Dr. Tairaのブログ

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COVID-19ワクチンとブレイクスルー感染:情報リテラシーが問われる

はじめに

いまパンデミックの最中にあって、欧米や日本で接種が進められているCOVID-19ワクチンは、mRNAワクチンが主流です。この核酸ベースのワクチンについては、以前から研究されてはいるものの、感染症のワクチンとして適用されたのは今回が初めてです。しかも従来のワクチン開発・実用化とは異なり、パンデミックという緊急性に鑑みて、短縮治験期間を経て緊急使用許可(EUA)されたという異例のワクチンです。わからないこともたくさんあります。

それだからこそ、さまざまな潜在的懸念材料もあって、一つ一つの課題について科学的に慎重に検討されるべきですが、どうやら接種のベネフィットが前のめりに強調されてきたために、ここへ来て、予見されていた問題がポツポツと露呈してきているとも言えます。

ワクチンに関するデマ情報も多く、各国政府や当局は注意を喚起しています。しかし逆に、日本の厚生労働省のように、常に無謬性に拘泥しエリートパニックを起こしやすい組織では、情報隠蔽や恣意的操作、詭弁と思われるような言動も見られます。そして、リスクコミュニケーションの欠落の上に、ワクチン推進派による逆インフォデミックという傾向さえ出てきています。

いま日本においてワクチンに関して最も誤解されているものの一つとして、「ワクチン接種を済ませればコロナに感染しない」というものがあります。mRNAワクチンはあくまでも罹っても発症しない、重症化しないという目的のものなのに、なぜ「感染しない」と一義的に置き替えられてしまうのか。それは国も自治体も専門家もそのようなニュアンスでワクチン接種を奨めているからです。

ここでは、いま感染拡大が顕著なデルタ変異体による感染状況、ワクチンの効果、ワクチン・ブレイクスルー感染(ワクチンの効果を突破して起こる感染)などに関するアップデートな情報を紹介しながら、ワクチンに関する情報リテラシーを上げることの大切さについて考えてみたいと思います。

1. 厚生労働省の見解

まずは厚労省がmRNAワクチンについてどのような見解で国民に情報を伝えているのか、ホームページから拾ってみたいと思います。ワクチンの効果についてはQ&Aとして感染症専門医忽那氏(現大阪大学医学部教授)による解説 [1] がありますので、それを引用しながら考えてみましょう。記載は6月30日となっていますので、約1ヶ月前です。

このページではmRNAワクチンの作用機序についてわかりやすく説明されていますが、気になる点としてmRNAやスパイクタンパクの消長に関する説明があります(図1注1)。mRNAや合成されたスパイクタンパクの行方や残存性についてはヒトの治験データがなく(あっても公表されておらず)、記載にある「接種後数日以内で分解、2週間以内になくなる」というのはあくまでも推測にしか過ぎません。

モデルワクチンの適正使用ガイドには、ラットに実験で臓器によっては接種後5日間mRNAが検出されたとされていますが、体内消長に関する研究論文はないようですし、スパイクタンパクの残存性に関する論文も私が知る限り1例しかありません(→mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出)。

接種後1年以上が経ってからの副反応は推定されていません」というのも意味不明です。1年以上経過後の副反応(副作用)はないと言っているのか、意図的に考えないと言っているのか、わからないと言っているのか不明です。1年後のことについてはデータがないので、誰にもわからないと言った方がすっきりします。少なくともmRNAワクチンの副作用に関連して、予見可能な問題(自己免疫反応など)はあります(→COVID-19ワクチン:免疫の活性化と課題mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出ワクチンとしてのスパイクの設計プログラムの可否)。

さらに「長期的な副反応は認められていません」と断定的に言うのも変です(図1注2)。今世界中でmRNAワクチンのいわば"人体実験"が行なわれているわけですが、実際の接種からまで1年も経っていないこの段階で断言はできないでしょう。

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図1. 厚労省HP: 新型コロナワクチンQ&A 感染症専門医が解説! 「分かってきたワクチンの効果と副反応」のページ1 [1].

