Dr. Tairaのブログ

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21世紀の森と広場

 
昨日は千葉県松戸市にある「21世紀の森と広場」に行ってきました。約50 haの広さをもつ公園です。昔からある自然を生かした自然尊重型の都市公園が理念だそうで、湿地を囲む林や周辺のイヌシデなどの落葉樹を含む常緑樹を主体とする森が残されています。
 
しかし、園内に足を踏み入れるとその理念に疑問符がつくような作り方がされています。公園の中心部には、小川を埋め立てて作ったコンクリートの広場があり、その周辺には湿地帯を埋め立てて作った芝生広場があります。さらに公園のど真ん中を地方道51号線が貫通しています。

要するに市民が直接触れられる「自然を生かした自然尊重型の都市公園」という理念がことごとくつぶされていて、街角の近隣公園と同じになっている印象です。千駄堀の自然を最大限残すことを求める市民との間で議論があったようで、なるほどと思います。

公園の一部には野草園という小さなエリアがあって自然の植物や昆虫が観察できる場所として設けられています。「野草や生き物をとらないで!」という看板があります。

イメージ 1
写真1
 
しかし、私は何度かこの公園を訪れていますが、野草や生き物を採ったり殺したりしているのは管理者側ではないかといつも思います。この野草園の一部の草がすっかり刈り取られていました(写真2)。
 
イメージ 2
写真2
 
この部分にはイネ科の植物を主体とする野草やエノキの低木が生えていて、バッタ類やカメムシ類の昆虫が豊富にいました。またゴマダラチョウやアカボシゴマダラの越冬幼虫がいました。さらに、写真1の看板にはつくしの絵が書いてありますが、周辺に生えているつくしがここだけありませんでした。
 
エノキの成木が生えている部分も下草が刈り取られたり、落ち葉が清掃除去されていました(写真3)。

イメージ 3
写真3
 
昨年末、私は散策路から手の届く範囲にあるエノキの根元に10頭あまりのゴマダラチョウの越冬幼虫を見つけていて、落ち葉の上に木枝でカバーをして保護していました。それを公園管理の担当者にも伝えておいたのですが、その小枝も落ち葉もすっかりなくなっていました。
 
1時間ほどかけて、わずかに残った落ち葉をチェックしたり、周辺を探し回ってやっとあるエノキの根元から3 mも離れたところに落ちていた落ち葉から1頭のゴマダラチョウを見つけました(写真4)。
 
イメージ 4
写真4
 
それをもって公園の管理事務所に行ったのですが、以下に担当者とのやりとりを要約します。
 
「エノキの根元の落ち葉に小枝をおいて保護していたのですが、全部除去されています。この事務所の担当の方にも伝えておいたのですがどういうことですか」
 
担当者「それは業者との連絡がうまくいってなかったのではと思います」
 
「下草もすっかり刈り取られています。確認していたゴマダラチョウの越冬幼虫も見つかりません。やっと1頭見つけましたが地面に放置状態になっていました。管理者側が保護できないなら私が保護したいと思いますが」
 
担当者「それはできません。こちらで引き取って専門家の方に相談します」
 
私、「私も専門家なんですけど」と心の中で思いつつ、「そちらで管理するってどのように管理するのですか」
 
担当者「とにかくこちらで管理しますので引き取ります」
 
私は、暖かい室内でそのまま放置されたら体力消耗して死亡する可能性もあるのでこれはまずいと思い、以下のように持ちかけてみました。
「じゃ、この幼虫を拾ったところにそのまま戻しておけばよいですか」
 
担当者「じゃ、そうしてください」
 
担当者の方は専門家でもなんでもないので、上記の応対は致し方ないところはありますが、それにしても自然保護名目の公園管理が規則と前例に合わせることだけに集中していて実質機能していないことの証明だと思います。いかに機械的にうわべだけで行われているかの物語っています。あえて強く言いますが自分たちが自然を壊していることに気がついていないと言うべきでしょう。
 
その上で市民には「立ち入り禁止」とか「採集禁止」とか市民に強いているわけで、まるでブラックジョークのようです。
 
もちろんゴマダラチョウの幼虫はそのままの位置には戻せないので、できる限り陽の当たらないエノキ高木の根の隙間の奥にしまいました。エノキの落ち葉がないので代わりにコナラやクヌギ等の落ち葉を拾い集めて被せ、小石でカバーしておきました。