私は朝食には主食として食パンをよく食べます。写真1は今朝の食パンです。テレビで柔らかい高級食パンがよく売れているという場面が流れていて、今朝はそれを観ながら食べました。同時に、食パンの柔らかさと原材料との関係をあらためて考えてみました。
写真1
写真2は、今朝食べたパンの原材料の表示です。パン作りの基本は小麦粉、砂糖(糖類)、バター(またはマーガリン)、食塩、およびパン酵母であり、家でパンを作るとき使うものはこれだけです。一方、市販の食パンはこれらを基本としていろいろと改変された材料が使われています。
私は食パンを買うときに選ぶ基準は、できる限り上記の基本に忠実で原材料品目が少なく、かつ安いということです。ちなみにこの食パンは税抜き128円で安い方だと思います。
写真2
美味しさは人によって好みが違うので一概に言えませんが、原材料が基本に近いほど私は素朴で美味しく感じます。家で作ったパンのできたての美味しさは格別です。柔らかさはそれほど求めません。
よく知られている市販の食パンの原材料名を表1に示します。パスコとフジパンの情報はメーカーのHPから拾ってきましたが、ヤマザキはHPを探しても情報が出てきませんでした。ので、買ってきた当該品の表示(写真3左)をそのまま示しています。
表1. 市販の代表的食パン製品の原材料名
表1から分かるように、パスコやフジパン製品に比べてヤマザキのものは原材料品目がやや多く、かつイーストフードが入っていることが特徴です。ヤマザキのほかのパン類をみてみましたが、ほぼ全部にイーストフードが入っているようです(写真3右)。
写真3
イーストフードという言葉は何となくやわらかい印象を与えます。まるで酵母(=イースト)の抽出物でも入っているような印象です。しかし、要はパン酵母を培養するために使われる食品添加物の総称です。食品衛生法において「イーストフード」の一括名称での表示が認められており、厚生労働省により以下の16品目が認可されています。したがって、イーストフードと表示されているだけでは、実際何が入っているかはわかりません。
イーストフード16品目(栄養源としての種類ごとに色分け)
塩化アンモニウム
グルコン酸カリウム
グルコン酸ナトリウム
炭酸アンモニウム
炭酸カリウム(無水)
炭酸カルシウム
硫酸アンモニウム
硫酸カルシウム
リン酸水素ニアンモニウム
リン酸二水素アンモニウム
リン酸―水素力ルシウム
リン酸二水素カルシウム
リン酸三カルシウム
焼成カルシウム
パン酵母は生きており、パン作りにおいて安定した活動(CO2の発生)をさせるためには栄養源が必要です。栄養源としては炭素、窒素、リン、その他のミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)が基本になります。上記で青字で示したものは窒素源、緑はリン源、ピンクは窒素とリン源、茶はミネラルとしてはたらきます。なお黒は有機物塩です。炭素源としては、原材料の糖類が相当します。
イーストフードを添加しなくても、パン生地の中には少なからずミネラルなどは入っています。しかし、イーストフードを入れることで酵母の活動が促進され、短時間で一気に発酵が進み、品質が均一な製品を得ることができます。ふんわりとした食感にも仕上がります。
ウェブ上にはイーストフードに関するさまざまな情報が散見されますが、その中にはイーストフードが食用上危険であるかのような記述もあります。しかし、上記の16品目を見る限り、通常の使用・摂取量においては安全なものばかりです。なぜ、危険とするのか私には理由がわかりません。
とはいえ、上述したように、家で作るシンプルな原材料組成のパンの味と食感が個人的には一番美味しく感じるので、市販の食パンを買うときはできる限りシンプルなものを買うようにしています。
以前は「超熟」をよく購入していましたが、柔らかすぎてかつ甘いので今はあまり食べなくなりました。以前は入っていなかった醸造酢も添加されるようになっています。とくに日本人はパンでもケーキでも肉でも「柔らかい=美味しい」と思う傾向があるようですが、ほどほど堅い食パンや肉も素朴で美味しいと思います。
カテゴリー:食と生活・食品微生物