公園に殺虫剤を撒く行政
今日、昆虫の定点観察の一つにしている都市公園に出向いたら、入り口に生えているマテバシイの木に管理者である市による掲示がしてありました。読んでみると、公園内のサンゴジュに害虫退治のためにトレボン乳剤を散布するとあり、驚きました。
図1. 市販のトレボン乳剤と有効成分のエトフェンブロックス
エトフェンプロックスは、三井化学株式会社により開発されたピレスロイド系殺虫剤であり、神経軸索におけるナトリウムチャンネルの正常な働きを阻害することによって殺虫効果を示します。鱗翅目、半翅目、双翅目等の昆虫に対して幅広い殺虫スペクトルを有します。つまり、ほとんどの昆虫をねこそぎ殺してしまうと考えてもよい薬剤です。
サンゴジュはガマズミ属の常緑高木ですが、サンゴジュハムシという食害を起こす昆虫がつきます(写真1)。市はおそらくこのハムシの退治にトレボン乳剤を撒く意図なのでしょう。
写真1
当該公園にはサンゴジュ、マテバシイ、ヤマモモなどの常緑樹が植えてあり、下にはツツジ、アベリア、シャリンバイ、レンギョウなどの植栽があります。また間をぬってエノキの低幼木、コブシ、ケヤキの幼木が生えています。さらにはカタバミ、スイバ、タンポポ、マメ科、イネ科の植物を中心とした下草が生えています。
サンゴジュはこれらの草木の間に生えているものであり、選択的にピンポイントで薬剤を散布することは不可能です。当然周辺に影響が及ぶでしょう。
私がこの公園での発生を確認した昆虫は鱗翅目だけでもゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ、ムラサキツバメ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、ウラナミシジミ、リュウキュウキノカワガ、ヨトウガの類があります。さらにたくさんのカメムシの類を確認しています。実際にこれらの昆虫の幼虫がまさに今発生している段階です。トレボン剤散布となればこれらの昆虫に大打撃を与えてしまうでしょう。
ちなみに私の家の庭にもサンゴジュがあり、例年サンゴジュハムシによる食害が起こりますが、放置しておけば自然と元に戻ります。サンゴジュに殺虫剤散布などまったく必要のないことです。
日頃、公園の生物多様性の維持と自然との共生をうたっている市が、このような殺虫剤散布を行うとはなんと愚かなことかと思ってしまいます。
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