Dr. Tairaのブログ

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オオムラサキの幼虫に対する捕食圧

オオムラサキ Sasakia charonda は年一回の発生で、越冬幼虫から羽化までの期間が同じである、エノキを食樹とするゴマダラチョウ Hestina japonicaアカボシゴマダラ Hestina assimilis に比べるとやや長いです。具体的には、後者2種が5齢で蛹化するのに対し、オオムラサキは蛹化の前のもう一度脱皮し、6齢が終齢となります。
 
6齢幼虫は体も大きくなるため、鳥に狙われやすいと言われています。私は実際に鳥にオオムラサキの幼虫が食べられているところは見たことはありませんが、この時期徐々に発生している5齢幼虫の観察を行なっていると、ポツポツと消えていく個体があります。
 
写真は定点観察しているエノキ上のオオムラサキの5齢幼虫を示します。体長は22 mmで、脱皮して日もあまり経っていないと思われます。この大きさの幼虫が今日3頭消失していました。すぐ近くにいたゴマダラチョウの前蛹もなくなっていましたので、鳥による捕食だと思われます。
 
このような捕食は、体が大きいほど受けやすいと思われますが [1]、5齢に脱皮した直後の比較的小さい個体でも例外でもないということを示しています。
 
イメージ 1
 
今まで、オオムラサキHestina 属の越冬幼虫の生残率においては、寄生虫や体力消耗が影響を及ぼす主因子だと考えていました。しかし、既出論文 [1] にもあるように、鳥の捕食が、オオムラサキの幼虫にとって最大の脅威なのではないかと考えています。
 
参考文献
 
[1] 小林隆人, 稲泉三丸: オオム ラサキの越冬終了後から羽化までの 死亡過程とその要因. Jpn. J. Entomol. 2(2): 57-68 (1999). 
 
         
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