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新型コロナワクチンや治療薬について生データ公開が必要

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2022年)

はじめに

各国政府や医療系専門家はCOVID-19ワクチンの接種を推奨していますが、いま日本で使われているファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンについては、実は詳細なデータが公開されていません。特に、健康人に対する「遺伝子薬物」としての安全性に関する治験のデータは無きに等しいです。

このような中、権威ある医学誌の一つであるBMJが、COVID-19ワクチンや治療薬に関する生データ公開の必要性を力説した論文を掲載しました [1]。ここで、この論説を紹介したいと思います。

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以下、筆者による全翻訳です。

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Covid-19 vaccines and treatments: we must have raw data, now by Doshi, P. et al. [1]

●データは完全かつ即座に公開されるべきである

10年前のBMJ誌上で掲載されたことだが、別のパンデミックの最中に、世界各国の政府が何十億もかけてインフルエンザ用の抗ウイルス剤を備蓄していたことが明らかとなった。しかし、この抗ウイルス剤は、合併症、入院、死亡のリスクを減らすことが証明されていなかった。

オセルタミビルタミフル、Tamiflu)の規制当局の承認と政府の備蓄の根拠となった試験の大半は、メーカーの出資で行なわれたもので、そのほとんどは未発表であった。発表されたものでもメーカーから報酬を得たゴーストライターによって書かれたもので、主著者として記載された人々は生データにアクセスできず、独自の分析のためにデータアクセスを求めた研究者も拒否された。

このタミフルの悲劇は、臨床試験データの共有の重要性がかつてないほど注目された10年の幕開けとなった。製薬会社のデータをめぐる公開バトル、何千人もの署名が集まった透明性キャンペーン、雑誌のデータ共有要件の強化、企業によるデータ共有の明確な約束、新しいデータ公開ウェブサイトポータル、医薬品規制機関による画期的な透明性政策は、すべて、データの透明性について新しい時代が来たことを示すものである。

しかし、進歩はしているが、明らかに不十分である。前回のパンデミックの失敗が繰り返されているのだ。記憶は短い。現在、COVID-19ワクチンと治療法が世界的に展開されているにもかかわらず、これらの新製品の臨床試験の基礎となる匿名化された被験者レベルのデータは、医師、研究者、一般市民がアクセスできないままであり、今後数年間はこの状態が続くと思われる。

●容認できない遅延

ファイザーの重要なCOVIDワクチン試験は、同社が資金を提供し、ファイザーの従業員が設計、運営、分析、執筆を担当したものである。また、ファイザー社は、臨床試験データに対する要求に対して、2025年5月まで対応しない意向を示している。それは、ClinicalTrials.govに、2023年5月15日(NCT04368728)として記載されている主要試験終了日の24カ月後だ。

データへアクセスできないということは、ワクチンメーカーの間で一貫している。モデルナは、データは「2022年の最終試験結果の公表とともに...入手できるかもしれない」としている。データセットは、「試験が完了した時点で、リクエストに応じて、レビューを受けて」入手することができるが、一次終了予定日は2022年10月27日とされていいる(NCT04470427) 。

2021年12月31日の時点で、アストラゼネカは、いくつかの大規模な第III相試験のデータの要請を受け入れる準備が整っているかもしれない。同社のウェブサイトで説明しているように、「スケジュールはリクエストごとに異なり、リクエストを完全に提出してから最大1年かかることもある」。

COVID-19の治療薬の基礎となるデータも同様に見つけるのが難しい。リジェネロンのモノクローナル抗体治療薬REGEN-COVの第III相試験の公開報告書には、参加者レベルのデータは他者に提供されないと明言されている。

レムデシビルについては、試験に資金を提供した米国立衛生研究所がデータ共有のための新しいポータルサイトhttps://accessclinicaldata.niaid.nih.gov/)を作ったが、提供されるデータセットは限定的である。添付文書にはこう説明されている:縦断的データセットには、プロトコルと統計解析計画の目的の小さなサブセットしか含まれていない。出版物はあるにしても、私たちは、妥当な要求もしても基礎となるデータを入手できないままなのだ。

これらの一次研究を掲載した雑誌は、厄介なジレンマに直面したと主張するかもしれない。それは、要約された知見を迅速に利用できるようにすることと、基礎データへのタイムリーなアクセスを支持する最高の倫理的価値を維持するという間のジレンマだ。私たちの見解にはジレンマは存在しない。臨床試験から得られた匿名化された個々の参加者データは、独立した精査のために利用可能にされなければならないのだ。

雑誌の編集者、システマティックレビュー担当者、臨床実践ガイドラインの執筆者は、一般的に雑誌掲載以上のものはほとんど得られない。一方、規制当局は規制審査の一環として、はるかに詳細なデータを受け取る。欧州医薬品庁の元常務理事兼上級医務官の言葉を借りれば、「医療に関する意思決定の根拠として、科学雑誌に掲載された臨床試験の発表だけに頼るのは良い考えではない....ということになる。医薬品規制当局は、長い間この限界を認識しており、日常的に(論文発表だけでなく)完全な文書を入手し、評価している」。

規制当局の中でも、米国食品医薬品局(FDA)は最も多くの生データを受け取っているとされるが、積極的な公開はしていない。

ファイザーワクチンのデータの情報公開請求に対して、FDAは、月500ページの公開を申し出たが、これは数十年かかる作業であって、データの公開は機密情報を最初に削除する必要があるため時間がかかると法廷で主張した。しかし、今月、判事はFDAの申し出を却下し、月55,000ページのペースでデータを公開するよう命じた。データは、要求した組織のウェブサイト(phmpt.org)で公開されることになっている。

