Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

遺伝子ワクチンを取り込んだ細胞は免疫系の攻撃標的になる

はじめに

これまでのブログ記事で、私は、現行の遺伝子ワクチンmRNAワクチンアデノウイルスベクターワクチン)が失敗ではないかということを述べてきました(→ワクチンとしてのスパイクの設計プログラムの可否核酸ワクチンへの疑問ーマローン博士の主張を考えるmRNAワクチンへの疑念ー脂質ナノ粒子が卵巣に蓄積?)。

ワクチンの問題の一つとして、遺伝情報を取り込んだ細胞自身が細胞性免疫の標的となる可能性があり(→ mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出)、産生されたスパイクタンパク質の毒性の可能性もあります。従来、考えられてきた以上に、体内でのスパイクタンパク質の広がりと持続性が高いことも明らかになっており(→ワクチンmRNAと抗原タンパクは2ヶ月間体内で持続する)、ワクチンの安全性について赤信号が灯り始めました。

最近、これらの遺伝子ワクチンの問題を指摘するレター(Letter to Editor)が、Scandinavian Journal of Immunologyに掲載されました [1]。これは、イタリアのNational Research Councilに所属するパナギス・ポリクレティス(Panagis Polykretis)博士の執筆によるものです。

ポリクレティス氏については私はまったく知らなかったのでオーキッド(ORCiD)で調べてみましたが、15報ほどの論文が出てくるのみでした。ワクチンや免疫の専門家ではないようです。ただ、コンピュータサイエンスの専門家であるステファニー・セネフ氏がmRNAワクチン批判の論文を書いたように(→mRNAワクチンの潜在的悪影響を示唆するSeneffらの論文の意義)、この手の論説は、ワクチン推進の立場である世界の主要研究者や専門家では到底書けないでしょうし、書いたとしても著名雑誌には掲載拒否されるでしょう。

とはいえ、書簡の内容はきわめて本質的で遺伝子ワクチンについて私が常々心配していたことが、簡潔にまとめられていますので、ここに翻訳しながら紹介したいと思います。

以下、筆者による全翻訳文を示します。適宜、引用されている文献もあげます。

----------------------

"Role of the antigen presentation process in the immunization mechanism of the genetic vaccines against COVID-19 and the need for biodistribution evaluations"

COVID-19に対する遺伝子ワクチンの免疫機構における抗原提示過程の役割と生体内分布評価の必要性

従来のワクチンのメカニズムは、あらかじめ不活性化(熱処理など)または弱毒化(最適でない増殖条件での複数回の継代など)させたウイルスを接種することで成り立っている。急性感染を引き起こす能力を失ったそのようなウイルスは、免疫システムが外来病原体として認識し、特異抗体メモリーTリンパ球の産生することを促す。 

今回、EUで使用許可を取得したCOVID-19に対する遺伝子ワクチン、すなわち、アデノウイルスベクターワクチンアストラゼネカ社、ジャンセン社製)およびmRNAワクチンファイザー/ビオンテック社、モデルナ社製)は、ヒト細胞がウイルス抗原を生成できるよう遺伝情報をコード化したものであり、ヒト細胞はこのコード化されたウイルス抗原を得ることができる。

より正確に言えば、前述のワクチンは、ヒト細胞のタンパク質合成機構を誘導し、SARS-CoV-2のウイルスカプシドのスパイクタンパク質を翻訳させる。リボソームによる翻訳後、スパイクタンパクはゴルジ装置で処理され、2つの形態で免疫系に提示される。i)タンパク質全体として細胞膜上に表示され、B細胞ヘルパーT細胞に認識される(図1A)、または ii)主要組織適合遺伝子複合体I(MHC I)に負荷された断片の形で、CD8+Tリンパ球に内在性抗原を提示する(図1B)。免疫系は外来抗原を認識し、炎症反応を開始し、その後、B細胞による特異的抗体産生に至る一連のプロセスを経る。

f:id:rplroseus:20220326000438j:plain

図1. 遺伝子ワクチンの抗原提示の模式図(文献 [1] より転載). (A) mRNA含有脂質ナノ粒子(LNP)を取り込み、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を翻訳して、B細胞のB細胞受容体(BCR)に提示するヒト細胞. (B) mRNA含有LNPを取り込み、スパイクタンパク質を翻訳し、MHC I抗原提示プロセスを介してCD8+リンパ球のT細胞受容体(TCR)に提示するヒト細胞. (C)MHC Iは、内因性タンパク質のプロテアソーム分解に由来するペプチドをCD8+リンパ球のT細胞受容体(TCR)に提示. (D) CD4+リンパ球のT細胞レセプター(TCR)に外来性タンパク質のプロテアソーム分解から派生したペプチドを提示するMHC II.