図2注1には「感染を防ぐ効果も分かってきました」とありますが、これには注意が必要です。なぜなら、後述するように世界中でブレイクスルー感染が次々と起こっているからです。したがって、図2注2にある「接種者がその周り人に感染を広げる可能性は低くなる」ということも、半分聞き流す程度のものしかないように思います。ブレイクスルー感染者が無症状であれば、周りの人に感染させるリスクはあるわけですあり、むしろ非接種者にとって脅威となる可能性もあります。 

図2注3にある「自分の家族や周りの人を感染から守ることができるのであれば接種する意義は十分にある」という説明も、同様な理由で、誤解されやすい説明だと思います。つまり、冒頭にあげた「ワクチン接種を済ませればコロナに感染しない」という思い込みを誘導しかなねないメッセージになりやすいです。

現段階では、ワクチン接種は、あくまでも入院を防ぐ、重症化しない、死亡の可能性が低くなるという個人レベルでの意義を強調すべきでしょう。図2注4にある「感染予防効果」、「発症予防効果」も、時間経過とともに変わっていくことにも留意しなければなりません。

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図2. 厚労省HP: 新型コロナワクチンQ&A 感染症専門医が解説! 「分かってきたワクチンの効果と副反応」のページ2 [1].

今回のmRNAワクチン開発が行なわれていた当初は、疫学情報がまだ少ない段階であり、ウイルスの変異に関しては予測はされていたもののに知見はほとんどありませんでした。現在猛威を振るっているデルタ変異体とmRNAワクチンの知見の間には大きな時間的ギャップがあり、ワクチンの意義については、逐次修正していかなければならないのです。

特に「自分の家族や周りの人を感染から守る」というスローガンは、国によるプロパガンダ(インフォデミック)とも言えるものです。これは逆に「ワクチンを打ったら安全」という感覚を抱かせ、国民の公衆衛生対策を緩めることにもなりかねません。そして無症候性ブレークスルー感染者は、むしろ周囲の非接種者にとって脅威になるかもしれないことにフタをするものです。

デマに注意と言っている政府やワクチン推進者自身がデマを飛ばしていては洒落になりません。ワクチンを推進するのはよいですが、そのためにはリスクコミュニケーションを適正に行なう必要があります

2. デルタ株とブレイクスルー感染

ロイターは、最近のデルタ変異体の感染流行とワクチンについて、COVID-19とSARS-CoV-2の有力専門家10人から取材しました [2]。それによれば、ワクチンは依然として発症・入院や重症化防ぐ上で高い効果を持ち、リスクが最も大きいのはワクチン未接種者であるという点に変わりはないという見解でした。

しかし同時に、デルタ変異体の流行は、ワクチン接種済みの人への感染力が強いことを示す材料が増えてきており、そこからさらに感染が拡大するのではないかとの懸念が生じているという専門家の指摘を伝えています。

たとえば、この記事では英国、シンガポールイスラエルのブレイクスルー感染を紹介しています。

英国イングランド公衆衛生庁(PHE)は、7月23日、英国でデルタ変異体の入院患者3,692人のうち、ワクチン未接種者が58.3%完全接種者が22.8%だったと明らかにしました。

シンガポール政府が7月23日に発表した報告では、国内感染の大半をデルタ変異体が占めており、感染者の75%はワクチン接種を終えた人だったと報告されています。

イスラエルの保健当局は、現在COVID-19で入院している人の60%がワクチン完全接種者だと報告しています。その大半は60歳以上で、基礎疾患がある傾向も見られたとしています。イスラエルはワクチン接種が最も早くから進行した国であり、ワクチンの効力が低下している状況も鑑みて、3回目の接種に踏み切るようです。

一方で、世界で最も感染者と死者が多い米国の場合、新規感染者のおよそ85%がデルタ型ですが、これまでのところ重症者の97%近くは、ワクチン未接種者だと報告されています。

米国疾病予防管理センター(CDC)が公表している7月26日までのブレイクスルー感染の事例 [3] について表1に示します。1億6千3百万人のワクチン完全接種者のうち、6,587人が感染している(95%が入院)と報告されています。注目すべきは、この中で19%の高率で死亡者が出ていることです。ただし、死亡例の24%は無症状かCOVID-19による死ではないと判定されています。

