一方、3者の幼虫は形態的にきわめて類似しており、慣れていないと個体を単独で見ただけではそれほど同定は容易ではありません。とくに越冬型の幼虫は同定がよりむずかしくなります。ただ、この3者の生息環境はかなり異なるので3種がいっしょに見つかることはあまり多くありません。どの地域のどのようなエノキで見つかったかという情報と幼虫の形態的特徴を合わせて考えれば、何の幼虫かは推定することはできます。
たとえば、大きな森や雑木林の周辺のエノキ高木・亜高木でしかオオムラサキは見つかりませんし、見通しのよい開けた場所にポツンとあるような高木下で見つかるのはもっぱらゴマダラチョウです。そして、低幼木を好むアカボシゴマダラが高木下で見つかることは稀で、いたとしてもオオムラサキやゴマダラチョウに比べると圧倒的に数が少ないです。
図2に3者の越冬型幼虫(越冬型4齢)の一般的な特徴を示します。これらの幼虫の背中には対になった突起が並んでいます。この突起が4列になって見られるのがオオムラサキとアカボシゴマダラであり、3列になっているのがゴマダラチョウです。ただ、2列目の突起の大きさは個体によって大きく異なり、4列に近いゴマダラチョウも見られます。
実際の3種の越冬幼虫の写真を図3に示します。
図2、3は典型的な越冬幼虫を示していますが、個体によってさまざまな形態的変化があります。たとえば、ゴマダラチョウでも尾部突起が閉じている個体が見られますし、アカボシゴマダラにおいては尾部突起が開いているものもいます。これらの非典型的形態については別のページで紹介したいと思います。
カテゴリー:Hestina属チョウとオオムラサキ