越冬明けのHestina 属幼虫はこの時期5齢への脱皮が進行している最中です。一部はすでに蛹になっています。まず、この時期のアカボシゴマダラの典型的な5齢幼虫を示します。
写真1は脱皮後10日を経過したアカボシ5齢幼虫です。
写真1
こちらは脱皮後2週間を経過したものです(写真2)。
写真2
次にゴマダラチョウの5齢幼虫を示します。写真3は脱皮後2日を経過した個体です。
写真3
こちらは脱皮後5日を経過したゴマダラ5齢幼虫です(写真4)。
写真4
一般にはアカボシゴマダラとゴマダラチョウの越冬幼虫は起眠、5齢への脱皮、成虫の発生に至るまでの時期については違いがあると言われています。すなわち、アカボシゴマダラがゴマダラチョウよりも早く越冬から覚め、エノキの葉上に到達すると考えられているようです。
しかしながら、1本のエノキにアカボシゴマダラとゴマダラチョウが混在する場合(すなわち物理化学的条件が同じ場合)、両者の5齢への脱皮はほぼ同じタイミングで起こるようです。これは3本のエノキ低木における観察で確認しました。
通常はアカボシゴマダラの幼虫はエノキ幼木に、ゴマダラチョウのそれはエノキ高木により多く生息しますので、起眠における両者の物理化学的条件は異なります。アカボシゴマダラの方が日当たりが良く、気温の変化を受けやすく、若葉が出るタイミングも早いエノキに棲むことになりますので、当然脱皮の時期は早くなると思われます。