Dr. Tairaのブログ

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落ち葉とアカボシゴマダラの越冬幼虫

 アカボシゴマダラの越冬幼虫はゴマダラチョウと同様に落ち葉の下で冬を越します。インターネット上の情報ではエノキの幹上で越冬することもあるとされていますが、私が知る限り幹上での越冬はきわめて少ないです。
 
今年の冬、これまで東京、千葉、埼玉でモニターしてきた約500頭のアカボシ幼虫のうち、いまだに幹上にいるのは16頭です。率にしてわずか3%にしかなりません。というわけで、いま地面の落ち葉の裏にいるであろう主要な越冬幼虫の追跡調査を続けています。
 
アカボシゴマダラの越冬幼虫の探索の仕方はゴマダラチョウのそれとはちょっと異なります。ゴマダラチョウの場合は、根元に落ち葉が溜まっているエノキの大木を狙って北側の幹に近い落ち葉をめくることによって見つけることができます。

一方アカボシゴマダラの場合は大木で見つかる率はきわめて低いので、標的は樹高3 m以下の低木・幼木です(写真1)。

イメージ 1
写真1
 
若木は落ち葉が溜まりにくいので、写真2のように根元がブッシュや草むらになっていて落ち葉が確認できるものを集中的に狙います。
 
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写真2
 
その際、幹上に幼虫がいた証拠である白い台座の痕跡(写真2赤矢印)がある木を標的とすると見つかる確率が高いです。
 
イメージ 2
写真3
 
落ち葉を探索するときは、できる限り幹に近い根元を狙います。その周囲に溜まっている落ち葉を方位に関係なく引き上げます。
 
このようにして今日見つかったアカボシの幼虫が写真4です。一つの落ち葉に3頭ついていました。
 
イメージ 4
写真4
 
ゴマダラチョウの場合、落ち葉をひっくり返す作業は単純ですが、アカボシゴマダラの場合は、もっと面倒くさい作業になります。それは幼木の落ち葉は乾燥するとカールしやすく、その巻いた葉の中に幼虫がいることもあるので、それをいちいち開いて確認しなければならないことです。
 
写真5には幼虫が3頭いるのですが、右端の幼虫は閉じた葉の中にいて外からはわかりません。真ん中のは一部葉で隠れています。
 
イメージ 5
写真5
 
落ち葉を探るポイントを決めやすいことはいいのですが、巻いた枯葉を一つ一つ開いていく作業は疲れます。アカボシゴマダラは落ち葉が少ないと周囲に移動する性質もあるようなので、落ち葉の下から幼虫が見つかる確率はゴマダラチョウほど高くありません。