Dr. Tairaのブログ

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正しい生ゴミの投入量ー含水率との関係



 

土や類似の基材を入れた簡易生ゴミ処理器(木箱、段ボール箱、プラスチック製コンテナー、植木鉢など)を用いて家庭単位で生ゴミ処理を行なう場合、最も間違えやすい運転の仕方として生ゴミの投入量があります。ウェブ上でも出版誌上でも投入量を正しく示している記事もお目にかかれません。ここで、正しい生ゴミの投入量について説明しましょう。

毎日出てくる生ゴミを日常的に処理する場合には、その量に応じて基材の量を決める必要があります。その場合、重量なポイントとなるのが含水率です。嫌な臭いを発生することなく、生ゴミ分解が最も進みやすい容器中の含水率は40–50%です。

重要ポイント:最適含水率は40-50%
 
生ゴミそのものに平均で80%の水分が含まれていますから、これが毎日投入されるとたちまち水だらけになってしまいます。これをある程度吸収するため(保水)するために基材を用いているわけですが、水分過多になると間隙が水が埋まってしまい、空気の通りが悪くなります。その結果、酸素呼吸による酸化分解ではなく発酵に傾き、発酵生産物(臭い)が発生するようになります。また撹拌を怠るとやはり酸素不足になり、発酵状態になります。そして基材がくっつき団子状態になります。
 
重要ポイント:水分過多で臭いが発生

そこで、効率的に水分を飛ばすためには処理器を日光に当て、自然風にさらし、かつ中身をかき混ぜることが重要になります。このような正しい運転を心がけた場合に、毎日投入できる生ゴミの最大量は0.2 kg/20 L (基材14 L) です。つまり、20 Lの容器に14 Lの基材(土など)を入れて処理する場合に、最大0.2 kg/日の生ゴミが投入できます。
 
重要ポイント:生ゴミ投入量は0.2 kg/20 L (基材14 L) 
 
ここで、生ゴミの投入量と基材量との関係を図1に示します。横軸が基材量(園芸土など)、縦軸が生ゴミ投入量です。含水量40-50%を保つことのできる範囲を薄赤で示しています。たとえば、1人毎日0.2 kgの生ゴミを出す場合、14 Lの基材、4人家族が0.7 kgの生ゴミを出す場合、49 Lの基材が必要ということになります。実際は容器に基材を入れて用いますので、それぞれ20 L、60 L(あるいは20 L×3)程度の容量の容器が必要になるでしょう。ちなみに0.7 kgの生ゴミ量といえば、ボールに山盛りになる程度の量です。
 
イメージ 1
 
上記の毎日の生ゴミ投入量で、太陽光、自然風を最大限に利用し、生ゴミ投入時に十分に撹拌する操作を行なえば、自然と含水率40-50%を保つことができます。投入量を半分にした場合(0.1 kg/14 L/日)、含水率40%を保つためのぎりぎりのラインです。もちろんこれ以下の含水率になってもかまいませんが、30%を切ると微生物の活性(分解効率)が落ちて行きます。
 
重要ポイント:含水率30%以下で分解効率低下
 
自治体では大型の容器で家庭の生ゴミ処理に薦めているところもあるようですが、たとえば100 Lの基材量の場合は、図1の関係から最低でも毎日家族4人分の生ゴミを投入しないと適正な含水率を保てなくなります。土が乾き過ぎてわざわざ水を補給しているような無駄も見られるようです。
 
また生ゴミを埋めた状態で放置するようなやり方を薦めている場合もあるようですが、臭い発生と団子形成の原因になります。大型の処理器で生ゴミを埋めたまま撹拌をせずにいると、表面はカサカサに乾いているのに内部は水分過多で団子状態になり、臭いが発生するということが起こります。これは、表面は水分不足で微生物の分解活性が低下している一方、内部は水分過多・酸素不足で発酵が起こっている状態です。要は、生ゴミを埋めたところは毎日撹拌し、全体をできる限り均一にすることが重要です。
 
庭がない、ベランダが狭いなど物理的条件が制限される家庭もある中、お金をかけて無駄に大きい処理容器を選ぶことはありません。また1人で持ち運ぶなどの作業を行なう場合はできる限り小さい方が好都合です。家庭で毎日出る生ゴミ量を把握して、それに応じた容量の容器と基材量を決め、効率的に生ゴミ処理を行なうのが生活の知恵です。
 
重要ポイント:物理的環境、生ゴミ量に適した処理容器を選ぶ