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ロシアは内部混乱に直面ー戦争で辞任した元外交官が語る

カテゴリー:社会・政治・時事問題

ロイターは、ロシアの元外交官が書いたウクライナの戦争をめぐるロシア批判の記事を紹介しました [1](下図)。このロイター記事は日本語でも配信されていますが [2]、短縮版なので、このブログで全文を翻訳して紹介します。

以下、筆者による翻訳文です。

               

ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領のウクライナ侵攻は、プーチン自身を失脚させ、内戦を引き起こし、最終的には国を分裂させるかもしれない混乱への道に導いていると、侵攻をめぐって辞任したロシアの外交官が語った。

ジュネーブにあるロシアの国連常設代表部のボリス・ボンダレフ(Boris Bondarev)参事官は、戦争によって祖国がいかに抑圧的でゆがんだ国になっているかを見せ付けられたと感じ、5月に辞任している。

プーチン・ロシアへの6500字の批判文のなかで、ボンダレフ氏は、国家にはおべっか使いの「イエスマン」がはびこり、そのことでプーチン氏が彼自身のプロパガンダを反映させた情報(エコーチェンバー)のなかで大きな決断を下せるようになっていると述べた。

2002年から2022年までロシア外務省に勤務したボンダレフ氏は、フォーリン・アフェアーズ誌(Foreign Affairs)への寄稿文のなかで、「プーチンが退陣すれば、ロシアの将来はきわめて不確実なものになる」と述べている。

「特にプーチンの主要なアドバイザーが国家安全保障関連出身であることを考えると、彼の後継者が戦争を継続しようとする可能性は十分にある。しかし、ロシアにはプーチンほどの大物がいないので、国は政治的混乱に陥るだろう。カオスに陥る可能性すらある」との見解を示している。

ロシア外務省は、ボンダレフ氏の記事に対するコメントの要求には、すぐには応じなかった。クレムリンは、このような見方について大きな瑕疵があるとして退けており、プーチンの人気は投票箱で繰り返し示されてきたと述べている。

プーチンは、金曜日に、「特別軍事作戦」について後悔はしていないと述べた。彼は、この軍事作戦を、ロシアを破壊し、切り刻もうとする攻撃的で傲慢な西側との存亡をかけた戦いである、と見なしている。

しかし、1962年のキューバ危機以来、西側諸国との最大の対立を引き起こしたも言える戦争が始まって約8カ月が経ったが、ロシアの最も基本的な目的さえも達成にはほど遠い状態だ。

かつての超大国の巨大な軍隊は、はるかに小さなウクライナの軍隊によって、戦場で屈服させられてしまった。ウクライナは米国を中心とする西側諸国の武器、情報、助言に支えられている。米国の情報機関によれば、双方で数万人の死者が出ている。

●ロシアは崩壊するのか?

ボンダレフ氏は、自らを「狂気の列車」から降りた「亡命外交官」と称する。彼は、外務省の経済学者とモスクワのエリート外交学院(MGIMO)の英語教師の息子である。

彼は、自国のプロパガンダに沿って情報を加工し、モスクワに電報で送った外交官がどのように報われたか、を詳しく説明している。「そのようなフィクションを書いた外交官は上司から喝采を浴び、出世街道を突き進むことになった」とボンダレフ氏は言う。

「モスクワは、実際に起こっていることではなく、自分たちが真実であってほしいと願っていることが届くことを望んでいた。あらゆる国のロシア大使たちは、このメッセージを受け取ることで、最も大げさな電報を送ろうと競い合った」。

ウクライナでのいかなる停戦も、プーチンに時間を与えることになる、と彼は言う。「停戦はロシアに次の攻撃のための再軍備の機会を与えるだけだ。プーチンを本当に止められるのは一つしかない。それは完全な敗退だ(comprehensive rout)だ」。

しかし一方で、ボンダレフ氏は、ロシアの崩壊を夢見る人々は、それがどのような結末を生むかを考えた方がいいと語る。

「ロシア人は、プーチンよりもさらに好戦的な指導者のもとに団結し、内戦や外部からの侵略、あるいはその両方を誘発するかもしれない」と彼は言う。

ウクライナが勝利し、プーチンが倒れれば、西側ができる最善のことは、屈辱を与えることではない」。1991年のソ連崩壊後にロシア人が受けた屈辱は、西側諸国の教訓になるはずだとボンダレフ氏は言う。

「西側が援助を行うことで、ロシア人が米国に詐欺にあったと感じた1990年代の行動を繰り返すことを避けられるし、国民が帝国の喪失を最終的に受け入れることを容易にすることもできる」。

               

以上が翻訳文です。

筆者あとがき

ウクライナでの戦争が一日も早く終わってほしいということは、誰もが願うことでしょう。しかし、停戦は次の戦争を生むだけ、解決はプーチンの完全なる敗北と帝国の喪失を受け入れること、という元外交官の言葉は、最も現実味があるかもしれません。そして、次の混乱を防ぐために、西側の援助が必要というのもうなづけます。

この外交官の指摘・見解の中で一つ抜けていることは、プーチンが敗北濃厚となったときに、核のボタンに手をつける可能性を否定できないことです。それだけは避けてほしいです。

引用記事

[1] Faulconbridge, G.: Russia faces internal turmoil, says former diplomat who resigned over war. Reuters Oct. 17, 2022. https://www.reuters.com/world/europe/russia-faces-turmoil-says-former-diplomat-who-resigned-over-war-2022-10-17/

[2] ロイター: ロシア、プーチン氏失脚や内戦に直面も=侵攻巡り辞任の元外交官. Yahoo Japan ニュース 2022.10.18. https://news.yahoo.co.jp/articles/ad4052510163bc3d33686dfbf6b2539201b44757
                

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