Dr. Tairaのブログ

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コロナワクチンはLong COVID症状を起こす

はじめに

現行のCOVID-19ワクチンに副作用や接種後有害事象が多いことは、国内外でよく知られています。今年になって、この問題がより注目されるようになり、副作用(副反応)や有害事象の事例、考えられるメカニズム、およびその解明を促す論説やレターが次々と著名誌に掲載されています。先のブログ記事でも、一部を取り上げて紹介しています(→遺伝子ワクチンを取り込んだ細胞は免疫系の攻撃標的になる抗イディオタイプ抗体が悪さをする?)。

2ヶ月ほど前になりますが、サイエンス誌にも当該誌レポーターによるこの手の記事が掲載されました [1](下図)。題目は「稀ではあるが、コロナワクチンは "long Covid"様の症状の原因になる可能性がある」というものです。副題に「脳内霧、頭痛、血圧の変動をNIHなどの研究者が調査中」とあります。

私はこの記事を読みかけたままだったのですが、先のブログで紹介した抗イディオタイプ抗体反応を提唱したウイリアム・マーフィー(William J. Murphy)らの論文 [2] や、血液凝固の論文 [3] が引用されており、かつ海外での事情を知るのにいい解説記事だと思いますので、(やや長いですが)ここで紹介したいと思います。

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以下、筆者による全翻訳文です。適宜引用された文献を挙げています。

記事 [1] の翻訳文

Couzin-Frankel, J. & Gretchen Vogel, G. In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid–like symptoms. 

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2020年後半、ブライアン・ドレッセン(Brianne Dressen)は、SARS-CoV-2ウイルスに感染した後に起こる慢性障害症候群 "Long Covid" 患者のためのオンラインサイトで、何時間も過ごすようになった。「何カ月も、私は、ただそこに潜んでいました 」と、ユタ州サラトガスプリングスの元保育園教師であるドレッセンは話す。「自分の症状と同じような投稿をチェックしていました」。

ドレッセンはCOVID-19に罹ったことがなかった。しかし、その年の11月、彼女は臨床試験のボランティアとしてアストラゼネカ社のワクチンを接種した。その日の夕方には、視界がぼやけて音が歪み、「耳に貝殻が2つ付いているような感じでした」と彼女は話す。彼女の症状は急速に悪化し、心拍数の変動、激しい筋力低下、そして彼女が言うところの「衰弱した体内電気ショック」などが起こった。

医師は彼女を不安症と診断した。化学者である夫のブライアン・ドレッセン(Brian Dressen)は、科学文献を調べ、妻を助けようと必死になった。彼女は、元ロッククライマーだったが、今はほとんどの時間を暗い部屋で過ごし、歯を磨くことも、幼い子供たちに触れられることにも耐えられなくなっていた。

時間が経つにつれ、ドレッセン夫妻は、COVID-19ワクチンのメーカーに関係なく、それらの接種後に、深刻で長く続く健康問題を経験している多くの人たちがいることに気づいた。2021年1月までに、米国立衛生研究所(NIH)の研究者たちは、そのような健康問題を耳にするようになった。そして、もっと詳しいことを知ろうと、ブライアン・ドレッセンや他の罹患者を同機関の本部に連れてきて検査を行い、時には治療も施した。

この研究は規模が小さく、果たしてワクチンが永続的かつ稀な健康問題を引き起こしてしまったのか、あるいはどのように引き起こしたかについて、何の結論も導き出せなかった。NIHの取り組みを主導してきた国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の臨床部長アビンドラ・ナス(Avindra Nath)は、患者のワクチン接種と健康状態の悪化との間には「一時的な関連性」があったとしながらも、病因的な関連については「それはわかりません 」と話す。つまり、ワクチン接種が、直接その後の健康問題を引き起こしたかどうかは分からないということだ。

NIHと患者とのやりとりは2021年後半には消滅してしまったが、その裏では作業は続行されているとナス(Nath)は話す。患者たちは、サイエンス誌の取材に応じ、NIHの撤退に困惑と失望したことを述べ、そしてNIHの研究者だけが自分たちを助けてくれていると話した。現在、long Covid 自体がまだ十分に解明されていないが、世界中の少数の研究者は、long Covidの生物学的現象がワクチン接種後の特定の副作用を引き起こす謎のメカニズムと重なるかどうかを研究し始めている。

