Dr. Tairaのブログ

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mRNAワクチンのブースター接種を中止すべき

はじめに

6月6日、日本ではCOVID-19ワクチンブースター接種(3回目)が、全人口の約60%に達したことが報道されました [1]。ワクチンとは言いながら、実体は抗原となるSARS-CoV-2スパイクタンパク質を宿主細胞に作らせるように設計された修飾mRNA型生物製剤であり、その利点と同時に、従来のワクチンとは異なるリスクがあることが懸念されてきました。にもかかわらず、日本の全人口の大半が完全接種を受け、ここに来てブースターが過半数を軽く超えたことになります。

当初から懸念されているmRNAワクチンの問題は、IgG4抗体の誘発、抗体依存的細胞障害(ADCC自然免疫力(細胞性免疫)低下抗体依存性増強(NTD抗体増強)スパイクタンパクの毒性などがあります。重篤な有害事象や接種後死亡例が多いことも特徴であり、心筋炎、心膜炎など副作用としての因果関係が認められているものもある一方、因果関係が不明とされるものが大部分です。加えて、スパイクタンパク質に局所最適化されたワクチンが、ウイルスの免疫逃避を促す選択圧的効果をもつ懸念もあります。

政府はCMによる情宣までしてワクチンを推進し、ワクチンや免疫の専門家もこぞって右にならえで進めてきたわけですが、ワクチン接種プログラムを中止すべきという専門家も国内外に少数ながらいます。このようななか、mRNAワクチンのブースター接種を中止すべきという、山本賢二氏(心臓血管外科下肢静脈瘤センター長、岡村記念病院、静岡)による見解(Comment)が、BMCジャーナルの一つに掲載されました [2](下図)。ここでは、この山本論文を紹介したいと思います。

1. 山本論文のアブストラク

アブストラクトは以下のとおりです。

最近、ランセット誌にCOVID-19ワクチンの効果と時間経過による免疫力の低下に関する研究結果が掲載された。この研究では、COVID-19ワクチンを2回投与した8ヵ月後のワクチン接種者の免疫機能は、ワクチン未接種者のそれよりも低いことが示さた。欧州医薬品庁の勧告によると、COVID-19のブースター接種を頻繁に行うと、免疫反応に悪影響を及ぼす可能性があり、効果が発揮できないかもしれない。免疫力の低下は、N1-methylpseudouridine、スパイクタンパク質、脂質ナノ粒子、抗体依存性増強、元の抗原刺激など、いくつかの要因によって引き起こされる可能性がある。これらの臨床的変化は、COVID-19ワクチン接種と帯状疱疹との間に報告された関連性を説明できるかもしれない。安全対策として、今後のブースターワクチン接種は中止すべきである。また、患者のカルテに接種日を記録しておく必要がある。免疫力低下を防ぐための実際的な対策がいくつか報告されている。それらは、深部体温を維持するためのアセトアミノフェンを含む非ステロイド性抗炎症薬の使用制限、抗生物質の適切な使用、禁煙、ストレスコントロール、周術期の免疫抑制を引き起こす可能性のあるプロポフォールを含む脂質乳化剤の使用制限などである。以上より、COVID-19ワクチン接種は、重症患者における感染症の大きなリスクファクターであることがわかる。

2. 本論の内容

以下、当該論文 [2] を翻訳しながら、引用された文献も適宜挙げながら、内容を紹介したいと思います。

COVID-19の大流行により、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンなどの遺伝子ワクチン(正確には核酸型生物製剤)が広く使用されるようになりました。また、ブースター接種も行なわれていますが、オミクロン変異体に見られる高度に変異したスパイクタンパクに対する有効性は限定的です。

山本医師は、最近のランセット論文 [3] で示されたワクチン接種者における免疫低下を挙げています。この研究は、スウェーデンのワクチン接種者と未接種者を対象として行なわれ、COVID-19ワクチン2回接種後に8カ月経過したワクチン接種者の免疫機能は未接種者に比べて低下しており、特に高齢者や既往症のある人においてより顕著であることが示されました。ただし、この論文の結論は、ワクチンは時間経過とともに効力が低下するが、有効性はなお良好に維持されており、「ブースターとして3回目のワクチン接種を行うことの根拠を補強するものである」というものです。

