Dr. Tairaのブログ

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カマキリによるHestina幼虫の捕食

今年の8月も終わりになり、エノキ上に生息する3化目の Hestina 属の幼虫も大部分が4–5齢となり、一部は蛹化、さらには羽化まで進んでいます。アカボシゴマダラの幼虫はもっぱら若木の葉上にいますが、ゴマダラチョウは大部分が高木の下枝か樹高1.5 m 以上の低木の葉上です。
 
両種の幼虫が混在するエノキを見つけるのはなかなか難しいですが、それでも低幼木を丹念に探しているとときどき見つかります。写真1は樹高1.5 m程度の幼木にいるゴマダラチョウ4齢幼虫で今日撮影したものです。
 
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写真1
 
写真2は1週間ほど前に撮ったゴマダラチョウの4齢幼虫で、現在は終齢になっているはずですが行方不明になりました。
 
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写真2
 
共存するアカボシゴマダラの幼虫の識別は比較的容易ですが、中には写真3のように、本来4列あるべき背部の突起対が3列しかなくかつ尾状突起も開き気味の個体も見つかり、一瞬ゴマダラチョウのように見えて紛らわしいです。
 
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写真3
 
上記したように幼虫を経過観察していると、まだ蛹化までに成長していないにもかかわらず突然葉上から姿を消すことが度々あります。多くは野鳥や肉食昆虫による捕食だと推察されますが、夏はカマキリによる捕食の影響が最も大きいのではと考えられます。理由は以下のとおりです。
 
実際に、これまで調査したアカボシゴマダラやゴマダラチョウの幼虫がいるエノキの低幼木には必ずといっていいほどオオカマキリが検出されました。そして捕食の現場を度々目撃することができました。
 
写真4オオカマキリがアカボシゴマダラの前蛹幼虫を捕らえて運んでいるところです。すでに幼虫の体半分がなくなっています。
 
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写真4
 
写真5オオカマキリがアカボシゴマダラの終齢幼虫を捕らえたところで、逆さまになりながら残りの4本の足で枝伝いに運んでいました(左)。捕らえた幼虫を横取りして見たところ写真右のように内容物が漏出していました。
 
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写真5
 
エノキの若木を探索していると、このような黒い漏出物がくっつい葉が頻繁に見られますが(写真6)、おそらくカマキリの狩りの痕だと思われます。

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写真6
 
これまでもHestina属幼虫やオオムラサキの幼虫の天敵について寄生蜂や鳥を挙げてきましたが、夏期におけるHestina属の幼虫にとっては、カマキリが最も恐い天敵の一つではないでしょうか。
 
                   
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