醤油は、私たちの食生活にはなくてはならない調味料であり、伝統的発酵調味料の一つです。しかしながら、醤油の種類については意外と理解していないことも多いのではないかと思います。たとえば「普通の醤油」、「丸大豆醤油」、「生醤油」の違いがわかっている人は少ないかもしれません。今朝のNHKあさイチでは、その理解を助ける醤油に関する情報を提供していました。
まず、上記の丸大豆と普通の醤油ですが、原料となる大豆の前処理があるかないかの違いになります。大豆を丸ごとそのまま使うのが丸大豆醤油です。一方、普通の醤油では、脱脂した後の加工大豆を使います(図1)。
脱脂加工大豆は細かくなっているので、それだけ麹菌が作用しやすくなり、分解が進んで味に関わる成分が出やすくなります。したがってコクのある"濃い"醤油ができあがります。一方、丸大豆では分解の進みが緩やかなので、まろやかな味になります。
発酵してできた醤油は麹やそのほかの微生物が混じり合った「熟成もろみ」と呼ばれるものです。これを圧搾機(圧搾布に加重する装置)にかけて搾り出したものが醤油になります(図2)。
搾り出して得られた醤油はその後「火入れ」を行います。これは60℃前後で加熱する低温殺菌の一方法です。一方、この火入れを行わないのが生醤油です(図3)。
火入れをすると独特の「焦香」(こがれこう)が醤油に付与されます。したがって、普通の醤油(脱脂加工大豆醤油)、丸大豆醤油、生醤油の味には以下のような特徴があります。
重要ポイント
●脱脂加工大豆醤油:コクと香りが強い
●丸大豆醤油:まろやかな味と香り
●生醤油:あっさりとした味(焦香なし)
上記のように味と香りに相違がありますので、それに応じて料理にもベストの使い方があります(図3)。脱脂加工大豆醤油は、あっさり味の白身系刺身やあっさり系の煮物料理に合います。丸大豆醤油は、逆により味が強い刺身やコクのある料理にピッタリです。生醤油は卵かけご飯に合います。
番組では九州の醤油についても取り上げていました。県別では福岡県は最も醤油製造メーカーが多い県であり、100以上の会社が存在しています。九州の醤油には独特の甘みがあります(図4)。私も子供の頃はこの甘い醤油で育ちました。
ちなみにインターネットで調べてみると、九州の醤油がなぜ甘いか、その理由がほとんど探せ出せませんでした。すなわち、「地理的、気候的、歴史的に甘い醤油を好むようになった」という、甘い醤油の背景に関する記述はあるのですが、醤油そのものが甘い理由が書いてありません。
醤油の原料は「大豆、小麦、塩」が基本で、添加物が用いられることは通常ないですが、実は九州の醤油ではこれに甘味料が加えられています。甘味料としては糖蜜のほかに伝統的に甘草(かんぞう)やステビアなどの天然甘味料が使われています。最近では、甘味料を使わず、製造法だけで甘みを出している製品もあるようです。
九州の醤油には最初から甘みがありますので、煮付けなどにはみりんや砂糖が必要ありません。カツオのかぶと煮や豚の角煮などにはピッタリで、子供の頃よく食べました。また、九州の醤油を使った料理と焼酎はベストマッチです。
醤油の作り方や種類については、また別ページで紹介したいと思います。
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