Dr. Tairaのブログ

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短期間での重篤化・致死はオミクロンの特徴?

オミクロン変異体による第6波流行において、いくつかの病態の特徴が示されています。その一つが、患者が肺炎を起こさず、短期間で重篤化し死亡する事例が多いことです。テレビで、ある医療専門家が、「あっという間に亡くなる」とコメントしていたことが耳に残っています。

新聞は、国立感染症研究所が、1月14~24日に重症か死亡の報告があった81人の患者を調査したことを伝えました [1]。それによれば、多臓器不全や重い肺炎は1割前後しかない一方、症状の進行が速く、発症からの日数の中央値は重篤まで4日、死亡までは3日だったとされています。鈴木基・感染研感染症疫学センター長は、「数が少なく結論は出せないが、デルタ株より短い印象だ」と語っています。 

オミクロンによる被害で最悪なのが、第4波でも大きな被害を出した大阪です。ここでも発症3日以内の死亡が増加していることが報道されています [2]。大阪の最悪状況はそもそも吉村府政に帰因するところも大きいのですが、それにしても3日以内の死亡が増えているというのは異常です。

私はこれがずうっと気になっていて、「肺炎を起こしにくい」はまだ理解できるけれども、「あっという間に死亡する」というのはどういうことか、と疑問に思ってきました。多くの医療専門家からは、主な要因として、「高齢者や基礎疾患をもつ患者の死亡が多いから」とか「ワクチンの効力が弱まった」とか説明されていますが、それは第1波からずうっと言えることです。そして、第1〜第4波における重症化や死亡は、ワクチン接種前のことであり、それらと比べれば、第6波で「ワクチンの効力が弱まった」は理屈になっていません。今ひとつ説得力に欠けます。

そこで、実際に各流行の波における新規陽性者数と死者数のピークを比べてみれば、何らかの傾向が見えるのではないかと、Our Word in Dataからのデータを探ってみました。実際は、個々の患者の事例について感染・発症日から死亡に至るまでの日数をとればよいのですが、私たちがそのデータを見ることは不可能です。そこで、それを近似すると考えられる新規陽性者数と日あたりの死者数のピークを比べるということを考えたわけです。

しかし、ここで問題となるのが、日本の統計崩壊です。とくに第6波では、みなし陽性が導入され、国よる検査抑制策もあって1月終わりから統計が崩れており、新規陽性者数のピークが実際より早く出ている可能性があります(→国が主導する検査抑制策統計崩壊で起こった第6波流行ピークのバイアス )。神奈川県のように検査数と陽性率を公表しないというとんでもない自治体も出てきて、統計がめちゃくちゃになっています。

とはいえ、前のブログ(→統計崩壊で起こった第6波流行ピークのバイアス)でも書いたように、統計崩壊の状況でも新規陽性者数のピークを検査陽性率のピークで近似できる可能性があります。

そこで、各流行における二つの感染ピークの指標(新規陽性者数および陽性率のピーク)と死者数のピークのズレを分析してみました(表1)。ここでは、関西と関東で1ヶ月の流行ピークのズレがある第4波は除きました。表に見られるように、統計崩壊した第6波を除くと、陽性者数のピークと陽性率のピークはほぼ一致するか、若干後者が早く出る傾向にあります。これは日本以外の国でも当てはまります(→統計崩壊で起こった第6波流行ピークのバイアス

表1. 各竜流行の波における新規陽性者数(7日間移動平均)および検査陽性率(7日間移動平均)のピークからの日あたり死者数ピーク(7日間移動平均)のズレ(Our World in Dataのデータを参照して作成)*

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*脚注: 表に示したピークはすべて7日間移動平均値なので、実際の統計のピークとは異なり、数日遅れて出ていることに注意.

ここで、新規陽性者数と死者数のピークのズレ(表1、A-C)および陽性率と死者数のピークのズレ(表1、B-C)の平均値(右端カラム赤字)で話を進めます。

まず、第2波と第3は25日前後のピークのズレの値で似ています。第1波はこれよりも5日程度小さいですが(19.5日)、実は第1波では、「37.5℃で4日間待つ」という悪名高かった検査の目安があったため、検査が非常に遅れたことを考慮しなければなりません(→無症状の濃厚接触者はPCR検査を受けられない)。

そうすると、他の流行の波と比べて、(検査確定)陽性者数のピークと死者数のピークの間が少なくとも4日間は短くなっている可能性があります。つまり、実際の第1波は、第2、3波と同じ程度のピークのズレ(25日前後)であった可能性が大きいのです。

