Dr. Tairaのブログ

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政府による「山梨モデル」グリーン・ゾーン認証制度の全国拡大

毎日新聞は、昨日(5月2日)、政府が新型コロナウイルス感染防止を強化するため、飲食店が講じた対策を第三者が認証する制度を導入するよう、全国の都道府県知事に通知したことを伝えました [1]。この制度では、飲食店内の座席の間隔を1メートル以上確保すること、換気設備で必要換気量(1人当たり毎時30立方メートル)を確保するといった項目が示されており、地方創生臨時交付金(事業者支援分)を使い、換気設備やパーティションなど対策にかかる費用を補助することも要請しているとしています。

これはまさしく、山梨県が先行して実施しているやまなしグリーン・ゾーン認証制度 [2] (いわゆる山梨モデル)そのもであり、それを全国へ導入するというものです。今日のテレビのワイドショーでもそれを紹介していました(図1)

菅義偉首相はこの制度の導入の検討を指示していたとのことですが、政府がコロナ対策の基本的対処方針で、第三者認証制度の普及促進に言及したのが4月23日、首相と山梨県長崎幸太郎知事が面会したのが4月27日と伝えられています。そして、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が同室長と厚生労働省生活衛生・食品安全審議官、農林水産省食料産業局長の連名で事務連絡を出したのが4月30日です(図1)

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図1. 政府によるやまなしグリーン・ゾーン認証制度の全国拡大についての経緯(2021.05.03. TBSテレビ「ひるおび」より).

私はこの経緯を見聞きしていて、またしても政府の対策は周回遅れではないかという感じを抱きました。なぜなら長崎知事がグリーン・ゾーン認証制度の構想を発表したのが1年前であり、すでに山梨県は半年前からこの制度を導入し [3]、成果を上げていたからです。そして、テレビも1ヶ月半前には山梨県の感染対策としての当該制度の有効性を伝えていました。

たとえば、3月23日のNHKのNEWS WATCH9によるグリーン・ゾーン認証制度の紹介を観て、私は以下のようにツイートしました。

その2日後には今度はテレビ朝日の「モーニングショー」が本制度を取りあげていました。これを受けて以下のようにツイートしました。 

テレビがグリーン・ゾーン認証制度を伝えていたのが、2回目の緊急事態宣言が解除された直後のことです。この時点で、本制度が少なくとも首都圏や関西圏で導入されていたら、第4波の始まりは後ろにずれ、その波の大きさも今よりも小さかったのではないかと思われます。少なくとも、対応策を準備する時間的余裕を与えたのは確かではないかと考えられます。感染が広がってからでは効果も半減します。

5月2日までの直近1週間での山梨県の感染者数は、10万人当たり12.45人で全国33位でです。変異ウイルスの影響でさすがに少し感染者数が増加気味ですが、それでも東京に隣接する県としては抑えられている方です。私は1ヶ月前には以下のようにツイートしました。

 政府による山梨モデルの全国拡大は歓迎したいところですが、どうせやるならもっと早くしてほしかったというのが実感です。これまで現政権は、早く、強く、そして短くという感染対策の基本とは無縁の姿勢をとり続けており、対策は常に優柔不断で曖昧です。それがことさら被害を大きく長期にわたってもたらしていることは明白でしょう。

引用文献・資料

[1] 梅田啓祐:「山梨モデル」を全国導入へ 飲食店にコロナ対策認証制度. Yahoo Japan ニュース/毎日新聞 2020.05.02. https://news.yahoo.co.jp/articles/1ffa45bdfbaf8bd98ffc4c997a60cd30c4759daf

[2] やまなしグリーン・ゾーン認証. https://greenzone-ninsho.jp/

[3] 甲府市:やまなしグリーン・ゾーン認証について. 2020.12.15. https://www.city.kofu.yamanashi.jp/shoko/gleen.html

               

カテゴリー:感染症とCOVID-19