Dr. Tairaのブログ

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ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの共存-3

前のブログ記事で、エノキの大木の根元にはゴマダラチョウの越冬幼虫が選択的に存在し、外来種アカボシゴマダラの幼虫はほとんど見つからないことを書きました。これまで樹高10 m以上のエノキの成木を数百本見てきましたが、出てくる幼虫は基本的にゴマダラチョウばかりです。
 
ところが年が明けた先日、里山の環境が残る農地横に生えた10 m級のエノキ(写真1)からアカボシゴマダラの幼虫を検出しました。同時に一生懸命探したものの、ゴマダラチョウはこの木からは見つかりませんでした。
 
イメージ 1
写真1
 
アカボシゴマダラ幼虫を検出と言っても、その形態は微妙で同定の拠り所になる尾状突起が1本しかなく(写真2左)、背中の3列目の突起列が丸みを帯びていることのみでアカボシと推察しました。もしアカボシゴマダラだとすると、エノキの成木に単独でいたことになり、私の経験上初めてのことになります。
 
本当にアカボシゴマダラが10 m級のエノキ成木に単独でいたのか、やはりどうしても気になったので、今日写真1のエノキを再度調査することにしました。
 
前回見逃している可能性もあるので、木の周囲1 mの範囲まで広げて落葉を1枚1枚丁寧にチェックしました。そうしたら意外にも、前回見たはずなの根元付近からゴマダラチョウが1頭見つかりました!!(写真2右)。見つかった個体は、ゴマダラチョウにしては小さく、体長(頭部から尾状突起まで)12 mmしかありませんでした。
 
イメージ 2
写真2(左:アカボシゴマダラ?; 右:ゴマダラチョウ
 
推察するに、ゴマダラチョウの越冬幼虫はもっといたかもしれません。風で落ち葉ごと幼虫が拡散した可能性もあります。
 
今日の再調査結果から、エノキ成木でのアカボシゴマダラとゴマダラチョウの共存がわかり、アカボシ単独での分布というのは、やはり私にとっては未確認ということになります。樹高10 mに満たない中低木においては稀に両者が共存していることを確認していますが、10 m級の成木では初めてです。少なくとも10 mくらいまでなら、両者は共存するということになるでしょう。
 
アカボシゴマダラは、ゴマダラチョウの食草エリアに侵入して競合する危険性があると指摘されています。しかし、これまでのところ、大木においてはやはりゴマダラチョウが圧倒的に存在しており、アカボシに駆逐されている感じは受けません。
 
さらに、さまざまな樹高と幹径のエノキについて精査する必要があると思われます。