また、カナダ保健省およびEMAは、数千ページに及ぶ臨床試験文書を公開し、評価に値する透明性を提供した。しかし、最近まで、試験の盲検化を保護するために大量の引き延ばしが行われ、データの有用性は限られたものであった。とはいえ、2021年9月以降、冗長性を抑えた試験報告書が入手可能となり、不足する付録は情報公開請求により入手できるようになる可能性がある。

とはいっても、カナダ保健省とEMAは、これらのデータを受け取ったり分析したりはしておらず、FDAが裁判所命令にどう対応するかはまだわからない。さらに、FDAファイザー社のワクチンについてのみデータを作成しており、他のメーカー(モデルナやジョンソン&ジョンソン)のデータはワクチンが承認されるまで要求することができない。

生データを保有する産業界は、独立した研究者からのアクセス要求を尊重する法的義務は求められないのだ。

FDAと同様、またカナダやヨーロッパとも異なり、英国の規制当局である医薬品・医療製品規制庁は、臨床試験文書を積極的に公開せず、情報公開請求に応じて公開された情報のウェブサイトへの掲載も中止している。

●透明性と信頼性

基礎データへのアクセスと同様に、透明性のある意思決定が不可欠である。規制当局や公衆衛生機関は、なぜSARS-CoV-2の感染や拡大に対するワクチンの有効性を検証する試験が行われなかったのか、その理由など、詳細を公表することができるはずだ。

規制当局がこの結果をしつこく要求していれば、各国は感染に対するワクチンの効果についてより早く知ることができ、それに応じて計画を立てることができただろう。

大手製薬会社は最も信用されていない産業である。COVID-19ワクチンを製造している多くの企業のうち少なくとも3社は、過去に刑事および民事上の和解で数十億ドルの損失を被っており、1社は詐欺行為を認めている。その他の企業はCOVID以前の実績はない。現在、COVIDの大流行によって多くの製薬会社が新たに億万長者を生み出し、ワクチン製造会社は数百億ドルの収益を報告している。

BMJは、確かなエビデンスに基づくワクチン接種政策を支持する。 世界的なワクチン接種が続く中、将来的に基礎データが第三者による精査を受けられるようになるかもしれないという遠い望みを抱きながら、ただ「システムの中で」信頼するように任せるのは正当化できず、患者や公衆の最善の利益にもなり得ない。 

COVID-19の治療法についても同じことが言える。透明性は信頼を築く鍵であり、ワクチンや治療法の有効性と安全性、そしてそれらの使用のために確立された臨床および公衆衛生政策に関する人々の正当な疑問に答えるための重要な道筋となる。

12年前、私たちは臨床試験の生データを直ちに公開するよう呼びかけた。今、私たちはその呼びかけを再び繰り返す。試験結果が発表され、公表され、規制当局の決定を正当化するためには、データは入手可能でなければならない。

パンデミック時に「優れた取り組み(good practice)」を全面的に免除するようなことは許されない。国民は、莫大な公的研究費によってCOVID-19ワクチンを負担してきたし、ワクチン接種に伴うベネフィットと損害のバランスを引き受けるのも国民である。したがって、国民はそれらのデータを入手する権利と資格、そして専門家によるそれらのデータの取り調べを待つ権利を持っている。

製薬会社は、科学的主張に対する十分な独立した精査を行うことなく、莫大な利益を得ている。規制当局の目的は、金持ちのグローバル企業の言いなりになって、彼らをさらに豊かにすることではなく、国民の健康を守ることである。

私たちは、すべての研究に対して完全なデータの透明性を求めるし、公共の利益のためにそれを必要としている。今が正にそうなのだ。

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以上が翻訳全文です。

筆者あとがき

ファイザー臨床試験のずさんさやデータ捏造の疑惑については、昨年内部告発で明るみになっています(→ファイザーワクチンの粗悪な臨床試験が内部告発で明るみに)。これに関してもBMJは記事を掲載しました。

今回は、ワクチンの臨床試験に関する生データの公開要求です。論説中にあるように、ワクチン接種に伴うベネフィットとリスクのバランスを引き受けるのも私たち自身であり、それだからこそ生データを通じて真実を知る権利もあります。

現在のmRNAワクチン接種プログラムを批判しているマローン博士は、製薬メーカーの生データについては、世界中の規制当局がデータ保護のための非開示の範囲内として処理していると述べています(→mRNAワクチンへの疑念ー脂質ナノ粒子が卵巣に蓄積?)。つまり、国の規制当局はワクチンの負の影響もわかっていながら、ワクチン接種プログラムを推進している可能性があるわけです。

安全性に関することも含めてメーカーの臨床試験データを伏せたままの状態で、政府や医療専門家がワクチン推しでくる姿勢は、誠に不誠実と言わざるを得ません。何よりもmRNAワクチン接種後の死亡例や有害事象の発生件数は、従来のインフルワクチンと比べても圧倒的に多いわけですから。

引用文献

[1] Doshi, P. et al.: Covid-19 vaccines and treatments: we must have raw data, now. BMJ 376, o102 (2022). https://doi.org/10.1136/bmj.o102 (Published 19 January 2022).

引用したブログ記事

2021年11月18日 ファイザーワクチンの粗悪な臨床試験が内部告発で明るみに

2021年6月28日 mRNAワクチンへの疑念ー脂質ナノ粒子が卵巣に蓄積?

                             

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