Dr. Tairaのブログ

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高性能マスクについて

はじめに

前回のブログ記事(→あらためてマスクの効果について)では、マスクの種類による飛沫防止、エアロゾル防止効果(排出、侵入)について紹介しました。新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用については、一般的には3層構造の不織布マスクが性能的にもコスト的にも推奨されるべきでしょう。特にこれから感染力の強い変異ウイルスの登場の可能性も考えると、1層の布マスクやウレタンマスクは、感染症対策のマスクとしては避けた方がよいと思います。

とはいえ、不織布マスクの欠点は隙間ができやすいことです。隙間があってはマスクの効果は半減します。普通は鼻の位置にワイヤーが入っていて、鼻の形に折り曲げて使うようになっていますが、つける前にW字型に折り込んでおかないとピッタリと密着できません。鼻の部分はピッタリとつけられたとしても、横漏れはどうしてもできてしまいます。そのため、不織布マスクの上からウレタンマスクを二重につけて、なるべく隙間をなくすようなつけ方もあります。

より完全にマスクを考えるとしたら医療用のN95マスクがあります。これは微粒子侵入防止機能に優れ、密着度が高いため、つけているととにかく苦しいです。長時間の着用には向きませんし、高価でもあり、あくまでも医療用のマスクです。

一般向けとしては4層、5層構造の3D型高性能マスクが市販されていますので、3層不織布マスクの欠点を補うものとしてこれらが活用できます。ここでは、私が使っている一般向けの高性能(高機能)といわれるマスク(図1)について紹介したいと思います。

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図1. 購入した市販の高性能マスクの例.

1. PM2.5対策4層マスク

まずは、韓国製のPM2.5対策用の4層マスクです(図2)(販売:株式会社ピエラス)。これはもう10年以上から薬屋で購入しているマスクですが、花粉、ウイルス飛沫を99%捕集とされるもので、韓国食品医薬品安全庁KFDA(Korea Food and Drug Administration)の認定済みです。KFDAは、2013年から、MFDS(Ministry of Food and Drug Safety、食品医薬品安全処)へと名称変更されています。

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図2. PM2.5対策用マスク(ピエラスのウェブページより転載).

米国N95規格に匹敵し(0.3 μmの粒子を95%以上カット)、気密性を高めた立体構造を有し、漏れ率を大幅に軽減している割には付け心地はよいです。息苦しさもそれほどありません。4層構造においては、第1層、第4層に不織布(ポリプロピレン)を使用しています。

マスクのトップにはノーズクッションがついていて眼鏡の曇りを軽減させています。また耳紐比ヒモには調整ゴムがついていて、締め具合を調節できるようになっています。

非常に装着性のよい高性能マスクですが、価格はやはり高めで1枚300円程度です。また洗って使うことはできません。日常的に使うには使うには、価格的にちょっときついかもしれません。

2. ダイアモンド形状4層マスク

メディアでも取りあげられて有名になったのが不織布フィルターを付けたダイアモンド形状4層マスクです。KF94とよばれるものはこのタイプになります。ちなみにKFは "Korea Filter"の略語であり、その後ろの数値は微粒子カットの性能を指します(数値が高いほど粒子カット効果大)。たとえば、KF94とKF99は、国際基準のウイルス捕集効率(平均0.4 μmの大きさの粒子のろ過)をそれぞれ94%、99%クリアできるという意味です。

KF94マスクは韓国製であり、日本でも類似品がありますが、現時点ではハングルで "식약처 허가"(MFDS)の表記のあるものが目印になります。

同じ4層マスクの一つとして、ヴィクトリアンマスク(Victorian Mask)という商品名で販売されている医療用レベルのマスクがあります(サムライワークス株式会社、中国製)。高性能を維持しながら、今までにない超立体型”ダイヤモンド形状”でマスク着用時のメガネの曇りや息苦しさなどを解消するとされています。

ウェブページを見ると、微粒子捕集効率PFE(PM2.5対応レベル)99.6%と明示されていると同時に、0.1 μmの捕集率99%以上とありますが、ウイルス捕集効率VFEの文字はありません(図2左)。このあたりはちょっと気になるところです。

実際につけてみると3層不織布マスクよりは密着感は高いです(図2右)。立体構造なので息苦しさはそれほどありません(3層不織布並み)。眼鏡の曇りも軽減されていますが、曇りが少ないということはそれだけ漏れが少ない証拠だと思います。

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図2. ダイヤモンド形状4層マスクの例:ヴィクトリアンマスク(サムライワークス)のパッケージとマスクを着用したところ(筆者).

