Dr. Tairaのブログ

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蝶の里公園のオオムラサキ

今日は埼玉県比企郡嵐山町(らんざんまち)にある蝶の里公園と菅谷館跡に行ってきました。蝶の里公園はその名のとおり蝶の保護を基本とする環境作りを目指した全国的にも珍しい公園です。嵐山町では「水、緑豊かな生き物にやさしいまちづくり」を町のスローガンとして、蝶の里公園を周辺の森(オオムラサキの森やホタルの里等)と一体化した自然保護のシンボル的存在として位置付けています [1]

最寄りの駅である東武東上線武蔵嵐山駅で降り改札口を出ると、横のエレベータには蝶の絵が描かれていました(写真1)。
 
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写真1
 
駅から公園までの行路の歩道にはオオムラサキをイメージしたタイルがはめ込まれていました(写真2)。町をあげてオオムラサキを緑の町作りのシンボルとして力を入れていることがよくわかります。
 
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写真2
 
徒歩約20分で蝶の里公園の隣(北側)にある菅谷館跡に着きました(写真3)。この遺跡は、鎌倉幕府の有力御家人として知られる畠山重忠の館跡です。国の史跡に指定されており、埼玉県立嵐山史跡の博物館が併設されています。館跡は土塁や掘がメインになっています。落ち葉がぎっしりと敷き詰められた土塁と掘は見ていてとても美しいと思いました。

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写真3
 
遺跡を通り過ぎて西側に向かうとオオムラサキの森に着きました(写真4)。この森は、もともと雑木林であった場所を埼玉県が買収・整備し、その後オオムラサキの保護や森づくりの活動拠点として嵐山町に託されものです。約1.7 haの広さがあります。

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写真4

森内にはオオムラサキの森活動センターがあり、その横には下枝が横に伸びた立派なエノキがありました(写真5)。よく都市公園にある下枝がなくヒョロヒョロと上に伸びた鉛筆のようなエノキとはまったく違います。さすがオオムラサキの森です。

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写真5
 
センター内にはオオムラサキの標本をはじめチョウを中心とする昆虫に関する展示があります(写真6)。標本を前にセンターの係の方が1時間以上にわたって活動状況について説明してくれました。感心したのは、チョウの幼虫の脱皮後の殻が保存されて、きれいに並べられていたことです。また森内のクヌギなどの樹木の管理について詳しく話を聞くことができました。
 
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写真6
 
オオムラサキの森を回り、さらに蝶の里公園に向かいました。そこを一周してまたオオムラサキの森を南側に向かうとホタルの里がありました(写真7)。夏になればホタルが乱舞することでしょう。
 
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写真7
 
ホタルの里の標識をあとにしてさらに南側に進むとフェンスで囲まれたエノキがありました(写真8)。公園内は昆虫採集禁止になっていますが、センターの方の話ではマニアあるいは業者?によるオオムラサキの幼虫の採集・盗掘がかなりあるようで、それを防止するためのやむを得ない処置のようです。
 
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写真8
 
今回あらかじめ嵐山町の環境課に許可を得た上で、公園内の数本のエノキの根元の調査を行いました。とにかく公園内はエノキの根元も含めて落ち葉が豊富で、冬・春の公園はこうでなくちゃいけないと思いました。落ち葉を踏みしめる音と、歩くたびに鼻をかすめる落ち葉の匂いはなんともいえないものでした。
 
公園内の落ち葉と下草をすべて除去してしまい、自然の芽生えを一切許さない私の住む街とは雲泥の差です。
 
すでに大方のエノキからは越冬幼虫が引き上げられ保護されている状態と思いましたが、調査したエノキのほとんどからオオムラサキの越冬幼虫が出てきました(写真9)。さすがにオオムラサキを目玉にしている公園だけあります。駅を降りた時は普通の住宅街であり、その中の平地の公園にオオムラサキがいるのかと思ったりしましたが、ちゃんと住処が保全されていることに感心しました。
 
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写真9
 
歩いている途中、エノキの根元から2 mくらい離れた落ち葉の上に葉から剥がれたオオムラサキの幼虫が落ちているのを見つけました(写真10)。風で飛ばされたのでしょうか。こういうことも時折あります。
 
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写真10
 
オオムラサキの森の活動センターでは、小学校などの子供達を対象としてオオムラサキ等を通じて環境教育活動も展開しているようです。実際に公園を目にし、保全状況や活動の一旦を伺い、本公園のオリジナリティーを感じた次第です。
 

参考文献