Dr. Tairaのブログ

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SARS-CoV-2:史上最大の隠蔽工作

英国の日刊タブロイド紙ザ・サン(The Sun)は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の起源について、史上最大の隠蔽工作が行なわれたとするオンライン記事を配信しました [1](下図)。これは、中国の武漢ウイルス研究所で働いていた米国の科学者アンドリュー・ハフ(Andrew Huff)博士のインタビューに基づいて書かれた記事であり、SARS-CoV-2は当該研究所から漏出した遺伝的改変体であって、米政府はこれを隠蔽してきたと主張しています。

ハフ博士はエコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance, EHA)の元副代表です。EHAは、45年以上にわたる画期的な科学技術を基盤に、野生生物を病気の発生から守り公衆衛生を維持することを目的としたNPO研究団体ですが、ウイルスの機能獲得実験を中国と共同で行なっていたことでも知られています。

1年ちょっと前、米国下院外交委員会の共和党トップであるマコール議員と同党スタッフは、SARS-CoV-2は武漢ウイルス研究所から流出した疑いがあるとする報告書を提出しました [2]。この報告書は、武漢研究所に研究資金を提供していたEHAの代表者であるピーター・ダザック(Peter Daszak)博士について、議会で証言させることを求めました。ダザック博士は、世界保健機構(WHO)が行なったウイルスの起源に関する中国調査の中心人物であり、研究所漏出説を否定するランセット誌記事 [3] に著者として名を連ねています。

今回のサン記事は、EHAの元副代表であり、武漢研究所で研究を行っていたハフ博士の証言に基づいているため、いくらか脚色されていることを差し引いても、証言には信憑性が高いと思われます。ここでこの記事を翻訳して紹介したいと思います。

以下翻訳文です。

           

題目:史上最大の隠蔽工作」私は武漢の研究所で働いていた-警告しようと試みてきたし、COVIDは研究所からの漏えいだと知っている('BIGGEST COVER-UP IN HISTORY' I worked with the Wuhan lab – I tried to warn them & I KNOW Covid was a lab leak)

武漢の研究所と緊密に研究を行っていた1人の科学者は、COVIDは遺伝子操作され、施設から漏れたものだと主張してきた。エコヘルス・アライアンス(EHA)の元副社長アンドリュー・ハフ博士は、史上最大の隠蔽工作の現場を目撃していたと語り、それは「9・11以来、米国インテリジェンスの最大の失敗」であると主張している。

武漢ウイルス研究所は、コロナウイルスを専門とする高度なセキュリティーをもつ研究所であるが、ある疑惑で台風の目になっている。それはウイルスが研究所から漏出したのではないかという疑惑だ。

中国当局と研究所の双方はいかなる疑惑に対しても激しく否定している。しかし、科学者、研究者、政府が疑惑への答えを追い求め、証拠を提出する中で、研究所漏出の証拠はこの2年間で積み重ねられてきた。数十人の専門家が指摘してきたことは、研究者の感染、不適切な廃棄物処理、あるいは現場のセキュリティ違反の可能性によって、武漢研究所からウイルスが漏出したかもしれないということだ。

報道によれば、世界保健機関(WHO)の責任者(テドロス事務局長)でさえ、ウイルスが「破滅的な事故」によって研究所から漏れたと信じているという。

内部告発者であるハフ博士は、彼の新著「武漢の真実(The Truth About Wuhan)」の中で、今回のパンデミックは、中国における危険なコロナウイルスの遺伝子操作研究に米国政府が資金提供したために起こったと主張している。

疫学者(ハフ博士)によれば、中国での機能獲得実験は粗末なバイオセキュリティ下で行われ、米国から資金援助を受けていた武漢ウイルス研究所からのウイルス漏出につながったと言う。

「EHAと武漢研究所は、適切なバイオセーフティ、バイオセキュリティ、リスク管理を達成するための適切な制御手段を持たず、最終的に研究所からの漏洩を招いた」と、彼は自著で述べている。

EHAは、米国国立衛生研究所(NIH)からの資金提供を受けて、10年以上にわたってコウモリのさまざまなコロナウイルスを研究し、武漢の研究所と密接な協力関係を築いてきた。ハフ博士は、2014年から2016年までEHAで勤務し、2015年から副代表を務めたが、米国政府の科学者としても研究プログラムの機密保持に関わっていた。

