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第5波感染流行が首都圏で減衰した理由

カテゴリー:感染症とCOVID-19

はじめに

第5波のCOVID-19流行は大きな被害をもたらしていますが、東京や周辺の県での新規陽性者数はピークを過ぎて減衰に入ったように思われます。全国的にもやや遅れて減衰するか高止まりになっているようです。

政府は7月12日に緊急事態宣言を東京都に発出し、8月2日には6都府県へ拡大しました。それ以降23都府県に拡大されています。しかし、これといった新たな感染防止対策は施していません。それにもかかわらず、少なくとも東京や周囲を含めた首都圏では減衰に向かっている理由は何なのでしょうか。テレビやウェブ記事を通して専門家のコメントも聞こえてきますが、どれも決め手がありません。はっきり言って理由はわからないというところでしょう。

第5波以前の4回の流行も、第1波の大規模接触削減策の効果を除いては、なぜ減衰したのかわからないのが実状です。専門家による検証も行なわれていないように思います。ただ感染伝播の性質上、実効再生産数が1.0を割り始める環境条件になると、その条件が維持される限りは、一気に坂を下るように感染者数が減少していくことは一般的に見られる現象です。

問題はその環境要因が何かということです。ここで、かかわる要因の複雑性は承知の上で、減衰の理由を考えてみたいと思います。キーワードはSARS-CoV-2空気感染です。

1. 減衰に影響を与える要因

呼吸器系病原ウイルスの感染伝播に及ぼす要因を以下に挙げます。検査・隔離公衆衛生対策ワクチン接種という積極的な感染抑制対策に加えて、感染による免疫賦活宿主の抗ウイルス活性(RNA編集)という内的要因、人流、気温、湿度、風(室内では換気)、紫外線という生態的、物理的・自然環境要因が加わります。

1) 検査・隔離

2) 公衆衛生対策

3) 自然感染とワクチン免疫

4) 宿主抗ウイルス活性

5) 人流

6) 気温

7) 湿度

8) 紫外線

9) 風(換気)

10) 天気(降雨)

重要なのは上述したように空気感染です。SARS-CoV-2の場合は、その主要伝播様式がエアロゾル感染(広義の空気感染)であることは、パンデミックが始まった当初からこのブログでも指摘しました(新型コロナウイルス感染症流行に備えるべき方策新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効果)。

当初からかなり最近まで、世界保健機構WHOも日本の医療専門家もSARS-CoV-2の空気感染を否定していたことには驚いたものですが(今でも厚労省は認めていません)、これまでの各国の経験や研究でそれは確実なものになっています(→感染力を増した変異ウイルスと空気感染のリスクあらためて空気感染を考える新型コロナの主要感染様式は空気感染である)。

つまり、感染流行の減衰を考える場合、ウイルスを含むエアロゾルの消長と接触に影響を与える要因を考慮すればよいということになります。

ウイルスは最初局所的に急激に伝播し、多くは人口密集地が起点になります。感染拡大するにつれて、ウイルス汚染の物理的範囲が広がりますが、それとともに人と人との距離と時間的経過が感染スピードに対して負に働く効果が強くなります。簡単に言えば感染可能な人口密度が低いところほど感染スピードは鈍くなります。

ここにロックダウン(大規模接触削減)、検査・隔離という感染者非接触対策が導入されると、それが大規模である程、徹底される程、ウイルスの伝播機会が失われていきます。マスク着用、手指衛生、物理的距離の確保、換気等の公衆衛対策はこれに輪をかけて効果的になります。

このように感染者の全体的な隔離スピード(接触削減等も含む)がウイルスの伝播スピードを上回ってくれば、感染流行はピークから減衰に向かいます。実際は、隔離による感染源数の低下に加えて、自然感染が進むことで起こる感染可能な(免疫がない)リザーバーの人口密度の低下が、流行減衰の大きな要因になります。流行の上昇スピードが速ければ速いほど、環境中のウイルス汚染の濃度が高ければ高いほど、感染可能リザーバーの密度低下が速く起こり、自然と減衰も早まります。つまり、対策の影響はありますが、自然に任せれば、流行ピークは左右対称の相似形になると考えられます。

これらには症状の有無に関わらない感染による集団的免疫賦活に加えて、感染者の抗ウイルス活性(APOBECによるRNA編集機構)が関わっている可能性もあります。つまり、ある程度感染伝播が進行すると、集団免疫に加えて感染者の抗ウイルス作用によって、ウイルス排出量が減少し、二次伝播のリスクを低くする可能性があります。

