Dr. Tairaのブログ

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パンデミックの行方

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年) 

はじめにーコロナ収束の風潮

世界保健機構WHOの事務局長テドロス氏は、今年9月14日の記者会見で「パンデミックの終わりは見えている(The end is in sight)」と発言しました。同時に、パンデミックを終わらせることはできるが、すべての国、メーカー、コミュニティ、個人がステップアップし、この機会をつかむ場合にのみ可能だとも述べました [1]

同時に、COVID-19の技術責任者であるマリア・ヴァン・ケルコフ博士は、ウイルスは依然として世界中で「激しく循環」しており、報告されている患者数は過小評価されていると強調しました。ウイルスが循環すればするほど、変異の機会が増えると警告しながら、一方では現在ではワクチンや抗ウイルス剤など有効な手段があるため、こうした将来の波が「大流行や死」につながることはないとも述べています [1]

上記のテドロス発言の数日後、米バイデン大統領はCBSの番組で「パンデミックは終わった」と発言しました。しかし、直ぐにメディアから「違う、終わっていない」と批判されました(→パンデミックは終わっていないー米国メディアの論調)。松野官房長官は、バイデン大統領の発言に関連して日本はどうするつもりかと記者に問われ、パンデミック終了宣言をするつもりはないと回答しました。

日本のテレビは、海外の状況を紹介しながら、「誰もマスクをしていない」、「日常生活を取り戻している」という論調でコロナ収束気味の報道をしています。「コロナは季節性インフルエンザ並み」、「2類見直しで5類へ」というフレーズも相変わらずで、医療専門家さえ、この論調の先陣を切っている次第です。先日のテレビも、カタールのワールドカップでワクチン接種証明、陰性証明、入国時検査、隔離措置などが一切不要であることを報じていました。

一方で、日本では第8波流行が始まりました。海外でも同様で、ワールドカップの盛り上がりに消され気味ですが、実は流行は続いています(後述)。厚生労働省は第7波が減衰傾向になる頃から「屋外ではマスクは"原則"必要ない」という脱マスクキャンペーンSNS上で始めました。しかし、第8波流行が始まると、今度は「マスクをしよう」という節操のなさです。

パンデミックが長引くことを望む人はもちろん誰もいないでしょう(例外があるなら、ひょっとして製薬メーカーと利権にぶら下がる人はあるかも?)。しかし、昨今の国内外の動きを見ていると、為政者の国民受け狙いと経済活動推進いう政治的意図や企業の商業主義の影響で、恣意的にコロナ収束への早道がつくられようとしている印象も否めません。規制解除は国民にとってもハッピーであり、この相互メリットで収束への流れが加速化している感もあります。

「コロナは終わった」「コロナは風邪、季節性インフルエンザ並み」というフレーズは心地よいですが、その願望や思っているだけではパンデミックは終わりませんし、何もしなければ実害は発生し続けます。パンデミック終了を宣言できるのはWHOのみです。その判断とタイミングの条件はCOVID-19が定常状態に入り(つまりエンデミックになり)、医療、社会・経済活動に影響を及ぼさなくなったときです。

1. パンデミックとエンデミック

パンデミックがこの先どうなるか、いつ収束するかということを考えるために、パンデミックとは何か、エンデミックとはどのように違うかをもう一度考えてみましょう。

パンデミックとは、感染症がグローバルに広がり(国境をまたいで拡散し)、同時多発的に被害が発生する状況をいいます。重要な点は、社会が病気の定常状態からかく乱状態に移行し、健康被害の発生はもとより、世界規模で医療提供体制や社会・経済活動に多大な悪影響を及ぼすということです。よく誤解されていますが、病気の重症度や致死率は一義的に重要ではなく、被害の範囲と規模がより重要になります。

わかりやすくするために、エンデミック(風土病)と比べてみましょう。エンデミックは以前の記事「エンデミック(風土病)の誤解」でも紹介しています。エンデミックはその発生が集団に対して定常状態ある場合(感染率が一定)の病気を言います。つまり弧発的、局地的(国内的)、あるいは季節的に「普通に」発生し、見かけ上増えもせず減りもせずという状態です。拡散性がなく、発生が予測範囲にあるので、医療提供体制がかく乱されることはなく、社会・経済活動にもほとんど影響がありません。