表1. 米国CDCによるブレイクスルー感染の報告 [3]

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このように、1億6千万人のなかの7千人弱の入院患者ですから、一見ブレイクスルー感染率はきわめて小さいように思われます。ただし、これらの数字にはトリックがあることに注意しなければなりません。CDCのガイドラインでは、ワクチン接種を済ませた人の検査は、症状がない限り行わないとされていることから、ワクチン接種済みの人の感染をおそらく大量に見逃している可能性があるのです [4]

ジョージア州アトランタにあるエモリー大学のカルロス・デルリオ教授(医薬品・感染症)は、ワクチンの「感染予防効果」という過大評価を指摘しています。すなわち、ワクチンが最初に開発された時点で感染を予防できると考えた人はおらず、目的は重症化と死亡を阻止することだったはずだったということです。しかし、ワクチンの実際の効果が大きく、以前のいくつかの変異株の感染も防いでしまったせいで、かえって「われわれは甘やかされてしまった」とデルリオ教授は語っています。

このブログでも、4月2日の記事で、ワクチンの感染予防効果への過大な期待は禁物であることを述べました(→mRNAワクチンの感染予防効果)。

日本のメディアも、いま主流のワクチンであるファイザー製mRNAワクチンの有効性について、「感染予防効果39%に低下、重症予防は91%」という報道を行ないました [5]。米国ウォール・ストリート・ジャーナルは、COVID-19ワクチンが発症や入院を防ぐことはできるが感染を防ぐことはないという内容の動画を発信しています [6]

3. ワクチン接種済みの人が感染を助けている

ビジネス・インサイダーは「ワクチン接種済みの人がデルタ株の拡大を助けていることは疑いようがない」という専門家の見解の記事を配信しました [4]。この記事では以下の3点が強調されています。

・ワクチン接種を済ませた人は、デルタ変異体の感染が広がったとしても、重症化したり、死亡する可能性は低い

・しかし、2度のワクチン接種を済ませた人が無症状のまま、周囲にウイルスを広げる可能性がある

ホワイトハウスに助言をしている感染症の専門家は、ワクチン接種を済ませた人も引き続き、マスクを着用すべきだと述べている

記事では、COVID-19のワクチンは、身体をよりよく守るようデザインされており、非常に有効性が高く、それはデルタ変異体にに対しても同じだと紹介しています。しかし、感染を完全に防ぐわけではないとも述べています。

ワクチン接種を済ませた人の中には、ウイルスに感染し、頭痛や鼻水といった風邪のような比較的軽い症状を見せる人もいるし、感染しても自覚症状が一切なく、サイレント・​スプレッダーになる人もいるということです。

インサイダーの取材に対して、ワシントン大学医学部保健指標評価研究所(IHME)のクリストファー・マレー(Christopher Murray)所長は、「新規感染者数以上に入院者数が増えている州が複数ある」と答えています。そして、米国CDCのデータには、ウイルスの本来の広がりが含まれていない(覆い隠されている)可能性があると強調しています。

上述したようにCDCでは、5月からワクチン接種を済ませた人の検査は、症状がない限り行なっていませんので、ワクチン接種を受けた人たちの間の感染を大量に見逃している可能性があるわけです。

記事では、最悪の感染状況に陥っているスコットランドも例に挙げています。人口の半数以上が2度のワクチン接種を済ませていて、71%は少なくとも1度目のワクチン接種を受けているにもかかわらず、感染拡大が続いていることを伝えています。

このスコットランドの状況について、IHMEのマレー所長は、「ワクチン接種率の高さを考えると、接種済みの人たちが感染を拡大させる役割を果たしていないと、爆発的な流行を説明できない」と述べています。

NEJM誌に最近掲載された論文は、ワクチン完全接種済みの医療従事者のブレイクスルー感染の事例について報告しています [7]。それによれば、感染症の発症は感染前後の中和抗体価のレベルと相関しており、持続的に症状が続くこともあったが、ほとんどは軽度または無症状であった、としています。