欧州医薬品庁は、頻繁なブースター接種が免疫反応に悪影響を及ぼし、有用でない可能性を勧告しています [4]。各国はブースター接種に慎重な姿勢をとっており、イスラエル、チリ、スウェーデンなどいくつかの国では、4回目の接種をすべての人にではなく、高齢者やその他のグループのみに提供しています。

免疫力の低下はいくつかの要因によって引き起こされますが、山本医師は、まず、ワクチンmRNAにはウラシル塩基の代用してN1-メチルシュードウリジンが使われていることを挙げています、サイエンス雑誌に掲載された論文 [5] を引用しながら、この修飾されたmRNA(山本コメントではタンパク質となっている)は、制御性T(Treg)細胞の活性化を誘導し、結果として細胞性免疫の低下を招く可能性があるとしています。

通常のmRNAと比べて、修飾塩基が導入されたmRNAは、Toll様受容体 (TLR) と反応しにくく、細胞内の様々なRNAセンサー分子の感知(つまり、自然免疫の活性化)を回避できることが知られています。

このサイエンス論文 [5] は、まさにT細胞に起因する抗原特異的な炎症による自己免疫病を、Treg細胞を誘導できる修飾mRNAワクチンを用いて抑える可能性を調べたものです。研究では、実験的に自己免疫性脳脊髄炎を誘導するポリペプチドアミノ酸11個)をコードする天然型および修飾型のmRNAを作り、これを脂質ナノ粒子(LNP)に包んでモデルマウスに静脈注射し、脾臓での炎症性サイトカインを調べました。その結果、天然型mRNAでは炎症性サイトカインが強く誘導されている一方、修飾mRNAではほとんど誘導がありませんでした。すなわち、修飾mRNAは、エフェクターT細胞の減少とTreg細胞の誘発(自然免疫抑制)を促すということです。

上記の性質があるため、mRNAワクチンが投与された後、発現したスパイクタンパク質はすぐに減衰するわけではないと山本医師は指摘しています。エクソソーム上に存在するスパイクタンパク質は、4ヶ月以上にわたって体内を循環しています [6]。さらに、ファイザーによるモデル動物を使った薬物動態試験では、LNPが肝臓、脾臓、副腎、卵巣に蓄積することが示されていますし、LNPに内包されたmRNAは炎症が強いこと [7] もわかっています。

さらにコメントで指摘されていることは、新しく生成されたスパイクタンパク質の抗体が、抗原タンパク質を生成するためにプライミングされた細胞や組織を損傷させること [8]、血管内皮細胞が血流中のスパイクタンパク質によって損傷を受けること [9]、これにより副腎などの免疫系器官が損傷を受ける可能性があること、抗体依存性増強が起こり、感染増強抗体が中和抗体の感染予防効果を減弱させること [10] などです。また、武漢型ワクチンの抗原原罪(original antigen sin) [11] も挙げられており、これらのメカニズムがCOVID-19の悪化に関与している可能性があります。

免疫刷り込みによって、変異体対応のブースター接種をしたとしても、元の武漢型ウイルスに対する抗体が呼び起こされるだけというのは容易に予測されることであり、私の1年前のブログ記事で指摘しています。

すでに、COVID-19ワクチンと帯状疱疹を引き起こすウイルスの再活性化との関連を示唆する研究もあります。この状態は、ワクチン後天性免疫不全症候群(vaccine-acquired immunodeficiency syndrome, VAIDS)と呼ばれることもあります [12]