ダイヤモンド形状マスクは、その構造から付け方に工夫がいります。あらかじめノーズフィッターをW字にしておくことは通常のワイヤー入り不織布マスクと同じですが、マスク下部を顎に引っ掛けるようになっているので、顎から付けた方が付けやすいように思います。

なお、サムライワークスはJAPAN MASKという商品名で、3層不織布マスクも販売しています。これもつけてみましたが、通常の不織布マスクよりは密着感があり、漏れ率は低いように感じました。

上記のヴィクトリアンマスクはKF94マスクに相当する性能と思われますが、息苦しさの程度(実際は息苦しさはない)でも同じような感じです。KFマスクではろ過の数字が厳しいマスクであればあるほど、当然息が苦しくなり、値段も高くなりますで、個人の感覚で選択するのがいいと思います。

3. KN95マスク

KN95は超極細繊維フィルタを2層を使った医療用レベルの5層マスク(レックケミカル株式会社販売)です(図3)。中国国家標準規格GB2626-2006(0.075±0.020µmのNaCI粒子を95%以上捕集)に準拠しています。 4層目のホットエアコットンが挿入されており、マスク内の蒸れを軽減してくれます。 上部にはノーズプレートを採用されており、密着度を高める一方、 立体構造であるので口元の圧迫感がありません。

実際につけてみると、圧迫感はそれほどありませんが、KF94レベルの4層マスクと比べると、やや息苦しさは感じます。それだけ捕集率が高く、漏れを抑えているということでしょう。

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図3. KN95マスク:パッケージ上の説明(レックケミカル).

KN95については、COVID-19の感染拡大で米国疾病対策センター(CDC)が、N95の供給が不足した場合、KN95が適切な代用品になるという見解を示したマスクです。米国食品医薬品局(FDA)も、一定の基準を満たせば使用を承認する方針を明らかにしました。

ところが、米国の労働安全衛生研究所(NIOSH)が、N95相当マスクの製品評価を行なった結果、中国で製造されたKN95マスクの多くが微粒子ろ過効率の95%以上を実証できないことが判明し、推奨リストから削除となりました。また、オリジナルの規格認可品の模造品があることも指摘されました。日本でも、一般社団法人の職業感染制御研究会が、KN95マスクなどの中国製品に不良品が多数確認されていると注意喚起しています [1]

こういう背景もあり、値段が高いということもあって、一般人には使いづらいマスクと言えます。

おわりに

既出論文では、微生物やウイルスの飛沫感染という場合、実際は5 μm以下のエアロゾルによる感染が主要感染様式であることが示されています [2]。考えてみればこれは当然で、大きな飛沫は物理的にすぐに落下してしまうので、人から人への感染は、接触時間がはるかに長いエアロゾルの影響が大きいと考えられるでしょう。

そこから考えられることは、いかにしてエアロゾル感染を防ぐかという観点からのマスク着用です。この面で、一般的には3層不織布マスクの着用が推奨されるわけですが、どうしても漏れが出てしまうという欠点があります。できる限り意識して密着させて付ける必要がありますが、これをある程度改善するのが、二重マスクであり、4層マスクの着用になります。ただし、4層マスクは値段がはるので、安価な3層にするか4層にするかは個人の判断でということになるでしょう。

日本政府も医療専門家も、COVID-19感染対策としてマスク着用を促してはいますが、「マスクの種類ごとの効果」と「どれを推奨するか」についてはほとんど触れず、「正しく着用することが大事」と言っているだけです。これではほとんど意味がありません。マスクと一からげに述べることによって、国民にどれだけ誤ったメッセージになっているかわかりません。

引用文献・記事

[1] 三和護: あなたのN95マスクは大丈夫ですか? 日経メディカル 2020.07.03. https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202007/566232.html

[2] Fennelly,K. P.: Particle sizes of infectious aerosols: implications for infection control. Lacet Res. Med. 8, 914–924 (2020). https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30323-4

引用した拙著ブログ記事

2020年11月27日 あらためてマスクの効果について

                

カテゴリー:感染症とCOVID-19