Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

コロナ禍で気になる若者の移動とマスク

一昨日(12月3日)、新型コロナウイルス感染症対策対策アドバザリーボードの会合が開かれました。その時の資料を見ていて気になったというか、やはりというか、若者の移動が主体的に二次感染を引き起こしているという事実についてです。今朝の日本テレビ「ウェークアップ」でもこの事実を紹介していました。

図1はアドバイザリーボードの資料から転載したもので、国内移動症例における年代別の二次感染の割合を示しています。これは、移動歴を一定程度以上公表している自治体のデータに基づいた解析結果で、対象は1月13~8月31日の期間の全症例67,690例中、25,276例となっています。ここで目立つことは、移動によって感染した人たちの中では10–50代の割合が高いこと(85%)、そして、二次感染の大半(約90%)も10–50代の若年層によってもたらされているということです。とくに20代の若者の占める割合が高いことが顕著です。

f:id:rplroseus:20201205133941j:plain

図1. 国内移動症例における年代別の二次感染の割合(厚労省HPからの転載図).

つまり感染して移動している症例数も移動によって感染する例も、圧倒的に若者が多いということを示しています。これは今実施中の、政府の観光支援事業「GoToトラベル」でも言えることではないでしょうか。そして、検査には現れない、若者を中心とする相当数の無症候性感染者の移動があり、それが感染拡大につながっていることが想像されます。

菅首相は、観光庁の報告に基づいてGoToを利用した人のうち感染した人は200名程度であるとして、GoToが感染拡大に寄与したとするエビデンスはないと述べました。しかし、実際に重要なのは、二次感染させる人の移動であり、図1のデータを考慮すればGoToトラベルが感染拡大に影響したと推察する方がより妥当でしょう。

お昼の日本テレビの「中居正広のニュースな会」を観ていたら、またまた気になることが紹介されていました。それはマスクです。いま売れ筋No.1として紹介されていたのが「さらマスク」です(図2)。ファッション性や素材に関係するフィット感もあって、とくに若者に人気があります。このマスクはポリエチンレン95%とポリウレタン5%の混合からなる、いわゆるウレタンマスクです [1]

f:id:rplroseus:20201205133958j:plain

図2. テレビで紹介されていた「さらマスク」.

ウレタンマスクは着けてみたらわかりますが、ピッタリと顔に密着する割には(いわゆる3Dタイプ)、楽に呼吸ができます。しかし呼吸が楽ということは、マスクがスカスカであるということになります。ウレタンマスクは1層しかありません。

先のブログ↓でも紹介しましたが、ウレタンマスクは飛沫防止と感染予防の両面で、標準ある不織布マスクにかなり劣ります。飛沫防止という面では、不織布マスクが推奨されるべきでしょう。その意味で、テレビがウレタンマスクを宣伝するような放送をしていいものか?とちょっと疑問に思いました。

rplroseus.hatenablog.com

とくに若年層の間は、ファッション性を気にしてウレタンマスクを着けている人が多いですが、感染させないという面からは、極論すると気休め程度にしかなっていないとも言えます。ウレタンマスクを着けて県をまたぐ移動をするということは、それだけ感染拡大に寄与しているのでは?と懸念します。

東京都は、12月2日、GoToトラベルの都内発着分をめぐり、65歳以上の高齢者と基礎疾患がある人への利用自粛要請を正式決定しました。しかし、図1を見れば明らかなように、要請すべきは10-50代の若年層の移動を止めること、つまり、国がGoToそのものを止めることでしょう。高齢者はもともと自粛しています。

引用記事

[1] LIMO Life&Money: イオングループから12色の新作「3枚1500円さらマスク」登場。セラミド加工で保湿効果も. YAHOO JAPANニュース.2020.08.18.
https://news.yahoo.co.jp/articles/5ec5861141927d712bb45ec0f8c30e5ad343dae4?page=1

               

カテゴリー:感染症とCOVID-19