すでに、COVID-19ワクチン接種に関連したより個別の副作用が認識されており、アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンのワクチンについては、稀だが重度の凝固障害、ファイザーとモデルナのmRNAワクチンについては心臓炎症などがある。副作用の可能性を探ることは、研究者にジレンマをもたらす。それは、一般に安全で、有効で、命を救うのに大切なワクチンに対して、人々が拒絶反応を起こす危険性があるからだ。

COVID-19ワクチンと接種後合併症を結びつけることは、「非常に注意しなければならない」とナス(Nath)は警告する。「間違った結論を出す可能性があります。...その意味は大きいのです」。そして、ドレッセンのような複雑で長引く症状は、患者が明確な診断を受けられないことがあるため、研究はさらに困難になる。

同時に、これらの問題を理解することは、現在苦しんでいる人々を助け、もし関連性が解明されれば、次世代ワクチンの設計の指針となり、おそらく重篤な副作用のリスクの高い人々も特定することができるだろう。

カリフォルニア大学デービス校の免疫学者であるウィリアム・マーフィーは、「有害事象を嫌がるべきではありません」と言う。彼は、2021年11月に New England Journal of Medicine誌に、SARS-CoV-2スパイクタンパク質によって引き起こされる自己免疫メカニズムが、long Covid の症状といくつかの稀なワクチンの副作用の両方を説明するかもしれないと提案し、可能な限りの関連を探るための基礎研究を増やすよう呼びかけている [2]。マーフィーによれば、「ワクチンを理解するために、研究上あらゆることが行われていると一般市民に安心させることが、単にすべてが安全であると言うよりも重要である」。他の人たちと同様、彼はワクチン接種を奨励し続ける。

●Long Covid のエコー?

ドレッセンのような副作用が、どれくらいの頻度で発生するかは不明である。オンライン・コミュニティには何千人もの参加者がいるが、公的には、誰もこのような症例を追跡していない。この症状には、疲労、激しい頭痛、神経痛、血圧の変動、短期記憶障害も含まれる。ナス(Nath)は、それらが 「きわめて稀なケース 」であると確信している。

一方、long Covid は、SARS-CoV-2感染者の約5%から30%が罹患すると言われている。研究者たちは、その基礎生物学の理解についていくつかの考えを持っており、暫定的ではあるが、一歩一歩前進している。ある研究では、ウイルスが組織内に留まり、継続的にダメージを与える可能性があることを示唆している。また、体からウイルスが消失した後でも、最初の感染による後遺症が関与している可能性を示す証拠もある。

たとえば、動物実験から得られた証拠は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク(多くのワクチンが防御免疫反応を引き起こすために使用しているのと同じタンパク質)を標的とする抗体が、付随的な損傷を引き起こすかもしれないという考えを支持している、とハラッド・プリュス(Harald Prüss)は指摘している。彼は、ベルリンのドイツ神経変性疾患センター(DZNE)とシャリテ大学病院の神経学者である。2020年、COVID-19に対する抗体療法を模索していた彼と同僚たちは、SARS-CoV-2に対して強力な効果を示す18の抗体のうち、4つがマウスの健康な組織も標的にしていることを発見した [4]。これは、自己免疫問題を引き起こす可能性があるという兆候であった。

初期の臨床データも同じような方向を示している。過去1年間、いくつかの研究グループは、SARS-CoV-2感染後の人々から、体自身の細胞や組織を攻撃できる、異常に高いレベルの自己抗体を検出している。イェール大学医学部の免疫学者アーロン・リングと岩崎明子らは、急性COVID-19患者から免疫系と脳を標的とする自己抗体を発見したと、2021年5月のネイチャー誌で報告した [5]。現在、彼らは自己抗体がどの程度持続するか、組織に損傷を与えるかについて研究している。今月、Cedars-Sinai Medical Centerの心臓専門医スーザン・チェン(Susan Cheng)とタンパク質化学者ジャスティナ・フェルト−ボーバー(Justyna Fert-Bober)は、自己抗体が感染後6カ月まで続く可能性があると Journal of Translational Medicine 誌に発表したが、自己抗体の持続と進行中の症状には相関がみられなかった。

