Dr. Tairaのブログ

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国産バターはなぜ高い?

今朝のNHKあさイチ」の話題はバターと牛乳でした。日本ではこのところ、とくに冬場には「バター不足」となることがあります。このようなバター不足になることと国産バターが高い理由について解説していました。
 
バターは牛乳が原料です。すなわち、牛乳を遠心分離して集めたクリームに食塩を添加して固めたものです。主成分は脂肪(乳脂肪、>80%)ですが、ビタミンAなどの栄養素も含んでいます(図1)。100 gのバターを得るためには、原料乳が約5リットル必要とされます。
 
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図1. バターの栄養成分(主成分は脂質で8割強を占める)
 
牛乳が原料なのに、国産バターはなぜそんなに高いのでしょうか。まず、図2に、国産バターと外国のバターの小売価格を比較します。日本のバター200 gの消費税抜きの平均価格は390円であり、各国と比べてみても飛び抜けて高いです。
 
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図2. 日本のバターと各国のバターの小売価格の比較(2018.08.29 NHKあさイチ」より)
 
ちなみに私は、外税360円で購入できる生協バターを基本で使い、適宜他メーカーの商品に取り替えています(図3)。生協バターは近くで買えるなかでは、最も安い価格で、消費税込みで400円以内で購入できます。
 
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図3. 生協バターと雪印北海道バター
 
国内で買えるバターが高い理由を考えるためには、需要先と供給元の関係を考える必要があります。国内で売られているバターは家庭向けとより低価格の業務用があり、さらに国産のバターと輸入のバターで使い分けているということらしいです(図4)。
 
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図4. 日本におけるバターの需要先と供給元との関係
 
消費者のためには、価格が安い外国産バターをもっと輸入すればよいではないかということになりますが、そこには、農水省の輸入制限と関税という規制が働いています。また、在庫を生じないために生産調整を行い、需要分より少なめに供給している現状があります。これらが、国内でバターが高く、しばしば不足してしまう原因となっています。
 
バターについては、国内生産者を保護するための政策がとられているわけです。農水省担当者は「日本の乳製品は欧米ブランドのような競争力がなく、現行措置がベスト」という立場をとっています。
 
国内の酪農家は高齢化で人手が減り続け、国産の原料も足りず、生乳の生産量は減り続けています。生産価格を抑えられる要素がありません。加えて、外国産に品質で対抗できるいいバターと作ろうとすれば、安い輸入穀物よりも地場の牧草を多く牛に食べさせる必要があるため、余計に生産費用がかさみます。どうしても高くならざるを得ないということです。
 
牛が草を食べるほど、生乳の脂肪分が増加し、かつバターが黄色化すると言われています。たとえば、フランスのボルディエのような高級発酵バターは、日本のものよりも黄色味が強く、芳醇な香りと味わいがあります。日本では、ほとんどが穀物を与えて飼育しており、事実、国産バターは白色に近い黄色をしています。日本発のブランドとして競争をしていくのも、なかなかむずかしいようです。