Dr. Tairaのブログ

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再生可能エネルギーの地産地消


人間は食料を生物学的エネルギーとして必要とすると同時に、外部からの電気エネルギーを生活に必要とします。地球上には3,000万種ともいわれる生物が存在していますが、悲しいかな、もはや電気エネルギーがなければ生きていけない生物は唯一人間(ヒト)のみです。これを考えると人間は進化しているのか、それとも横道に逸れているのかわからなくなります。

地球環境問題とも関連して、人類の生存を保障するためにいかに電気エネルギーを確保するかが重要な課題であるわけですが、この意味で再生可能エネルギー(再エネ)に頼るライフスタイルに大きくシフトしているのが世界の流れです。

今朝のNHKテレビの「あさイチ」では再生可能エネルギーをテーマとして取り上げ、市民レベル、地域レベルでの再エネへの取り組みを紹介していました。再エネ源の種類としては、水力風力太陽光地熱バイオマスなどがあります。図1はイメージとしての風力発電です。

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図1. 再生可能エネルギーの供給源のイメージー(例:風力発電)(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

現在、電源構成比として再生可能エネルギーが14.5%となっており、原発がほとんど稼働しなくとも一応日本はやっていける状態です(図2)。経産省では再エネ率をさらに上げていく計画ですが、このままの状態で図の円グラフの緑が大きくなると思ったら大間違いです。経産省原発の再稼働を同時に計画しています。2030年の原発比率を20%にと担当者が示していたことには首をかしげざるを得ませんでした。

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図2. 日本の電力源構成比ー再生可能エネルギーは14.5%(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

安全で低コストの最先端技術という謳い文句で始まった原発ですが、放射性廃棄物の処分ができないという致命的欠陥があり、膨大な費用がかかることは福島第一原発の事故で嫌というほど経験済みです。行き先のない放射性廃棄物の国内での蓄積やあげくには低放射性物質含有処理水の海への放流ということに至っては、まさに時代遅れの不完全技術に対する後付けの言い訳にしかなりません。

加えてプルトニウムの問題があります。日本は使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、資源として再利用する「核燃料サイクル」を核兵器保有国以外で唯一推進している国ですが、今やその保有量は約47トンです。原爆に換算して約6000発分に相当します。一体、このプルトニウムをどうするつもりなのでしょうか。

一方で、大手電力会社は原発を停止しておくと維持費がかかり赤字が膨らみます。再稼働することで大手電力会社は儲かる仕組みになっていて、経産省はこれをお助けしたいようです。

とはいえ、再生可能エネルギーへのシフトは時代の潮流です。日本でも太陽光発電などの再エネ利用を行なっている家庭が急速に増えています。放送では、余った電力は電力会社に買い取ってもらうことで、電気の使用料を相殺できるとも伝えていました。

ところが、電力会社の電力買い取りの原資は私たち国民からの賦課金であることは意外に知られていません。市民レベルでの再エネ利用率が増えるにつれて、賦課金の徴収額がどんどん上がり、2030年には3兆円を超えると予想されています(図3)。

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図3. 再生可能エネルギー利用に伴う賦課金の変動(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

再生可能エネルギー利用に関する賦課金は、電気使用料金に組み込まれて私たちは払わされています。2012年度には年間684円だったものが、2018年度には9084円と10倍以上に跳ね上がっています(図4)。再エネ利用の家庭が増え買い取っても、大手電力会社は決して損をしないようになっているのです。

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図4. 再生可能エネルギー利用に伴う賦課金の比較(2012年 vs. 2018年)(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

企業レベルでの再生可能エネルギーの利用も加速化しています。世界的には、アップル、グーグル、アマゾンなどのグロバール大企業はすでに100%再生エネ化を達成しているか、それを目標にしています(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16239067.html)。

放送では、農業における再生可能エネルギーの利用を取り上げていました(図5)。畑地で作物を生産する場合に、その上に太陽光発電の設備を備え、その電力で100%
農業生産を支えるという取り組みです。

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図5. 産業レベルでの再生可能エネルギー利用の形態(例:農業での利用)(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

地域レベルでの再生可能エネルギーの利用も徐々に現れてきています。例として、福島市土湯温泉町における地熱発電が紹介されていました図6)。現在、約900世帯分の電力をまかなっていて、得られた利益を町民に還元する仕組みも伝えていました。

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図6. 地域レベルでの再生可能エネルギー利用の形態(例:福島市土湯温泉町)(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

地域レベルでの再生可能エネルギーの供給と利用は「再エネの地産地消」と呼ばれており、上記の土湯温泉町のほかに福岡県みやま市太陽光発電岡山県真庭市バイオマス発電の例があります(図7)。

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図7. 地域密着型の再生可能エネルギーの利用ー再エネの地産地消(2018.10.03 NHKあさイチ」より)

エネルギー供給源の分散(地域密着型の再エネ)と再エネの地産地消は、今後益々加速化していくでしょう。担当省である経産省の役人には、省横断的な連携・協力とともに、真に国民のための問題の発掘と解決を的確かつ合理的に行なってくれることを願うばかりです。