Dr. Tairaのブログ

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都市公園のゴマダラチョウ幼虫

このところ関東の都市公園におけるゴマダラチョウアカボシゴマダラの越冬幼虫を集中的に探索していますが、今日もある公園を訪れました。この公園には数十本のエノキの成木と幼木があり、夏にはゴマダラチョウとアカボシゴマダラの両方の成虫が飛ぶのを見ることができます。
 
しかし、訪れて残念だったのは、越冬幼虫の住処である多くのエノキ成木の根元周辺の落ち葉が風で吹き飛ばされていることでした(写真1)。「ああー、これは期待薄だなあ」と思いながらしばらく眺めていると、写真1の赤矢印の場所に、越冬幼虫が裸でひっくり返っているところが目に入りました。
 
イメージ 1
写真1
 
急いで拾い上げてみると、ちゃんと動き始めました(写真2)。「ああー、生きてる、ほかにもいるかもしれない」と気持ちを持ち直し、周囲2 mの範囲内にわずかに残った落ち葉をくまなく探しました。そしたら、落ち葉にくっついた合計5匹の幼虫を見つけることができました。すべてゴマダラチョウでした。
 
イメージ 2
写真2
 
ちょっと失敗だったのは、写真1の幼虫を急いで手にはめた手袋の上に乗せたために、それがくっついてなかなかとれなかったことです。力を入れて外そうとすると潰しそうで、完全に外すのに10分ほどかかってしまいました。幼虫の粘着力は相当なものです。
 
ほかのエノキ成木を当たってみましたが、ほとんどが根元の落ち葉がありませんでした(写真3左)。なかにはエノキの掲示板がかけてあり、「オオムラサキの食草」とまで説明書き(写真3右)がしてありますが、根元を見ると残念な結果というほかありません。
 
イメージ 3
写真3
 
それでも、周囲に散らばった落ち葉をくまなく探して、20匹ほどの幼虫を見つけることができました。さらに、比較的落ち葉が残っている高木からも検出することができました。結果として、8本のエノキ高木から合計40匹の幼虫を検出しました。すべてゴマダラチョウです。
 
写真4は、1本の成木から検出した数が最も多かった例を示します。
 
イメージ 4
写真4
 
幼虫を根元に戻すときは、公園の管理担当課に許可をとって写真5、6のように落ち葉を集めて枯れ木でガードし、飛散防止の応急処置をしました。
 
イメージ 5
写真5
 
イメージ 6
写真6
 
幼木も調査しましたが、1本からアカボシゴマダラを検出しました。昨年12月末まで幹上にいたアカボシ幼虫はすべて地面に引っ越していましたが、検出できたのはこの1匹だけでした。
 
エノキの高木と幼木が生えていて、ゴマダラチョウとアカボシゴマダラが混在する場所では、やはり棲み分けができているようです。
 
しかし、東京都区内の都市公園のエノキ高木からはことごとくゴマダラチョウを検出できるのに、周辺の街や郊外では検出頻度が極端に落ちるのはなぜなのでしょう。田畑や雑木林がある郊外の方が環境の変化が激しく、かつ農薬や天敵などの負の要因が多く、ゴマダラチョウの生存に悪影響を与えているのでしょうか。