つまり、ワクチン完全接種の人たちのほとんどは感染しても気づかず、したがって検査もされず、他の人にウイルスを伝播させる可能性もあるということです。しかし、このような懸念に対しては、まだ本格的な調査は始まったばかりです。

日本においては、このような調査は皆無であり、ブレイクスルー感染の実態についてはよくわかっていません。最近、ワクチン接種済みの主に医療従事者を対象としたブレイクスルー感染の予備調査の結果(130例)が、国立感染症研究所から発表されたばかりです [8]

若者による感染拡大が強調されていますが、ひょっとするとワクチン完全接種者の高齢者は、感染しても多くは無症状であり、同様に感染を広げている可能性もあります。

3. ウイルスの感染拡大と免疫逃避 

ビジネス・インサイダーは、また、「あとほんの数回の突然変異で」今あるワクチンから逃れる恐れがある可能性があるという専門家の見解を記事にしました [9]。これは、米国CDCのロシェル・ワレンスキー(Rochelle Walensky)所長が7月27日の記者会見 [10] で述べた見解です。この記者会見では「(ワクチン完全接種者でも)室内ではマスク着用を奨める」ことも述べています。規制を緩めた米国ですが、再度マスク着用などの行動変容の規制に踏み切るようです。

ウイルス進化の常識で言えば、感染者が増えれば増えるほど、ウイルスが複製されるチャンスが多くなり、それだけ変異ウイルスが生まれるチャンスも高まります。変異はランダム変異であり、その多くは公衆衛生上ほとんど影響はないものの、感染が広がれば、新しい危険な変異型が生まれるチャンスも高まります。今は感染力の強いデルタ変異体の影響もあり、世界中で感染流行が拡大し、その危険性は大きくなっているわけです。

記事では、デルタ型に感染した人はワクチンを接種しているかどうかにかかわらず他のSARS-CoV-2の従来型に感染した人よりもウイルス量が多いとCDCが発表したことを伝えています。これはつまり、ワクチン接種を済ませた人でも、ワクチン未接種の人々と同じように周囲にウイルスを広げる可能性があるということです。

記事では、ペンシルベニア州立大学で感染症の進化を研究しているアンドリュー・リード(Andrew Read)氏が、インサイダーのインタビューで「目下最大の懸念は、非常に多くの人々がウイルスを持っていて、非常に多くの変異株が生まれていることだ。その一部は強力で、デルタ株よりも強いかもしれない」と語っていたことを紹介しています。

今のところ、昨冬インドで最初に確認されたデルタ変異体以上に懸念されるSARS-CoV-2の変異株は見つかっていません。世界保健機関(WHO)は6月、デルタ株をこれまでで「一番強い」変異株だとよんでいます。リード氏はさらにその感染力を高める変異が起こる可能性もあると指摘していて、これを「デルタプラス」株と呼んでいることを記事は紹介しています。

ウイルス学者たちは、私たちが作り上げてきた免疫防御をすり抜ける変異株を「エスケープ変異株」と呼んでいいます。ウイルスが急速に広がり、変異し続ければ、こうしたエスケープ変異株はすぐに現れる恐れがあると、ケンブリッジ大学微生物学を専門とするラビンドラ・グプタ(Ravindra Gupta)教授はインサイダーに語っています。

日本では、感染対策と経済活動の両面から考えて、感染者数よりも重症者数を重視すべきという意見がチラホラ見られますが、上記のように感染者数が増えること自体が、変異ウイルスの出現を促すということでも非常にマズいわけです。加えて、ワクチンが選択圧となって、免疫逃避、エスケープ変異株の出現を促す可能性もあります。 

4. ワクチン接種の同調圧力

上記のように、デルタ変異体による感染やブレイクスルー感染の事例が次々と明らかにされている状況ですが、日本のワクチン接種の戦略はいまだに1年前の段階で止まっているように思えます。すなわち、感染状況、年齢別などのリスク・ベネフィット比も考えずに、「ワクチンを打てば感染が抑えられる」という曲解した認識1本槍で、政府、自治体、および医療専門家が進めているような感じを受けます。