ただし、エンデミックの重症度や致死率が低いかと言えば必ずしもそうではありません。エンデミックの一つであるマラリアは世界で年間2億人以上が罹り、200万人が亡くなっています [2]。つまり致死率は1%近くになり、被害の規模も大きいです。結核で言えば、日本に限ると毎年約18,000人が発症し、約1,900人が亡くなっており [3]、致死率がきわめて高いです。しかも空気(エアロゾル)感染します。このために2類感染症に指定されています。

いまのオミクロン型COVID-19は、現在世界で1日約40万人が感染し、1日1500人が死亡してします。これと比べても、上記の二つのエンデミック感染症は致死率が高く、被害も大きいわけですが、社会がかく乱されることはありません。したがって、パンデミックとエンデミックを重症度や致死率などの、病気の質だけで(場合によっては被害の規模でも)比較することはあまり意味がありません。

エンデミックは発生の弧発性、局地性、季節性、非拡散性に加えて、発症による診断が明確です。もう一つの重要な要素として、治療・予防法が確立されているか、治療薬があるかということがあります。マラリアには特効薬があり、結核にはBCGという長期的に有効なワクチンがあります。いわゆる風邪には特効薬はありませんが、弧発性、非拡散性のためにパンデミックになることはありません。

一方のCOVID-19はきわめて拡散性が高い病気であり、グローバルに、短期間に大量の患者が発生します。これをもたらしている要因の一つのが、原因ウイルスであるSARS-CoV-2の高い感染力です。今のオミクロン変異体BA.5の基本再生産数(R0)は18.6 [4]で、オリジナル型(R0=3.3)の約6倍、結核菌(R0=〜4)[5] の約5倍、季節性インフルエンザウイルス(R0=1.3〜1.4 [異なる方法での算定値の平均] )[6] の14倍になります。そして、もう一つの要因が無症候性感染の発生であり、多くの無症状感染者が無自覚のまま広げ、集団発生(クラスター)の連鎖を生むという特徴があります。

つまり、高い感染力と無症候性感染がパンデミックを起こす大きな要因になっているわけです。そして、今なおパンデミック宣言が解除されない理由には、COVID-19は、若年層においてはインフルや風邪程度の症状でも高齢者など脆弱層については致死的になる病気であり、一度に大量の患者を生じて医療ひっ迫させ、社会を混乱に陥れるという点が考慮されていることは言うまでもありません。

逆に言えば、COVID-19が風邪程度のエンデミックであるならば、医療はひっ迫せず、1日何百人も死亡することはなく、パンデミックにもならないのです。個人や年齢に応じた病態の多様性とウイルスの感染力を考えれば、COVID-19は決して風邪ではなく、しかもSARS-CoV-2自体は変異を経るごとにどんどん感染力を増し、風邪ウイルスに近づくどころか逆の方向に進化し続けています。

COVID-19の治療法では、パキロビッド、ゾコーバのような抗ウイルス剤が出てきましたが、まだ一般的ではなく、特効薬というものでもなく、ワクチンに至っては長期的効力が無いという結果になっています。

2. COVID-19の認知的錯覚

繰り返しますが、COVID-19の病気の質(重症度や致死率など)だけに囚われていても、パンデミックの実態は見えてきませんし、収束への道も描けません。重要なのは、被害や犠牲が最小化され、医療ひっ迫(医療崩壊)がなくなり、社会が混乱しなくなるということです。

それにもかかわらず、専門家やメディアによるコロナ被害の「認知的錯覚」や「相対的窮乏の誤謬」が相変わらず繰り返され、特に全数把握がされなくなってから国民には今流行がどうなっているか、この先どうなるのか見えにくくなっています。認知的錯覚については先のブログ記事「コロナ被害の認知的錯覚による誤解」でも紹介していますが、ここで再度述べてみたいと思います。