この山本論文では、静岡県立岡村記念病院心臓血管外科では、2021年12月以降、COVID-19以外にも、制御困難な感染症の症例に遭遇していることが述べられています。たとえば、開心術後に炎症による感染症が疑われ、複数の抗生物質を数週間使用しても制御できない症例が数例あったこと、患者に免疫低下の兆候が見られ、死亡例も数例あったことが述べられています。感染症のリスクが高まる可能性もあり、今後、術後予後を評価する様々な医療アルゴリズムの見直しが必要になるかもしれないとしています。

ワクチン投与による免疫性血小板減少症(VITT)などの有害事象は、これまでマスコミの偏向報道により隠されてきました。当該病院では、このような原因が認められるケースに多く遭遇し、手術入院患者のヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体スクリーニングをルーチンに実施するなどの対策をとっているものの、解決には至っていないこと、ワクチン接種開始以降、4名のHIT抗体陽性者が確認されていることが述べられています。このような頻度でHIT抗体陽性者が発生することは過去に例がなく、COVID-19ワクチン投与後のVITTによる死亡例も報告されています [13]

山本論文では、安全対策として、これ以上のブースター接種は中止することが提言されています。また、日本では本疾患群に対する医師や一般市民の認知度が低いため、インフルエンザワクチン接種のようにCOVID-19の接種歴が記録されないことが多いですが、患者のカルテには、接種日および最終接種からの経過を記録しておく必要があることが強調されています。さらに、免疫力の低下を防ぐために実施可能な対策として、深部体温を維持するためのアセトアミノフェンを含む非ステロイド性抗炎症薬の使用制限、抗生物質の適切な使用、禁煙、ストレスコントロール、周術期の免疫抑制を引き起こす可能性のあるプロポフォールを含む脂質エマルジョンの使用制限、などの報告があることが紹介されています。

これまで,mRNAワクチンのメリット・デメリットを比べながら,ワクチン接種が推奨されてきたわけですが、パンデミックの抑制が進むにつれて、ワクチンの後遺症も顕在化してきました。これに関連する仮説として、遺伝子ワクチンのスパイクタンパク質は、心血管疾患、特に急性冠症候群増加の起因となるというものがあります。また、免疫機能の低下による感染症のリスクのほか、循環器系を中心に、これまで明確な臨床症状として現れずに隠れていた未知の臓器障害のリスクも考えられます。

山本医師は、侵襲的な医療行為に先立つ慎重なリスク評価が不可欠であり、これらの臨床的観察を確認するために,無作為化比較試験がさらに必要であることを強調しています。結論として,COVID-19ワクチン接種は,重症患者における感染症の主要な危険因子であると結んでいます。

おわりに

今回の論文 [2] のように、現場の医師から、mRNAワクチンのブースター接種を中止すべきという声が出てきたことはきわめて重要です。確かに、ワクチン接種は、デルタ変異体による流行において発症、重症化、死亡リスクを減らす効果があったと考えられますが、最近では接種者と未接種者であまり差がないことが、アドバイザリーボードの資料でも明らかになっています。むしろ、ワクチン接種のデメリットや回数が増えることによるリスクの方が大きいことを示す研究が増えているような気がします。

VAIDSをはじめとして、ワクチンの負の効果を指摘しているセネフらの主張 [12] は相変わらず、デマ扱いをされています [14]。彼女らの論文が、メジャーな医学・生物学雑誌に掲載されていないことからも風当たりが強いことがうかがわれます。一方で、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療のために、「非炎症性mRNAワクチン」が有効ということもわかっているのです [5]。非炎症性ということは、抗原特異的エフェクター制御性T細胞の拡大を誘発する、すなわち細胞性免疫を抑えるということであり、同じ修飾型mRNAを使っているCOVID-19ワクチンにも言えることです。

免疫刷り込みによる、新規変異体対応ワクチンの「空振り」は起こりえることであり、ブースター接種の繰り返しに効果がなく、かえって免疫に害があることは昨今の海外の当局の対応に現れています。おそらく厚生労働省もそのうちブースターの対応を見直す時期が来るのではないでしょうか。

