Dr. Tairaのブログ

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小型のオオムラサキ

Hestina属のチョウと近縁な種として、オオムラサキ Sasakia charonda が知られています。エノキを食樹とするこれらのチョウは生態学的にも似ていますが、オオムラサキは、まとまった広範囲の雑木林と林縁の豊富なエノキがないと生息できないようです。成虫のエネルギー源となる樹液の供給や、越冬幼虫が要求する湿気の維持などが関係していると考えられます。
 
私は時折オオムラサキの越冬幼虫を採集してきて自宅で飼育し、生態観察をしています。今年もすでに数頭の成虫が羽化し、無事採集地に放蝶することができました。一昨日、最後の蛹から羽化しましたが、非常に小さな♂の個体でちょっと驚きました。
 
前翅長が40 mmに満たない個体で(写真左)、ちょうど一ヶ月前に羽化したゴマダラチョウ写真右)とほぼ同じ大きさでした。
 
イメージ 1
オオムラサキは通常前翅長は50–60 mmあり、これよりは明らかに小さいです。幼虫の時から小さかったのである程度予想はしておりましたが、これほどまでとは思いませんでした。これまで見た中で最も小さな成虫となりました。
 
オオムラサキは大食漢であるため、その飼育においては食草であるエノキの切り枝を頻繁に交換・供給する必要があります。その度に、幼虫は葉上の台座を作り直す必要があるのですが、その時の体力消耗で個体が大きくならないことがあるとも言われています。しかし、上記の個体は私の家の庭に生えている樹高4 mのエノキ上で飼育したものであるためエサの供給にも余裕があり、この理由は当てはまらないようです。