私が最初にゴマダラチョウの幼虫を見たのは、小学校5年生のときでした。担任の先生に「ゴマダラチョウはエノキの根元にある落葉の下で幼虫態で越冬する」と教わってとても興味を抱き、実際に自然の幼虫を見てみたいと思いました。
その年の冬休みに担任の先生に連れられて近くの田畑に行き、畑の真ん中にそびえ立つエノキの大木でゴマダラチョウの幼虫探しを行いました。落葉の一つ一つを入念にチェックし始めたところ、ものの1分も経たずに最初の越冬型幼虫が見つかりました。「いたーっ!」と思わず声が出て、とても感動したことを今でも鮮明に覚えています。その時は、結局20頭以上の幼虫を見つけたと思います。
それ以来、冬の間の休祭日はゴマダラチョウの幼虫探しが年中行事になりました。随分とエノキの大木巡りをしました。それから半世紀以上経った今、私が愛着を持って見ていたエノキの大部分は伐採され、それらの場所は住宅街に変わり、もちろんもうゴマダラチョウはいません。
しかし、その時の経験は今でも強く生きており、ゴマダラチョウの越冬幼虫がいそうなエノキはだいたい分かるようになりました。一般的に知られているように、陽が当たららず陰ができやすい大木であることがまず第一条件です。
写真1
一般的に、陽や風が当たらない北側の根元から幼虫が出やすいと言われていますが、必ずしもこの条件に当てはまらない例も経験しています。陽が当たらなければ南側から出てくることもあります。
写真2は上記よりもやや小さいエノキの大木です。これも街のど真ん中にありますが、ゴマダラチョウの幼虫が出てきました。
写真2
市街地や近隣公園などにあるエノキでは、落葉が風で飛ばされたり、人為的に除去されることが多いですが、写真2のエノキはしっかりと落葉が残っていました(写真3)。このような場合は、大抵幼虫が見つかります。
私は同じエノキを食樹とする外来種アカボシゴマダラの幼虫の探索も行なっていますが、大木(少なくとも樹高15 m以上)からはゴマダラチョウしか見出していません。したがって、これまでのところ食草を巡ってアカボシゴマダラがゴマダラチョウの脅威になるという説には懐疑的です。
一方、過去の文献やインターネット上においては、大木からアカボシゴマダラを検出したという情報も散見されます。もしそうだとすれば、どのような条件で検出されたのか是非知りたいものです。そのような経験をお持ちの方がいらっしゃったら、是非ご一報をお願いいたします。