、識者がエリスの新しい流行に対してどのように考えているかを知るのにいい手助けになります。

翻って、日本にはこのような記事を書けるジャーナリストはなかなかいないと思います。多くは専門家のインタビューを基にした、その専門家の見解を紹介するような記事が目につき、その時点で色がついていることが多いと感じます。専門家の発言に対するメディアの検証能力も決して高くないことは、この3年間で明らかになりました。

COVID-19パンデミックを科学的見地から的確に捉え、ジャーナリズム精神溢れる記事がほしいところですが、いまはCOVID-19に関する記事自体が極端に少なくなっていて残念です。ジャーナリストの中でも「コロナは終わった」になっているのでしょうか。

最後に、エリスのようにSARS-CoV-2変異体の亜系統にニックネームをつけるのは、一般人にとってはわかりやすいとは思いますが、個人的にはいかがなものかと思っています。なぜなら、一つの亜系統のニックネームに拘泥することで、そこから派生する様々な亜型の(重要性の)印象が薄まるからであり、逆にウイルスが変異したときにその名称は意味のないものになってしまいます。ニックネーム自体が公式な名前だと誤解を与える可能性もあります(WHOが認めた名称ではない)。単なるEG.5.1でよいと私は思います。

引用記事

[1] Lee, B. Y.: EG.5.1 Nicknamed ‘Eris’ Is New Covid-19 Variant Spreading, Monitored By WHO. Forbes Aug.6, 2023. https://www.forbes.com/sites/brucelee/2023/08/06/eg51-nicknamed-eris-is-new-covid-19-variant-spreading-monitored-by-who/?sh=55c7c1835941

              

カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年)

歴史に学ぶ、コロナ後で起こること

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2023/08/04/132031

 

長期コロナ症が子どもに及ぼす精神的・心理的影響

この記事は以下のURLに移動しました。

https://drtaira.hatenablog.com/entry/2023/07/26/103414