この自己抗体が人に害を与えるかどうかを知るために、DZNEは long Covid 患者の脳脊髄液に、マウスの脳組織に反応する抗体があるかどうかを調べている。もし反応するならば、人間の神経組織も攻撃する可能性がある。プリュス教授らがまもなく投稿する論文では、患者の少なくとも3分の1で、マウスの神経細胞や他の脳細胞を攻撃する自己抗体が見つかったとしいる。一方、ノースウェスタン大学のグループは、2021年8月のプレプリントで、COVID-19後に神経学的合併症を起こした人々において、T細胞のサブセットが、進行中のSARS-CoV-2感染で起こるように持続的に活性化しており、何らかの異常免疫反応または残存ウイルスを示唆していると報告している。

一部の研究者は、long Covid のもう一つの原因として、血液中の微小な血栓に注目している。SARS-CoV-2の急性感染症では、小さな血栓が形成され、それが血管に並ぶ細胞を損傷する可能性がある。2021年8月、南アフリカのステレンボッシュ大学の生理学者であるレシア・プレトリウス(Resia Pretorius)と彼女の同僚は、感染が治まった後も微小な凝血塊が残る可能性があるという予備的な証拠を Cardiovascular Diabetology 誌に発表した [3]。この血栓は、酸素の運搬を妨げ、霧のような long Covid の症状を説明できる可能性がある。プレトリウスは現在、同僚たちとチームを組んで、この微小血栓の診断法を開発し、long Covid の治療法を研究している。

プレトリウスによれば、彼女らの同僚は、ワクチン接種後に慢性的な問題を抱える患者も見ているが、その数は20人以下と推定されている。これらのワクチン患者には、深部静脈血栓症のような血液凝固の心配だけでなく、脳霧といわれる long Covid のような症状も含まれているとのことである。アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンのワクチン接種後の、非常に稀ではあるが重篤な凝血の原因はまだ不明である。

しかし、プレトリウスは、すべてのCOVID-19ワクチンも時には微妙な凝血問題を誘発するかもしれないと疑っている。彼女によれば、ワクチン接種によって微小血栓が発生する可能性がある予備的証拠があるとのことであるが、ほとんどの場合それは気づかれずにすぐに消えてしまうものであって、この影響は彼女と同僚がワクチン接種後に採取した自分の血液と他の健康なボランティア8人の血液で確認したものである。

●微妙な話題

Long Covid の研究は、ドレッセン夫妻をナス(Nath)にも引き合わせることになった。2021年1月、ブライアン・ドレッセンはナスに助けを求めた。ナスはすぐに対応し、ブライアン・ドレッセンに、彼が主導する「神経系の炎症性疾患の自然史の研究」に参加するよう依頼した。

ワクチン接種後の合併症について語る、さらに何十人もの患者が、ナスとNINDSの神経科医であるファリナッツ・サファヴィ(Farinaz Safavi)のもとにたどり着くことになった。サファヴィは、2021年3月、ダニス・ハーツ(Danice Hertz)に宛てて「あなたの問題や現在検討中の他の症例を報告することを約束します」と書いている。南カリフォルニアに住む、引退した胃腸科医のハーツは、ファイザーのワクチンを1回接種した後、体が衰弱する副作用を発症していた。このメールの cc には、米国食品医薬品局(FDA)、疾病管理予防センター、ファイザーなどの上級責任者が含まれており、ハーツはこれをサイエンス社と共有した。

2021年の前半、ナスとサファヴィはブライアン・ドレッセンらをNIHに招き、検査を行なうと同時に、場合によっては、高用量のステロイドや免疫反応を鎮めたり調節したりする静脈内免疫グロブリン(IVIG)などの短期治療を実施した。患者は少なくとも数日間、腰椎穿刺や皮膚生検を含む神経学的、心臓学的、その他の検査を受けることになった。