ヒト細胞では、抗原提示プロセスはMHC IとIIが関わるが、このメカニズムは細胞媒介免疫に不可欠である。MHC Iは、すべての有核細胞の膜上に存在するタンパク質複合体であり、細胞内タンパク質のプロテアソーム分解に伴って生成される内因性抗原の断片をCD8+リンパ球に提示する [2]図1C)。この機構により、免疫系は、体内のすべての有核細胞のタンパク質合成活性を常にスクリーニングし、ウイルスタンパク質の合成を検出する。MHC II はマクロファージ、単球、B細胞、樹状細胞などの機能的に分化した細胞に抗原提示する(図1D)。場合によっては、炎症性シグナルの結果として、MHC II分子は内皮細胞上にも見られることがある [2]

CD8+またはCD4+リンパ球が、ウイルス遺伝子(例:感染による)、変異遺伝子(例:がんによる)、または外来遺伝子(例:移植による)を発現している細胞を検出すると、MHCに結合し、免疫反応を活性化して異常細胞の破壊に至る。

上記のプロセスは、抗原提示の観点から、「従来の」ワクチンと「遺伝子ワクチン」の違いを理解する上で不可欠である。従来のワクチンは、一般にヒト細胞に対してウイルスタンパク質を産生するように誘導しない。したがって、この場合、ヒト細胞はタンパク質合成活性に由来するウイルス抗原を露出することはない。一方、COVID-19遺伝子ワクチンは、ヒト細胞にスパイクタンパクを産生させることを誘発し、本質的なこととして、遺伝情報物質を取り込んでタンパク質合成を開始したすべての細胞に及ぶ自己免疫反応に関わる。

生体内分布試験は、注射された化合物がどの組織や臓器に移動し、蓄積されるかを調べるための基本的な試験である。筆者の知る限り、現在までに緊急承認されたCOVID-19ワクチンのいずれについても、ヒトに対してそのような評価は行われていない。

ファイザー/ビオンテックのBNT162b2ワクチンに関しては、三角筋に注射され、主に腋窩リンパ節に排出される。理論的には、mRNAが封入された脂質ナノ粒子(LNP)は、排出される腋窩リンパ節を標的として、非常に限定された生体内分布を示すはずである [3]

しかし、ファイザーが日本の規制当局のために実施したラットを使った薬物動態試験によると、LNPは脾臓、肝臓、下垂体、甲状腺、卵巣などの臓器やその他の組織に蓄積し、標的外への分布を示すことが分かっている [4]。同様に、欧州医薬品庁(EMA)の評価報告書では、ファイザー/ビオンテックおよびモデルナが使用したLNPが、試験動物(げっ歯類)の肝臓などの臓器に標的外分布することが示されている [5, 6]

もう一つの有害なものとして、スパイクタンパクそのものが毒性源であることが分かっている。ある研究では、モデルナ mRNA-1273 ワクチンの接種者から採取した血漿サンプルを経時的に測定したところ、接種数日後の血漿中に、切断されたS1サブユニットと同様に、かなりの量のスパイクタンパクが検出されることが分かった [7]。この研究の著者らは、接種後数日経ってから起こるT細胞の活性化によって引き起こされる細胞性免疫応答が、スパイクタンパクを提示する細胞の死滅につながり、血流中に放出されるという仮説を立てている。

スパイクタンパクが血流中に放出されるということは、APCによるウイルスタンパクの体内への取り込みにより、MHC IIを介した抗原提示プロセスまで関与していることになる(図1D)。

現在までに、1000件を超える査読付き研究が、COVID-19ワクチン接種者に多数の有害事象が発生したことを証明している [8]。これらの研究では、血栓症、血小板減少症、心筋炎、心膜炎、不整脈、神経系障害、その他の変化など、ワクチン接種後の重篤な有害事象が報告されている。

また、重要なこととして、前述の副作用のいくつかは、情報公開法(FOIA)手続きの一環として公開された機密の承認後累積分析で、すでに報告されていた。それは、2020年12月14日から2021年2月28日までにファイザーが記録した死亡および有害事象のデータを提供している [9]

結論として、LNPを取り込んでウイルスタンパク質を翻訳する細胞(mRNAワクチンの場合)、あるいはアデノウイルスに感染してウイルスタンパク質を発現・翻訳する細胞(アデノウイルスベースのワクチンの場合)は、必然的に免疫系に脅威として認識され、攻撃されることを強調する必要がある(図1参照)。

このメカニズムに例外はないが、その結果生じる損傷の深刻さと健康への影響は、関与する細胞の量、組織の種類、そしてその後の自己免疫反応の強さによって異なる。たとえば、LNPに含まれるmRNAが心筋細胞に取り込まれ、その細胞がスパイクタンパクを産生した場合、炎症は心筋の壊死につながり、その程度は取り込んだ細胞の数に比例する可能性がある。