地震津波、台風など、災害での被害を表す場合には実数で示されます。何人被災したか、何人死亡したかという実際の数字で被害の大きさを表すわけです。人口何人あたり何人死んだかという死亡率で表すことはありません。それは被害の程度を言う場合や被害対策の立案にとって無意味だからです。

ところが、COVID-19の場合はしばしば病気の重症度や致死率という病気の質が強調されることによって、あたかも被害の程度が軽いかのような印象を与えてしまいます。これが認知的錯覚です。

致死率はウイルスの病毒性がどの程度であるか、脆弱層は誰かを見るのに重要な指標であり、とるべき感染対策へ影響します。また死亡率がどのように変化したかで対策の有効性を見ることができます。致死率が低下したとしても感染力が上がったり、対策が緩くなったり、間違ったりすれば、全体の被害としては変化がなかったり、むしろ大きくなったりします。

たとえば、第1波における致死率は4.2%ですが(→日本の新型コロナの死亡率は低い?)、波を経るごとにそれは下がり、第6波では0.20%、第7波では0.12%まで下がっています。実に、第7波では初期の3%にまで致死率は下がっているのです。では、実際に犠牲者数は第7波で減ったのかというとそんなことはありません。過去最悪の犠牲者数を出したことは記憶に新しいところです(図1中)。

被害の指標の一つとして死亡者数そのものを見るべきなのに、感染者数(図1上)と比べたために、その母数の大きさによって小さな相対比が導き出され、被害の印象が薄められるわけです。メディアや専門家は実によくこの認知的錯覚を起こし、日本のパンデミックが軽くなりつつあるような印象を一般人に伝えています(意図的ならばそれは詭弁になります)

同じことは重症者数でも言えます。重症者数は暫定的な健康被害の一つではありますが、回復する場合も多いので、実害の指標にはなりえず、重症者用(ICU)のベッドがどの程度埋まっているかという医療ひっ迫の指標にしかなりません。ところが重症者数も、専門家やメディアによって、特にオミクロン以降へ減り続けていることが強調され、流行被害が大したことがない、パンデミックが収束に向かっているという印象を与えかねない状況になっています。この「重症者が重要」の先頭を切ってきたのが政府分科会の尾見茂会長です。

図1(中、下)に見られるように死者数(実害)と重症者数は関係がありません。これは人工呼吸器、ECMO装着の如何で重症者の定義がなされているためであり、直接肺炎を起こさず重篤化して死亡するオミクロンの実態に合わないことで起こっている現象です。

図1. COVID-19パンデミック期間における1日ごとの感染者数(新規陽性者数)(上)、死者数(中)、重症者数(下)の推移(NHK特設サイト「新型コロナウイルス」より転載).

COVID-19とインフルエンザの似ているところ、違うところ、両者の識別について認識することは患者の診断上は重要ですが、若年層の致死率などを比べて、COVID-19を軽めに評価する相対的窮乏の誤謬も相変わらず起こっています。ちなみに、世界を見渡してみても、その脅威において、COVID-19が季節性インフルエンザや風邪並みと言っている保健・公衆衛生当局はどこもありません。米CDCは、COVID-19と季節性インフルエンザの違いや前者の致死率がより高いことも明確に述べています。

COVID-19の重症化率や致死率が低くなったなら、その分被害・犠牲者数は最小化できなければ意味はありません。日本はまったく逆で、被害を最大化し、医療崩壊させたわけです。そこを無視しながら、今の流行を指して「重症化率は低い」、「致死率は低い」、「季節性インフルエンザ並み」という認知的錯覚、あるいは詭弁が専門家の間で見られることは、誠に嘆かわしいことです。専門家が行なうべきことは、重症化率や致死率が低い病気なのになぜ最悪の被害が出るのか、医療崩壊するのかに対しての改善への具体的提言です。