サイエンス誌に語った研究参加患者は4人であるが、そのうちの1人は、ファイザーワクチン接種後に症状が始まった当該医療従事者であり、NIHの研究者が「人々を助けようとしていた」と話す。ナスによれば、34人がプロトコルに登録され、そのうち14人はNIHで過ごし、他の20人は血液サンプルと、場合によっては脳脊髄液を送ったとのことである。

しかし、時間が経つにつれて、NIHの科学者は手を引いていったと患者は話す。ブライアン・ドレッセンが神経学的検査のために予約していた9月の訪問は、遠隔医療に変更された。12月になると、ナスは患者を送るのをやめるよう彼女に頼んだ。「このような患者には、地元の医師から治療を受けるのが一番です」と彼は彼女に手紙を出した。

患者にとっては、このようなNIHからの沈黙は苦痛であり、ケアをしてくれところを見つけるのに苦労していた。2021年春にNIHを訪れた患者は、「科学者たちはデータを取って、私たちを放置した」と話す。「治療法もなく、自分の体に何が起きているのかわかりません」。医師からは何も提供されるものがなく、時には症状を「想像だ」と断定することさえあったと、何人かの患者は語った。

ナスはサイエンス誌に対し、NIHの施設は多数の患者を長期的に治療するための設備が整っていないと語った。その努力について、患者である当該医療従事者は「NIHの2人の人間がやるには多すぎる 」と話した。

患者の症例を記録したNIHのデータは、まだ報告されていない。2021年3月にナスが最初に投稿した約30人のケースシリーズの論文を、2つの一流医学雑誌は掲載却下している。ナスはこの却下を理解しているという。データは "カット&ドライ "(決着のついたもの)ではなく、観察研究だったからだ。今月、研究グループは、三つ目の雑誌に23人のケースシリーズの論文を投稿したが、それはワクチンの副作用の患者を含めた long Covid のプロトコルの修正版だ、とナスは話している。

サイエンス誌は、規制当局とワクチンメーカーに、これらの副作用に関する情報を問い合わせた。ファイザーの広報担当者は、「私たちがモニターしているものであることは確認できる 」と書いている。モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの3社は、副作用を深刻に受け止め、受け取った報告を規制当局と共有していると述べた。FDAの広報担当者は、「COVID-19ワクチンの安全性の監視に強い焦点を当て続ける」と述べ、欧州医薬品庁は、「COVID-19治療とワクチンの安全性と有効性を監視するために臨床現場からの実データを使用するための措置をとっている」と発言している。 

他の研究者は、科学コミュニティがこのようなワクチンの影響について研究することに不安を感じていることを指摘している。プレトリウスは言う、「誰もがこの問題を避けているのです」、「私は多くの臨床医や様々な大学の研究者と話しましたが、彼らはそれに触れたくないのです」。

それでも、彼女のグループや他の研究者は、前を向いて進んでいる。プリュスは、ワクチン接種後の症状を持つ一部の患者で自己抗体を検出しているが、他の患者では検出されていない。いくつかのグループは、患者のワクチン接種後の症状が、スパイクタンパクが標的とするアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に対する自己抗体によるものかどうかを研究している。チェンらは、lomg Covid の患者とワクチン接種後の副作用を持つ患者の混合から、高度な画像診断と診断検査を含むケースシリーズを計画している。また、プレトリウスと同僚のシャントール・ヴェンター(Chantelle Venter)は、ワクチン接種前後の血液凝固パターンを研究するために、少なくとも50人を集めたいと考えている。

イェール大学では、岩崎はナスとの共同研究を計画しており、long Covid とワクチン接種後の影響との関連性を調べる予定であるという。岩崎は、ワクチンの影響があった患者と話をし、彼らから血液や唾液のサンプルを採取する予定である。マーフィーによれば、ワクチン接種に対する体の反応を追跡するために、動物モデルでもっと研究をする必要があるとのことである。「制御された状況でこれを見る必要があります」と彼は言う。

プリュスは、マウスでCOVID-19のワクチン接種後に自己抗体の有無を調べている。そして、彼はワクチン接種後と感染後の患者のケアを続けている。彼のクリニックでは、患者の血液からほとんどの抗体を除去する治療法の臨床試験を間もなく開始したいと考えている。しかし、たとえ効果があったとしても、この治療法は高価であり、広く普及しないかもしれない。

