Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

いわゆる"ウレタンマスク警察"に思う

新型コロナウイルスSARS-CoV-2の感染の予防(飛沫防止)対策として、マスク着用が効果があることはすでに科学的に認められており、本ブログでも紹介してきました(→新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効用あらためてマスクの効果についてコロナ禍で気になる若者の移動とマスク)。とはいえ、マスク着用によって完全に飛沫防止ができるものでもなく、ある程度低減できる程度のものです。もちろんマスクは正しく着用することが前提になります。

最近、スパコン富岳による解析でも明らかにされているように、マスクの素材によって飛沫防止効果に違いがあることも明らかになっています。これは先のブログ記事「あらためてマスクの効果について」でも紹介した通りです。

厚生労働省のホームページを見ると、新型コロナのQ&Aのコーナーにマスクの効果に関する記述があります [1]。そこに一般用のマスクの素材について、不織布マスク布マスクウレタンマスクの順に効果が低下することがはっきりと述べられています(図1)。

f:id:rplroseus:20210124132140j:plain

図1. 厚労省ホームページにあるマスクの効果に関する記述(一部、脱字[イルス→ウイルス]が見られる)[1].

そしてマスクの効果として、聞き手だけが着用した場合、話し手だけが着用した場合、そして両方が着用した場合について、図を使っての解説があります(図2)。

f:id:rplroseus:20210124131234j:plain

図2. 厚労省ホームページにあるマスクの効果に関する図解 [1].

しかしながら、厚労省は自身のホームページで記述しておきながら、マスクの素材についてどれを推奨するということについては明確に言及していません。首相も厚労大臣も同じです。先日もテレビのニュースでも紹介していましたが、厚労省の担当者が「不織布マスクを奨めることはしない」「大事なのは正しい着用だ」と言っていました。

私はこれを聴いて正直意味がよくわからず、以下のようにツイートしました。

このような日本政府のあやふやな態度に比べてドイツ政府ははっきりしています。先日、新型コロナウイルス感染拡大が続く状況に苦慮するドイツ政府は、高機能な製品のマスク着用を国民に求める新たな対応策を発表しました [2]。高機能マスクとは、医療従事者らが使用する「FFP2」や「N95」と呼ばれるタイプのものです。この対応策は、新たな変異型ウイルスの出現への危機感が要因ともなっています。

いかにも合理的判断をするメルケル首相のドイツだと思うわけですが、本当にウイルスの暴露を防ぎたいと考えれば、このくらいのことをやらなければいけないのでしょう。果たして感染拡大は抑制できるのか、注視したいと思います。

日本政府や各自治体はことあるごとに、国民へ向けて感染防止対策の徹底を要請しています。それであるなら、「外出時や公共の場では不織布マスクを正しく着用」というのが、要請の一つとしてあってもよさそうなのですが、そのような動きはありません。ひょっとして、布マスクである、いわゆるアベノマスクを国民へ配布したことに対する考慮があるのでしょうか。

いずれにしろ、民間レベルでは不織布マスクを着用していないと入店できないお店や、ウレタンや布マスクをしている場合には、不織布に替えさせるお店も出てきているようです。このようななか「ウレタンマスク警察」などというものが出てきて、ちょっとしたトラブルになっています [3, 4]。電車内などでウレタンマスクを着用している人に対して、過度に注意を促す行為です。

私は高齢者の部類に入るので、やむおえず電車に乗る場合は、座席が空いていても座らず、ドア付近に立って用心するようにしています。それでもウレタンマスクを着けた複数の人が傍に寄って来てぺちゃくちゃしゃべられると、気になって、黙ってその場を離れます。私も電車内でウレタンマスクが気になることは確かです。若い人はまず高齢者に配慮などしません。平気で近寄ってきます。

性能よりもファッション性や呼吸が楽だからということでウレタンマスクを着けているのなら、もはや言うことはありません。しかし、もし肌触りなどで不織布マスクが嫌であってウレタンを好むのなら、少し工夫をした着け方もできるのではないでしょうか。

私もウレタンマスクや布マスクをしていますが、単独では使用しません。図3にあるように、ウレタンの外側に不織布マスクを重ねて使うか、あるいは、袋付きウレタンマスクに不織布を挟んで使うようにしています(この場合三重)。このように二重にすることで、マスクの肌触りを改善しながら、マスク効果をより高めることができると思います。

f:id:rplroseus:20210124111814j:plain

図3. ウレタンマスクと不織布マスクを重ねた着け方.

また不織布マスクを単独で使う場合は、内側にキッチンペーパーやティッシュペーパーを二つ折りにして入れるようにしています。

ウレタンマスク警察の登場には、政府がマスク着用について科学的にはっきりとした態度を示していないことにも一因があると思います。あれだけ感染対策として国民への要請を繰り返している政府です。この際、不織布マスクの着用や二重マスクにも言及してもいいのではないでしょうか。感染力の強い変異ウイルスへの対策としては、なおさら合理的だと思います。

引用文献・記事

[1] 厚生労働省: 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け). 2020.01.20. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

[2] CNN: 感染衰えず国民に高機能マスクの着用指示、N95など 独.  2021.01.21. https://www.cnn.co.jp/world/35165396.html

[3] SPA!: 今度は「ウレタンマスク警察」。間近で怒鳴り声をあげてくる恐怖. Yahooニュース 2021.01.21. https://news.yahoo.co.jp/articles/b9603583859aa3c6d3193293861fb7773cd000ee

[4] Sponichi Annex: 大竹まこと “ウレタンマスク警察”の出現に愕然「世の中荒れてるけど、これも分断の原因になるのか」 Yahooニュース 2021. 01.21 https://news.yahoo.co.jp/articles/20755bf417af12ced3fdcdd7cb14c5f670e31d5e

 引用した拙著ブログ記事

2020年12月5日 コロナ禍で気になる若者の移動とマスク

2020年11月27日 あらためてマスクの効果について

2020年3月18日 新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効用

                                      

カテゴリー:感染症とCOVID-19