3. パンデミックの現状

図1(上、中)のように、日本は流行の波が来るごとに被害を拡大しています。これは欧米諸国と比べるときわめて対照的です。図2上に示すように、欧米(G7諸国)では、流行波を減るごとに死者数は激減しています。これは医療崩壊を起こした初期の波から、感染対策の徹底(マスク着用義務化など)とワクチン接種が進んだ結果と考えられます。

しかし、欧米ではワクチン接種とともにwithコロナ戦略に転じ、マスク着用義務化解除など全面規制緩和したおかげで、死者数の推移は下げ止まりになっていて、現在のオミクロン変異体の流行で比べれば、やっと欧米が日本と肩を並べる程度になっています(図2下)。この一ヶ月で見れば、依然として欧米の方が日本より死亡率が高いです。

図2. COVID-19パンデミック期間におけるG7諸国の人口比死亡率(上)の推移およびオミクロンBA.5流行以降の死亡率の推移(下、英国のデータは統計不備のために図示していない)(Our World in Dataより転載)。

COVID-19は高齢者層で致死率が高い病気です。したがって、高齢化率 [7] において日本(29%:世界1位)より圧倒的に低い欧米諸国(イタリア24%:同2位、ドイツ22%:同6位、フランス21%:同14位、英国19%:同30位、カナダ19%:同31位、米国17%:同39位)において、日本より死亡率が高いということは、図2で見えている以上に欧米での流行の程度がヒドいことがうかがえます。世界ではもはや全数把握がされていませんので、流行状況が掴みにくいですが、死者数から類推すればそうなります。

日本の被害が波を経るごとに大きくなっているのは(図1、図2上)、ウイルスの変異に伴って感染力が著しく高まっているのに、基本的に感染対策に変更がなく(ほとんど無策)、むしろ全面緩和されている結果だと考えられます。第7波から行動制限なしが始まり、旅行支援も行なわれています。高齢化率の高さも考えれば、いずれ日本が経時的死亡率においてG7諸国のなかでトップに躍り出ることは間違いないでしょう。

マスクについては、第4波くらいまでは効果的に機能していたものの、感染力が格段に高まったオミクロンでは容易に突破されるケース(不適切な着用、ウレタンや布マスクでの感染)が増え、低下した重症化率やワクチン接種という要素があったとしても、それを圧倒的に上回る感染者の絶対数増加で死者数が増えていると推察されます。

加えて、初期の肺炎に基づく重症化率に拘泥したために、軽症・中等症からいきなり重篤化するケースへの対応が遅れ、いたずらに死亡例を増やしているのではないかと思われます。

4. ウイルスの性質とパンデミックの行方

パンデミックがこの先どうなるか、それを占うのに重要な要素が4つあると個人的に考えています。一つ目はウイルスの変異、二つ目はワクチンの接種、三つ目は自然感染率、そして4つ目がウイルスの起源です。

COVID-19で厄介なのは原因ウイルスであるSARS-CoV-2がどんどん変異していくということです。主な変異の要因は宿主のRNA編集APOBECシチジンデアミナーゼによるC→U変異)であり、いずれゲノム上の C の枯渇が起こり、一定方向に収斂していく可能性があります(→新型コロナウイルスはどのように、どこまで変異するのか)。

しかし、感染力が非常に高くなっているために、進化の過程での病毒性の変化の閾値(致死率が高くともなお伝播が続けられる閾値)が高くなっており(強毒化への変化にまだ余裕がある)、どのように進化していくかは当面の間は予測困難です。事実、上述したように、「新型コロナは風邪ウイルスになる」という俗説とは裏腹に、感染力から見れば、どんどん風邪から遠ざる傾向にあり、制御困難になっています。

二つ目のワクチンの接種は、重症化や死亡リスクの低下には貢献したものの、パンデミックを非常に予測困難なものにしました。これまでの概念であれば、ワクチンによって集団免疫が達成され、感染症は収まっていくと予想できました。ところが、今回使われた主要ワクチンの実体は化学修飾mRNA製剤であり、免疫を抑制しながら抗原(ワクチン)となる特定のタンパク質(スパイクタンパク質)を合成し、中和抗体を誘発するというものです。