ミシガン州出身の陸軍退役軍人でもある彼は、EHAが武漢の研究所に「他の生物種を攻撃するコウモリコロナウイルスを改変するための既存の最善の方法」を長年にわたって教えていたと述べた。

「中国は初日からこれが遺伝子操作によるものであることを知っていました」と彼は話した。そして、「危険なバイオテクノロジーを中国に移転したのは、米国政府の責任です」と述べた。

サン・オンラインに対して、ハフ博士は「私は見たものに恐怖を感じました。私たちが行なっていることは、生物兵器の技術を彼らに渡しているに過ぎなかったのです 」と付け加えた。

この著者の中で、新興感染症の専門家は「貪欲な科学者が世界中で何百万人もの人々を殺した」と主張し、さらにアメリカ政府がそれを隠蔽したとまで言っている。

諜報機関長官や外交官はすでに、ウイルスが武漢の研究所から流出したのは「世紀の隠蔽工作」であったと主張している。

ハフ博士は次のように述べている。「中国がSARS-CoV-2の発生について嘘をつき、あたかもこの病気が自然に発生したかのように見せるために異常なほどに尽力したことは、誰も驚くべきことではないでしょう」。「この中で衝撃的なのは、米国政府がいかに私たち全員に嘘をついたかということです」。

2009年、武漢の研究所はEHAと共同で、新興パンデミックの脅威に焦点を当てたPREDICTと呼ばれるUSAIDプログラムを開始した。PREDICTは、コロナウイルスを含む、パンデミックの可能性を持つ人獣共通感染症のウイルスを検出・発見するために設計された。

石正麗(Shi Zhengli)は、「バットウーマン」として有名になった武漢のウイルス学者であるが、このプログラムがパンデミックに対する早期警告システムを作り出すことを期待していた。

2014年、ハフ博士はこのプログラムに関わる資金提供の提案書のチェックを依頼された。ところが、その提案書はCOVIDの原因となるSARS-CoV-2を作り出す機能獲得実験のためのものだった。機能獲得実験では、ウイルスをより人間に感染しやすいように改良するものだが、その目的は研究者が科学的理論を検証し、新しい技術を開発し、感染症の治療法を見つけることである。

しかし、この危険な研究は、安全性とセキュリティの懸念があるため、多くの国で禁止されている。米国では、もともと2014年に禁止されていたが、2017年にNIHによって再導入された。

ハフ博士は、EHAが米国政府機関であるUSAIDの支援を受けて、武漢研究所と密接に機能獲得研究を行っていることを認識した。そしてすぐに、このウイルスが自然界では決して発生しないこと、さらに研究室でより強力な病原体として開発されてきたことに気づいた。

ハフ博士は、武漢で米国の資金援助を受けた機能獲得研究が行なわれ、ウイルスが遺伝子操作されたが、バイオセーフティが不十分であったために実験室から漏れたと考えている。「EHAはSARS-CoV-2を開発し、私が組織に在籍している間に、SARS-CoV-2という薬剤の開発を担当していました」と、彼は語った。しかし、中国が故意にウイルスを放出した証拠はないと指摘している。

ハフ博士は、米国が資金を提供したプロジェクトは、将来のパンデミックを防ぐというよりも、むしろ機能拡張や情報収集として「コロナウイルスをグローバルに探索する」ためのものであったと考えている。「当時、私はこのプロジェクトが科学的な研究開発というより、情報収集のように感じた」と彼は自著の中で述べている。

この科学者(ハフ博士)は、PREDICTプログラムは本来収集すべきデータを収集していなかったとし、「巨大な諜報活動」のように見えたとサン・オンラインに語っている。彼は、米国がこのプロジェクトを利用して、武漢ウイルス研究所を含む外国の研究所の生物兵器能力を見極めようとしていたと主張している。

●警鐘を鳴らす

2015年と2016年に行われたトップとの会議で、ハフ博士は、契約研究所のバイオセーフティとバイオセキュリティのリスクについて警鐘を鳴らしたという。「EHAが契約し管理する外国の研究所で何が起こっているのか、EHAが十分な可視性を持っていない、あるいは直接の知識を持っていないことを懸念していました」 と彼は述べた。

ハフ博士によると、米国政府当局は2018年1月に武漢の研究所について再び警告を発した。これは、致死的なコロナウイルスの研究を安全に管理するために必要な専門家が大幅に不足していることを含めての警告だった。「EHAは中国が失敗するように仕組んだと合理的に主張することができます」 と彼は述べた。

