私は以前から気になっていることの一つとして、都道府県によってエノキ根元からのゴマダラチョウの越冬幼虫の検出頻度が極端に異なるということがあります。具体的に言えば、東京都よりも千葉県の方が検出率が格段に低いということが挙げられます。
写真1
本公園内には、数え切れないくらいのたくさんのエノキの高木があります。今日数えてみましたが、幹径30 cm以上のものだけでも80本以上あり、あまりにも多いので、そこまで数えてやめました。写真2に園内のエノキ群を示します。
写真2
本当に立派なエノキばかりで、少なくとも外形からは、見るからにゴマダラチョウの越冬幼虫がたくさん出てきそうな感じがしました(写真3–5)。しかしながら、半数以上は根元に落ち葉がなく、やはり残念という状態でした。
写真3
写真4
写真5
それでも写真3–5のエノキの大木には、ある程度落ち葉が溜まっていて期待感はあったのですが、探ってみるとさっぱりという状態で1匹も出てきませんでした。結局、ある程度の落ち葉がある40本の高木を探索してみましたが、越冬幼虫が出てきたのはわずかに2本で、それもそれぞれ1匹ずつという散々たるありさまでした(写真6)。これが東京だったら200匹は出てくるでしょう。
写真6
少なくともエノキの大きさや樹形では条件が揃っているのに、なぜ幼虫が出てこないのか不思議でならなかったのですが、やはり落ち葉の溜まり具合は東京都の都市公園と比べるととよくなく、それが影響しているのでしょうか。う〜ん、よくわかりません。
落ち葉のない典型的なエノキを写真7に示します。大きなエノキであり、囲いもしてありましたがまったく落ち葉がありませんでした。風の影響でしょう。
写真7
写真8のエノキも囲いがしてありましたが、まったく落ち葉がありませんでした。この囲いは何のためでしょうか。木に登るなという囲いでしょうか。
写真8
園内を歩いていると、落ち葉の清掃車に遭遇しました(写真9)。清掃担当の人に訊いてみると、秋から冬にかけて定期的に落ち葉を除去しているそうです。散策路でもないところをきれいに掃いていましたが、こんなところをやる必要があるのかという気もしました。
写真9
ゴマダラチョウの越冬幼虫があまりにも出てこないので、公園の管理事務所を訪ねて
話を聞くことにしました。一つは桜がたくさんあったので、農薬散布を行なっているかどうかという疑問があったからです。担当の方に訊いたところ、農薬散布はやっていないという回答が返ってきました。一方、落ち葉の清掃は、やはり定期的に行なっているということでした。
結局越冬幼虫の検出率の低さについては、自然風や落ち葉の清掃除去の影響はあるとしても、はっきりとした原因はわかりませんでした。
千葉県はもともと雑木林が少ない環境にあります。しかも飛行機から見たら県全体が
ゴルフ場だらけのブチ模様に見えます。おそらく農薬散布は相当なものでしょう。想像の域を抜けませんが、このような影響もあるかもしれません。
写真10
いつも言及していますが、公園管理のあり方として、定期的に落ち葉を除去してしまうと、吸い上げられた土壌中の栄養成分が毎年除去されることにもなり、地力(土壌の肥沃度)が低下していきます。見かけは樹木がたくさんあるように見えても、土壌生態系としては豊かさを失っていくわけです。つまり緑の砂漠化が進行していきます。
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