人類初のmRNAワクチンを導入しましたが、液性免疫は効果が持続しないことがわかりました。集団免疫を達成するどころか、スパイクコードmRNAはウイルスの免疫逃避の変異の促す結果となり、これも制御困難なものにしてしまった可能性があります。現実は、ボッシュ仮説(ボッシェ仮説とそれへの批判を考える)のとおりになってしまったと言うべきかもしれません。生物の免疫に関わる組織的なプロセスを考えずに、分子生物学上の局所最適化でのみ導入したため、予期できなかったあるいは未知の反応が関わることになり、接種を繰り返すことでリスク/ベネフィット比さえわからない状態になっていることは、最近の数々の論文の報告でもわかります。

三つ目の自然感染率は、自然感染が多くなれば従来の常識であれば一定期間集団免疫が形成され、その間に病気が収束していくはずという重要な要素です。欧米での感染者と死者数の減少傾向はそれを現しているかのようにも見えますが、獲得した液性免疫は持続性がなく、感染を繰り返すことが報告されています。

日本人も含めて感染者の多くはオミクロンに感染していて、その自然感染免疫の持続によって、いまは感染の伝播を遅く、低くしているようにも見えます。しかし、世界的に全数把握が機能していないので実際の流行波の程度はよくわかりません。死者数の推移から類推するしかないわけですが、通常遅れて出てくる死者数のカーブが、ほぼ新規感染者数と平行して立ち上がっている現状は、感染者数が過小評価されていることを示唆します。

自然感染の獲得免疫の同調性があれば、パンデミックの収束にはたらくことは想像できます。自然感染とワクチンによってハイブリッド免疫で抵抗性が強化されるという報告もあります [8, 9]。一方で、自然感染の繰り返しは死亡リスクや後遺症(long Covid、長期症状)のリスクを高めるという報告 [10] がありますし、適切に間隔をあけないブースター接種は、免疫システムに悪影響を及ぼすという欧州医薬品丁の警告も伝えられています [11]

結局は、人類の過半数が自然感染しないと、しかもそれがより同調的に起こらないとパンデミックは収まらないかもしれない感もあります。1918年から始まったインフルエンザ(スペイン風邪)のパンデミックは3年以内で終息しましたが、今のCOVID-19はそれより長くなっています。グローバル化が進めば、たとえ近代的な検査技術やワクチン、治療薬があってもパンデミックを抑えることは難しいということでしょう。逆に遺伝子ワクチンの導入がそれを難しくしてしまったかもしれません。

最後のウイルスの起源に関しては、ある意味最も重要かもしれません。SARS-CoV-2は、コウモリやセンザンコウのウイルスに似ているものの、天然の宿主(中間宿主)がわかっておらず、従来のコロナウイルスにはないきわめて特徴的なゲノムと表現型をもっています。そこから、人為起源(人為的改変体がラボから漏出した可能性)が疑われているほどです(→新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える)。

特徴とは他のベータコロナウイルスのスパイクタンパク質には見られない、CGG-CGG(アルギニンーアルギニン)という配列とそれから成る塩基性アミノ酸解裂部位(フーリン切断部位)をS1/S2境界にもつことです。しかもこの部位は核局在化シグナルモチーフを共有しており、スパイクタンパク質とそれをコードするmRNAが結合して核内に移行することが報告されています(→スパイクタンパク質とスパイクmRNAの核内移行)。こういうウイルスにとって誠に都合のよい配列と機能が進化の過程で生まれるものでしょうか?