医薬経済社の記者である長谷川友恵氏は、若い人や子供に対してワクチン接種を奨める風潮への疑問を呈しする記事を書いています [11]。これは「全国薬害被害者団体連絡協議会」の勝村久司・副代表世話人に対してのインタビュー記事であり、リスクとベネフィットを十分に知ったうえで慎重に判断すべきであるという、ワクチン接種至上主義に警鐘を鳴らす彼の声を紹介しています。

勝村氏は「社会が新規感染者数を減らしたいということにこだわりすぎているからではないか。もし、毎日、大きく報道される数字が新規感染者数ではなく、重症患者数ならば、若い人へのワクチン接種を急ぐ必要はないだろう」と述べています。

また、「家族やマナーを大切にしたいならば接種すべき」といわんばかりの同調圧力もあり、若い人たちが冷静に判断できる環境なのか、非常に疑問を感じているとも語っています。

私は、勝村氏による「新規感染者数を減らしたいということにこだわりすぎている」という主張には必ずしも賛同できません。なぜなら、新規感染者数が増えればそれだけ重症者数も死亡者数も多かれ少なかれ増えること、次の感染拡大への下地になること、ウイルスの変異も促進されることを考えれば、感染者数はできる限り抑えた方がよいからです。

ただ、「家族やマナーを大切にしたいならば接種すべき」といわんばかりの同調圧力という彼の指摘は、正論だと思います。

4. ワクチン推進コミュニティのいかがわしさ

厚労省や周辺のワクチン推進派のいかがわしさは、パンデミック当初から彼らが日本で起こしたインフォデミックにあります。すなわちPCR検査抑制論に伴うPCR検査の"低い精度"という誤ったメッセージです [12]。そして、感染力が強いデルタ変異体がまん延しているにもかかわらず、今なお空気感染を認めていません(→あらためて空気感染を考える)。

今回のパンデミック厚労省感染症コミュニティの専門家は、PCR検査を抑制という大きな間違いを犯しました。37.5度、4日間という受診の目安まで作り、検査対象者を限定することで検査待ちの人達の病状を進行させ、被害を拡大させてしまいました。検査抑制のために、PCR検査の精度は低いとか、ことさら偽陰性偽陽性に言及してきました。厚労省感染症コミュニティの専門家もこの対策の誤りについて公式に認めていません。

不思議なことに、PCR検査の精度が低いと貶してきた人達のなかで、より精度の低い抗原検査について揶揄している人は、私が知る限り1人もいません。日本での抗原検査はほぼ富士レビオ製品の独占状態となっており、それに言及しないということは何だが胡散臭い感じがします。ファイザーについても同様です。利権やメーカーとの契約内容でも絡んでいるのか?とも思いたくもなります。

これらのインフォデミック震源地にいる超本人のみなさんが、今度は「ワクチン打て打て」と言ってるわけですから、土台信用するのは無理でしょう。しかも今度は、ワクチンの意義を適切に述べるべきなのに、家族のためにとか、周囲の人を守るためにとか言い出す始末です。多くの自治体はこのスローガンを取り上げ、追従しています。

あらためて、厚労省ファイザー製ワクチンの緊急承認審議結果の報告書を見ると、「COVID-19の発症予防効果は期待できると判断した」としながら、「本剤の効能・効果は、申請時の効能・効果のとおり、SARS-CoV-2による感染症の予防』とすることが適切と判断した」となっています [13]。つまり、ワクチンの意義は発症を予防することとするべきにもかかわらず、感染症の予防とすることが適切と飛躍させているのです。

さらには、これまでmRNAワクチン接種後に発生した751人の死亡例を厚労省自身が報告していますが、ホームページ上では「ワクチンの接種が原因で亡くなった方がいるという事実は確認されていません」と述べています(図3注1)。そしてワクチン接種とは関係なく死亡することがあるので、ワクチン接種との因果関係を調査することが大切と述べています(図3注2)。

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図3. 厚労省HP: 新型コロナワクチンQ&A 「新型コロナワクチンの接種が原因でたくさんの型が亡くなっているというのは本当ですか」のページ.

