オオムラサキの減少と採集圧
国蝶であるオオムラサキはその大きさや美しさからマニアに人気の高い昆虫です。飼育して成虫のなった姿を拝みたいと思う人は大勢いると思います。というわけでこの時期マニアによる越冬幼虫の採集が少なからず行われていることを想像します。
インターネットを見ていたら、「楽しい飼育材料ー山梨県産オオムラサキ越冬幼虫50匹」とか「楽しい飼育材料ー神奈川産オオムラサキ越冬幼虫10匹」とか銘打ってオークションにかけられていることがわかりました。越冬幼虫が商売?にも利用されているわけですね。
環境省のレッドリストではオオムラサキは準絶滅危惧種(NT)です。このカテゴリーの種を売り買いするというのはやはり問題でしょうね。そのうち、絶滅危惧II類→I類と時を追って格上げされていくかもしれません。
これまでオオムラサキの生息地域で越冬幼虫の分布を調査してきましたが、明らかに採集された後というエノキを何本も見てきました。中には根元から葉っぱごとごっそり持っていったという痕跡もありました。インターネット上で売りに出されているのを見ると、このようなエノキの荒らしもうなずけます。
山梨県のように一部の地域では依然としてオオムラサキの生息個体数は維持されているようですが、全国的に見れば成虫の発生は相当減少していると感じます。その原因として、開発に伴う雑木林の減少やその他の環境悪化が主としてあると思いますが、減少地域においては人の採集圧による影響も無視できなくなっていると考えられます。
このようなマニアや業者による採集や持ち去りから、やむおえず越冬幼虫を保護するためのフェンスなどの防護措置をしているところ自治体もあるようです。
ところでオオムラサキの越冬幼虫がいるエノキではゴマダラチョウも混在していることが多いのですが、前者に比べると後者の割合は小さいです。やはり両者でエノキや落ち葉の位置の選択性が異なり、棲み分けをしているようですね。
またオオムラサキはゴマダラチョウに比べてエノキ1本当たりに産む卵の数が多いので、越冬幼虫が多く検出されるということもあります。1本で100頭以上の越冬幼虫が検出されることもザラにあります。ゴマダラチョウではこのようなことはありません。
写真1
写真2
カテゴリー:エノキ下の越冬幼虫の探索