もし、SARS-CoV-2が米中の機能獲得実験の過程で生まれたキメラウイルスだとすれば(半永久的に証明されることはありませんが)、自然淘汰を受けないで誕生したウイルスになり、根絶が不可能なことはもとより、近い将来にCOVID-19がエンデミック化することさえ難しいと思えてきます。宿主のRNA編集、一部のRNAポリメラーゼの複製ミス、組換え、それにmRNAワクチンや治療薬の選択圧が加わったキメラウイルスの進化の行きつく先は誰にもわからないでしょう。

おわりに

各国の保険担当部局の一致した認識は、COVID-19はいまだに脅威だけれども、ワクチンと治療薬、それに自然感染率の増加を盾に重症化、死亡のリスクは低下した、という上記のWHOのそれと同様だろうと思います。

重要なのは、オミクロン変異体に変わってから見かけ上の重症化率や病原性は低下しているわけですが、感染力は格段に上がっているので、その掛け算で全体の被害としてはこれからも続いていくことが予測されることです。世界各国の為政者はワクチンの導入と同時に、流行を制御することを諦め、それを放置するwithコロナ戦略に舵を切っています。為政者の政治的意図に同調して、「コロナは終わった、風邪並み」と思い込む国民のマインドはもはや止められず、感染対策強化への後戻りはできないでしょう。一度堰を切った水はただただ下に流れていくまでです。

しかし、このウイルスを制御できない現状においては、パンデミック収束の行方は混沌としています。ワクチン導入とwithコロナ戦略でもはやウイルスは人類社会の奥深く入り込んでしまい、エンデミックにはまだ遠い、感染が繰り返される状況がつくられてしまいました。人類は、終わりの見えないCOVID-19の自然感染と遺伝子ワクチンの接種で、次第に集団的な健康が蝕まれていくのではないかと懸念します。

そして、まさかとは思いますが(陰謀論になってしまいますが)、もしこれがメガファーマによって最初から仕組まれていた?あるいは何らかのハプニングでそれが予期せず早まったとするなら恐ろしいことです。

引用文献・記事

[1] WHO: The end of the COVID-19 pandemic is in sight: WHO. Sept. 14, 2022. https://news.un.org/en/story/2022/09/1126621

{2] 国立感染症研究所: マラリアとは. 2013.03.07改訂. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/519-malaria.html

[3] 政府広報オンライン: 日本では毎年約18,000人が新たに発症! 古くて新しい感染症、「結核」にご注意を! 2017.11.09. https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201509/3.html

[4] Esterman, A.: Australia is heading for its third Omicron wave. Here’s what to expect from BA.4 and BA.5. The Conversation July 4, 2022. https://theconversation.com/australia-is-heading-for-its-third-omicron-wave-heres-what-to-expect-from-ba-4-and-ba-5-185598

[5] 東京都福祉保健局: 医療機関における結核対策の手引. 2021年3月. https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/kekkaku/kekkakukankoubutu.files/iryoukikantebiki2021.pdf

[6] Nikbakht, R. et al.: Comparison of methods to estimate basic reproduction number (R0) of influenza, using Canada 2009 and 2017-18 A (H1N1) data. J. Res. Med. Sci. 24, 67 (2019). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6670001/

[7] GLOBAL NOTE: 世界の高齢化率(高齢者人口比率) 国別ランキング・推移. 2022.07.29. https://www.globalnote.jp/post-3770.html

[8] Crotty, S.: Hybrid immunity. Science 372, 1392–1393. https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj2258

[9] Hui, D. S.: Hybrid immunity and strategies for COVID-19 vaccination. Lancet Infect. Dis. Sept. 21, 2022. https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00640-5

[10] Bowe, B. et al.: Acute and postacute sequelae associated with SARS-CoV-2 reinfection. Nat. Med. 28, 2398–2405 (2022). https://doi.org/10.1038/s41591-022-02051-3

[11] Anghel, I.: Frequent boosters spur warning on immune response. Bloomberg 2022.01.12. https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-01-11/repeat-booster-shots-risk-overloading-immune-system-ema-says

引用したブログ記事

2022年11月18日 スパイクタンパク質とスパイクmRNAの核内移行

2022年9月21日 パンデミックは終わっていないー米国メディアの論調

2022年9月4日 コロナ被害の認知的錯覚による誤解

2022年8月28日 新型コロナウイルスはどのように、どこまで変異するのか

2022年1月31日 エンデミック(風土病)の誤解

2021年8月14日 ボッシェ仮説とそれへの批判を考える

2021年8月5日 新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える

       

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)