●狭間にいる患者

ワクチン接種後に健康上の問題を抱える人々は、自分たちの苦境に注目が集まることを歓迎している。ブライアン・ドレッセンは言う「あなたには醜い汚れがついていて、疎外され、見捨てられているのです」。最初は、「ワクチン接種を躊躇させることを本当に恐れていました」と彼女は付け加えた。

他の患者は、ワクチン反対派が「ワクチンを接種することは愚かなのだから、死んで当然だ」と主張していることについて言及している。一方で、ワクチン支持者は、声を上げることで他の人を傷つけ、その人がワクチン接種を拒否し、COVID-19で死ぬかもしれないと主張する。「我々はこの恐ろしい狭間から抜け出せないでいる」と、昨年春にNIHを訪れた患者は言う。

ブライアン・ドレッセンは、自ら進んで公にすることに立ち向かった。彼女は、FDAを含む規制当局が、明らかな副作用を迅速に調査していないように見え、不満を覚えたと話している。彼女は、2021年6月、ワクチン接種に反対を表明しているロン・ジョンソン(Ron Johnson)上院議員ワシントン州選出)が開いたワクチンの副作用についての記者会見に参加した。「政治家と話すことは、私たちのプランAではありませんでした......全く違います」、「むしろプランJに近いものでした」とブライアン・ドレッセンは言う。

ヤナ・ルアレンダー(Jana Ruhrländer)も、引っかかりを感じている。ドイツ、カッセルの微生物学大学院生である彼女は、モデルナワクチンを1回投与した後、ブライアン・ドレッセンが経験した体内電気ショックの感覚、顔の部分麻痺、発作や脳卒中を恐れるほどの筋力低下、激しい口渇、心拍数や血圧の乱高下などの症状を呈した。

医師は「検査で異常は見つからなかった」と彼女を見放した。彼女は、自ら調べることで、自分の症状が、血圧や体液のバランスを調整するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と呼ばれるホルモン系と重なっていること、ACE2が重要な役割を担っていることに気づいた。彼女は、このシステムを標的とする自己抗体が彼女の症状を引き起こしているのではないか、と考えている医師と、最近つながりができた。

そんな経験もあるにもかかわらず、ルアレンダーは「今でもワクチンは素晴らしいと思う」と話す。そして、mRNAの技術は「非常に大きな可能性を秘めている」と言う。しかし、彼女にとって、このような副作用は多少改善されたものの、消滅したわけではなく、きちんと認識され理解されるべきものであると話す。「私たちはそれについてオープンに話さなければなりません」。

サイエンス誌の取材に応じた患者の中には、免疫系を抑制する薬物療法によって、少なくとも一定の緩和が得られたと言う人もいる。ナスも同じ現象に気がついた。彼は、long Covid の患者を対象にIVIGとステロイドの静脈内投与を試験したNIHの臨床試験の結果が、"ワクチン関連の合併症に適用できるだろう "と期待している。サイエンス誌が話を聞いた患者の中では、完全に回復した人はいない。

ワクチン接種後の副作用を調査している研究者は、おしなべて、SARS-CoV-2感染による合併症のリスクが、ワクチンの副作用のリスクよりもはるかに高いことを強調している。「ワクチンによるリスクは10倍、100倍、1000倍も少ないのです」とプリュスは話す。しかし、ワクチン接種後の症状の原因を理解し、早期治療が長期的な問題の予防につながるかどうかを知ることは、より安全で効果的なワクチンを設計する上できわめて重要であり、また、long Covid の生態を知る手がかりになるかもしれないとマーフィーは言う。

チェンは、ワクチン接種後の慢性的な問題について語る何十人もの人々から話を聞き、彼らの症状と long Covid の症状との間に重なる部分があることを感じている。そして今、彼女はより慎重に、かつ科学的に答えを探したいと考えている。「私たちは厳密さを保たなければなりません」と彼女は言う。「データが全くないということです」。

