Dr. Tairaのブログ

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Hestina属幼虫の棲み分け

日本に生息する Heitina のチョウは、在来種のゴマダラチョウ外来種アカボシゴマダラの2種です。このブログでも何度も取り上げてきたように、後者は特定外来生物とされており、食草であるエノキをめぐって前者と競合する可能性が指摘されています。
 
しかし、この指摘の根拠となるデータは私が知る限りほとんど見当たりません。そのため、私は自らフィールド調査を通じて検証を行なってきました。
 
この検証の最も重要なポイントは、ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの越冬幼虫が混在する一定のエリアにおいて、一つ一つのエノキにおける両者の比率を示すことです。つまり、多くのエノキからゴマダラチョウをしのぐ割合でアカボシゴマダラが出てくれば、後者は侵入的と考えられます。
 
しかし、実際に両種が狭い範囲で混在する場所はそれほど多くありません。その中で絶好の観察の場所としているのが、写真1、2に示す林です。この場所ではエノキの高木、低木、幼木が狭い範囲(距離にして100 m程度)でたくさん生えており、かつHestina 属の越冬幼虫が見られます。
 
イメージ 1
写真1
 
イメージ 2
写真2
 
結論から言えば、このエリアではゴマダラチョウの幼虫の検出はすべて高木の根元からでした。写真3は10日前に検出したゴマダラチョウの幼虫です。
 
イメージ 3
写真3
 
今日はより徹底的に、前回調査できなかった高木、低木、幼木の根元の落ち葉をチェックしました。前回もアカボシゴマダラは幼木のみからの検出でしたが、今日もまったく同じでした。写真4は、今日新たに調べた幼木から出てきたアカボシゴマダラです。
 
つまり、距離にして100 mくらいの範囲内で、高木からはゴマダラチョウが、幼木からはアカボシゴマダラのみが検出されるということになります。両者がいっしょに検出されたエノキはなく、かつ中低木からは両種とも検出できませんでした。このような場所は関東においては枚挙にいとまがありません。
 
イメージ 4
写真4
 
これまで、稀にゴマダラチョウとアカボシゴマダラがいっしょに検出される場合も経験していますが、基本的に両種はエノキの選択性が異なり、棲み分けを行なっている可能性が高いです。少なくとも高木と幼木が混在する場所においては、ゴマダラチョウは前者、アカボシゴマダラは後者を優先的に選んで産卵しているのではと思います。これを確実のものとするためには、両種が混在する場所での調査を増やしていく必要があります。
 
ついでに、今日Hestina 幼虫以外に出てきた昆虫を紹介します。クビキリギリスです(写真5)。ツマグロオオヨコバイと並んでエノキの落ち葉から最も高い頻度で出てくる成虫昆虫です。
 
イメージ 5
写真5
 
調査を終えて帰ろうとしたら、ダイサギが餌を狙っているとこるに遭遇しました(写真6)。
 
イメージ 6
写真6
 
                                        
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