したがって、COVID-19に対するワクチンの正確な生体内分布を決定し、脅威となりうる組織を特定するためには、ヒトにおける薬物動態の評価が不可欠である。

----------------------

翻訳文は以上です。

筆者あとがき

この書簡 [1] に述べられていることは、特段新しいことではありません。しかし、繰り返しますが、ワクチン接種後、体内でウイルスタンパク質を合成する細胞は、必然的に細胞性免疫に脅威として認識され、攻撃されることは、容易に想像されることであり(→mRNAを体に入れていいのか?)、すでに有力な仮説の一つとして提唱されています [7](→mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出)。特に繰り返しの接種で、自己免疫性疾患が顕著になることが危惧されます。そして、作られたスパイクタンパク質の毒性の問題もあります。ワクチン接種後の数々の大小の副作用.有害事象、死亡事例は、これらを物語っていると言えます。

厚生労働省やワクチン推進の専門家は、mRNAワクチン接種後の中和抗体の力価や有効性ばかりを強調し、タンパク翻訳・合成プロセスのリスクを完全に無視してきました。mRNAやスパイクタンパク質の持続性についても、科学的根拠なく「すぐに消える」と言い続けてきました。このような非科学的態度は改めて、少なくとも、ヒト細胞でのワクチンタンパク合成に関わる安全性(リスク)評価試験を至急行なうべきです。

オリジナルの武漢ウイルスをもとに設計されたmRNAワクチンをひたすら打ち続けるということはもとより、遺伝子ワクチンそのものがもはや有害でしかないかもしれないのです。

引用文献

[1] Polykretis, P.: Role of the antigen presentation process in the immunization mechanism of the genetic vaccines against COVID-19 and the need for biodistribution evaluations. Scand. J. Immunol. First published: 17 March 2022. https://doi.org/10.1111/sji.13160

[2] Rock, K. L. et al.: Present yourself! By MHC Class I and MHC Class II molecules. Trends Immunol. 37, 724-737 (2016). https://doi.org/10.1016/j.it.2016.08.010

[3] Polack, F. P. et al.: Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 vaccine. N. Engl. J. Med. 383, 2603-2615 (2020). https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2034577

[4] SARS-CoV-2 mRNA Vaccine (BNT162, PF-0 7302048): 2.6.5.5B. Pharmacokinetics: organ distribution continued, report number: 185350. Page 6. Accessed 23 July 2021. Available at: https://www.pmda.go.jp/drugs/2021/P20210212001/672212000_30300AMX00231_I100_1.pdf

[5] European Medicine Agency: Assessment report Comirnaty Common name: COVID-19 mRNA vaccine (nucleosidemodified) [WWW Document]. 2020. Accessed 3.14.21. https://www.ema.europa.eu/en/documents/assessment-report/comirnaty-epar-public-assessment-report_en.pdf

[6] European Medicine Agency: Assessment report COVID-19 vaccine moderna common name: COVID-19 mRNA vaccine (nucleoside-modified) [WWW document]. 2020. Accessed 3.14.21. https://www.ema.europa.eu/en/documents/assessment-report/covid-19-vaccine-moderna-eparpublic-assessment-report_en.pdf

[7] Ogata, A. F. et al: Circulating severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) vaccine antigen detected in the plasma of mRNA-1273 vaccine recipients. Clin. Infect. Dis. 74, 715-718 (2022). https://doi.org/10.1093/cid/ciab465

[8] Informed Choice Australia: 1000 Peer Reviewed Studies Questioning Covid-19 Vaccine Safety. March 7, 2022. https://www.informedchoiceaustralia.com/post/1000-peer-reviewed-studies-questioning-covid-19-vaccine-safety

[9] Public Health and Medical Professionals for Transparency: Cumulative Analysis of Post-Authorization Adverse Event Reports of PF-07302048 (BNT162B2) received through 28 February 2021. https://phmpt.org/wp-content/uploads/2021/11/5.3.6-postmarketing-experience.pdf

引用したブログ記事

2022年2月22日 ワクチンmRNAと抗原タンパクは2ヶ月間体内で持続する

2021年6月28日 mRNAワクチンへの疑念ー脂質ナノ粒子が卵巣に蓄積?

2021年6月26日 核酸ワクチンへの疑問ーマローン博士の主張を考える

2021年6月9日 ワクチンとしてのスパイクの設計プログラムの可否

2021年6月1日 mRNAワクチンの潜在的悪影響を示唆するSeneffらの論文の意義

2021年5月27日 mRNAワクチンを受けた人から抗原タンパクと抗体を検出

2020年11月17日 mRNAを体に入れていいのか?

                     

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年〜)