ウイルスの感染力とともに、残存性が大きな要素になります。一般に温度が高いほど、湿度が高いほど、紫外線が強いほど、呼吸器系病原ウイルスの残存性は低下します。すなわち、高温多湿の日本の夏はウイルスの残存力が低下すると考えられます。

2. 検査・隔離

感染伝播において、重要な事実として、ウイルス伝播の90%はスーパースプレッダーとよばれるわずか2%に相当するウイルス排出量の多い感染者によってもたらされることが挙げられます [1](→感染者の2%がウイルス伝播の90%に関わる)。したがって検査・隔離が広がれば平均的に感染機会がなくなっていくというのではなく、スーパースプレッダーとその周辺が優先的に隔離されれば効果的に感染拡大を抑制できる(実効再生産数を下げる方向に向かわせる)ことになります。

これは、日本が当初からクラスター対策としてとった戦略の基本的考え方と同じです。しかし、これまでのクラスター対策の失敗は、検査でスーパースプレッダーを特定しなかったことと、その周辺を検査拡大して徹底的に追跡調査しなかったことです。特に有症状者に限定して、むしろ患者確定として検査を行なっていたことは、感染者のダダ漏れが起こり、防疫対策としては失敗でした。

スーパースプレッダーは症状にかかわりなく存在し、検体のリアルタイムPCRのCt値でおおまかに特定できます。感染拡大抑制のためには、低いCt値を有する感染者の周辺(住居、施設、職場環境など)は濃厚接触者の定義にかかわりなく、検査拡大して追跡調査すべきです。

第5波流行では、検査・隔離を行なっていく過程で、偶然効率的にスーパースプレッダーが捉えられ、感染拡大が抑えられたことも考えられなくはないですが、可能性は低いでしょう。東京都や神奈川県は8月から積極的疫学調査が縮小され、無症状の濃厚接触を追跡しなくなっているので、何とも言えません。むしろ、検査を縮小することで、見かけ上感染者数が減っている可能性もあります。

東京都では通常3割以上存在する無症状陽性者数が1割近くまで落ち込み、疫学調査縮小によって、見かけ上新規陽性者数が減っているように見えていることを、以下の引用ツイートで示しました。

今日(9月7日)の時点で、検査数は8月のピーク時の6割近くまで落ち込んでいますが、陽性率は依然として10%を超えており、無症状陽性者も10%台であり、検査が追いついていないのは明らかです。依然として新規陽性者数は過小評価されています。

2. 人流による影響

東京での緊急事態宣言は7月12日に発出されましたが、おそらく東京オリンピック開催のお祭り気分もあり、期待した以上の人流抑制効果は生みませんでした。事実、前回の緊急宣言発出後の人流低下と比べるとそのスピードは鈍く [2]、宣言発出も遅れました。しかし、注視すべきことは、主要都市圏の人出のバックグランドがそもそもパンデミック以前と比べて低くなっていた事実です。この低いバックグランドの上に、緊急宣言発出後、人流が(徐々にですが)減ってきた影響を考える必要があります。

東京、埼玉、千葉、神奈川の中心地における人出の推移を、NHKの特設サイト「新型コロナウイルス」から拾って図1に示します。人流抑制効果がないと言われた緊急事態宣言ですが、それでも首都圏は少しずつですが、主要駅や繁華街では人出が減少していました。そこで、図3のグラフを画像解析して、定量的に人出の推移を求めてみました。

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図1. 東京(左)の中心街および大宮駅(右上)、千葉駅(右中)、横浜駅(右下)周辺の人出の推移. が平日(藍色横線パンデミック直前のレベル)、赤色が休日(赤色横線パンデミック直前のレベル)の人出、

6月20日に3回目の緊急宣言が解除されてから7月12日までの人出の最大レベルと比較すると、8月10日時点(発症別感染者数が最多の日、後述)における人出の減少率は、東京駅周辺で19%、渋谷スクランブル交差点で28%、新宿歌舞伎町(夜間)で27%となりました。また首都圏の県では、6都府県に拡大された8月2日以降人出の減少が目立ち始め、8月10日の時点で大宮駅周辺で23%、千葉駅周辺で15%、横浜駅周辺で28%の減少率となりました。都営地下鉄の利用率は、お盆の時期で最大50%前後減少していました。

アドバイザリーボードの資料でも、7月12日の緊急事態宣言以後から8月中旬までの人流減少傾向が示されています [2]。また実効再生産数は7月末には下方に向かっていることが示されています。

