Dr. Tairaのブログ

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里見公園エリアの越冬幼虫

今日は千葉県市川市里見公園と隣接するじゅん菜池緑地に調査に行きました。夏になるとアカボシゴマダラが多数発生するところです。このエリアには、エノキの成木だけでなく、若木がたくさんあり、アカボシゴマダラの生息を支えていると考えられます。
 
調査の主目的はもちろん、エノキにおけるゴマダラチョウとアカボシゴマダラの越冬幼虫の分布の把握です。
 
写真1は、里見公園から東京方面の遠景を見たところです。遠くにスカイツリーが見えます。ちなみに、この公園は市川市内では最も標高がある場所です。
 
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写真1
 
公園内には何本かのエノキの高木があり、その一つには説明書きのプレートが掛けてありました(写真2)。「国蝶オオムラサキの食草」とあります。東京都区内の公園でもよく見かける判で押したような説明です。
 
日本でのオオムラサキの生息域は限られており、都区内や市川市では絶滅したと考えられているので、むしろ「ゴマダラチョウの食草」とでもしたらよいのではと常々思っていますが。
 
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写真2
 
上記の説明とは裏腹に、エノキの根元を見ると誠に残念な状態でした。落ち葉がほとんどありません(写真3)。落ち葉がないどころか、北側の影の部分にはコケが生えています。これは常時落ち葉がない状態を意味します。
 
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写真3
 
公園の一角には落ち葉が積み上げられていました(写真4)。つまり、この公園では落ち葉が発生すると一絡げに常時除去して集めるということが行われているようです。「オオムラサキの食草」とまで説明するなら、せめて代表的なエノキの周囲くらいは落ち葉除去を行わない、飛散を防ぐ処置をする、などの対策を講じてもいいのではと考えますが。
 
イメージ 4
写真4
 
行政によっていかにエノキの掲示機械的に行われていて、掲示にあるようなエノキを食べる昆虫類の生息・保護には頭が行っていないことを意味するものです。あえて強くいうなら、それらの昆虫の絶滅を促す処置を行なっていることに気づいていないことの証明です。
 
里見公園に続いてじゅん菜池緑地に行っても変な掲示板を見かけました。じゅん菜池緑地は里見公園の北東部に位置する、細長い池を取り囲む緑地帯です(写真5)。
 
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写真5
 
この公園の一角に、「自然環境ゾーンです」と書いた掲示板を見かけました(写真6)。何て書いてあるのかなと思い字を追ってみると「昆虫の誘引を防ぐことで、周囲の自然環境に配慮した照明です」とあります。一瞬、意味がわかりませんでした。昆虫の誘引を防ぐここが、なぜ自然環境ゾーンなのでしょうか。
 
イメージ 6
写真6
 
というわけで、里見公園、じゅん菜池緑地共にエノキの成木はたくさんありましたが、多くの木々において根元に落ち葉がなく、探索するまでもありませんでした。結果として、まずまず落ち葉を有していたエノキ高木7本のうち、3本から越冬幼虫を検出したのみでした。すべてゴマダラチョウです。一つは極小のカタツムリと一緒に出てきました(写真7)。
 
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写真7
 
幼木・低木については30本ほど見ましたが、すべて空振りでした。アカボシゴマダラはどこにいるのでしょう。