これらの流行の波と比べると、第5波は6日間ほど短くなっており、第6波ではさらに短くなっていることがわかります。第6波では、検査減らしのために陽性者ピークが早く出ている可能性があり、真のピークは陽性率の方が近いと考えられます。そこで陽性率のピークで考えると、ピークのズレは12日となり、ワクチン未接種だった第1−3波のほぼ半分に短縮されることになります。

確かに第6波で、死亡までの日数は短縮されていることがわかりましたが、これは何だかおかしいです。果たして、発症から死亡までの短縮は、ウイルス変異体の違いによる病害性の影響でしょうか。オミクロン変異体は強毒性とは言われておらず(むしろ当初軽症と言われた)、そうだとしたら、いきなり重篤になり、死亡するというのは変です。

ここで、死亡までの日数が第5波で短縮され、第6波でさらに短縮されたことに注目したいと思います。第5波、第6波と第1-3波の違いは、ウイルス変異体の型を別にすれば、ワクチン接種があったかなかったかの違いです。そうです、ウイルスの病毒性でないとするなら、ワクチンの影響では?と考えたくなるような現象です。

第5波、第6波における死亡者とワクチン接種との関係については、手元にデータがないので何とも言えません。しかし、少なくとも第6波で死亡した高齢者には、多くのワクチン完全(2回)接種済みの人が含まれると考えられます。そして、大部分が昨年の夏で接種済みになっていますので、接種後半年以上を経過し、効力が低下していると考えられます。効力が低下したところに、オミクロンに感染し、短期間で亡くなったという状況が考えられるわけです。

前のブログで紹介したように、英国のあるウェブメディアは、英国におけるワクチン完全接種者は未接種者よりも新型コロナ感染による死亡リスクが全年齢層において高くなっていることを報告しています(→ワクチン完全接種者は未接種者よりもコロナ死亡率が高い?)。そして、この原因としてワクチンの効力が低下した場合の後天性免疫不全の可能性を挙げています。この仮説はフェイク扱いされていますが、少なくとも、ワクチンとして使われている修飾型mRNAが細胞性免疫を抑えることは、サイエンス誌上で報告されています [3]

私は、オリジナルの武漢株のスパイクタンパク質に基づいて設計されたmRNAワクチンを受けた後、時間的な効力低下が起こり、そこに(デルタ型や)オミクロン型に感染したことにより、抗体依存性免疫増強(ADE)が起こった可能性もあるのでは?と考えています。すなわち、第6波における短期間での重篤化、死亡は、オミクロンの特徴というわけではなく、ワクチンの効力が低下したというわけでもなく、mRNAワクチンが及ぼす負の影響ではないかという疑念があるわけです。

もし、ADEあるいは免疫不全の可能性があるとするなら、この先、新たな変異体による感染が起こった場合、mRNAワクチンを完全接種した全年齢層において死亡リスクが高くなる懸念があります。英国での事例はその先駆けではないかと思われるわけです。ADE、その他のワクチンの負の影響の可能性について、専門家による研究と検証を強く願うものです。

mRNAワクチンの主要メーカーの一つ、ファイザー社のアルバート・ブーラCEOは、オミクロン変異体への現行ワクチンの効果について、入院や死亡はかなり予防できるものの、3回接種後も感染予防はあまり期待できず持続期間も長くないと語り、4回目接種の必要性に言及しています [4]。いやはや、あたかも在庫処分のように、4回目の接種を進めるとは..という感じです。武漢型の現行ワクチンについては、利権や金儲けが絡むこともあって、メーカーやワクチン推奨者の話はもはや信用できなくなりました。

引用文献・記事

[1] 東京新聞: オミクロン株の特徴が明らかに 重症化率は低いが短期間で重篤化 高齢者には脅威. 2022.02.14. https://www.tokyo-np.co.jp/article/158067

[2] NHK NEWS WEB: 大阪府 新型コロナ第6波分析 発症3日以内に死亡の割合増加. 2022.03.15. https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20220315/2000058896.html

[3] Krienke, C. et al.: A noninflammatory mRNA vaccine for treatment of experimental autoimmune encephalomyelitis. Science 371, 145–153 (2021). https://doi.org/10.1126/science.aay3638

[4] CNN.co.jp: ファイザーCEO、4回目接種は「必要」 全変異株対応のワクチン開発も. 2022.03.14. https://www.cnn.co.jp/business/35184839.html

引用したブログ記事

2022年3月6日 ワクチン完全接種者は未接種者よりもコロナ死亡率が高い?

2022年2月24日 統計崩壊で起こった第6波流行ピークのバイアス

2022年2月14日 国が主導する検査抑制策

2020年4月7日 無症状の濃厚接触者はPCR検査を受けられない

                      

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年〜)