結果として、首都圏の人出は第5波流行のピーク時においては、パンデミック直前と比べると3–6割まで低下していました。つまり、緊急事態宣言に慣れっこになってしまっている国民ですが、そもそも宣言前からの自粛生活・行動の連続で街中の人出のバックグランドを下げており、緊急事態宣言とともにわずかに外出控えが起こり、それが続いたということが見てとれます。感染者急増によるリスク回避行動の影響も多少あるかもしれません。

オリンピックという要素がなければ、緊急事態宣言発出は早まり、もっと人出は減り、流行の規模は小さくなっていたかもしれません。

3. 気温、湿度、降雨の影響

ウイルスは宿主以外の環境では単なる粒子(ヴィリオン)です。この粒子は温度、湿度、紫外線などの環境要因にランダムに影響を受け、その程度で残存性が決まります。また、空気中のエアロゾルの濃度は天候に左右され、風雨によって希釈・除去されます。

Casteroら [3] は腸管系ウイルス(TGEV) およびマウス肝炎ウイルス (MHV) を使ったモデル実験から、固体表面においては低温と乾燥がウイルスの残存性を高め、逆に40℃、湿度80%の条件では急速に不活化されることを報告しています。SARS-CoV-2についても気温低下、湿度低下で残存性が高くなり、空気感染の可能性が高くなることについて多くの報告があります [4, 5, 6]

Feng [7] は、数値モデルを用いて、相対湿度40%を下限、95%を上限としてエアロゾルの消長解析を行ないました。その結果、湿度40%は咳の液滴中の水分蒸発を活発にし、液滴の収縮と空気中での長時間の懸濁につながる一方、湿度95%では吸湿性の成長により液滴のサイズが大きくなり、人と地面の両方への沈着率が高くなることを見いだしました。

米国安全保障省のウェブサイト [8] には、紫外線強度、温度、相対湿度のパラメータを変化させることで空気中のSARS-CoV-2の減衰スピードを計算できるページがあります。このページを使って、紫外線強度を一定にして、温度と湿度を変えて計算したのが表1です。温度10℃、湿度50%という条件に比べると、30℃、70%の条件では半減期と99%減衰時間が半分程度に短くなることがわかります。

表1. 空気中のSARS-CoV-2の残存性と不活化に及ぼす温度および湿度の影響(米国サイト [8] に基づいて計算:温度30℃、湿度70%が設定できる上限)

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気象庁のデータによれば、東京における今年7月、8月、9月の相対湿度は、それぞれ平均値で83、80、90%ときわめて高いです [9] 。また平均気温は7月で30.3℃、8月で31.6℃です。ウイルスが活性を維持する条件としては、きわめて不都合な東京の夏の環境でした。ちなみに私の家では、8月中、ずうっとエアコンを使っていましたが、室内の相対湿度が70%を超えた日が今日まで10日以上ありました(図2)。

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図2. 東京および筆者自宅における平均相対湿度(%)の推移(2021年8月1日〜9月4日). 東京のデータは気象庁ウェブサイトより取得、自宅データ(1日3回以上換気を行なったエアコン付きリビングルーム内)は湿度計による9時、15時、21時計測の平均値.

降雨時の相対湿度は100%近くとなり、雨による物理的衝撃もありますので、外気中のエアロゾルは地面に沈着し、除去されると考えられます。一方、複数の研究例のメタ解析によれば、降雨量とCOVID-19の発生率と正の相関があるという報告もあり [10]、より湿度の高い屋外環境では、乾燥した室内空気を使用する機会が多くなるので、その結果、より多くのCOVID生存率を促進することになるとも説明されています [5]

しかし、国や条件の異なる事例でのメタ解析で降雨とCOVID-19発生率を論じるのは適切ではないと思われますし、湿度の高い外環境より、乾燥した室内環境にいることで感染を促進するというのを一般化するのも無理があると考えられます。

やはり、雨天の日は、外気環境のエアロゾルが沈着・除去され、室内外の相対湿度が上がり、さらに外出控えで人の接触が減ることで、ウイルスの減衰スピードは高まると考えた方が妥当でしょう。湿度上昇はエアロゾルの減少とともに、固体表面に付着したウイルスのエアロゾル化(再浮上)も防ぐ効果があると思われます(この点については研究が必要)。

その上で、東京の感染状況と天気(降雨)がどのような状況だったかを示したのが図2です。図では雨天の日を薄青色の影をつけて示してあります。今年の8月は雨天が多く、特に東京オリンピックが閉会する前後から、雨天が集中したことが特徴的であり、感染ピークと重なりました(図3上)。この雨天(8月7日−9日、8月12日−18日)は相対湿度の上昇と対応しています(図2)。この雨続きによって、感染ピークが頭打ちになり、減衰に向かうことは前のブログ記事でも予測しました(→デルタ変異体の感染力の脅威)。

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図3. 東京都における新規陽性者数の推移(上)、発症日別の陽性者数(下)、および雨天の日(薄青色の影部分). NHK特設サイト「新型コロナウイルス」および東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトからの転載図にgoo天気(https://weather.goo.ne.jp/past/662/20210800/)の情報を加えて作図.

