Dr. Tairaのブログ

生命と環境、微生物、科学と教育、生活科学、時事ネタなどに関する記事紹介

世論調査に見る男女・世代間のギャップ-4


はじめに

先日、報道ステーションによる7月のRDD方式世論調査(調査日:7月21日・22日)の結果が発表されました [1]。それによると、内閣支持率「支持する」が38.2%、「支持しない」が45.6%でした。それとともに、政党支持率自民党の支持が42.1%と、前月に比べて5.2%低下したことが報道されました。

これを受けて、ツイッターなどSNS上で、「自民党支持率が下がった」ということを強調するコメントが散見されます。果たしてそうでしょうか。あらためて、自民党と野党第1党の立憲民主党の支持率について、今年1月から7月までの変化をみると、図1のようになります。

図1をみると、自民党立憲民主党ともに、7月調査における政党支持率は過去7ヶ月間の平均値と比べてもほとんど差がありません。自民党支持率で言えば、6月の支持率が高かったことによる7月低下と見えてしまうバイアスだということがわかります。

イメージ 7
図1. 2018年1月–7月における自民党および立憲民主党の支持率の変化(報道ステーションRDD調査 [1] より作図)

元々報道ステーション世論調査では、政党支持率は全体的に高く出る傾向にありますが、結論として今年前半を見る限り、両党の支持率はほとんど変わっていないとみるのが妥当でしょう。

それでは、男女・世代別でどのような政党支持率の傾向が見られるか、朝日新聞RDD方式世論調査 [2] に基づいて、さらに見ていきたいと思います。

前のブログ記事では以下の傾向をすでに述べています(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16363566.html)。

●男性の場合、自民党支持率は、60-69歳層を最低として若年層側と最年長側に向けて高くなり、立憲民主党の支持率はこの傾向と逆になる
●女性の場合、若年層において自民党支持率が高いというわけではなく、最年長の層で高くなり、立憲民主党の支持は60-69歳層で最も高くなる


1. 男女・世代別における自民党支持

朝日新聞世論調査データに基づく、今年の1月から7月までの自民党支持率の変化を図2に、その平均値を図3に示します。

男性による支持率については、60-69歳層を最低として、若年層側と最年長側に向けて高くなる傾向が、時期に関わらずみられます。18-29歳層と60-69歳層においては、支持率が低下傾向にあるように見えますが、30-39歳と70歳以上の層では変動が小さく、平均40%の支持率に反映されるコアな一定の支持層であることがわかります。

女性による支持率については、若年層よりも高齢層で高くなる傾向は、時期に関わらず認められます。女性若年層(18-29歳)においては、男性若年層と同様に変動幅が大きいので、男女若年層の反応が、かなり支持率に影響していることが考えられます。

女性は男性に比べて10%ほど自民党支持率が低く、とくに若年層(18–29歳)においては、約20%の開きがあります(図3)。このような男女若年層の政治的思考性のギャップは、以前指摘したとおりです(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16302876.html)。

イメージ 1
図2. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における自民党支持率の変化(朝日新聞RDD調査 [2] より作図): 数字は最新データ(7月)を示す

イメージ 2
図3. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における自民党支持率の平均値と標準偏差朝日新聞RDD調査 [2] より作図)


2. 男女・世代別における立憲民主党支持率

次に、野党第1党である立憲民主党の支持率の変化とその平均値について、それぞれ図4および図5に示します。

男女ともに、年長層にいくほど支持率が高くなる傾向が、時期に関わらず続いています。60-69歳層あるいは70歳以上の層のどちらがトップになるかは、時期によって異なります。

全体の平均値でみれば、男性11%、女性9%の支持率であり、安倍内閣支持率および自民党支持率においては男性よりも低い女性の意向が、立憲民主党の支持に必ずしも回っていないことが伺われます。

イメージ 3
図4. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における立憲民主党支持率の変化(朝日新聞RDD調査 [2] より作図): 数字は最新データ(7月)を示す

