Dr. Tairaのブログ

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全国都道府県の異常な真っ黄色状態が警告だった

はじめに

今日(5月7日)、5月11日までとされていた4都府県の緊急事態宣言が延長されると同時に、福岡と愛知が追加措置されることが発表されました。また、まん延防止措置の決定も行なわれ、結局14都道府県で緊急事態宣言の延長・追加とまん延防止措置の延長あるいは拡大となりました。

政府は短期集中という形容を用いて今回の緊急宣言を行なったわけですが、当初からなぜ5月11日が期限なのか、こんな短期間では効果は出ないという疑問はありました。5月17日のIOCバッハ会長の来日予定に合わせたのではないかという憶測もありました。この来日は見送りになったようですが。

そしてもう一つの疑問というか、問題点は緊急宣言の発出が明らかに遅れたことです。1ヶ月前の私のツイートから拾ってみると、当時の感染状況が危険信号になっていたにもかかわらず、政府や専門家は対応が遅れ、認識が甘かったことがわかります。そこで、あらためてこの1ヶ月間のツイートを振り返りながら、政府の対策の問題点を指摘したいと思います。

1. 4月初旬の菅首相の認識ー第4波といううねりにはなっていない

まずは菅首相の対応を批判した4月5日のツイートです。この時点で全国的に完全に再燃状態(いわゆる第4波)に突入していました。緊急の対策を打つべき段階であったにもかかわらず、菅氏はまん延"防止"措置を「必要なら躊躇なく」と言っている呑気な状態でした。

そして、このときの菅首相は「第4波といった全国的には大きなうねりとはなっていない」という認識であり、事態を甘く見ていたことがわかります。 

結局この日、政府は大阪へのまん延防止措置の決定ということでお茶を濁しますが、明らかに緊急事態宣言発出の時期だったと思います。緊急宣言にできなかった理由は先のブログで述べたとおりです(→緊急事態宣言解除後の感染急拡大への懸念)。

4月12日の週はもう第4波の高さは相当顕著になっていました(前週で記録した陽性最多数は全国で約3800人、大阪で991人、東京で570人)。第3波流行が減衰した際のバックグランドは全国で約千人/日でしたから、もう4倍近い新規陽性者数になっていたわけです。しかし、依然として菅首相は第4波にはなっていないという、驚くべき認識でした。

2. 英国型変異ウイルスの拡大と専門家の見解

4月5日からの週は、大阪で変異ウイルスの拡大により新規陽性者が急増し、上記のように1000人/日に迫ろうかという勢いでした。4月7日の時点では東京でN501Y変異ウイルスの拡大の影響が出てきました。私は東京が大阪の比ではない惨状になる可能性に危惧を抱きました。

そして問題だったのは、専門家の多くが変異ウイルスの拡大に言及しながらも、この時点においても「対策は基本的に変わらない」と口を揃えて言及していたことです。一例として、4月8日のツイートを挙げます。変異ウイルスへの対応に関する記者や情報番組での司会者の質問に、専門家の一人は「何も変わることはない」と答えていました。

3. 全国が真っ黄色

そして、このブログ記事のタイトルにもなっている、全国の異常な"真っ黄色状態"が続くようになりました。私はNHK特設サイト「新型コロナウイルス」の全国感染状況を毎日観ていますが、4月14日に全国すべての都道府県で陽性者が出た(全国が真っ黄色になった)ことについて、以下のようにツイートしました。

4月16日は3日連続で全国真っ黄色という異常な状態になっていました。面的な広がりが顕著になっている証拠です。もう全国レベルでの緊急事態宣言を発出の時期はとっくに過ぎているという警告だったと思います。

4月21日には、全国の緊急事態宣言の段階ではないかということを再度述べました。この日には4都府県への緊急宣言発令手続きを4月23日に行なうというニュースが流れましたが、実にのんびりな対応です。

やっと4月25日に4都府県への緊急事態宣言が発出されたましたが、その後は九州、四国、北海道などに感染拡大しました。この週の陽性最多数は福岡で333人、北海道で160人であり、とくに私の故郷である福岡の状況は深刻でした。

ゴールデンウィーク中は検査数が減って、新規陽性者数も一時的に減りました。それにもかかわらず、全国への面的な広がりはますます顕著になりました。私は英国型(N501Y)のみならず、インド型(L452R)の変異ウイルスの拡大の可能性を考えて恐くなりました。5月5日には以下のようにツイートしています。

そして今日(5月7日)も全国真っ黄色です。これほど全国黄色が続くのは初めてであり、今の第4波がいかに脅威であるかということを物語っています。今日東京の新規陽性者は907人ですが、今後これを大きく上回り、最多を更新していくでしょう。他の県も同様で、パンデミック始まって以来の最多を更新していくと思います。

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図1. 5月7日における全国都道府県の新規陽性者数(NHK特設サイト「新型コロナウイルスより).

マスコミは、第4波流行における全国真っ黄色(すべての都道府県で感染者発生)の状態が続いていることをまったく報道していません。これまでの3回の流行にはみられなかった深刻な状況に気がついていないのでしょうか。

おわりに

今回の緊急宣言の延長と追加措置は感染拡大抑制策としてはきわめてチグハグです。そもそも、まん延防止措置から入って後で、より強い緊急事態宣言に移行するというところから間違っています。強い対策から入り効果が出たら緩めるというのが基本です。また、まん延防止措置を要請して適用が見送られた県(石川、茨城、徳島)があると思えば、宮城県のように解除された県もあります。北海道は緊急宣言相当と思われますが、まん延防止措置になりました。

延長に伴って、カラオケ店や酒提供は休業要請が継続される一方で、デパートのような大型施設はこれまで休業要請だったのが20時までの営業という緩和になりました(これは自治体によって独自に対応されるようですが)。イベントの原則無観客も上限5000人、収容人数は50%までと緩和になりました。

もとより感染拡大抑制策にはなっておらず、今回の延長と追加措置には政治判断が色濃く出ています。おそらく5月中には1万人を超える新規陽性者数になるのではないでしょうか。もう全国への緊急事態宣言の時期はとっくに過ぎています

引用した拙著ブログ記事

2021年3月23日 緊急事態宣言解除後の感染急拡大への懸念

               

カテゴリー:感染症とCOVID-19