そして、2019年末にCOVIDが出現すると、中国、そして国務省、USAID、国防総省の米国政府の協力者の一部は、完全に隠蔽モードに入りました」と彼は話す。「2019年8月か10月に、米国政府がCOVID発生について警告されたと信じるに足る理由があります」。

彼は、2016年、「科学的な仕事とEHA全体に倫理的な懸念が多くあるため」としてEHAを辞めた。しかし、2019年末に突然、国防高等研究計画局(DARPA)の役職を提示された。しかも、その仕事には最高機密保持承認とポリグラフが必要だと言われたのだ。

今から思えば、これはCOVIDの起源について口止めするために働きかけられたと、ハフ博士は考えている。「私が思うには、政府内の人たちが私を危険人物として潜在的に認識したということだ。SARS-CoV-2の疾病出現現象が米国政府による国内外でのSARS-CoV-2の遺伝子改変のスポンサーの結果であることを肌で感じていたから」 と彼は自著で述べている。

「もし、私がその職を引き受けていたら、DARPAは制限された情報を私に開示し、その結果、私がこれまで、そして今ここでしているように、この情報の一切を公に論じることができなくなったのではないかと思います」。さらに、「パンデミックが始まり、SARS-CoV-2が人工物であることを断固として主張してから約1ヶ月後、私を採用する潜在的な動機とそのしつこさが何であったかに突然気がつきました」と彼は続けた。

「情報機関は、私が上級職でEHAを辞めた唯一の人間であり、政府の管理外で働いているという事実が、彼らの計画にとって脅威であることに気づいたのです」。ハフ博士は、政府関係者が彼にその役割を申し出たのは、彼が「一生沈黙を守ることを誓う」ためだったと考えている。

米国政府による大規模な隠蔽工作の疑惑を解明し始めると、当局は彼に対する大規模な嫌がらせを開始したと彼は言った。彼は、軍用ドローンがしばしば彼の家に現れ、スーパーマーケットでストーカーされ、未知の車両に尾行されたと述べた。

ハフ博士はその後、Renz Law LLCとともに、ニューヨーク州でEHAを相手取って訴訟を起こしている。

国立衛生研究所は以前、「EHAが武漢で研究していたコウモリのウイルスが、COVIDの原因となる可能性はない」と議会への書簡で述べている。

アンドリュー・ハフ博士著「武漢の真実:私はいかにして歴史上最大の嘘を暴いたか」は12月6日に発売される。ハフ博士は、壊滅的なパンデミックは米国政府の資金提供の結果であると主張している。

           

翻訳は以上です。

筆者あとがき

これまで何度となく疑惑が取り沙汰されてきた、SARS-CoV-2は「人為的改変体」、「武漢ウイルス研究所漏出」の両説ですが(→新型コロナの起源に関して改めて論文を読み、戦慄に震える)、今回はEHAの元副代表であり、武漢研究所で実際に研究を行っていたハフ博士の言述とあって、信憑性が一気に高まってきました。中国も米国も絶対に認めることはないと思いますが、これから疑惑は益々深みを帯びていくでしょう。早速、ハフ博士の本を購読したいと思います。

それにしても、米中の共同実験における資金提供にはアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)博士が絡んでいるはずですが、さっさと引退して [4] トンズラするつもりでしょうか。

引用文献・記事

[1] Imogen Braddick, I.: 'BIGGEST COVER-UP IN HISTORY' I worked with the Wuhan lab – I tried to warn them & I KNOW Covid was a lab leak. The Sun Dec. 3, 2022. https://www.thesun.co.uk/news/20543847/wuhan-lab-warning-covid-lab-leak/

[2] 大島孝:「新型コロナ、武漢から流出」米共和党議員が報告書. 朝日新聞デジタル 2021.08.03. https://digital.asahi.com/articles/ASP832QM5P82UHBI02P.html?_requesturl=articles%2FASP832QM5P82UHBI02P.html&pn=5

[3] Calisher, C. et al: Statement in support of the scientists, public health professionals, and medical professionals of China combatting COVID-19. Lancet 395, E42-E43 (2020). https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30418-9

[4] BBC News Japan: ファウチ博士、12月に政府職を退任へ アメリ感染症対策の「顔」. 2022.08.23. https://www.bbc.com/japanese/62642092

                    

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)