発症日ごとの新規陽性者数(図3下)で見るとより明確になりますが、8月10日に最多数3,827人を記録しており、その少し前(8月8日)から、雨天が多くなり、お盆を挟む8月12–17日の期間は雨の日が続きました。すなわち、感染者が増え過ぎて追跡できなくなった(検査陽性率が飽和に近づいた)頃にオリンピックが終わり、幸運にも雨天が続き、雨で外出する人も余計少なくなったと同時に、住居・建物内の湿度が最高レベルに達し、室内外のエアロゾルが減少したということが考えられます。それにお盆の時期が重なり、都心から人影が減ったということになります。

要約して言えば、8月からの6都府県への緊急事態宣言の拡大とお盆に伴う人出の減少(パンデミック直前からみれば3-6割低下)に雨天が続いたという偶然性の重なりによって、一気に実効再生産数が1を割るような状況が生まれたのではないかと推察します。そして、首都圏からの感染の滲み出しが抑制され、ワクチン未接種のリザーバーが小さくなり始めた(感染の主体が症状の出ないワクチン接種者に移り始めた)ことで、やや遅れて全国レベルでの急速な減衰が始まったということではないでしょうか。

感染者集団の抗ウイルス活性(RNA編集)が効けば、ウイルス排出量は減る可能性がありますが、もしワクチンの効果もあるとすれば、ブレイクスルー感染者が増えて全体的にCt値が上がっていくことが予想されます。つまり、感染者集団の抗ウイルス活性に加えて、ワクチン接種によってウイルス排出量が少なくなり、伝播しにくくなるわけです。

9月に入ってからも首都圏は雨天続きです。もし、このブログ記事で述べるように、雨による湿度上昇とエアロゾル洗浄・除去がウイルス伝播抑制に働くとするなら、今日(9月7日)以降、未感染者およびワクチン未接種者のリザーバーの縮小とも相まって首都圏では新規感染者数はさらに激減するはずです。

4. 昨年夏との比較

昨年夏は第2波の感染流行が起こりました。そこで、今年の夏の流行と比較することでヒントになることがあると思いましたが、ウイルスの性質をはじめ両者でかなり状況が異なるので比較は難しいです。

第2波は今年の流行より時期的にやや早く、8月3日に最多の発症日基準新規陽性者数234人を記録しました。今年と比べれば1/16のレベルです。7月23日にはGoToトラベルキャンペーンが始まり、緊急事態宣言は発出されなかったにもかかわらず、第2波流行は9月に入って減衰しました。

この流行をもたらしたのは日本変異型のウイルス(B.1.1.284)です(→第2波の流行をもたらした弱毒化した国内型変異ウイルス)。この変異体は、メインプロテアーゼ酵素(3CLPro)に変異があり、従来の株に比べるとその活性(基質結合能)が半減していました。従来株に感染した患者に比べて重症度は1/4程度であり、軽症となる可能性が高かったとされました。今年のデルタ変異体に比べれば、感染力も重症化率も圧倒的に低かったと思われます。

緊急事態宣言がなかったことで、首都圏の街中での人出はほとんど変化がありませんでしたが、4月の第一回目の緊急事態宣言解除からの余波もあって、人出は元に戻らず、パンデミック直前の5–6割にとどまっていました。つまり今年の夏と同じレベルです。

この年の8月は雨天日がわずか2日(今年は9日)でしたが、7月は全体的に雨が多く、18日間を記録しました(今年は12日)。7月、8月の相対湿度の平均値はそれぞれ83%および80%でした。つまり、第2波は弱毒化した感染力の弱いウイルスによる流行であり、流行の立ち上がりからピークに至るまで、ずうっと雨が続いた影響でそれほどの流行にならず、8月以降は減衰に向かうことになったと推察します。

おわりに

以上、第5波流行が減衰した理由は様々な要因があって複雑であり、断定的に述べるのは難しいですが、SARS-CoV-2の主要感染様式が空気感染であるということを踏まえると、室内外環境中のウイルスを含んだエアロゾルの消長に絡んでいるのではないかというのが、ここでの個人的見解です。以下に考えられる主な理由を挙げます。