これはまったくの詭弁です。つまり、「ワクチンが原因で死亡した事実は確認されていない」ということを引用して、あたかも「ワクチン接種後の死亡例」を否定するような論法になっているからです。これは一種のダミー論証(ストローマン論証)です。

ワクチンが原因の死亡を認定するのも厚労省なら、そうしないのも厚労省です。実際は死亡例のほとんどを自ら「評価不能」としているにもかかわらず、そこから飛躍して「ワクチン原因の死亡は確認されていない」と自作自演しているのです。因果関係の調査が重要と言うならそうすべきであり、そして、死亡例については現在「調査中」とか「評価不能」とすべきなのです。

とはいえ、評価不能と片付けるのもおかしなやり方です。ワクチン以外の原因で死亡したとするならそれはランダムに起こるはずであり、ワクチン接種後から死亡までの時間経過(ランダムに発生したか特定の期間に集中しているか)を見ることでおおよそ検討がつきます。実際はワクチンを接種してから1週間以内にほとんどの方が亡くなっており(4割は4日以内)、ワクチン接種と因果関係があるとみなすのが妥当でしょう。

しかし、厚労省は、「ワクチン接種との因果関係を調査することが大切」と言いながらも、ワクチン接種後にどれだけ重篤有害事象が出ようとも何人死のうとも、決して因果関係を認めることはないでしょう。もしそうなら、そのような姿勢とワクチン推進の裏には、メーカーとの契約に絡んだ利権、官僚の無謬性主義、為政者の政治的思惑があるとすれば(勝手な想像ですが)、つじつまが合います。

ここで、厚労省のHPにある「こびなび」のワクチンデマに関するページを見てみましょう [14]図4注1、注2には、「個人の発信には注意が必要」、「行政機関や学会といった公的機関や複数の専門家による発信等、信頼できる情報源を..」という文言があります。しかし、上述したように、日本では権威筋からのメッセージが誤っていたというのが不幸でした。デマに注意と言っている当局自身がインフォデミックを起こしているという悲劇です。

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図4. 厚労省HP: 誤情報に惑わされないために-情報リテラシーの重要性と正確な情報の受け止め方のページ [14].

科学の基本は、わからないことへ興味を抱くこと、既知情報を疑うこと、自分が知らないことを知ることです。したがって、科学者は断定的にものを言うことにきわめて慎重な態度をとります。ここまでは分かっているがそれ以上はわからない(知らない)という風に応えます。今までの常識が完全にひっくり返ってしまうこともあり、前言を撤回せざるを得なかったり、修正したりすることも割とあるわけです。

一方、行政は法律や規範や政策決定後の方針に従って物事を進めますので、そこに曖昧さはあってはならず、自ずから断定的にならざるを得ません。

科学ベースで進められる感染対策やワクチンについては、情報が常にアップデートされますので、その都度方針の変更が行なわれて然るべきですが、行政や公的機関はこのようなプロセスについてどうしても時間がかかります。

とはいえ科学者や専門家がいかにアップデートな情報を伝えるか、それに対して公的機関や行政はいかに早くそれを対策に折り込むかということが問われています。WHOも米国CDCもこれまで誤った情報を流してきましたが、逐次修正しています。

一方で、厚労省も周辺の医療クラスターの人達も無謬性に拘泥しすぎるためか、情報をアップデートできないままです。そして、上述したようにワクチンの政治問題化があります。それが国民に対して誤ったメッセージとなるのです。

おわりに

これまでの知見を踏まえて、現行のワクチンの意義や波及効果については以下のようにまとめられると個人的に考えます(予見できる問題点は上述のブログ記事参照)。

・現行のmRNAワクチンは発症と重症化を防ぐメリットがある

・ワクチンの完全接種によって感染が防止できるわけではない

・ブレイクスルー感染者の多くは無症状であり、感染に気づかない

・無症候性ブレイクスルー感染者は非接種者にとって脅威となる可能性がある

・ワクチン接種者もマスク着用等の公衆衛生対策を維持すべきである

・感染者数の増加とワクチン接種はエスケープ変異体を生み出す可能性がある

ワクチン接種の効果や意義はもちろんあるわけですが、問題は検査、追跡、接触削減、公衆衛生学的行動変容、医療提供体制、休業・生活補償などの他の感染対策が隅に追いやられ(実質無策)、政府がワクチン至上主義になっていることです。ワクチンの意義も発症や重症化を抑えるから、いつのまにか「コロナにかからない」、「他人にうつさない」、「感染拡大を防止する」というニュアンスに変えられてしまっています。そして厚労省周辺の専門家、自治体、メディアもそれを後押しし、国民、市民への誤ったメッセージ(もはや権威側からのデマ)となっています。

