Dr. Tairaのブログ

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小豆島で見た醤油作り

瀬戸内海・播磨灘に浮かぶ小豆島香川県小豆郡)は、素麺、醤油、佃煮、胡麻油、オリーブなどの生産が盛んであり、いずれも日本有数の生産地となっています。数年前、招待講演でこの島を訪れる機会があり、ついでに醤油作りを直に見ることができました。そのときのスナップ写真のいくつかを紹介します。
 
写真1は講演会を主催した県の発酵食品研究所です。同研究所には発酵・食品研究室、微生物研究室、機器分析室、環境研究室などの部屋があり、さまざまな発酵生産の設備と同時に最新の分析機器が備えてありました。
 
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写真1
 
研究所内の玄関には、さまざまな小豆島の醤油の製品が陳列してありました(写真2
 
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写真2
 
県の方にガイドしていただきながら、いくつかの醤油メーカーを回ることができました。これはその中の一つであるマルキン忠勇株式会社の工場です(写真3)。
 
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写真3
 
小豆島島には文化庁登録有形文化財となっている建物などが多数あり、伝統的な醤油工場の建物もこれに含まれます。写真4マルキン醤油第四号、五号発酵蔵の文化財のパネルです。
 
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写真4
 
マルキン醤油第四号蔵に実際に入って見学することができました(写真5)。丸く見えるのが醤油の仕込槽(発酵槽)です。

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写真5
 
驚いたのが、蔵の壁、天井、柱一面に微生物のコロニーができていたことです(写真6, 7)。
 
イメージ 3写真6
 
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写真7
 
前のページで醤油の作り方について簡単に紹介しました
醤油はまず大豆と小麦を原料として種麹を加え、製菊と呼ばれる醤油麹を作ります。さらに食塩を加えて、上記のようなタンクの中で発酵させるわけです。
 
麹菌Aspergillus oryzae, Aspergillus soyae)は醤油メーカーが独自に所有している大切な微生物(カビ)であり、人為的に加えて、大豆と小麦を分解させます(図1)。その後、発酵槽内で熟成が進むわけですが、そこには麹菌が分解してできたものをエサとする乳酸菌耐塩性酵母が作用し、特有の味や香りが生成されます。
 
これらの微生物はとくに人為的に添加されるわけではなく、長い間の醤油作りの過程で蔵内で集積されたものが周囲から混入して働きます。これらの微生物が写真6, 7にあるように壁や天井に集積されているわけです。
 
まさしく、蔵内には醤油作りに関わる独自の微生物生態系が構築されていると言うことができます。
 
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図1. 醤油作りに関わる微生物
 
最後に「マルキン醤油記念館」を訪れました(写真8)。この記念館は、1987年に丸金醤油の創業80周年を記念して工場のひとつを改装して開館したものです。熟成もろみの圧搾工場であった合掌作りの建物は、登録有形文化財に指定されています。

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写真8
 
記念館の中には、さまざまな展示とともに醤油作りの詳しい工程を知ることができます。記念館に隣接した「物産館」(写真9)では、しょうゆソフトクリームが販売されていました。カラメルのようなコーヒー牛乳のような味がしてなかなか美味でした。

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写真9
 
夕方になり小豆島を離れました。フェリーから見た小豆島です(写真10)。
 
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写真10
 
約1時間で、対岸の高松に着きました(写真11)。
 
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写真11