Dr. Tairaのブログ

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マニアによる越冬幼虫の採集を考える

このブログでもう何度となく書いていますが、エノキの根元で越冬するオオムラサキゴマダラチョウの幼虫の生態を調査する上において問題となるのが、自然風による落ち葉の飛散です。これはもうどうしようもありません。
 
今日は東京都西部の丘陵地に出向いて調査を行なったのですが、郊外にある樹高20 mを越えるエノキの大木を見つけて近づいてみたら根元の北側の落ち葉が風ですっかりなくなっていました。わずかに根の間に挟まっていた2枚の落ち葉を取り出してみたら何とゴマダラチョウの幼虫が1頭くっついていました。
 
ほかに多数の幼虫がいたはずですが、すでに風で飛ばされているでしょう。南側は傾斜になっていて大量の落ち葉が流れて下に溜まっていました。念のため北東側の傾斜に流れて溜まっている落ち葉を片っ端にめくってチェックしてみました。そうしたら幸運にも根元から2 mくらい離れた位置の落ち葉から、3頭のゴマダラチョウを拾い上げることができました。合計4頭です(写真1)。
 
もともとゴマダラチョウの越冬幼虫はすんぐりとした体型なのですが、今日出たものはいずれも太っていました。
 
イメージ 2
写真1
 
幼虫をどうしたものか悩みましたが、最も風の影響を受けにくいと思われる東側の根の間の奥に(少し傾斜になっていますが)できる限り押し込み、落ち葉と枯れ木でカバーしました。
 
郊外から山地の雑木林や里山環境に足を延ばし、成木を中心にエノキを調査しました。ところが、郊外の田園地帯よりもはるかに環境としてはよいはずなのですが、調べた10本以上のエノキからはまったくゴマダラチョウオオムラサキも出てきませんでした。
 
実はほとんどのエノキの根元においてすでに誰かが弄った跡が見られました(写真2)。写真ではちょっとわかりづらいですが、幹に近いところは落ち葉が少なく、周辺に多く溜まっていました。しかも時間をかけて落ち葉が堆積したようには見えず、ふわふわした状態でした。明らかにそれほど古くない時期に人の手が加わったものと推定できました。
 
イメージ 1
写真2
 
このエリアはオオムラサキの越冬幼虫がいるところです。おそらくマニアや売買目的の誰かが採集し、持ち帰ったものと思われます。ネットオークションで頻繁にオオムラサキの越冬幼虫が売られているのを見るにつけ、やるせない思いになります。
 
自然風の影響や人為的な清掃除去に加えて、このマニアによる採集・持ち帰りも生態調査において障害になるものです。多くは根こそぎ持っていきますので、自然における実態がどうなっているのかまるでわからなくなります。
 
少なくとも飼育後は、採集した現場で放蝶してもらいたいですが、そのまま標本にすることが多いのではと想像します。