Dr. Tairaのブログ

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エノキの伐採

私の住む街では、街のど真ん中に約300 mに亘ってとびとびにエノキが連なる貴重な緑地があります。5–20 mの中高木と1–2 mの幼木が混在する場所(写真1)で、ゴマダラチョウアカボシゴマダラをいっしょに見ることができます。
 
イメージ 1
写真1
 
しかしゴマダラチョウの場合は成虫を見たことはこれまで一度もなく、葉上や落葉下の幼虫のみの目撃です。実際見ることのできるゴマダラチョウの幼虫の数はきわめて少なく、10 m以上の高木の根元から、1本あたり1–2頭見つかる程度です。稀に幼木からも見つかったこともあります。
 
一方、アカボシゴマダラは成虫、幼虫ともよく見ることができます。成虫はエノキの高木の周囲を高い位置でユラユラ舞っていますが、幼虫はもっぱら幼木からしか発見できません。この場所でも明らかに、ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの棲み分けを見ることができます。
 
前のページで、ゴマダラチョウの越冬幼虫にとっては、落葉の清掃・除去と自然風による落葉の飛散が、生存を脅かす要因の一つであることを述べました
 
もう一つの負の影響は伐採です。今日、写真1のエノキのエリアに幼虫を観察に行ったところ、まさに市の担当課による幼木・低木の伐採が行われている最中でした。
 
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写真2
 
急いで近づき事情を尋ねましたが、定期的な伐採管理のようでした。ときすでに遅しで、エノキの3–4 mほどの低木と幼木が数本伐採されていました。ゴマダラチョウの幼虫が時々葉上に見られた低木です。ここは市の管理区域なので致し方ないですが、誠に残念です。
 
都市エリアでは減少傾向にあるゴマダラチョウなのに、このままエノキの伐採を続けて行けばはさらに大きな打撃を与えるでしょう。毎年、残った雑木林や近くの緑地から飛んできては産卵しているのでしょうが、その度に幼虫が壊滅的打撃に曝され、なかなか成虫になれない事情が想像されます。
 
                     
カテゴリー:公園と緑地