1. 内閣支持率
まず内閣支持率ですが、「支持する」が43%、「支持しない」が38%で昨年に比べると上昇しています。年齢別にみると高齢層ほど内閣支持率が低くなることと、60-69歳層で最低となることは従来どおりです(図1)。
これを男性層でみると、同様な傾向ですが、支持すると支持しないの数字が年齢層でより極端になります(図2)。
図2. 男性の年齢別による内閣支持率
女性では男性よりも内閣支持率が全体的に低い傾向にありましたが、今回もそれは維持されています。しかし、昨年支持率に10%程度の男女差があったものが、今年になってその差が小さくなっています(図3)。モリカケ問題や官庁の不祥事など、国内政治に関する一連の問題が大手メディアに取り上げられなくなったせいもあるでしょうか。
図3. 女性の年齢別による内閣支持率
図4に示すように、朝日に比べて日経は10%も高い内閣支持率(53%)を出しています。しかし、日経の世論調査では「支持する」、「支持しない」の問いで無回答の人に「お気持ちが近いのはどちらですか」と二次設問をしています。この二次回答が上乗せされたものが53%の支持率です(図4右)。一次回答だけでみると、43%の支持率、20%のその他・無回答となり、朝日のデータに近くなることがわかります。
このように、各社で世論調査のデータの表し方が異なっているので、テレビやインターネットで流される内閣支持率の情報には注意が必要です。さらに、日経新聞は回答者の属性を公表していません。回答者の男女比や年齢構成比をちょっと変えるだけで内閣支持率を上げることは可能なので、属性データを示していない世論調査は斜めから見ていた方がよいかもしれません。
3. 政党支持率
自民党 38%
立憲民主党 7%
公明党 3%
国民民主党 1%
共産党 3%
日本維新の会 1%
自由党 0%
社民党 0%
支持政党なし 38%
無回答 9%
野党第一党の立憲民主党は、男性60歳以上の層で15–16%の比較的高い支持があるものの、女性の各年齢層で3–7%の支持と低迷しています。とくに女性18–49歳層で3%、主婦層で4%という低い数字になっています。
国民民主党に至ってはほとんどの男女年齢層で1%以下の支持率です。小沢氏が国民民主党と組んで時期選挙への野党連合を画策しているようですが、この中心部隊が1%の支持しかないことは不幸というしかありません。
ただし、次回の参院選で立憲や国民民主などの野党がまとまって戦った方がよいと回答している人は50%にもなっています。男性60-69歳層に至っては、次期参院選の比例区に投票したい党として立憲民主党が31%にもなり、自民党と並んでいます。
4. 辺野古工事への回答
内閣支持と矛盾した回答になっている項目もありましたので、ここでとくに挙げてみたいと思います。沖縄辺野古の工事(海への土砂投入)です。安倍内閣を支持するということは、政府の政策である沖縄辺野古の工事(沿岸への土砂投入)についても当然認めることになるわけですが、回答の結果は逆になっています。
「あなたは、政府が土砂の投入を続けることに、賛成ですか。反対ですか」という問いに対して、58%が反対と答えており、賛成の28%を大きく上回っています(図5)。
図5. 沖縄辺野古の工事について政府が土砂の投入を続けることに対する回答
男性だけでみると賛成が38%に増えますが、それでも反対は過半数を上回っています(図6)。
図6. 政府が土砂の投入を続けることに対する賛否(男性層)
女性になると土砂投入に対する見方は相当厳しくなり、反対は63%にまで及びます(図7)。女性若年層(18–39歳)の70%以上が反対と答えていることも特徴的です。
図7. 政府が土砂の投入を続けることに対する賛否(男性層)
おわりに
今回の世論調査では、内閣支持率でみると昨年に比べて上昇しており、従来見られていた男女の差も少なくなっています。これは昨年注目されていたモリカケ問題や財務省の文書捏造の問題など、政府に対してネガティヴな話題がマスメディアに取り上げられなくなったことも多分に影響していると思われます。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」や「長いものに巻かれろ」などのたとえや処世術の言い回しにあるように、日本人特有のクセが世論調査の結果に出ているのかもしれません。
海外諸国に比べて好奇心、合理性、情報リテラシー、論理性、決定力が弱いと言われる日本人ですが、その現れとして矛盾した態度や曖昧な態度をとることも多々あります。今回の世論調査でそれが顕著に出ているのが「辺野古工事」への反対の多さです。
いつも思うのですが、私にはよく理解できない世論調査の結果です。