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記事の翻訳文は以上です。

筆者あとがき

この記事では、ワクチンの long Covid 様副作用が稀に起こるものとして書かれていますが、従来のワクチンと比べれば、決して稀とは言えないと思います。様々な接種後有害事象や死亡例の多さを考えても、その異常さが理解できます。そして、ワクチン接種の副作用の関わる最も大きな懸念の一つは自己免疫問題でしょう。

スパイクコード遺伝子ワクチンでは、細胞によって抗原(スパイクタンパク質)がつくられ、それに特異的に結合する抗体ができます。ところが、さらにこの抗体の可変領域に特異的に結合する鏡体になる抗体(いわゆる抗イディオタイプ抗体)がつくられ、これが自己免疫反応に関わる可能性が指摘されています [2](→抗イディオタイプ抗体が悪さをする?

もう一つの大きな懸念は、記事にもあるように、血液凝固と血栓の発生がワクチンで誘発される可能性です。上記のように、SARS-CoV-2感染が治まった後も微小な凝血塊が残り、long Covidの原因となる可能性が疑われています [3]。外来RNAが体内に入ると血液凝固が起こりやすいことは、mRNAワクチンが開発されるずうっと以前に、動物実験で確かめられています [6](→核酸ワクチンへの疑問ーマローン博士の主張を考える)。

ワクチンの安全性に関わるこれらの問題は、スパイクタンパク質の毒性、スパイク合成細胞自身が細胞性免疫の標的となる可能性、抗体依存性免疫増強(ADE)とともに、緊急の研究を要する課題です。

それにしても、最も苦しんでいるのはワクチンの健康被害を受けている当事者であるはずなのに、ワクチン反対派からは「ワクチン接種は愚かであり自業自得」と言われ、推進派からは「被害の声を上げれば、ワクチン接種の機会を阻害し、COVID-19の死亡リスクを高くする」と責められるなど、まったく不合理としか言いようがありません。

さらに、研究者はできればワクチンの副作用には触れたくない、その研究を行なうことにも不安を感じるというのは、日本でも海外でも同じよう状況だということがわかります。そしてワクチンの副作用の研究を行っている一部の研究者も、ワクチンをポジティヴに受け止めている人たちです。

いずれにしても、遺伝子ワクチンを緊急使用許可をしたツケが、ここに至って、きわめて大きい問題に膨れ上がってしまったということになるかもしれません。長期的な悪影響については(もしあるにしても)、もちろん何もわかっていません。

引用文献

[1] Couzin-Frankel, J. & Gretchen Vogel, G. In rare cases, coronavirus vaccines may cause Long Covid–like symptoms. Science 375, 366-367. https://www.science.org/content/article/rare-cases-coronavirus-vaccines-may-cause-long-covid-symptoms

[2] Murphy, W. J. and Longo, D. L.: A possible role for anti-idiotype antibodies in SARS-CoV-2 infection and vaccination. N. Eng. J. Med. 386, 394-396 (2022). https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMcibr2113694

[3] Pretorius, E. et al.: Persistent clotting protein pathology in Long COVID/Post-Acute Sequelae of COVID-19 (PASC) is accompanied by increased levels of antiplasmin. Cardiovasc. Diabetol. 20, Article number 172 (2021). https://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-021-01359-7

[4] Kreye, J. et al.: A therapeutic non-self-reactive SARS-CoV-2 antibody protects from lung pathology in a COVID-19 hamster model. Cell 183, 1058-1069.e19 (2020). https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.09.049

[5] Eric, Y. et al.: Diverse functional autoantibodies in patients with COVID-19. Nature 595, 283–288 (2021). https://www.nature.com/articles/s41586-021-03631-y

[6] Kannemeier, C. et al.: Extracellular RNA constitutes a natural procoagulant cofactor in blood coagulation. Proc. Natl. Acd. Sci. USA. 104, 6388-6393 (2007). https://doi.org/10.1073/pnas.0608647104

引用したブログ記事

2022年3月24日 抗イディオタイプ抗体が悪さをする?

2022年3月23日 遺伝子ワクチンを取り込んだ細胞は免疫系の攻撃標的になる

2021年6月26日 核酸ワクチンへの疑問ーマローン博士の主張を考える

                      

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)