Dr. Tairaのブログ

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内閣支持率と総裁選への関心度


前のページで、朝日新聞の9月分RDD調査データの結果に基づいて、世論調査の回答に見られる男女間および年齢層間のギャップを紹介しました↓。

世論調査に見る男女・世代間のギャップ-5

いま自民党総裁選の期間であり、TVでの安倍、石破両候補の討論も一通り終わったところです。そこで、上記世論調査の結果をもう少しわかりやすくするために、内閣支持率と総裁選への関心度の関係に焦点を当ててみたいと思います。

図1、2に、それぞれ、男性と女性における内閣支持率と総裁選への関心度の関係について、年齢層ごとにプロットした二次元図を示します。

図1に示すように、男性においてはこの関係がきわめて顕著に現れており、年齢層が低いほど内閣支持率が高く、逆に総裁選への関心度は低くなる傾向がみられました。全体での内閣支持率は46%、「総裁選に関心がある」は54%ですが、18-29歳層では内閣支持率は63%に達する一方「総裁選に関心がある」は33%と最低です。

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図1. 男性の各年齢層の回答にみる安倍内閣支持率と総裁選への関心度の関係(朝日新聞RDD調査データに基づいて作図)

総裁選への関心度は、政治的関心度とみなすことができます。したがって、図1から読み取れることは、若い男性ほど政治には興味はないけれど、なんとなく安倍政権を支持すると回答しているのではないか、ということです。これがインターネットやSNSを主要情報源とする世代の一つの特徴だといえます(後述)。

一方、図2に示すように、女性においては、男性同様に総裁選への関心度は若年層ほど低くなりますが、男性と異なる点は、各年齢層で内閣支持率にはそれほど差は見られないということです。しかも全般的に男性よりも内閣支持率は低くなっています(全体での支持率は37%)。若干上下動はしますが、女性の内閣支持率の低さは今年に入ってからずうっと続いています。

このような男女間のギャップをみていると、女性の多くは情報に流されることなくより自らの感覚で安倍氏を嫌っているのかもしれません。男性よりも直感力に優れているのでしょう。ただし、18-29歳層になると無回答の割合が増えるので、「何事も関心がない」という態度が、男性同年代に比べて内閣支持率を低くしている可能性もあります。

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図2. 女性の各年齢層の回答にみる安倍内閣支持率と総裁選への関心度の関係(朝日新聞RDD調査データに基づいて作図)

上述したように、世論調査の回答には男女間や年齢層間で大きな差異がありますが、その原因の一つには、参考とするニュース源の違いにあると考えられます。

以前のページで示したように、主要ニュース源として、男性18-39歳の若い世代はインターネットやSNSを利用し、高齢者ほど新聞を利用していることがわかっています。一方、テレビの利用率については、同世代で女性の方が2–3倍高いという傾向があり、やはり男女間の差異が見られます(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16397145.html

政治の動きやそれが及ぼす生活への影響をより感じ取るためには、新聞やテレビなどの主要メディアも含めてさまざまな情報を得る必要があります。一方で、ツイッターなどのSNSばかりに頼っていると、TLにフォローしている同種類の意見しか流れないために、たとえ自らの思考にバイアスがかかっていたとしても、そのことに気づかない可能性があります。

男性若年層は、現状肯定型でリスク回避の傾向がきわめて強いと言われていますが、おそらく「自分の生活へ及ぼす政治の影響を考えられない」、「自分の生活と政治は直接関係ない」、あるいは政治は「寄らば大樹の陰」と考えているのかもしれません。

男性若年層ほど総裁選への関心度が低くて内閣支持率が高い、その逆が高齢層であるというのは、結局、生活と政治を現実のものとして結び付けられる能力とメディア・リテラシーの能力の差で決まることを意味しているのでしょう。