カテゴリー:エノキ下の越冬幼虫の探索
今日は昨日に引き続きフィールド調査に行ってきました。アカボシゴマダラとゴマダラチョウの越冬型幼虫の分布調査です。
前のページでも述べましたが、これまでの調査データに基づけば両種の幼虫は棲み分けをしていると感じています。すなわち、アカボシゴマダラが低幼木のエノキを好むのに対し、ゴマダラチョウは高木に対する親和性が大きいという違いです。
今日向かったエリア(都市公園)では、写真1のような 樹高10 mを超えるエノキの大木が多く茂っています。このような高木や中木で、根元から1 –3 mくらいまでの高さに下枝が出ている株にゴマダラチョウは産卵しやすいように感じます。
写真1
しかし前にも述べましたが、都市公園内の落ち葉は定期的に清掃・除去されています(写真2)。エノキ、ケヤキ、イヌシデなど、ほとんどの落葉高木の根元には落葉がありません。今日訪れたポイントでもエノキの下は多くは落ち葉が除去されていて、以前見られた幼虫が消えていました。
写真2
残念という思いを引きずりながら、公園の外れにある高さ10 m程度のエノキのポイントに向かいました。ここは農道の脇なので、とりあえず清掃・除去の心配はありません(写真3)。このくらいの大きさで下枝が出ているエノキが最も幼虫が見つかりやすいようです。
写真3
写真4
ときどき一つの落ち葉に複数の幼虫が見つかることがありますが、今日も1枚に2頭がくっついているところを発見できました(写真5)。写真5上の幼虫は背中の突起が4つあってアカボシと見間違えそうですが、この程度のものはゴマダラチョウでもよくあります。ゴマダラチョウはアカボシより太っていてやや大きいのが特徴です。
写真5
今回も確認できましたが、やはりゴマダラチョウが多く見られるエノキ高木の下では滅多にアカボシゴマダラは見られず、低木で両者の共存がみられる程度です。個人的感想ですが両種は棲み分けを行なっていると思います。すなわち、ゴマダラチョウが成木を好み、かつ低幼木でも生息できるのに対し、アカボシゴマダラはもっぱら幼木に生息しているという違いです。
このような私自身の調査に基づく結果は、これまでの既出論文に示された知見 [1, 2] を支持するものです。
アカボシゴマダラの幼虫がいるエノキの幼木はツツジの植栽に囲まれていたり、ブッシュの中にあったりすることが多く、人為的に落ち葉が除去される機会は少ないと思います。一方、ゴマダラチョウが多くいるエノキはより落ち葉が除去されやすい環境にあると思います。
人為的影響はゴマダラチョウの方がより受けやすいと言えるのではないでしょうか。
参考文献
[1] 中村進一, 菅井忠雄: 神奈川県におけるアカボシゴマダラの発生 (2). 月刊むし No.409, 94-97 (2005).
[2] 長澤亮, 石井学, 加藤義臣: 関東地方におけるコムラサキ亜科3種のチョウによるエノキの利用とそのサイズとの関係. Butterflies No.58, 24–29 (2011).
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