1) 8月中旬に雨天が多く、平均相対湿度80%以上の環境条件が外環境、住居・建物内のウイルスの残存性を低下させ、降雨で地域のエアロゾルが除去されることで、空気感染の機会が大幅に減った

2) 長期間の自粛による人流低下のバックグランドの上に発出された緊急事態宣言後(特に8月上旬以降)の人出減少・リスク回避行動と、雨天での外出控え、エアロゾルの洗浄が重なり、感染伝播減少に効果的だった

3) 積極的疫学調査の縮小による検査数減少が見かけの陽性者数を減らし、かつ潜在的無症候性感染者がカウントされなかった

4) 自然感染とワクチン接種率の上昇により、ウイルス排出量が減り、非免疫獲得者のリザーバーが小さくなる(集団免疫効果)と同時に、感染の主体がワクチン接種者に移ったことで、無症状ブレイクスルー感染がカウントされなくなった。

これらに加えて、冒頭で述べたように、感染宿主側からの抗ウイルス活性(ABOBECによるC→U脱アミノ活性)が働き、ウイルス排出量が激減した可能性もあります。いずれにせよ、政府によって、特別な感染対策が施されて感染流行が減衰されたわけではないので、いずれ下げ止まりが起こると予測されます。

ワクチン非接種者の宿主としてのリザーバーの枠がますます小さくなり、バックグランドが全国500人程度のレベルで続けば、それを土台としてこの冬、新しい変異体によるワクチン・ブレイクスルー感染を中心とする第6波流行が襲来すると予測します。コロナウイルスに対してワクチンによる感染予防戦略は、もはや一時的にしか通用しません。免疫逃避の新しい変異体によって繰り返し流行が起こります。むしろ、今の遺伝子ワクチンの繰り返し接種による弊害が問題になってくる可能性もあります。

引用文献・ウェブサイト

[1] Yang, Q. et al.: Just 2% of SARS-CoV-2−positive individuals carry 90% of the virus circulating in communities. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 118, e2104547118 (2021). https://doi.org/10.1073/pnas.2104547118

[2] 第50回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月1日): 主要繁華街の滞留人口モニタリング. 2021.09.01. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000826601.pdf

[3] Casanova, M. L. et al.: Effects of air temperature and relative humidity on coronavirus survival on surfaces. Appl. Environ. Microbiol. 76, 2712-2717 (2020). https://doi.org/10.1128/AEM.02291-09

[4] Mecenas, P. et al.: Effects of temperature and humidity on the spread of COVID-19: A systematic review. PLoS One Published: Sept. 18, 2020
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0238339

[5] Ahlawat, A. et al.: (2020). An overview on the role of relative humidity in airborne transmission of SARS-CoV-2 in indoor environments. Aerosol Air Qual. Res. 20, 1856–1861 (2020). https://doi.org/10.4209/aaqr.2020.06.0302

[6] Raines,  K. S. et a.: The transmission of SARS-CoV-2 is likely comodulated by temperature and by relative humidity. PLoS One Published: July 29, 2021
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0255212 

[7] Feng, Y.et al.: Influence of wind and relative humidity on the social distancing effectiveness to prevent COVID-19 airborne transmission: A numerical study. J. Aerosol Sci. 147, 105585 (2020). https://doi.org/10.1016/j.jaerosci.2020.105585

[8] U.S. Department of Homeland Security: Estimated airborne decay of SARS-CoV-2 (virus that causes COVID-19). https://www.dhs.gov/science-and-technology/sars-airborne-calculator

[9] 国土交通省気象庁: 東京 2021年(月ごとの値) 詳細(気温・蒸気圧・湿度). https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s1.php?prec_no=44&block_no=47662&year=2021&month=&day=&view=a2

[10] Majumder, P. & Ray, P. O.: A systematic review and meta-analysis on correlation of weather with COVID-19. Sci. Rep. 11, 10746 (2021) https://www.nature.com/articles/s41598-021-90300-9

引用したブログ記事

2021年8月27日 新型コロナの主要感染様式は空気感染である

2021年8月16日 デルタ変異体の感染力の脅威

2021年7月5日 あらためて空気感染を考える

2021年5月25日 感染者の2%がウイルス伝播の90%に関わる

2021年4月13日 感染力を増した変異ウイルスと空気感染のリスク

2021年2月10日 第2波の流行をもたらした弱毒化した国内型変異ウイルス

2020年3月18日 新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効果

2020年2月19日 新型コロナウイルス感染症流行に備えるべき方策

                

カテゴリー:感染症とCOVID-19