Dr. Tairaのブログ

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醤油の作り方と種類

醤油は味噌やうま味調味料などとともに、私たちの食生活にはなくてはならない発酵調味料です。前のページで、醤油の種類や使い分けについて述べました
 
 
ここではあらためて醤油の作り方について簡単に紹介したいと思います。
 
醤油の原料は、大豆小麦、それに食塩です。これに種麹Aspergillus oryzaeというカビ)を混ぜて分解・発酵させ、できあがった熟成もろみを搾って出てきたろ液が
醤油です。その製造プロセスを図1に示します。
 
図1本醸造方式の製造法を示しますが、このほかに製造プロセスでアミノ酸を添加する混合醸造方式混合方式の製造法があります [1]。現在、80%の醤油が本醸造方式で作られています。
 
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図1. 本醸造方式 [1] の醤油の製造プロセス
 
醤油製造の第一段階は製麴(せいきく)の製造です。大豆と小麦を混ぜ、これに種麹を添加して培養したものが製菊です。これに食塩を混ぜてタンクの中で発酵させます。この段階を仕込と言い、乳酸菌Tetragenococcus酵母Zygosaccharomyces)が発酵の担い手として働きます。この段階は味や香りの生成にとても重要です。適宜かく拌を繰り返し、数ヶ月寝かせた後、最終的に出来上がるのが熟成もろみです。
 
熟成もろみはいわゆる味噌の状態であり、味噌も同様にして作ります(ただし、味噌は小麦の代わりに通常米を原料として使います)。熟成もろみを圧搾布の間を圧力をかけながら通すと、搾り汁(ろ液)が出てきます。これが生醤油(なましょうゆ)です。
 
生醤油はそのまま市場に出ることもありますが、通常は火入れという60℃程度の加熱処理による低温殺菌を行います。これにより殺菌と焦香(こがれこう)の付加が達成されます。焦香は火入れによって生じる醤油独特の香りで、私たちが経験する一般の醤油の香りに当たります。当然ながら生醤油には焦香がなく、穏やかな味と香りが特徴です。
 
火入れされた醤油はさらにろ過され、それがパックに詰められて製品となります。
 
前のブログ記事では、原料となる大豆の脱脂処理の有無で、丸大豆醤油脱脂加工醤油通常の醤油)を紹介しました。一方、塩分の量、原料、仕込の違いによって、こいくちうすくちたまりなどの醤油の種類に分けることができます(図2)。
 
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図2. 塩分および原料の違いによる醤油の種類
 
全国的に最も出回っているのはこいくち醤油で、80%以上を占めています。たまり醤油は原料に大豆のみを使うもので、東海地方を中心に生産されています。また、「しろ」と呼ばれるものは原料が小麦のみです。
 
一般的なこいくち、うすくちなどど呼ばれている醤油の塩分量や成分について示したのが図3です。たとえば、こいくちとうすくちの食塩量を比べると、ナトリウムレベルで後者の方が0.6%高いですが、これだけでもかなりしょっぱく感じます。
 
煮物などの場合、じっくりと色、味、コクをつけたいにもの場合はこいくち、色をあまりつけないで味とキレを出したい場合にはうすくちと使い分けされる理由がここにあります。

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図3. 醤油の種類別の成分(重量%)
 
上述した生醤油(なましょうゆ)は火入れをしていない醤油ですが、これと紛らわしいのが生醤油(きじょうゆ)という用語です。同じ漢字なのですが読み方が違います。「きじょうゆ」はまったくの料理業界用語で、だし、味醂、アルコール、甘味料などで味付けした醤油と、味付けをしていない醤油を比べるときに、後者を「きじょうゆ」と呼んで区別しています。
 
JAS法では「生醤油(きじょうゆ)」と呼べるのは塩の添加までとされており、原材料名に「大豆、小麦、食塩」の3つ以内の表記のある本醸造醤油のみになります。
 
ただし、本醸造方式というのは、アミノ酸液を添加する混合方式や混合醸造方式に対する用語であり、「アミノ酸添加がない」ということで区別されます。したがって、ややこしいですが、本醸造醤油にアルコールや甘味料が添加された場合でも、本醸造醤油と表示されるわけです。

すべての「すべての本醸造醤油が"きじょうゆ"とは限らない」ということになるでしょうか。

私は味噌、魚醤(魚と塩を漬け込んで発酵させた醤油)、うま味調味料を自分で作った経験はありますが、醤油を作ったことはまだありません。生きている間に何とかマイ醤油を作ってみたいと思います。
 
参考文献

1. 農林水産省:しょうゆの製造法.