イメージ 4
図5. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における立憲民主党支持率の平均値と標準偏差朝日新聞RDD調査 [2] より作図)


3. 男女・世代別における野党支持率

前回、インターネットやSNSを媒体とする情報によって、とくに男性若年層が影響を受け、それが内閣支持率自民党支持率にポジティヴに反映されていることを指摘しました(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16397145.html)。一方で、内閣を支持しない男女若年層(18-29歳)が、1/4程度存在することも述べました。

しかしながら、上記したように、男女若年層(18-29歳)の立憲民主党の支持率は一桁と低いです。それでは、内閣不支持の18-29歳1/4層の支持は、どこへ向いているのでしょうか。これを確かめるために、さらに全野党(日本維新と日本のこころは除く)の支持率を男女・年代別に調べてみました。

図6は、2018年7月14・15日調査 [2] における、男女・世代別の全野党の支持率(積算値)を示したものです。男女ともに高齢者ほど野党支持率が高く、とくに70歳以上の高齢者層においては、共産党支持が目立ちます。

一方で、男女若年層(18–29歳)においては、立憲民主党のみならず、全野党においても支持率は10%にも届きません。すなわち、この18–29歳層の1/4は安倍内閣を支持していないにも関わらず、野党支持に回っていないことが推察されます。

イメージ 8
図6. 男女別・年齢層別にみた2018年7月調査における野党支持率(朝日新聞RDD調査 [2] より作図)


4. 男女・世代別における無党派の割合

日本において「どの政党も支持しない」という、いわゆる無党派層は、その割合から言えば、第1党と言えるかもしれません。この無党派層の割合を、男女別・世代別で調べてみると興味ある傾向が見えてきます。

図7無党派の割合の変化を、図8はその平均値を示します。図8に示すように、無党派の割合は平均で男性35%、女性41%であり、全体でみれば、自民党支持の割合に匹敵するか、それを上回ります。

とくに図8を見るとよくわかりますが、無党派層の割合が高いのは、男女とも40-49歳層がトップであり、その両端の年齢層で下がっている傾向が見えることです。つまり、働き盛りの子育て世代で(とくに女性において)、無党派の傾向が強いということになります。

この傾向は、40-49歳の中堅層が仕事や生活に追われて政党のことを考える暇もないという、現れなのでしょうか。私は若い世代ほど、無党派が多いという印象をもっていましたので意外でした。

とはいえ、男女ともに若年層において標準偏差が大きいので、若年層が時期によって考え方を変えやすい層であることもわかります。

イメージ 5
図7. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における無党派の割合の変化(朝日新聞RDD調査 [2] より作図): 数字は最新データ(7月)を示す

イメージ 6
図8. 男女別・年齢層別にみた2018年1月–7月における無党派の割合の平均値と標準偏差朝日新聞RDD調査 [2] より作図)

国政選挙における無党派の投票行動パターンでみると、与党:野党支持の割合は平均で4:6程度になりますので、この無党派層の投票行動は、全体に大きな影響を与えます。


おわりに

個人の政党支持はそれほどコロコロ変わるものでもないので、世論調査においては、内閣支持率と比べて政党支持率の変化はより小さいことが予想されます。半年間の期間でみれば、その変動内にある個別(月別)の変化には、それほど意味はないと思われます。

今回の分析でもわかるように、男女別や年代別にみた政党支持率には、やはり大小の差異があることがわかりました。世論調査の結果においては、このような詳細な傾向をみていかないと、意味あるものにならないと感じます。逆に、男女や世代別の割合を変えて世論調査を行えば、容易にデータを操作できるということになります。

インターネットやSNSの選択圧を受けた、とくに男性若年層においては、安倍内閣自民党を支持する多数派と同時に、内閣を支持しない少数層が存在します。しかし、後者が必ずしも野党支持に回っていないことも、今回の分析でわかりました。この層は無党派であることも推察されますが、彼らがどこに向かうのか興味深いです。


参考文献・データソース