テレビからは依然としてワクチン推奨のCMが流れてきます。各自治体もブースター接種を進めています。しかし、個人的には、高齢者に対するブースター接種のメリットはまだあるにしても、一般的に修飾mRNA型生物製剤を健康体に打つメリットは、デメリットを上回ることはないと考えます。つまり、接種を避けるべきと思いますが、その正否に対する答えがわかるのは数年後になるでしょう。

引用文献・記事

[1] NHK NEWS WEB: コロナワクチン3回目接種終了 全人口の59.8% (6日公表). 2022.06.06. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220606/k10013660061000.html

[2] Yamamoto, K..: Adverse effects of COVID-19 vaccines and measures to prevent them. Virol. J. 19, 100 (2022). https://doi.org/10.1186/s12985-022-01831-0

[3] Nordström, P. et al.: Risk of infection, hospitalisation, and death up to 9 months after a second dose of COVID-19 vaccine: a retrospective, total population cohort study in Sweden. Lancet 399, 814–823 (2022). https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)00089-7

[4] European Centre for Disease Prevention and Control: Interim public health considerations for the provision of additional COVID-19 vaccine doses. Sept 1, 2021. https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/covid-19-public-health-considerations-additional-vaccine-doses

[5] Krienke, C. et al.: A noninflammatory mRNA vaccine for treatment of experimental autoimmune encephalomyelitis. Science 371, 145–153 (2021). https://doi.org/10.1126/science.aay3638

[6] Bansal, S. et al. Cutting edge: circulating exosomes with COVID spike protein are induced by BNT162b2 (Pfizer–BioNTech) vaccination prior to development of antibodies: a novel mechanism for immune activation by mRNA vaccines. J Immunol. 207, 2405–2410 (2021). https://doi.org/10.4049/jimmunol.2100637

[7] Ndeupen, S. et al.: The mRNA-LNP platform’s lipid nanoparticle component used in preclinical vaccine studies is highly inflammatory. iScience 24, 103479 (2021). https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.103479.

[8] Yamamoto K. Risk of heparinoid use in cosmetics and moisturizers in individuals vaccinated against severe acute respiratory syndrome coronavirus. Thromb J. 2021. https://doi.org/10.1186/s12959-021-00320-8.

[9] Lei Y, Zhang J, Schiavon CR, He M, Chen L, Shen H, et al. SARS-CoV-2 spike protein impairs endothelial function via downregulation of ACE 2. Circ Res. 2021;128:1323–6. https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.121.318902.

[10] Liu Y, Soh WT, Kishikawa JI, Hirose M, Nakayama EE, Li S, et al. An infectivity-enhancing site on the SARS-CoV-2 spike protein targeted by antibodies. Cell. 2021;184:3452-66.e18. https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.05.032.

[11] Cho A, Muecksch F, Schaefer-Babajew D, Wang Z, Finkin S, Gaebler C, et al. Anti-SARS-CoV-2 receptor-binding domain antibody evolution after mRNA vaccination. Nature. 2021;600:517–22. https://doi.org/10.1038/s41586-021-04060-7.

[12] Seneff, S. et al.: Innate immune suppression by SARS-CoV-2 mRNA vaccinations: the role of G-quadruplexes, exosomes, and MicroRNAs. Food Chem. Toxicol. 164, 113008 (2022). https://doi.org/10.1016/J.FCT.2022.113008.

[13] Lee, E. J. et al. Thrombocytopenia following Pfizer and Moderna SARS-CoV-2 vaccination. Am J Hematol. 96, 534–537 (2021). https://doi.org/10.1002/AJH.26132.

[14] Reuters: Fact Check-‘VAIDS’ is not a real vaccine-induced syndrome, experts say; no evidence COVID-19 vaccines cause immunodeficiency. 2022.02.11. https://jp.reuters.com/article/factcheck-vaids-fakes/fact-check-vaids-is-not-a-real-vaccine-induced-syndrome-experts-say-no-evidence-covid-19-vaccines-cause-immunodeficiency-idUSL1N2UM1C7

                       

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)