Dr. Tairaのブログ

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世論調査に見る男女・世代間のギャップ-5


はじめに

先日、朝日新聞の9月分のRDD世論調査 [1] が発表されました。本年になってから同新聞の世論調査をこれまで見てきましたが、これまでブログで紹介したとおり、男女間、世代間で、内閣支持率やそのほかの設問項目の回答に差があることが浮き彫りになっています。

とくに、平均的国民の傾向からの男性若年世代の思考性バイアスは顕著であり、その背景の一つとして、受け取る情報の選択圧メディア・リテラシーの低さが関係しているのでは、とも考察してきました(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16397145.html)。

ここでは引き続き、9月分の世論調査データをダウンロードして、いくつかの設問項目について、男女別や年齢層別に分析したいと思います。


9月における全体の安倍内閣支持率は、「支持する」が41%、「支持しない」が38%、「その他・無回答」が21%でした。本年前半分(1-6月)における平均値は支持38%、不支持43%ですので(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16397145.html)、それから比べると、内閣支持率が少し上昇していることになります。

図1は男女別、年齢層別にみた内閣支持率です。男女を比較した場合、男性の方で内閣支持が強い傾向は従来のとおりです。男女間の支持率の差は、これまでと同じ傾向で、10%弱です。さらに、60-69歳層において内閣支持率が最も低くなることも、これまでの傾向と同じです。

とはいえ、これまで30%を下回っていた女性各年齢層において、今回は大部分の層で30%を大きく上回っており、これが、全体の支持率を引き上げている原因になっています。

年齢層別に見ると、男性若年層ほど支持率が高い傾向はこれまでどおりですが、今回はとくに18-29歳層で63%と高くなっています。

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図1. 男女別、年齢層別にみた内閣支持率朝日新聞RDD調査 [1]より作図)

ちなみに、男女を合わせた各年齢層別の内閣支持率の結果は図2のようになります。各年齢層の元データは人口の構成比で集計されたものなので、単純に男女を平均したものにはなっていません。

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図2. 男女合わせた年齢層別にみた内閣支持率朝日新聞RDD調査 [1]より作図)

2. 憲法改正について

今回の世論調査では、憲法改正の是非についての設問がありました。すなわち、【質問10】において、「安倍首相は、自衛隊の明記などを盛り込んだ自民党憲法改正案について、次の国会への提出をめざす考えを示しました。あなたは、次の国会への提出に賛成ですか。反対ですか」という問いです。

全体では「賛成」が32%、「反対」が49%となり、現状では憲法改正には否定的かつ慎重な態度の国民が多いことがわかりました。

しかしながら、男女別、年齢層別にみると(図3)、内閣支持率と類似した傾向になり、男性若年層では「賛成」が多くなっています。また、男性と比べると女性の賛成率はどの年齢層でも低く、全体における反対の割合上昇に貢献していることがわかります。

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図3. 男女別、年齢層別にみた自衛隊明記付き憲法改正の是非の回答(朝日新聞RDD調査 [1]より作図)


上記のように、内閣支持率憲法改正においては、男性層、とくに男性若年層の政権与党寄りの思考性が明らかになりましたが、それでは、自民党総裁についてはどうでしょうか。【質問5】において、「今月7日、自民党の総裁選挙が告示されました。あなたは、自民党の総裁選挙に関心がありますか。関心はありませんか」という問いがありました。

その回答を、図4に示します。男女ともに全体としては「関心がある」という回答が過半数を超えていますが、興味深いのは、男女ともに若年層ほど「関心がない」が多いことです。とくに、安倍内閣を積極的に支持し、憲法改正にも意欲的な男性18-29歳層において関心が低くなっています。逆に、安倍内閣を最も支持しない60-69歳層において関心が高くなっています。

これはどういうことでしょうか。安倍政権に批判的傾向が強い60-69歳層は、同時に政治的関心も高く、総裁選にも関心があるということでしょう。一方、18-29歳層においては、政治的関心が希薄であり、聞こえてくる現政権寄りの情報のみに依存して(他の選択肢を考えることもなく)、安易に安倍政権を支持している姿が見えてきます。

まさしく、流れてくる特定の情報しか目にしない、メディア・リテラシーの低さの現れかもしれません。

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図4. 男女別、年齢層別にみた自民党総裁選への関心度(朝日新聞RDD調査 [1]より作図)

4. 普天間基地辺野古への移設

今回のRDD調査では、沖縄米軍基地の移設問題についても質問しています。すなわち、【質問14】における「沖縄の基地問題についてうかがいます。あなたは、沖縄県にあるアメリカ軍の普天間飛行場を、沖縄県の名護市辺野古に移設することに、賛成ですか。反対ですか」という問いです。

全体では、「賛成」31%、「反対」45%であり、一見、本土の国民においては、辺野古移設に否定的な人が多いかのように感じます。

しかしながら、男女別、年齢層別に回答を見ると、事情がちょっと変わってきます(図5)。すなわち、男性においては、実は賛成と反対がほとんど変わらないのです。一方、女性においては、すべての年齢層において、反対が賛成を大きく上回っており(2倍以上)、これが全体として「辺野古移設に反対」が多いという国民の声になっているわけです。

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図5. 男女別、年齢層別にみた米軍基地辺野古移設の是非への回答(朝日新聞RDD調査 [1]より作図)

5. サマータイムの実施

RDD調査の【質問13】では「夏の間に時計を早めるサマータイムについてうかがいます。東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策として、安倍政権はサマータイムの導入を検討しています。あなたは、サマータイムの導入に賛成ですか。反対ですか」という問いがありました。

全体では、サマータイム導入へ「賛成」が31%、「反対」が56%であり、多くの国民が否定的に捉えていることがわかります。

しかし、男女、年齢層別に見ると、ここでも18-29歳層の突出ぶりが現れており、賛成が反対を上回りました(図6)。

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図6. 男女別、年齢層別にみた自民党総裁選への関心度サマータイム導入の是非への回答(朝日新聞RDD調査 [1]より作図)


最後に、図6に各政党の支持率を示します。すべての層において、自民党が手堅く支持を集めていますが、男性よりも女性の方でより支持率が高いことは従来のとおりです。野党第一党である立憲民主党の支持率は、従来(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16405646.html)よりも落ち込んで、すべての層において一桁台になりました。

とはいえ、野党支持層と無党派(支持政党なし)層を合わせると、自民党支持率に匹敵する率になり、無党派の動きが選挙結果に大きく影響を与える傾向は従来どおりです。

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図6. 男女別、年齢層別にみた各政党支持率朝日新聞RDD調査 [1]より作図)

7. おわりに

今月は、安倍内閣支持率がさらに回復し、自民党支持率も若干増えました。とはいえ、これまで認められてきた男女間、年齢層間のギャップは相変わらず、内閣支持率等に現れており、今回は憲法改正や米軍基地の辺野古移設にも、それが認められました。


参考文献(データソース)