越冬明けのゴマダラチョウの幼虫は落ち葉の下からエノキの幹に上り、エノキが芽吹くまで概ね幹上の二又の位置で待機します。時期としては幹上に上るのが4月上旬というのが一般的な見方のようですが、エノキが置かれる物理的条件に左右されるようです。
私はアカボシゴマダラとゴマダラチョウの幼虫が共存する日当たりのより低木のエノキでは、両種が一斉に幹上に上り始めるのを確認しました。3月中旬から下旬のことです。一方で、日当たりの悪い大木の北側の落ち葉で越冬したゴマダラチョウの幼虫の起眠は遅く、4月いっぱいまでかかることもあるようです。このような遅い起眠は、日当たりが悪く、若葉の出が悪いエノキ幼木のアカボシゴマダラでも観察されました。
エノキの若葉がで始めると、ゴマダラチョウはアカボシゴマダラと同様に5齢幼虫へと脱皮します。そして旺盛な食欲とともに急速に成長していきます。越冬型の状態ではゴマダラチョウの幼虫はアカボシゴマダラのそれよりもやや大きいですが、5齢に脱皮後は大きさは逆転していきます。脱皮直後は両種とも20 mm前後の体長ですが、成長のスピードはアカボシゴマダラの方が大きくなります。
5月の大型連休のこの時期ゴマダラチョウの5齢幼虫の食欲は旺盛です(一方でアカボシは多くが蛹化しています)。ばくばくと上から下へエノキの葉を削りながら食べていく姿をよく目撃することができます。
一方で、夜間アカボシやゴマダラチョウの幼虫はどうしているのか、前から疑問に思っていました。夜は大人しく葉にぶら下がって休んでいるのか、それとも昼間と同じく食欲旺盛なのか、という疑問です。
先日、定点観察しているいくつかのエノキに鳥による捕食を防ぐための網掛けをしました。また、幼虫がいる枝にはさらにサブの網掛けをして二重の保護対策を講じました。そこで思い立って、網掛けの目印がついたエノキの枝を夜間に観察しにいくことにしました。
夜間ゴマの幼虫はどうしているのか、網掛けで目印をしておいた場所に出向いてみたらしっかり食事中でした。
— Dr.Taira-虫ac (@rplelegans) 2019年5月5日
しかし気配を察知されたようです。 pic.twitter.com/Vb5ZsBL2aB
ちなみに幼虫にライトを当てて近づくといずれも食べるのをやめてしまいました。気配を察知する能力がたかいですね。