Dr. Tairaのブログ

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Long COVIDのリスクを否定するのはやめよう

現地時間の昨日(5月13日)、米ワシンントン・ポスト紙に、「Long COVIDのリスクを無視するのはやめるべきだ」というオピニオン記事が掲載されました(下図) [1]。筆者はペンシルバニア大学のエゼキエル・J・エマニュエル(Ezekiel J. Emanuel)教授です。彼は腫瘍学者で医療倫理学者であり、バイデン-ハリス政権移行時のCOVID-19諮問委員会の委員を務めた人物です。

日本では、いま、海外のコロナに関する数々の規制解除を紹介しながら、脱マスクの論調が盛んになっていますが、一方で、米国でも上記のような意見があるということで、このブログで全文翻訳して紹介したいと思います。

以下、筆者による翻訳文です。

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「COVID-19のパンデミックは終わった」。マイアミで開催されるF1のために詰めかけ、バスケットボールのスタジアムはチケット完売し、レストランをマスクなしで満席にするとき、ほとんどの米国人はそう信じているように見える。

この世間一般の通念は重大な誤りである。私はこれからもN95マスクを着用し、飛行機や電車での移動を制限し、屋内のレストランでの食事は避けるつもりでいる。教えるときはHEPAフィルターをかけ、学生にもN95マスクの着用を義務付けるつもりだ。

なぜか?その大きな理由は long COVID長期コロナ症)だ。

多くの米国人は、私のことを馬鹿か愚か者だと思うだろう。彼らは、米国人の約60%がすでにオミクロンや他のコロナウイルス変異体に感染していることを示唆する最近のデータを指摘するだろう。つまり、COVID は風土病なのだ、と彼らは主張するはずだ。避けられないことは受け入れるしかないということだ。

この考え方は、こうであってほしいという願望がデータを無視した姿である。COVID-19が単なる風邪や軽いインフルエンザでないことは、豊富な証拠が示している。深刻な感染症なのだ。実際、オミクロンは初期の変異体よりも軽症であるという考え方は間違っていた。それは、致命的なものだった。

しかも、心配な合併症を伴う。もちろん、現在ではワクチンや治療薬など、急性疾患や死亡を防ぐための効果的な介入方法がある。しかし、最初の感染後に起こる合併症については、まだ十分に分かっていない。

長期コロナ症は、2020年5月に最初に記述されたものの、この症状のコンセンサスとなる定義すらない。しかし、ブレイン・フォグ、最小限の労力で起こる疲労、極端な息切れ、不眠、めまいなど、多くの壊滅的な症状が数カ月間続くことが明らかになっている。

長期コロナ症のリスクが低いのであれば、マスク着用などの予防策をやめるべきということには同意する。しかし、正確な頻度はわからないが(国立衛生研究所や生物医学研究者の怠慢)、決して稀な症状ではないことは明らかだ。推定値は感染の0.5%から30%まであり、よく引き合いに出されるリスクは10%である。さらに、初感染時の重症度とコロナ長期症状の発症確率には相関関係がないと思われる。症状が軽くても苦しんでいる人はたくさんいる。

ワクチンは長期コロナ症のリスクを減らすのに役立つように思えるが、そのリスクが珍しいものになることはない。ここでもデータに大きなばらつきがある。退役軍人省の研究では、ワクチン接種によってリスクが13%低下すると推定され、英国の2つの研究では、リスクが40〜50%低下すると推定されている。最も優れた研究では、24万人以上の米国人患者を対象としたもので、ワクチンによって長期コロナ症のリスクをおよそ17%から3%に減らすことを示唆している。これは珍しいことではない。

さらに悪いことに、この病気に対する治療法がない。NIHは、抗ウイルスの長期使用、免疫調整剤、抗コレステロール剤や抗うつ剤のような闇雲な治療法を試みているが、これらを評価するための強固な臨床試験を迅速に実施するプラットフォームをまだ確立していないのである。

そして、「より長い」long COVID もあるかもしれない。感染から数ヶ月あるいは数年後に心臓発作を起こしたり、糖尿病を発症したりするリスクがあることが分かってきたところだ。COVIDに罹った妊婦は、入院、集中治療室への入院、早産のリスクが高まった。また、勃起不全は新たに報告されたリスクだ。COVID 罹患が脳に及ぼす長期的な影響については十分に確立されていない。しかし、うつ病灰白質の喪失が記録されており、それらがどの程度深刻で一般的なものになるかはわかっていない。

私は心配性ではない。喜んでリスクは取るし、家族に言わせれば、取り過ぎかもしれない。私は電動バイクに乗っているが、このバイクで死ぬ確率は10万分の1だ。交通事故の死亡確率は、通常の年で1万6,000分の1である。

しかし、33分の1という確率(あるいは長期コロナ症で3%の確率)で、ブレイン・フォグや衰弱性の疲労、息切れなどの深刻なコロナ後の症状が出るというのは、簡単な予防策をやめる引き換えにしては高すぎる。

先週、食品医薬品局(FDA)がジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの使用を制限したのは、約1900万回接種のうち60人が血液凝固症候群を発症し、9人が死亡したためだということを考えようではないか。これは、30万分の1の確率で血液凝固症候群が起こり、200万分の1の確率で死亡することになる。同様に、大きな警戒心を抱かせる原因となったファイザーワクチンとモデナワクチンによる若年成人男性の心筋炎のリスクは、それぞれ約15,000分の1、4,000分の1である。長期コロナ症のリスクは、これらのどの結果よりもはるかに大きいのだ。

また、重度の慢性症状を抱える何百万人もの米国人が、働くことができず、医療面でのケアやサポートを必要としていることも思い起こすべきだ。この結果、医療保険障害者手帳の支払いで、私たち全員が負担することになる。COVID が過去のものであるかのように振舞うことは、将来への深刻な負担を生むことになるのだ。

皆と同じように、私もこのパンデミックの悪夢が終わることを望んでいる。しかし、このまま精神的に衰弱していくのも怖い。それを避けるために、マスクの着用やHEPAフィルターの稼働などの防護策を続けることは、さほど無理なことではないだろう。

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以上が翻訳全文です。

日本のメディアは、あたかもCOVID-19が風土病化したような感じで、脱マスクなどの緩和策の方向を盛んに伝えていますが、海外でもこのような記事があることも伝えてほしいと思います。

引用記事

[1] Emanuel, E. J.: Opinion Stop dismissing the risk of long covid. Washington Post. May 13, 2022.  https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/05/12/stop-dismissing-long-covid-pandemic-symptoms/

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)