ワクチンのデマ情報は有害になるものが多いですが、それ以上に政府による怪しげなワクチン至上主義とプロパガンダの方がはるかに国民にとって害悪だと思います。なぜなら、そのような政府の姿勢が、ますます制御不能なデルタ型大流行をもたらすからです。

引用文献・記事

[1] 忽那賢志: 新型コロナワクチンQ&A 感染症専門医が解説! 分かってきたワクチンの効果と副反応. 厚生労働省 2021.06.30. https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0001.html

[2] Steenhuysen, J.ら: アングル:デルタ株が覆すコロナの概念、規制社会に逆戻りも. ロイター 2021.07.26. https://jp.reuters.com/article/delta-covid-idJPKBN2EX0HL

[3] U.S. Centers for disease Control and Prevention: COVID-19 vaccine breakthrough case investigation and reporting. https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/health-departments/breakthrough-cases.html

[4] Brueck, H.: A leading US disease expert says there's 'no doubt in my mind' that vaccinated people are helping spread Delta. BUSINESS INSIDER Jul 8, 2021. https://www.businessinsider.com/covid-expert-vaccinated-people-can-spread-the-delta-variant-2021-7

[5] TBS NEWS: ファイザー製ワクチン感染予防効果39%に低下 重症予防は91%. 2021.07.24. https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4322177.html

[6] WSJ Video: Breakthrough Covid-19 cases raise questions about immunity. 2021.07.26. https://www.wsj.com/video/breakthrough-covid-19-cases-raise-questions-about-immunity/D0892C1D-AC5D-4434-BBF8-5FA7923A13A1.html?mod=article_inline

[7] Bergwerk, M. et al.: Covid-19 breakthrough infections in vaccinated health care workers. N. Eng. J. Med. Jul. 28, 2021. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2109072#article_references

[8] 国立感染症研究所: 新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と診断された症例に関する積極的疫学調査(第一報). 2021.07.21. https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/10534-498p01.html

[9] Musumeci, N. et al.: How coronavirus variants called 'escape mutants' threaten to undo all our progress.BUSINESS INSIDER July 29, 2021. https://www.businessinsider.com/covid-variants-called-escape-mutants-could-throw-us-back-into-lockdown-2021-5

[10] Abutaleb, Y. et al.: CDC urges vaccinated people in covid hot spots to resume wearing masks indoors. Washington Post July 28, 2021. https://www.washingtonpost.com/health/2021/07/27/cdc-masks-guidance-indoors/

[11] 長谷川友恵: ワクチン接種「子供にも絶対」という風潮への疑問-同調圧力で思考停止せず各人が冷静に判断を. 東洋経済ONLINE 2021.07.27. https://toyokeizai.net/articles/-/442780

[12] 井上靖史: 「PCRが受けられない」訴えの裏で… 厚労省は抑制に奔走していた. 東京新聞 2020.10.11. https://www.tokyo-np.co.jp/article/61139

[13] 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課:審議結果報告書. 2021.02.12. https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000739089.pdf

[14] 黒川友哉ら: 誤情報に惑わされないために。情報リテラシーの重要性と正確な情報の受け止め方. 厚生労働省新型コロナワクチンについて. https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/column/0003.html

引用したブログ記事

2021年7月5日 あらためて空気感染を考える

2021年6月9日 ワクチンとしてのスパイクの設計プログラムの可否

2021年5月27日 mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出

2021年4月29日 COVID-19ワクチン:免疫の活性化と課題

2021年4月2日 mRNAワクチンの感染予防効果

                

カテゴリー:感染症とCOVID-19